「子宮頸がん検診にひっかかる確率」はどのくらい?結果の見方についても医師が解説!

子宮頸がん検診にひっかかる確率はどれくらい?Medical DOC監修医が子宮頸がん検診の結果の見方やひっかかった場合についても解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
子宮頸がん検診とは?
子宮頸がんは、性行為によってヒトパピローマウイルス(HPV)が感染することが主な原因となる女性特有のがんです。HPVの中でも特に16型・18型というタイプの感染が問題となります。20代から患者数が増加し、40代でピークを迎え、30から50代で多くみられます。つまり、他のがんと比べても、若い方に多いがんといえます。
多くの場合、ウイルスに感染しても自然に体の外に排出されます。しかし、持続的な感染が起こると、子宮の入口である子宮頸部の細胞がDNAのレベルで徐々に傷ついていきます。すると前がん病変を経て、子宮頸がんになってしまいます。早い段階で見つけることができれば、手術によって子宮を全部摘出することを避けられることもあります。しかし、初期の段階ではほとんど症状が現れません。無症状であっても定期的に検診を受け、がんを見つけることが重要です。
子宮頸がん検診の方法としては、以下の2つが推奨されています。
・細胞診単独法〈従来法・液状検体法〉
30〜64歳での浸潤がん(進行したがんのこと)にかかるリスクを減少させる確実なエビデンスがあります。65〜69歳でのエビデンスも担保できます。20代についてのエビデンスは乏しいものの、効果は否定されていません。
対策型検診・任意型検診としての実施が勧められています。検体は医師のみが取り、自己採取は認められていません。
・HPV検査単独法
浸潤がん罹患率減少効果のエビデンスがあります。
検診の間隔を、2〜3倍に延長することも可能とされています。しかし、細胞診に比べて、偽陽性率(本来は陽性=がんではないのに、がんと判定されてしまう割合)が高くなることも知られています。
対策型検診・任意型検診としての実施が勧められますが、統一された診断アルゴリズムの構築が必須とされています。
今回の記事では、子宮頸がん検診の具体的な方法や、どれくらいの年齢の方が対象なのか、推奨される頻度はどれくらいなのか、などについて解説します。
子宮頸がん検診はいつから・何歳からどれくらいの頻度で受けるべき?
検診を受けるべき年齢や、推奨される受診頻度について詳しく見ていきましょう。
・細胞診を行う場合
20歳以上の女性で、隔年に1回の受診が推奨されます。20歳を過ぎたら、症状がなくても決まったタイミングで検診を受けることが大切です。
・HPV検査単独法を行う場合
30〜60歳の方が対象です。
HPV陰性と確認された際には、5年に1回の検査で問題ありません。検査結果でHPV感染が認められ、かつ細胞診には異常がなかった場合には、翌年にもHPV検査を受けましょう。年齢上限を60歳以下としている理由としては、60〜64歳で新たにHPVに感染する確率が1.7%と低いことなどがあります 。
子宮頸がん検診は20代・30代でも受けた方がいい?
子宮頸がんは、20代から患者数が徐々に増え始め、40代でピークを迎える傾向があります。そのため、20代や30代といった若い世代でも、決して油断はできません。
特に、これらの年代は将来の妊娠や出産を希望している方も多く、子宮を温存できる早期の段階で異常を発見することがとても重要です。
検診を受けておくことで、もし異常が見つかっても治療の選択肢を広げることができます。したがって、20代・30代の方も定期的に検診を受けましょう。
産後・卒乳後からどれくらいで子宮頸がん検診を受けられる?
出産後すぐの時期には、悪露(おろ)と呼ばれる出血や分泌物が続くため、子宮頸がん検診を行っても正確な結果が出ず再検査などが必要になるケースも想定されます。
このため、出産後は悪露が完全におさまり、子宮や体調が落ち着いたタイミングでの検診受診が望ましいとされています。
また、授乳中や卒乳直後であっても、基本的に検診の延期は不要です。タイミングを見ながら早めに受診することを心がけましょう。
出産や育児で忙しい時期でも、自分の健康管理を後回しにせず、定期的な検診を習慣にすることが大切です。・産後・卒乳後からどれくらいで受診した方がいいのか?の受診
子宮頸がん検診にひっかかる確率はどれくらい?
毎年、がん検診を受けた方のその後の行動や、精密検査の結果として実際にがんであったかどうかなどが調査されています。令和4年度の結果は、令和5年度の『地域保健・健康増進事業報告の概況』にまとめられています。 この報告によると、子宮頸がん検診を受けた方のうち、要精密検査となった割合は約2.3%でした。そのうち、実際にがんが見つかった方の割合は約1.1%です。つまり、子宮頸がん検診を1万人が受けた場合、約230人が要精密検査となり、そのうち2〜3人ががんである、というイメージになります。
子宮頸がん検診の費用・保険適用の有無
子宮頸がん検診は、基本的にはがんの早期発見を目的としているので、保険適用ではありません。
個人で検診を受ける際、子宮頸がんの検診費用としては約7,000〜14,000円を想定しておくとよいでしょう。この費用は、内診やHPV検査、経腟超音波検査があるかどうかなどで変わってきます。
加入している健康保険によっては、費用を何割か負担してくれることもあります。例えば、協会けんぽの生活習慣病予防健診での子宮頸がん検診は、1,000円程度の自己負担となります。
また、自治体によって無料で受けられたり、補助が出たりする場合があります。名古屋市では、20歳以上40歳以下の方に対して、5年ごとに子宮頸がん検診を無料で提供しています。また、20歳以上の女性の方は2年に1回、自己負担金500円で検診を受けられます。他自治体でも同様の住民サービスがある場合もあるので、広報やHPでお住まいの地域のがん検診情報をチェックしてみましょう。
子宮頸がん検診の結果の見方
検診は、受けた後の行動も重要となります。しかし、結果を見てもよくわからないこともあるでしょう。そこで、ここでは特に子宮頸がんのカテゴリー分類についてなど、結果をどのように理解すればよいか解説していきます。
子宮頸がん検診の結果・判定・カテゴリーの見方
子宮頸がんに限らず、がん検診では、基本的には「精密検査不要=異常なし」か「要精密検査=がんの疑いあり」のいずれかの判定となります。
ベセスダシステムという判定方法で、子宮頸部の細胞診結果は以下のように詳細にカテゴリー分類されています。
・陰性(NILM):異常は特にみられないので、引き続き定期検診を受けることが勧められます。
以下の結果は、子宮頸がんの中でも多く見られる扁平上皮がんというタイプに関連したものです。
・はっきりしないももの、軽い異常がある細胞(ASC-US):軽度の扁平上皮内病変の疑いあり。精密検査が必要です。ハイリスクHPV検査・6、12ヶ月後の細胞診再検査などが勧められます。
以下の4つの結果がでたら、早急な精密検査が必要です。
・高度な異常(HSIL)の疑いがある細胞(ASC-H):高度の扁平上皮内病変の疑いあり。
・軽度扁平上皮内病変(LSIL):HPV感染や前癌病変の疑いあり。
・高度扁平上皮内病変(HSIL):前癌病変の疑いあり。
・扁平上皮がん(SCC):扁平上皮がんが疑われます。
一方、以下の場合は子宮頸がんの中でも特に「腺がん」というタイプに関連した結果となります。こうした結果が出た場合には、子宮頸部や子宮の内膜を調べる精密検査が必要です。
・異型腺細胞(AGC):腺異型または腺がんの疑い。
・上皮内腺がん(AIS):上皮内腺がんの疑い。
・腺がん(Adenocarcinoma):腺がん疑い。
子宮頸がん検診でひっかかった場合
「精密検査が必要」や「要再検査」と判断されたときは、症状がなくても必ず産婦人科を受診しましょう。異常が疑われた段階で正確な検査を受けることが、早期発見・早期治療につながります。
精密検査では、まずコルポスコープという拡大鏡を使って、子宮頸部を詳しく観察します。異常が疑われる部分があれば、その組織を少し切り取って調べる「組織診」が行われます。必要に応じて、HPV感染の有無もあわせて検査します。
HPV陽性の場合、流れが少し異なってきます。細胞診が正常のケースでは、1年後に再検査(追跡精検)がすすめられます。一方、細胞診が異常ありのケースでは、早めに医療機関で詳しい検査(確定精検)をうけましょう。最終的には、組織診でがんの有無が確定されます。がんという確定診断が下れば、さらに画像検査などを行い、病気の進行度を詳しく評価していきます。
「子宮頸がん検診にひっかかる確率」についてよくある質問
ここまで子宮頸がん検診にひっかかる確率について紹介しました。ここでは「子宮頸がん検診にひっかかる確率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮頸がん検診で異常が見つかる確率は高いのでしょうか?
木村 香菜 医師
子宮頸がん検診を受けた方で、異常が見つかる、つまり要精密検査になる確率は高くはありません。実際に、令和4年度に子宮頸がん検診を受けた方のうち、異常が見つかった方は約2.3%でした。そのうち、実際にがんであった方は約1.1%でした。多くの方は精密検査を受けています。しかし、約6%の方は受診していませんでした。
子宮頸がん検診で異常が指摘された際には、必ず精密検査を受けるようにしましょう。
まとめ
子宮頸がんは、早期の段階では特に症状が出ないこともあります。一方、進行した段階で発見されると、手術治療のために子宮を残すことができないといったことも起こります。特に、子宮頸がんは妊娠可能な年齢の女性にも多いがんなので、早期発見をすることの重要性も高いと考えられます。がんが見つかる時期が早ければ早いほど、治療の負担は減り、子宮を温存できる可能性も高まります。今回の記事を参考にして、子宮頸がん検診を受け、要精密検査となった際には放置せず医療機関を受診してください。
「子宮頸がん検診」の異常で考えられる病気
子宮頸がん検診での経腟エコーや内診、細胞診によって、上記のような病気がわかります。がん以外にもさまざまな病気が起こることがあるので、健康チェックの一つとしても、定期的にがん検診を受けることをおすすめします。




