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「視力検査」ではなぜ『C』が使われる?正式名称や判定基準も医師が解説!

 公開日:2025/12/02
「視力検査」ではなぜ『C』が使われる?正式名称や判定基準も医師が解説!

視力検査でなぜCマークが使われる?正式名称は?メディカルドック監修医が視力検査の判定基準や考えられる病気・対処法などを解説します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

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視力検査の「C」とは?

学校や健康診断で行われる視力検査では、アルファベットのCの形をしたマークを使って、切れ目の方向を答える形式が一般的です。このマークには正式な名称があり、視力を客観的に測定するための基準として広く利用されています。本記事では、視力検査に使われるCマークの名称や役割、AからDまでの視力判定の意味や、CやD判定が出たときの対応方法などを解説します。

正式名称はランドルト環 視力検査のCマークの役割

Cマーク(ランドルト環)は、アルファベットのCに似た輪っかで、視力検査を行う際に用います。ランドルト環は、JIS規格で大きさが定められており、例えば5mの距離で視力1.0に相当するランドルト環は直径7.5mm、輪の太さ1.5mm、切れ目の幅1.5mmです。この切れ目部分の幅が5m先でちょうど識別できるかが1.0の基準であり、切れ目の幅が小さいほど高い視力を意味します。 その役割は、単に視力の数値を測るだけでなく、視力低下の原因を探す手がかりにもなります。視力検査は主に屈折異常(近視・遠視・乱視)の有無を調べる目的で行われますが、急激な視力低下がある場合には白内障など加齢に伴う目の病気の発見にも役立ちます。

視力検査ではなぜCの記号を使うのか

視力検査にランドルト環が用いられる理由は、被検者の知識や言語によらず視力を評価できるからです。例えば、アルファベット表では文字に慣れていない人だと正確な検査が難しいですが、Cマークなら上下左右の方向感覚だけで判別でき、小さな子どもから高齢者まで公平に測定できます。そのため、視力検査ではランドルト環が広く用いられています。

視力検査の判定基準

視力検査を終えると、視力とその視力に応じたAからDまでの判定が出ることがあります。その判定がどのように判定され、それは何を意味するのか本章では解説します。

視力検査のA,B,C,Dそれぞれの判定基準

学校検診や健康診断では、視力をA、B、C、Dの4段階で判定する370方式が用いられます。これは視力1.0、0.7、0.3の3つの指標で区切る方法で、結果を以下のように評価します。 ・A判定:裸眼視力が1.0以上ある状態 ・B判定:裸眼視力が0.7~0.9の範囲 ・C判定:裸眼視力が0.3~0.6の範囲 ・D判定:裸眼視力が0.2以下の状態 判定が進むにつれて黒板の見え方が極端に悪くなるため、C判定以下では眼鏡の使用や眼科受診が強く推奨されます。特に、学校健診ではB判定以下の場合に眼科受診を勧め、近視などの状態の有無を確認していただいています。

視力検査のC判定はどれくらい見えている状態?

C判定(視力0.3~0.6)は、日常生活でかなり不自由を感じ始めます。0.3前後になると、人の顔の認識や信号機の色の判別が難しい場合もあります。教室では後ろの席どころか中ほどの席でも黒板の文字が見えにくいため、授業への影響は大きいでしょう。このように、C判定以降は、裸眼では生活に差し支えが出始める視力なので、本人が自覚していなくても眼鏡など視力矯正が必要な段階です。

健康診断・学校検診の視力検査でC判定・D判定が出たら

視力検査の結果でC判定やD判定が出たらどのように行動すればよいのでしょうか。本章では、そのような判定が出る理由とその後の行動をどうすればよいのか、解説します。

視力検査のC判定・D判定によくある理由(近視・乱視など)

視力検査でCやD判定になる主な理由は、多くの場合が近視です。近視では遠くのものにピントが合わず網膜の手前で像が結ばれるため、遠くの対象がぼやけて見え、視力が低下します。もう一つCやD判定の原因として多いのが乱視です。 乱視では角膜や水晶体の形にゆがみがあるため、光が一点で焦点を結ばず視界全体がにじんだり二重に見えたりします。軽度の乱視なら自覚症状が乏しいこともありますが、視力検査では0.7未満になることがあります。さらに、大人の場合、白内障や黄斑変性といった病気が進行して視力低下し、CやD判定となるケースもあります。 このように、視力検査の判定が悪かった背景には近視や乱視といった屈折異常がありますが、年齢や症状によっては他の目の病気の可能性も視野に入れておく必要があります。

視力検査でC・D判定を受けたら眼科で視力矯正を相談するべき?

CやD判定を受けたらできるだけ早く眼科を受診すべきです。学校健診や企業の健康診断はスクリーニングの役割ですので、判定がC以下だった場合、精密検査によって原因を特定し適切な対処をする必要があります。眼科ではまず視力検査の再確認が行われ、その後さまざまな検査が行われます。その結果、近視・乱視で視力低下していると判明すれば、眼鏡やコンタクトレンズの処方を検討します。 その際、眼科を受診する際は、一般的な眼科に行けば大丈夫です。子どもの場合、小児眼科を掲げるクリニックならより安心ですが、なければ大人と同じ眼科でも大きな問題はありません。

視力検査の体験とよくある疑問

視力検査の意味や役割について解説しました。本章ではそんな視力検査でよくある疑問などについて解説します。

視力検査でCマークが「小さい」「ぼやける」と感じる理由

視力検査中にCマークが「小さい」「ぼやけて見える」と感じる場合、目のピントが合っていない可能性があります。それは何らかの屈折異常や目の病気があることが考えられます。また、そのような異常がなくても、環境要因でCマークが見えにくく感じることがあります。例えば、検査室の照明が明るすぎたり暗すぎたりするとコントラストが低下し、視力が実際より悪く出ることがあります。また、目が疲れている状態では、一時的にピント調節機能が低下してCマークがぼやけることもあります。このように、「小さい」「ぼやける」と感じる背景には屈折異常と検査環境、目の状態などが影響します。

視力検査で片目を遮眼子や片手で隠すのはなぜ?

視力検査では必ず片目ずつ測定を行います。これは、一方の目でもう一方の目を補完してしまうため、両目同時だと正確な測定ができないからです。人間の脳は左右の目で見た像を統合し、見えにくい部分を補い合うように働きます。そのため、検査では遮眼子(じゃがんし)と呼ばれる道具や手で片目を隠し、一眼ずつ単独で視力を測るようにします。

視力検査は眼鏡・コンタクトをつけたままできる?

眼鏡やコンタクトレンズを装着したままの視力検査は可能で、むしろ必要に応じて行われます。健康診断などでは通常、裸眼視力と矯正視力の両方を測定します。これは、現在の眼鏡やコンタクトで十分に視力が出ているかを確認するためです。

スマホでセルフチェックできる視力検査は正確?

近年はスマホアプリやWebサイトで、自分で視力チェックできるツールが登場しています。しかし、スマホでの視力検査はあくまで簡易的なもので、実際の視力検査の結果とは異なることは少なくありません。本来、視力検査は5mの距離で標準照度の下で行う必要がありますが、スマホではその条件を満たすのが難しく、周囲が明るすぎたり暗すぎたりすると結果が変わってしまうこともあります。

健康診断の「視力検査」の異常で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、視力検査に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

近視

近視とは、遠くの光が網膜より手前で焦点を結んでしまう屈折異常です。主な原因は遺伝と近業作業などの環境の要因が関与します。近視の場合はメガネやコンタクトレンズをすれば視力が出ますが、そのままにしておくと進行することがあります。そのため、近年では近視の進行を抑えるため、点眼薬や特殊なメガネなどを使うことがあります。裸眼視力が低下してきたら早めに眼科受診し、適切な矯正と指導を受けるようにしましょう。

乱視

乱視とは、角膜や水晶体の形状不正により焦点が複数に分散する屈折異常です。遺伝的要因のほか、円錐角膜や白内障など他の眼疾患によって生じることもあります。乱視もメガネやコンタクトレンズで矯正できることもありますが、目の病気が原因の場合はそれらの治療が必要となります。乱視は軽度であれば本人が気づかない場合もありますが、裸眼視力が低下してきたら早めに眼科受診し、適切な矯正と指導を受けるようにしましょう。

緑内障

緑内障は、眼圧の上昇などによって視神経が障害され、視野が狭くなる病気です。初期から中期には自覚症状がほとんどなく、視野の欠けも気づきにくいとされています。進行すると視野が徐々に狭まり、末期の状態では視力も失われてしまいます。治療は点眼薬やレーザー、手術などを組み合わせて行います。視野が欠けるなどの自覚症状がある場合はもちろんですが、症状がなくても40歳以上になったら眼科で緑内障がないことを確認するようにしましょう。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、糖尿病による高血糖が原因で網膜の細い血管が傷害されることで起こる網膜の病気です。糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症の一つです。糖尿病網膜症も自覚症状が乏しく、進行した状態で受診する方もいます。糖尿病網膜症を完治させる治療方法はなく、症状に応じた治療(対症療法)を行います。そのため、早期発見と早期治療がとても大切です。見えにくさなどの自覚症状がある場合はもちろんですが、糖尿病と診断されたら眼科受診をするようにしましょう。

黄斑変性

黄斑変性とは、網膜の中心部である黄斑が加齢などにより障害される疾患の総称です。代表的なものに加齢黄斑変性(AMD)があります。黄斑はものを見る上で最も重要な部位で、ここがダメージを受けると視力の中心が見えにくくなります。主な治療は、目玉に薬剤を直接注射する、硝子体内注射が多く行われています。黄斑変性も早期発見と治療が重要ですので、見えにくさなどの自覚症状がある場合は早めに眼科受診をしてください。

白内障

白内障は主に加齢が原因となり、目の中のレンズ(水晶体)が白く濁ってしまう病気です。白内障ででは、視界がかすんだりぼやけたり、物が二重に見えたり、視力が下がったりします。点眼薬で進行を図ることもありますが、根本的な治療は白内障手術です。白内障も見えにくさやぼやけの症状がある場合は眼科受診をしてください。

高血圧性網膜症

高血圧性網膜症は、その名の通り高血圧による網膜血管の障害です。長期間血圧が高い状態が続くと網膜の動脈が硬化・狭窄し、出血や浮腫などの所見が現れます。高血圧性網膜症も自覚症状は乏しく、進行してから見えにくさやゆがみといった症状が現れます。治療は高血圧の治療のみで、眼科的な根本的治療はありません。そのため、見えにくさやゆがみなどの症状があれば眼科を受診し、必要であれば内科を受診して高血圧の治療を並行して行うこともあります。

視力検査でC判定を受けた視力は回復できる?

では、視力検査でC判定などの結果が出た際、視力は回復することができるのでしょうか。本章では、視力が下がる主な原因とその対処法について解説します。

一時的な視力低下の場合

視力が一時的に落ちてC判定になってしまう場合があります。例えば、仮性近視(調節緊張)と呼ばれる状態がそれに当たります。仮性近視は目の使いすぎでピント調節の筋肉(毛様体筋)が緊張しっぱなしになり、一時的に近視のような状態になるものです。対処法としては、20分に1回は目休めをする、画面を見る距離をとる、暗い場所で本を読まないなど、生活上の工夫を取り入れましょう。それでも改善しない場合は眼科で点眼薬を用いて、筋肉の緊張を和らげて治療することもあります。

近視・乱視の場合

残念ながら近視や乱視そのものを自然に治すことは難しいです。近視は眼球の構造変化であり、乱視は角膜などの形状の問題なので、生活習慣を変えても元の正常な形には戻りません。ただし、適切な矯正によって視力を回復させることは可能です。眼鏡やコンタクトレンズで視力1.0以上に矯正できれば、日常生活上は問題ない状態にできます。また、18歳以上であれば視力矯正手術による治療も選択肢です。ただし、これらの手術は適応条件がありますが、適切な患者であれば高い視力回復効果が得られます。

生活習慣で視力の低下を予防できる?

生活習慣の改善は視力低下の予防に一定の効果があります。まず近視予防の観点では、屋外で過ごす時間を増やすことが有効です。実際に屋外活動を推奨した地域では子どもの近視割合が減少したデータもあります。目安として1日2時間程度は屋外で遊ぶ、運動すると良いでしょう。 次に、近くを見る作業の連続を避けることも重要です。スマホや読書は30分ごとに休憩を入れ、20秒ほど遠くを眺めて眼を休ませる習慣をつけます。加えて、画面や本から目までの距離を最低30cm以上離し、姿勢を正すことも目の負担軽減につながります。

「視力検査のC」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「視力検査のC」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

視力検査のCマークは何て言うのでしょうか?

栗原 大智栗原 大智 医師

アルファベットのCの形をした視力検査用のマークはランドルト環といいます。スイスの眼科医ランドルト氏が考案したのでその名が付きました。世界中で視力検査の指標として使われており、言葉が通じなくてもこのランドルト環の切れ目の方向を答えるだけで視力を測定できます。

視力検査のCマークがぼやけるのですが、原因はなんでしょうか?

栗原 大智栗原 大智 医師

Cマークがぼやけるのは、ピントが合っていない(視力が出ていない)状態です。多くの場合、近視か乱視が原因です。近視があると遠くにピントが合わず、5m先のCマークがにじんでしまいます。その他にも、乱視や目の病気が原因でぼやけて見えることがあります。

眼科で視力検査のCの空いている方向がはっきりしないときはどう答えるべきですか?

栗原 大智栗原 大智 医師

迷ったときは無理に当てず「わかりません」「見えません」と伝えて構いません。視力検査は合否ではなく今の視力を測るのが目的です。勘で答えてしまうと実際の視力より高く見積もられてしまい、正確な矯正ができなくなる恐れがあります。

まとめ 視力検査のCマークはランドルト環。目の情報を知る大切な手がかり

視力検査でおなじみのCマークはランドルト環といい、視力を測るために国際的に使われている記号です。ランドルト環による検査では、A~Dの判定で視力の良し悪しが示されます。視力検査の結果が悪かったからといって落ち込まず、早めに眼科で原因を調べて対処することが大切です。視力低下は放置すると取り返しがつかないケースもありますから、「見えにくい」と感じたら眼科を受診するようにしましょう。

「視力」の異常で考えられる病気

「視力」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。 視力検査の結果は、目の健康状態を知る重要な手がかりです。結果が思わしくなくても適切に対処すれば視力は維持できますし、逆に問題に気づかず放置すると悪化することもあります。見え方に少しでも違和感を覚えたら、遠慮なく眼科医に相談することが大切です。

「視力」の異常で考えられる症状

「視力」から医師が考えられる症状は5個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 視力低下
  • 霧視
  • 視野欠損
  • 中心暗点
  • 歪視
一口に視力と言っても、さまざまな症状があります。上記以外にも見え方に異常があれば、できるだけ早めに眼科を受診して、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。

この記事の監修医師