親切にするだけで増える『オキシトシン』をご存知ですか?5つの出し方を医師が解説!

オキシトシンとは?メディカルドック監修医がセロトニンとの違いや効果・出し方・サプリメントなどを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「オキシトシン」とは?

オキシトシンは、複数のアミノ酸が連なってできたペプチドホルモンで、脳の視床下部で産生されます。血中に分泌されて全身に作用するホルモンとしての働きに加え、脳内では神経伝達物質として神経活動の調節にも関与します。ホルモンは血流に乗って全身に働きかける物質、神経伝達物質は脳内で神経細胞に刺激を伝える物質です。オキシトシンは2つの働きを持つと言えるでしょう。
最初に子宮収縮や母乳の分泌に関わることが発見され、長い間「女性に関係が深いホルモン」として研究されてきました。近年は、痛みや不安の軽減、他の人への共感や信頼感にも関わっていると考えられています。
「オキシトシン」と「セロトニン」の違いは?

オキシトシンとセロトニンは、どちらも「幸せホルモン」などの別名で呼ばれることがありますが、全く別の物質です。
オキシトシンは9個のアミノ酸から作られる物質、セロトニンはトリプトファンから作られる物質で、両者は相互作用を持って働きます。
両方とも感情や気分をポジティブにしてくれる働きを持ちますが、オキシトシンは人とのつながりや絆に関わる安心や幸福感に、セロトニンは個人の精神的な安定に関わる点に違いがあります。
オキシトシンはどこから分泌されるの?

オキシトシンは、主に脳にある視床下部の室傍核や視索上核で産生されます。視床下部は身体にとって重要な機能を持ち、自律神経やホルモンの分泌などに関わる部位です。そのほかには、子宮、胎盤、精巣、心臓などの組織でも産生されます。
視床下部で作られたオキシトシンは脳の下垂体後葉に貯められ、感覚刺激で分泌が促進されます。しかし、ストレスや孤独感で分泌量が減ることが報告されています。
オキシトシンを産生する細胞は脳内のいろいろな場所や脊髄に神経を伸ばし、神経の端からオキシトシンが分泌されます。加えて、オキシトシンを産生する細胞自体からも直接分泌され、周りに作用することもわかっています。
【男性】オキシトシンが分泌されるとどんな効果がある?

オキシトシンは、男性の性行動や性機能、精神的な安心感、対人関係などに関わります。女性と共通の効果もありますが、主なものをご紹介します。
性欲や性的反応へ影響を与える
オキシトシンは、性行為中に感覚神経が活性化したり、性的興奮を覚えたりすると分泌量が増えます。さらに、勃起や射精などの性行動に関わる神経細胞がオキシトシンによって活性化することが示唆されています。
精巣機能に関与する
動物実験では、オキシトシンは、男性ホルモンの働きや精子数などの精巣機能に関わっていることが示唆されています。この働きにより、間接的に性欲や性機能にも関わると考えられます。
ストレスや不安を軽減する
オキシトシンはストレスホルモンのコルチゾールの分泌を抑制する働きを持ちます。また、脳の海馬や扁桃体で感じる不安を抑制し、心を落ち着かせる可能性が示唆されています。
他人との関係性に影響を与える
オキシトシンは、対人関係がもたらす感情に関わることが示されています。オキシトシンによって独身男性の場合は女性に嫌われても気にしにくくなる一方、パートナーがいる男性の場合は状況によって異なる反応をすることが報告されています(Weihuaら、2017)。
パートナーと絆を深める
オキシトシンは、男性にとって自分の恋人の顔を特別に好きだと感じさせるスイッチとなり、さらにパートナーとの関係が強く・長く続くように働く可能性が示唆されています(Dirkら、2013)。
【女性】オキシトシンが分泌されるとどんな効果がある?

女性において、オキシトシンは妊娠・出産に関わる働きを始め、さまざまな役割を持ちます。女性に特徴的なものを含めてご紹介します。
母乳の分泌を促す
オキシトシンは、授乳中に母乳の分泌を促す働きがあります。赤ちゃんが乳首を吸う刺激が脳に伝わってオキシトシンが分泌され、乳腺の周りの筋肉が収縮して母乳が体外に分泌されます。
子宮を収縮させ、分娩を進める
オキシトシンは、出産時の子宮収縮を促して分娩を促進します。陣痛が起こると子宮内で産生され、子宮の筋肉が収縮して分娩が進みます。出産後も収縮が続き、子宮を元の大きさや状態に戻す役割も担っているホルモンです。
母性を形成する
オキシトシンは、母子間の愛着形成や養育行動に関与することが知られています。母親を対象にした研究では、出産や授乳、赤ちゃんから受ける嗅覚、視覚、聴覚の刺激などによってオキシトシンの分泌が高まったと報告されています(二神ら、2018)
友好的な人間関係を築く
オキシトシンは、対人関係における信頼感や共感的な反応に関与し、安心感や社会的つながりを持つように働くことが示されています。しかし、オキシトシンは他者への信頼や共感を高める一方で、状況によっては特定の人やグループを優先する行動につながる可能性があると指摘されています。
幸福感を高めストレスが軽減される
親密な人たちと良い人間関係を築くとオキシトシンが分泌され、幸福感が増したりストレスが軽減したりすることが示されています。
オキシトシンの出し方(増やし方)

オキシトシンは、日常生活に取り入れやすい方法で増やせると知られています。ここでは具体的な方法を紹介しますので、できそうなものから試してみてください。
スキンシップをする
マッサージやハグなどを通じて優しい気持ちで触れ合うと、触れ合いなどの刺激によってオキシトシンの分泌が促され、不安の軽減につながる可能性が示されています。赤ちゃんを抱っこしたり、親しい人と触れ合ったりしましょう。
心地よい感覚刺激を受ける
マッサージなどの物理的刺激、アロマなどの嗅覚刺激、ゆったりした音楽による聴覚刺激などの心地よい感覚刺激を受けると、脳内でオキシトシンが分泌されることが示されています。それぞれリラックス効果があると言われる方法です。自分が「気持ちいい」と感じることを試してみてください。
人と交流する
人との交流でオキシトシンの分泌が増すことがわかっています。もし直接会えなくても、SNSや電話などの交流でも構いません。家族や友達と積極的に交流しましょう。
贈り物・ボランティア活動をする
贈り物やボランティア活動をすると脳内のオキシトシン濃度が上昇することが分かっています。物をプレゼントするのではなく、誰かのために親切なことをしたり、相手を気にかけていることを伝えたりするだけでも、送られる側と送る側のどちらにとっても効果があります。
瞑想・マインドフルネスをする
呼吸や身体感覚、感情に意識を向けて「今この瞬間」に意識を向けるとストレスや不安が軽減し、オキシトシンの分泌に良い影響を与えます。1人ですぐに行えるので、日常的にも取り入れやすい方法です。
オキシトシンの分泌を促すサプリメント

現時点では、科学的な根拠が示されているサプリメントはありません。ここでは、オキシトシンの働きに関わったり、分泌を促したりする可能性があるものをご紹介します。
サプリメントに加え、上記で紹介したようなスキンシップや人との交流なども取り入れるようにしてみてください。
ビタミンC
ビタミンC(アスコルビン酸)は、オキシトシンの生成過程に関わる酵素の補因子として必要とされる栄養素です。オキシトシンは前駆体から酵素反応を経て活性化されますが、その最終段階に関与する酵素の働きにビタミンCが関わることが知られています。ただし、ビタミンCを摂取することでオキシトシンの分泌量が増えるかどうかは、ヒトにおいて明確には示されていません。
マグネシウム
マグネシウムは、オキシトシンの受容体が機能する際に欠かせない栄養素です。どのように関わるか、詳しい仕組みはまだ解明されていません。
L-カルノシン
L-カルノシンはサプリメントとして販売されている成分で、神経機能への影響が研究されています。動物実験では、社会行動や社会的記憶の変化とともにオキシトシン系の関与が示唆されています。ただし、これらは主に基礎研究の結果であり、ヒトにおけるオキシトシン分泌への影響や有効性については十分に確認されていません。
「オキシトシン」についてよくある質問

ここまでオキシトシンについて紹介しました。ここでは「オキシトシン」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
どのようなことをするとオキシトシンは分泌されるのでしょうか?
木村 香菜(医師)
マッサージやハグなどのスキンシップや、社会的な人とのつながりを持ってコミュニケーションの機会を持つとオキシトシンの分泌が促進されます。
また、アロマや音楽などの感覚刺激や、マインドフルネスも効果があると考えられています。マッサージを受ける、アロマテラピーでお気に入りの香りに癒される、好きな音楽を聴く、といったことは、1人でもできます。ぜひ取り入れてみてください。
まとめ オキシトシンはスキンシップや人との交流で分泌が促進されます
オキシトシンは主に脳の視床下部で合成され、心地よいと感じられる刺激で分泌が促進されます。似たような印象を持たれるセロトニンとは、構成する物質や働きに違いがあります。また、その作用は一様ではなく、状況や人との関係性によって現れ方が異なる点も特徴の一つです。
「オキシトシン」と関連する病気
「オキシトシン」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
これらのような病気の原因の一つにオキシトシンが関わるのではと考えられています。
「オキシトシン」と関連する症状
「オキシトシン」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 孤独を感じる
- 不安感が強い
- 気分が落ち込む
- 母乳が出にくい
- ストレスに弱い
症状を起こすさまざまな要因のうち、オキシトシンも一部として関わっている可能性があります。
参考文献
- オキシトシンと心身の健康|心身健康科学
- Discriminative and Affective Touch: Sensing and Feeling|Neuron
- セロトニン|健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
- Oxytocin interactions with central dopamine and serotonin systems regulate different components of motherhood|PMC
- 脳科学辞典 オキシトシン|日本神経科学学会
- 視床下部の役割|検査と技術
- Systemic effects of oxytocin on male sexual activity via the spinal ejaculation generator in rats|PMC
- Dual-action intranasal oxytocin enhances both male sexual performance and fertility in rats|The Journal of Sexual Medicine
- Self-soothing behaviors with particular reference to oxytocin release induced by non-noxious sensory stimulation|PMC
- Oxytocinergic Modulation of Stress-Associated Amygdala-Hippocampus Pathways in Humans Is Mediated by Serotonergic Mechanisms|PMC
- Oxytocin biases men to be more or less tolerant of others' dislike dependent upon their relationship status|PubMed
- Oxytocin enhances brain reward system responses in men viewing the face of their female partner|PNAS
- The Role of Oxytocin and the Effect of Stress During Childbirth: Neurobiological Basics and Implications for Mother and Child|PMC
- Oxytocin promotes group-serving dishonesty|PMC
- A novel role of oxytocin: Oxytocin-induced well-being in humans|PMC
- How to Increase Your "Feel-Good" Hormones and Neurochemicals|The University of Arizona
- Post-translational processing of oxytocin-neurophysin prohormone in the ovine corpus luteum|PubMed
- Oxytocin signaling complex reveals a molecular switch for cation dependence|PMC
- Oxytocin: Narrative Expert Review of Current Perspectives on the Relationship with Other Neurotransmitters and the Impact on the Main Psychiatric Disorders|PMC
- Oral Supplementation with L-Carnosine Attenuates Social Recognition Deficits in CD157KO Mice via Oxytocin Release|PMC



