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「コレステロールの薬を飲み続ける」とどうなるかご存知ですか?医師が徹底解説!

 更新日:2025/05/15
「コレステロールの薬を飲み続ける」とどうなるかご存知ですか?医師が徹底解説!

コレステロールの薬を飲み続けるとどうなる?Medical DOC監修医がコレステロールの薬の種類や・薬の服用によるメリット・デメリット・認知症を発症する可能性などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

コレステロールとは?(悪玉LDL/善玉HDL)

コレステロールは細胞膜やホルモンの原料など、体内で重要な役割を担う脂質です。
コレステロールは「リポタンパク」という運搬役に乗って、肝臓から血液を通じて全身に届けられます。
コレステロールに「HDL(善玉コレステロール)」と、「LDL(悪玉、コレステロール)」の2種類があります。ここでは、こうしたコレステロールについて解説します。

善玉コレステロール(HDLコレステロール)

HDLは全身の細胞から不要になったコレステロールを集めて回り、肝臓に戻すはたらきがあります。
HDLは血管内の余分なコレステロールを取り除くため、「善玉コレステロール」と呼ばれます。HDLが不足すると、動脈硬化のリスクが高まります。

悪玉コレステロール(LDLコレステロール)

LDLはリポ蛋白に乗って肝臓から全身の組織や細胞へ運ばれます。細胞膜やホルモンの材料になり、人体を支える材料になります。大事な役目ですが、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化を引き起こします。このはたらきが嫌われ、悪玉コレステロールと呼ばれることがあります。

コレステロールの薬の種類

LDL(悪玉コレステロール)を抑える薬は種類が多く、患者さん一人ひとりの体質、生活習慣、重症度などに応じて選定します。
コレステロールは肝臓で生成され、血液を通して全身に運ばれます。細胞はLDL受容体を通して取り入れ、細胞膜やホルモンの材料として使います。余分なコレステロールは小腸から吸収されて肝臓に戻り、胆汁に変化させてから排出されます。
コレステロール薬はこのサイクルのどれかに作用して、LDLの量を減らします。コレステロールの薬の中には、HDLを増やすはたらきがあるものもあります。

スタチン系

日本の研究で生まれた薬で、HMG-CoA還元酵素という肝臓で分泌される物質を抑えます。その結果、肝臓内で作られるコレステロールが少なくなります。LDLを下げる作用が強く、LDLは20〜50%、中性脂肪も10〜20%下げるはたらきがあります。
効果がとても高く副作用が少ないため、高脂血症の治療はスタチン系の薬から始まることが多いです。

エゼチミブ

小腸からコレステロールを吸収するのを阻害する作用があります(小腸コレステロールトランスポーター阻害薬)。胆汁として消化に利用されたコレステロールは小腸で回収され、ふたたび肝臓に送られます。小腸から回収されなかった胆汁は、そのまま大腸を通して排出されます。作用する場所が異なるスタチン系の薬と組み合わせて、より高い効果を狙うために処方します。

レジン

陰イオン交換樹脂剤という種類で、肝臓にあるコレステロールを「胆汁(胆汁酸)」に変える作用があります。胆汁は食物に含まれる脂肪を消化するために欠かせない酵素で、コレステロールから作られます。胆汁酸に替えて体外へ排出する、LDL受容体を増やして細胞に悪玉コレステロールを取り込みやすくする、の2つのはたらきがあります。HDL上昇作用もあります。

プロブコール

LDLを胆汁に替えやすくし、コレステロール合成阻害作用とコレステロール吸収抑制作用を促す薬です。特に胆汁酸中へコレステロール排泄を促します。LDLの酸化を防ぎ、血管のプラークを作りにくくする作用もあります。需要の減少で、近年は大手製薬会社で製造中止が続いています。

アリロクマブ

スタチン系の薬が使えないスタチン不耐の患者さんや、スタチンでも改善しない患者さん、より強い作用が必要な家族性高コレステロール血症や心血管疾患リスクが高い方の治療に使われます。PCSK9阻害薬という薬で、皮下注射で注入するコレステロール治療薬です。
PCSK9というタンパク質は、LDL受容体を分解し、体内のLDLコレステロールを減らしにくくする働きがあります。アリロクマブはこのPCSK9の働きを抑え、LDL受容体を保護することで、より多くのLDLを肝臓に取り込めるようにします。

ニセリトロール

LDLを抑える作用もありますが、主に中性脂肪(トリグリセライド)を抑える作用がある薬です。肝臓内での中性脂肪から脂肪酸に変化するはたらきを抑え、肝臓に貯める脂肪酸を少なくします。

コレステロールの薬はいつから処方される?

脂質異常症の治療はまず食事療法、運動療法から始まります。治療薬を使わなくても、生活習慣改善をするだけで改善するケースもあります。しかし、こうした生活習慣の改善を行なってもLDLコレステロールが180 mg/dL以上の場合は、薬の処方を検討します。高齢者、高血圧、喫煙習慣など中等度リスク以上の患者さんは、LDLコレステロールが管理目標値を超える場合に処方を検討します。
冠動脈疾患の方は極めてハイリスクなため、LDLが100未満まで減らすために投薬を開始します。家族性高コレステロール血症の方も生活習慣だけでは改善できないので、ただちに治療を開始します。
脂質異常症は生活習慣や老化とかかわりが深いため、長い期間服用します。患者さんのリスク因子や治療状況によりますが、生涯継続することも珍しくありません。

コレステロールの薬を飲み続けるメリット

コレステロールの薬はLDLを減らし、HDLを増やす効果があります。血管のプラークをこれ以上作らないため、将来起こる可能性が高い血管の詰まりを予防し、健康寿命を伸ばす可能性が上がります。
LDLコレステロールが高くても、自覚症状がないことがほとんどです。その後も気づかないうちに動脈硬化が進行し、心筋梗塞などを引き起こす可能性があります。将来的なリスクを減らすためにもLDLコレステロール値を適正範囲に保つことが重要です。

心筋梗塞や脳卒中の予防

コレステロール薬は動脈硬化リスクを下げるため、心筋梗塞や脳卒中の予防になります。
特に多すぎる悪玉コレステロールは動脈硬化を進行させる原因で、早期治療で動脈硬化を防ぎます。
突然死や重い後遺症が残るリスクが高い疾患を防げることは、大きなメリットと言えるでしょう。

動脈硬化の進行を抑える

コレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールが溜まり、血管が硬く狭くなる「動脈硬化」が進行します。コレステロールを下げる薬を服用すると動脈硬化の進行を抑え、血管の健康を保つことができます。

生活習慣の改善機会

悪玉コレステロール値を下げるためには、服薬だけではなく食事療法、運動療法を併せて行います。
コレステロール薬を飲み続けるためには通院が欠かせません。通院で定期的にコレステロールの状況を確認できるため、生活習慣の改善を促されます。
服薬と生活習慣を改善させると、多くの場合は徐々にコレステロール値は下がります。それが嬉しくて運動や食事管理のモチベーションが上がり、さらにコレステロール値の改善に繋がります。

コレステロールの薬を飲み続けるデメリット

コレステロールの薬にも副作用もあります。世界中に普及し、安全に使えるスタチン系の薬にも筋肉痛などの副作用が出ることがあります。
定期的に血液検査などで検査して、副作用が出たら薬を替える、量を変えるなど調整が欠かせません。

筋障害

スタチン系の薬の代表的な副作用で、筋肉痛や筋力低下などの筋障害が生じることがあります。特に重篤な場合「横紋筋融解症」という深刻な筋障害が発生することがあります。
服用後4ヶ月以内で発症しやすく、左右対称に大腿部などの大きな筋肉に発生することが多い傾向があります。
筋肉痛の発症確率は約5%ですが、多くは軽症であり、運動や日常生活に支障をきたすケースは限られています。筋障害(0.1〜0.2%)、横紋筋融解症(0.01%)はまれです。スタチン投与後の数か月は筋肉の症状チェック、尿検査、血液検査を行ってこうした副作用の出現に気を配ります。
筋症状を発症したらスタチンの投与を中止し、症状の改善を確認します。その後、低用量から再開するか、他の薬の変更を検討します。低用量のスタチン+エゼチミブなどの他の脂質低下薬を併用する方法もあります。

肝機能・腎機能の悪化リスク

肝酵素値が上昇し、肝機能障害が生じることがあります。定期的に血液検査で肝機能検査を行うことが必要です。
腎機能が低下している患者さんは、スタチンなど脂質異常症治療薬の使用は慎重に行う必要があります。フィブラート系薬は、腎不全の患者さんには使えません。

糖尿病の発症リスク

スタチンの使用により血糖値の上昇や糖尿病の発症リスクがわずかに増加する可能性があります。特に高用量スタチンは中用量と比べ、糖尿病発症リスクが高いことが報告されています。インスリンが効きにくくなる、膵臓のβ細胞に影響を与えインスリン分泌能力を低下させるというメカニズムが考えられています。しかし、その原因はまだ全容解明されていません。定期的に血液検査で血糖値を測り、糖尿病の兆候が見られたら薬の変更や容量変更などを行っていきます。

コレステロールの薬を飲み続けると認知症を発症しやすくなるの?

結論として、現時点ではコレステロールを飲み続けても、認知症の発症リスクが高まると言う明確な根拠はありません。文字の動脈硬化をすることで、脳の血流を維持し、認知症のリスクを下げる可能性も示唆されています。
米国FDAはスタチン使用に関連した一時的な認知機能低下の報告を受けていますが、服薬中止後に回復する例がほとんどであり、因果関係は明確ではありません。なお、この報告事例では、服薬を中止した後に認知機能は改善しました。
多くの臨床研究をまとめた総論(システマティックレビュー)では、「スタチン使用による認知症の増加は証明されていない」とされています。中にはスタチンが認知症の新規発症に対する予防効果が示されたという報告もあります。
今のところ、コレステロールの薬を飲むことによる認知症発症のリスクよりも、施設異常を適切に治療することで、脳血管障害のリスクを下げることの方がベネフィットが大きいと考えられます。

「コレステロールの薬を飲み続けると」についてよくある質問

ここまでコレステロールの薬を飲み続けるとどうなるかについて紹介しました。ここでは「コレステロールの薬を飲み続けると」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

コレステロールの薬を途中で止めるとどうなりますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

LDLコレステロールが再び増え、動脈硬化が進行する可能性があります。心筋梗塞や脳卒中のリスクを避けるため、自己判断での中止は避け、医師に相談してください。

編集部まとめ

コレステロールの薬はHDLを下げて、血管の健康を守り、心筋梗塞や脳卒中の予防に役立ちます。可能性もあるため、定期的な検査が重要です。服用について不安がある場合は医師に相談しましょう。

「コレステロール」の異常で考えられる病気

「コレステロール」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器内科の病気

  • 動脈硬化性疾患
  • 冠動脈疾患
  • 家族性高コレステロール血症(FH)

消化器内科の病気

内分泌内科の病気

コレステロール異常を放置すると動脈硬化が悪化し、やがて冠動脈疾患などを引き起こします。高トリグリセライド血症は急性膵炎のリスクを高め、クッシング症候群はコレステロールを増やす原因になります。

この記事の監修医師