刺さない「血糖値測定器リブレ」の”数値は正確”なのか?医師が効果や費用を解説!

針を刺さずに血糖値が測定できるリブレ(フリースタイルリブレ)についてご存知ですか?メディカルドック監修医が使い方や費用、特徴を詳しく解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
血糖値測定器のリブレ(フリースタイルリブレ)とは
持続血糖測定器(CGM)は、皮膚に穿刺したセンサーにより、間質液中の糖濃度を連続して測定することで血糖値を推定することができる医療機器のことです。このCGMで血糖値の変動を連続的に可視化することができるようになり、今までの自己血糖測定(SMBG)では見逃されていた、夜間や早朝の低血糖や食直後の高血糖、血糖値の上下の変化をモニターすることができるようになりました。このCGMの中でAbbott社のリブレ(フリースタイルリブレ)®が代表的な商品となります。今回はCGMについて、特にリブレ®についてを中心に解説していきます。
持続血糖測定器(CGM)の仕組み
前述のようにCGMは、24時間の血糖推移をみることができるデバイスです。CGMは、センサーの中に含まれるグルコースオキシダーゼという酵素を間質液中のグルコースと反応させて微弱な電流が発生します。この電流の強さを測定し、血糖値を計算しています。この測定値と実際の血糖値の間には乖離が生じることが知られており、SMBGの測定値を利用してこの乖離を補正したり、アルゴリズムを利用した補正を行っているのです。
リブレは針なしで血糖値が測れるって本当?
リブレ®は、最初に装着する際に細く柔らかい針(センサーフィラメント)を皮下組織に留置して、間質液中の糖濃度を測定します。最初にフィラメントを皮下組織に留置する際に、細い針で皮膚を穿刺しますが、その後すぐに抜き取ります。このため、柔らかい針のみ皮膚に刺さっている状態となるのです。正確には針がないわけではありませんが、最初に穿刺をした後は何度も針を刺すことなく最長14日間の血糖値測定をすることができます。
血糖値測定器リブレの使い方
今回は最新機種であるFreeStyleリブレ2®について中心にリブレの使い方の解説をいたします。
リブレの装着方法(センサーの取り付け・外し方)
リブレ2®の装着方法としては、以下の様になっています。
1.センサーパックのフタを外し、センサーアプリケーターのキャップを回して外す。
2.センサーパックの黒線マークにセンサーアプリケーターの黒線マークを合わせる。
3.テーブルなど平らで硬い場所の上でセンサーアプリケーターを上からセンサーパックに強く止まるまで押し下げる。
4.センサーパックからアプリケーターを取り外す。
5.装着部位を消毒し、乾かす
6.アプリケーターを消毒した部位において、クリック音がするまで押し上げる。
7.アプリケーターをそっと引き離す。
8.センサーを上から押しつけて、正しく張り付いているか確認をする。
センサーの取り外し方は、以下の様になります。
1. ウエットティッシュやベビーオイルをしみ込ませた脱脂綿をセンサーの外側にこすりつける。
2. センサーを皮膚に固定している粘着剤の端からゆっくりと一気にはがす。
3. 新しいセンサーを付ける場合には、別の部位を選択する。
スマホや専用測定器での血糖値の読み取り
フリースタイルリブレ2®をスマホを用いて血糖値のデータを取り込むには、専用の「FreeStyleリブレLink」をインストールし、アカウントを作成し登録する必要があります。センサーを正しく取り付けたら、FreeStyleリブレLinkアプリを開いて「(iOSの場合)新しいセンサーをスキャン」をタップした後にセンサーに近づけてスキャンしましょう。その後センサーの起動が完了するまで待つと、グルコース測定値をスマホ画面で確認することができます。
リブレ2では、専用のアプリを用いると、1分毎に自動的に血糖値を更新して表示されます。
リブレでは1日何回まで血糖値を測定できる?
前述したように、リブレ2®では1分毎にグルコース測定値が更新して表示されます。そのため、何回まで測定ということはなく1分毎更新していくグルコース測定値をリアルタイムにスマホ画面で確認することができるのです。
旧型モデルであるリブレ®ではスマホをセンサーに近づけて何度でもグルコース濃度を測定することができ、8時間前までさかのぼってのグルコース濃度の推移を知ることができます。しかし、8時間以上スキャンがされていないとその間のグルコール濃度が分からなくなってしまいます。
血糖値測定器リブレの価格と購入方法
血糖値測定器リブレはどこで購入できる?
リブレ®は、インスリン製剤の注射を1日1回以上行っている方では、保険適応となる場合があります。詳しくは、担当医へ相談をしてみましょう。
自費で購入をされる場合は、2通りの方法が考えられます。1つ目は選定療養費に対応している医療機関で選定療養制度を利用して(糖尿病と診断されているなどの基準あり)購入することです。この場合には、医師の指導の元で入手することが可能です。このほかには、通販サイトや一部の薬局で自費購入をすることができます。
リブレで血糖値を測ると月にいくらかかる?
保険が適応された場合には、センサー2個分を1か月として処方され3割負担の方で自己負担額は約4000円程度です。しかしこのほかに診察料などの負担がかかるため、詳しい負担額に関してはご自身の通院している医療機関にお問い合わせください。
自費で購入する場合には、センサー1個(約14日分)が約8000円~9000円程度となります。選定療養制度を利用して医療機関で購入するか、通販サイトや一部の薬局で購入する場合には購入場所により価格が異なります。購入する場合には、価格をご確認ください。
リブレ1と2の価格の違い
第一世代のFreeStyleリブレ®は間欠スキャン式であり、センサーにスマホやリーダーを近づけてスキャンをする必要があります。スキャンをすると、その時から8時間さかのぼってグルコース濃度のデータを取得することができます。一方リブレ2®は1分毎リアルタイムでスマホにグルコース濃度のデータが送られ、スキャンをする必要がありません。
また、リブレ2®では低血糖と高血糖のアラート機能が追加され、設定値を超えると通知されるようになっています。
このようにリブレ2®では血糖値管理の安全性や利便性が向上しています。このため、現在はリブレ2®へ移行しており、販売元のAbbott社ではすでに販売終了となっています。
リブレの血糖値測定精度と特徴
リブレで測ると血糖値が「高く出る」ことがある?
リブレ®による血糖値の測定は、前述したように間質液のグルコース濃度から計算した血糖値となります。このため、実際の血糖値との乖離がある事があるのです。一般的には精度の指標であるMARD(平均絶対相対誤差)は、9.2% と報告されています。また、血糖値とは5~10分程度のタイムラグが出る可能性があると言われています。このため、リブレによる測定値が実際の血糖値より高く出ることもあるため注意しなければなりません。リブレの測定値が疑わしい時には、SMBGでの血糖値を図ることが推奨されています。
リブレの血糖値測定は正確?
リブレ®の血糖値測定は、実際の血糖値との誤差はあるものの十分に信頼できる指標であると言えます。今までのSMBG測定ではわからなかった、食後の高血糖や夜間や早朝の低血糖などの細かい血糖値の推移を知ることができます。
血糖スパイクの把握に役立つ?
血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急激に下降する状態のことを言います。血糖値スパイクは、インスリンの分泌量が減少したり、タイミングが遅れることで血糖値が急上昇することも原因の一つです。また、炭水化物中心の食事や早食いなども急激な上昇の原因となります。血糖値の乱高下が血管にダメージを与えて、動脈硬化を引き起こすと考えられています。この血糖値スパイクは、SMBGではなかなか検知できませんでしたが、CGMにより血糖値を連続してモニターすることが可能となり、血糖値スパイクを検知し、治療に結びつけることが可能となりました。
糖尿病患者の血糖管理にリブレを導入するとどんな変化がある?
血糖値測定を指先採血からリブレに変えて糖尿病患者の生活改善に
血糖値測定をSMBGからリブレRに変更することで、さまざまな利点がみられます。どのような改善点がみられるでしょうか?
① 痛みからの解放(毎回指先の穿刺をして痛い思いをすることがなくなります。)
② 測定回数の増加(SMBGでは一日3~4回程度の測定が限界でしたが、1分毎の測定値が得られます。)
③ 血糖変動の可視化(血糖値の変動を連続して知ることができ、より良い血糖コントロールにつながります。)
④ 低血糖リスクの軽減(低血糖や高血糖をアラート機能で知らせてくれます。また、血糖値の変化の傾向が分かることで事前に対処ができ、低血糖の頻度を減らせます。)
⑤ 生活習慣と血糖値の関連が理解できる(普段の生活習慣と血糖値の関連が分かることで事前の予想がつき、血糖値のコントロールをしやすくなる)
このような点からリブレ®を導入することで、生活が改善されます。
リブレで医師と血糖値データを共有するメリット
リブレ®で医師と血糖値データを共有することにより、患者さんの血糖値の変動を詳細に把握することができるため、患者さんの現状に沿った治療の計画を立てやすくなります。また、このリブレ®️のデータはクラウド経由で医師がアクセスすることが可能であるため、緊急時に適切な指示を出すことができたり、オンライン診療などでの活用も可能となります。
「リブレ」に関する病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「リブレ」に関係する病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
糖尿病
糖尿病とは、インスリンの作用不足による慢性の高血糖状態がみられる病気です。血糖値の高値(空腹時に126mg/dL以上、OGTT2時間値で200mg/dL以上、随時血糖で200mg/dLのいずれか)とHbA1cが6.5%以上の場合に糖尿病型と判断され、この糖尿病型が別日でも確認できれば糖尿病と診断されます。糖尿病は初期では症状がないことが多いです。しかし、血糖値が高い状態が続くと口渇や多飲、多尿、体重減少がみられることがあります。高血糖状態が持続すると、血管が傷つき、網膜症や腎症、神経障害などさまざまな合併症を引き起こすことがあります。このような合併症を引き起こさないためにも、血糖値をコントロールすることが大変重要です。
「リブレ」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「リブレ」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
血糖値測定のフリースタイルリブレは保険適用になりますか?
伊藤 陽子(医師)
血糖値測定のフリースタイルリブレ®は、一定の条件を満たした場合には保険適応となります。まず、インスリン製剤の注射を1日1回以上行っていることが必要です。その上で、リブレ®の適応があるかは担当医へ相談をしてみましょう。
リブレの血糖値の測定は、SMGBと同じくらい正確ですか?
伊藤 陽子(医師)
リブレ®の血糖値測定は、間質液のグルコース濃度から血糖値を計算して出しています。このため、実際の血糖値と近似値を示すことができます。しかし、実際の血糖値そのものではなく、5~10分のタイムラグが発生したり、急激に血糖値が上昇したり下降する時に血糖値の乖離が生じることがあります。一般的には精度の指標であるMARD(平均絶対相対誤差)は、9.2% と報告されており十分に信頼できる指標と考えられます。しかし、血糖値がずれているのではないかと考えられる場合には、SMBGを行い確認をするようにしましょう。
リブレは1日何回測定すれば良いでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
リブレ2®では、1分毎に糖濃度を測定し、スマホやリーダーの画面で確認をすることができます。そのため、何回測定というより、連続して1日中測定を続けることができます。
FreeStyleリブレで14日間血糖値を測った後の外し方を教えてください?
伊藤 陽子(医師)
まず、ウエットティッシュやベビーオイルをしみ込ませた脱脂綿をセンサーの外側にこすりつけます。その後センサーを皮膚に固定している粘着剤の端からゆっくりと一気にはがせば終了です。
まとめ 「リブレ」は血糖値を連続して知ることができる画期的な測定器!
リブレ2®では毎回スキャンすることなく、連続して血糖値を測定することができます。これにより、今までSMBGでは測定することができなかった食後の高血糖や夜間・早朝の低血糖を測定することができるようになりました。また、自分の生活習慣や行動の中でどのように血糖値が推移しているかを知ることができます。血糖値の推移を把握することで、食事の内容や食べ方、運動の仕方などを適切に行うこともできます。血糖値をしっかりと把握して、ご自身の血糖値管理に役立てるようにしましょう。
「血糖値」の異常で考えられる病気
「血糖値」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
代謝内分泌系・内科系
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
- 境界型糖尿病
- 妊娠糖尿病
- 副腎不全
- インスリノーマ
- 薬剤性低血糖
- メタボリック症候群
血糖値が異常となる疾患はさまざまです。血液検査や健康診断などで血糖値の異常を指摘された場合、代謝内分泌内科や糖尿病内科を受診して相談しましょう。
「血糖値」の異常で考えられる症状
「血糖値」から医師が考えられる症状は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 冷や汗
- 動悸
- 手の震え
- 口渇
- 多飲
- 多尿
- 体重減少
血糖値が高い状態であっても、症状が出ることは少ないです。しかし、高血糖状態が持続すると、口渇や多飲、多尿、体重減少など出ます。この時には糖尿病が疑われるため早めに糖尿病内科を受診しましょう。また、血糖値が低すぎても、冷や汗や手の震えなどの症状がおこることもあります。何度も症状が続く場合には内科を受診して相談をしてみましょう。




