「フレイルチェック」の”基本5項目”とは?医師が7つの初期症状や予防法も解説!

フレイルチェックは何を行うかご存知ですか?メディカルドック監修医がフレイルが起こる主な原因や関連する病気・何科へ受診すべきかなどを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
高齢者に多いフレイルとは?早期チェックが重要な理由
「フレイル」という言葉は徐々に浸透してきているものの、詳しい内容が曖昧な方は少なくありません。まずは、フレイルについて基本的な内容を押さえておきましょう。
身体機能が衰えるフレイルとは?フレイルの定義
フレイルとは、加齢に伴って筋力や認知機能が少しずつ低下し、病気やストレスに対して体が弱くなった状況です。健康な状態から要介護状態へ移行する中間の段階ともいえます。
つまり、完全な介護が必要ではないものの、若いころほどは健康でない状態ということです。
この「健康状態」とは、単純に病気の有無や体力だけを指すものではありません。気分が落ち込みやすくなる、社会とのつながりが減って引きこもりがちになるなど、さまざまな問題を含みます。放置すると自立した生活が困難になるため、適切な対処による予防・改善が欠かせません。
フレイルの初期症状
フレイルの初期症状の例を、以下に紹介します。
- 疲れやすくなった
- 体重が減ってきた
- 同じ距離を歩くのに時間がかかるようになった
- 体を動かすのが大変だと感じる
- 食欲が落ちた
- 転びやすくなった
- 人と会うのが面倒になってきた
放置するとより症状が進む可能性が高いため、早いうちの対処が大切です。
フレイルチェックとは?
フレイルチェックとは、現在のご自身がフレイルの状態になっているかを確認するための簡単なチェックリストです。
フレイルはある日突然なるのではなく、毎日の生活の中で少しずつ体力や気力が衰えることで生じます。そのため、「自分は大丈夫だ」と思って何も対策しないのではなく、客観的な基準でご自身の体調を確認することでフレイルを早く見つけて対策をするのが良いでしょう。
フレイルチェックの「基本5項目」とは?
フレイルには、体力や筋力といった身体面、食べることに関する口腔面、気持ちの落ち込みや物忘れに関する精神面、人とのつながりに関する社会面など、さまざまな側面があります。
ここでは、身体面を中心としたフレイルチェックの基本的な5項目について紹介します。
体重減少
体重減少は、体の筋肉量や栄養状態が低下していることをあらわすサインです。具体的には、「半年間で2kg以上の体重減少(ただし、意図的に体重を減らした場合を除く)」がある場合、フレイルの判断基準に該当します。
ダイエットや食事制限をしていないのに自然と体重が落ちる場合、筋肉を作るためのタンパク質やエネルギーが不足し、体力が少しずつ削られている可能性があります。
体重を測った際は「前と比べてどうかな」という視点を持つと、体重の変化に気付けます。健康診断での体重と比べてみるのもよいかもしれません。
疲れやすさ
とくに何をしたわけでもないのに疲れた感じが続く方は、注意が必要です。具体的には、「ここ2週間ほどわけもなく疲れたような感じがする」場合、フレイルの判断基準に該当します。
この「疲れやすさ」は、食欲が落ちることによる体力や筋力の低下に加えて、「気力の衰え」をあらわす指標となります。
活動量の低下
毎日の運動や体操、家事、散歩といった身体的な活動が減ることも、フレイルの症状のひとつです。フレイルの5項目には、「軽い運動・体操、定期的な運動・スポーツをしていない」という基準があります。
活動量が減って座ったり横になっている時間が増えると、全身の筋力は徐々に低下します。動かないことで食欲も湧かず、栄養が不足すれば、さらに筋力も落ちやすくなるでしょう。
また、活動量が減ると、人と会う機会も減りやすくなります。その結果、社会とのつながりが減ってさらに外出機会が減る点も大きなリスクとなるのです。
歩行速度低下
筋肉や心肺機能の低下、足や腰などの痛みがあると歩く速度が低下します。また、脳や神経の病気、貧血などがある場合も速く歩けなくなりがちです。具体的には、「通常歩行速度が秒速1.0m未満:5mを歩くのに5秒以上かかる」という指標があります。
横断歩道の信号が青のうちに渡り切れなくなった、以前よりもスーパーまで歩くのに時間がかかるようになったなどの方は、歩行機能が低下しているかもしれません。
握力低下
握力は、筋肉の量だけでなく質をあらわす指標としてフレイルの基準に取り入れられています。測定値が男性で28kg未満、女性で18kg未満の場合、フレイルの基準に達します。
ペットボトルの蓋を開けにくくなった、料理の際に鍋を持ちあげるのが大変になったなどが気になる方は、筋力が落ちている可能性があるのです。
自宅でできるフレイルのセルフチェック法は?
フレイルのセルフチェックは、自宅で簡単におこなうことができます。ここでは取り組みやすいものを3つご紹介します。
指輪っかテスト
指輪っかテストは、両手の指を使って自分のふくらはぎの太さを測り、足の筋肉量を把握するテストです。
- 足の裏がしっかりと地面につく椅子や台に座る
- 親指と人差し指で指の輪(指輪っか)を作り、利き足でない方の足のふくらはぎの一番太い部分を囲む
利き足とは、ボールを蹴ったり、力の抜いた状態から踏み出す際、自然に前に出たりする方の足です。チェックでは、利き足と逆の足を調べます。
ふくらはぎの太さが十分にあり、指輪っかで囲えないまたはちょうど囲める場合、筋肉量は十分である可能性が高いとされています。一方、輪の中にふくらはぎが収まり隙間ができる状況は、筋肉量が少ない可能性があるため注意が必要です。
片足立ちテスト
片足立ちテストは、足の筋力や体のバランス能力を調べる方法です。目を閉じておこなう方法と開けておこなう方法があり、ここでは目を開けておこなう「開眼片足立ち」の方法を紹介します。
- 素足になる
- 壁から50cmほど離れた位置で壁に向かって立つ
- 両眼を開けたまま両手を楽に下げる
- 左右どちらかの足を前向きに5cmほど上げる
- 床についている足がずれるか、足以外の体のどこかが壁や床に触れるまでの時間を測る
15秒ほどの維持ができなくなると転倒や日常生活に不便するリスクが高まるとされています。
なお、テストをする際は転倒しないよう注意を払い、ふらついた時に支えられる人がいる状態で行いましょう。
歩行速度チェック
フレイルの判断基準のひとつとして、「通常歩行速度が秒速1.0m未満:5mを歩くのに5秒以上かかる」というものがあります。
具体的には、「横断歩道を青信号のうちに渡りきれない場合は注意」という基準が有名です。
ただし、横断歩道でテストをおこなうのは危険なため、セルフチェックは公園に設けられているウォーキングコースや家の廊下、庭などの安全性の高い場所でおこなうことをおすすめします。
フレイルの兆候をより詳しく確認できる「15項目チェックリスト」
フレイルの兆候をより詳しく知る指標として、国や各自治体はさまざまなチェック項目を設けています。ここでは、東京都が設けている15項目を中心に説明していきます。
東京都健康長寿医療センター研究所によるフレイルチェック15項目
東京都では、介護予防のためにフレイルリスク度のチェックリストが作成されています。
具体的な項目は、以下のとおりです。
- この一年間に転んだことがありますか
- 1kmぐらいの距離を不⾃由なく続けて歩くことができますか
- ⽬は普通に⾒えますか (注:眼鏡を使った状態でもよい)
- 家の中でよくつまずいたり、滑ったりしますか
- 転ぶことが怖くて外出を控えることがありますか
- この⼀年間に⼊院したことがありますか
- 最近、⾷欲はありますか
- 現在、たいていの物は噛んで⾷べられますか(注:⼊れ⻭を使ってもよい)
- この6か⽉間に3kg以上の体重減少がありましたか
- この6か⽉間に、以前に比べてからだの筋⾁や脂肪が落ちてきたと思いますか
- ⼀⽇中家の外には出ず、家の中で過ごすことが多いですか
- ふだん、2~3⽇に1回程度は外出しますか(注:庭先のみやゴミ出し程度の外出は含まない)
- 家の中あるいは家の外で、趣味・楽しみ・好きでやっていることがありますか
- 親しくお話ができる近所の⽅はいますか
- 近所の人以外で、親しく行き来するような友達、別居家族または親戚はいますか
東京都健康長寿医療センター研究所が作成したこの簡易シートは、食事の状況や運動習慣、社会とのつながり、心の健康など、幅広い分野からフレイルのリスクを発見できるのが特徴です。
フレイルチェックの点数の付け方と目安
東京都のフレイルリスク度のセルフチェックでは、「身体の衰えを感じさせる回答(食欲がない・転倒したことがあるなど)」を1点として計算し、4点以上の場合注意が必要とされます。
ただし、4点未満であっても油断はできません。できることから少しずつ改善していきましょう。
「フレイルチェック」の見方と治療が必要な結果
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
ここでは、代表的なフレイルチェック5項目「体重減少」「疲れやすい」「歩行速度の低下」「筋力の低下」「身体活動量の低下」について、基準値や異常値、治療の必要性などを紹介します。気になるチェック結果が得られた場合は、すぐに病院に受診しましょう。
「フレイルチェック」の基準値と結果の見方
フレイルチェックの5項目の基準値を、以下にまとめました。
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| 体重減少 | 6カ月間で2kg以上の意図しない体重減少がある |
| 疲れやすい | 2週間以上疲れた感じが続いている |
| 歩行速度の低下 | 通常歩行速度が秒速1.0m未満になっている |
| 筋力の低下 | 握力が男性28kg未満、女性18kg未満になっている |
| 身体活動量の低下 | 軽い運動や体操などをおこなっていない |
基準値を超える異常が3項目以上あるとフレイルと判断されます。
ただし、1つでも当てはまる項目があった場合はフレイルの前段階である「プレフレイル」とされるため、食事や運動の見直しをおすすめします。
「フレイルチェック」の異常値と何科に受診すればよいか
フレイルチェックで3つ以上の項目に当てはまった場合は、専門家へ相談しましょう。
受診先としては、高齢者の全身を総合的に診察する老年内科や、かかりつけの内科です。足腰の痛みやしびれなどの運動面の問題は整形外科、歯や口に関する悩みは口腔外科に相談すると、専門的な治療を受けやすくなります。
なお、介護を含めた生活の総合的な相談をしたい場合は、自治体の地域包括支援センターやケアマネージャーも相談先となるでしょう。すでに体力や筋力、気力の衰えによって生活に支障が出ている場合は、放置すると症状が急速に悪化する可能性もあるため、速やかに受診・相談してください。
「フレイル」で気をつけたい病気・疾患
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドロームは、骨や関節、筋肉などの運動器の障害によって移動能力が低下した状態です。略して「ロコモ」と呼ばれることもあります。
ロコモティブシンドロームが進行して、体力や筋力が低下するとフレイルの状態になります。体の痛みや持病があれば治療を受け、歩く、体操をする、しっかりと栄養を摂ることなども予防や対処につながります。
運動器の痛みが気になる場合は整形外科で相談し、治療やリハビリをおこないましょう。
サルコペニア
サルコペニアは、加齢によって全身の筋肉量と筋力が低下することです。サルコペニアによる筋力の低下は、フレイルの大きな要因となります。
加齢が原因ではあるものの、運動不足や慢性的な炎症、ケガや糖尿病(インスリン抵抗性の増大)などがあると筋肉がうまく作られなくなり、サルコペニアになりやすいとされています。
サルコペニアの基本的な予防・治療は、運動療法と栄養療法です。レジスタンス運動(筋力トレーニング)をおこないつつ、食事でしっかりとタンパク質を摂取していきましょう。
体力や筋力の低下が気になる場合は、かかりつけの内科や整形外科、老年内科などで相談してみてください。
認知症
認知症とは、脳の神経細胞の機能が徐々に落ちて記憶力や判断力(認知機能)が低下し、社会生活に支障をきたす病気です。
フレイルと認知症は、相互に影響しているといわれています。認知症による判断力の低下や人との関わりの減少はフレイルの悪化につながり、逆にフレイルによって人とのつながりを含む活動が低下すると認知症自身も悪化しやすくなります。
脳梗塞や脳出血などの病気が原因でなることもありますが、社会的な孤立や聴力の衰え、運動不足などによって脳への刺激が減り、結果的に認知症になる方は少なくありません。
同じことを何度も聞き返す、道に迷うことが増える、お金の管理ができなくなるなどの症状が増えてきたら、認知症の初期症状かもしれません。専門は老年内科やもの忘れ外来、神経内科などですが、まずはかかりつけの内科で相談してみましょう。
フレイルを予防・改善する生活習慣は?
フレイルは、生活習慣に気を付けることで予防・改善が期待できます。取り入れやすい内容をいくつか紹介します。
フレイル予防におすすめの食事法
フレイル予防で大切なのは、3食をバランス良く摂ることです。1日2食以上、以下3つを組み合わせて食べるようにすると、多くの食品を自然に取り入れられます。
- 主食(ご飯・パンなど)
- 主菜(肉、魚、卵、大豆料理など)
- 副菜(野菜、きのこ、海藻料理など)
フレイル予防の観点では、筋肉の材料になるタンパク質をより意識して摂ることを心がけましょう。肉や魚などの量を増やすのが難しい場合は、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品や豆腐や納豆などの大豆製品を1品増やすのもおすすめです。
フレイル予防におすすめの運動法
フレイル予防におすすめな運動は、筋力を高めるトレーニングと、有酸素運動の組み合わせです。
取り組みやすい筋力トレーニングの例としては、椅子に座ってひざを上げて5秒キープする、椅子の背もたれにつかまってのスクワットなどがあります。
有酸素運動でおすすめなのは、ウォーキングです。少し息が早くなるものの、人と楽に会話ができる程度が望ましいです。ウォーキングはフレイルだけでなく、生活習慣病や認知症などの予防にも効果が期待できます。
運動は無理のない範囲から始め、慣れたら少しずつ増やしていきます。持病のある方は主治医に相談してからおこなうようにしましょう。
社会参加・趣味の継続の重要性
人との交流や社会的な役割を持つ行動は、フレイル予防に大きな役割を果たします。人との交流を続ければ、活気が生まれて生活範囲が広がります。外出すれば自然と運動量も増え、筋力や食欲の維持・向上にも役立ちます。
外に出て近所の人や友人、同居していない家族などとの交流を楽しむなども、社会参加の一歩です。また、趣味のサークルやボランティアに参加したり、地域のサロンに通ってみたりするのもよいでしょう。
「フレイルチェック」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「フレイルチェック」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
フレイルを診断する5項目はなんでしょうか
伊藤 陽子(医師)
フレイルの診断には、以下の5項目がよく用いられます。「体重減少」「疲れやすさ」「歩行速度の低下」「筋力の低下(おもに握力)」「身体活動量の低下」です。上記の5つのうち3つ以上該当するとフレイル、1〜2項目に該当すると、プレフレイルと診断します。
医療機関でフレイルチェックを受けるには何科を受診すべきですか?
伊藤 陽子(医師)
医療機関でのフレイルチェックを希望する方は、かかりつけの内科や老年内科を受診しましょう。膝や腰の痛みが強い場合は整形外科、噛む力や飲み込みに不安がある場合は歯科(口腔外科)など、すでに気になる症状がある場合は、それぞれの専門科で相談することも可能です。
60代で筋力がなくフレイル基準に該当した場合どんな治療が必要ですか?
伊藤 陽子(医師)
タンパク質の不足を防ぎ、栄養をしっかり摂る、運動をして体力・筋力をつける、人とのつながりを作る、口腔内の健康を守る、持病はしっかりと治療する、といった取り組みが必要です。60代の時点で対策を始めることで、70代以降の悪化を防ぎやすくなります。
70代でフレイルチェックにひっかかると要介護になるのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
すぐに介護が必要になるとは限りません。フレイルは適切な支援や生活習慣の見直しによって、改善できる可能性もあるためです。何から始めたらよいか分からない場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターなどで相談してみるのもよい方法です。
まとめ 「フレイルチェック」がひっかかったら生活を見直そう!
フレイルは、加齢にしたがって体力や気力が低下することです。放置して悪化すると介護が必要な状態や寝たきりにつながるため、早いうちの予防・改善が大切です。
フレイルは、自宅で簡単にセルフチェックできます。チェックによりもしフレイルの傾向が見られたら、食事や運動、人との関わりなど、毎日の生活を少し見直す必要があるかもしれません。
気になる点はかかりつけ医や地域包括支援センター、自治体などで相談し、できることから少しずつフレイル予防・改善に取り組んでいきましょう。
「フレイル」の異常で考えられる病気
「フレイル」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
整形外科の病気
- 骨粗鬆症
- ロコモティブシンドローム
- サルコペニア
脳神経内科の病気
生活習慣病を始めとする持病がある方は、年齢を重ねるとフレイルになるリスクが上がりやすくなります。できるだけ早めに治療を受けるようにしましょう。また、運動不足や栄養不足もフレイルを招きます。気になる症状・疾患がある方は、早めの受診をおすすめします。
「フレイル」の関連症状
「フレイル」から医師が考えられる症状は8個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
フレイルのサイン
- ふらつく
- 歩くのが遅くなる
- 食欲低下
- 意欲の低下
- 転びやすくなる
- 体重が減る
- 疲れやすくなる
- だるさ
フレイルは、早期に発見して適切な対処を行えば改善できるケースもあります。気になる症状があったら早めに相談しましょう。
参考文献




