「ピロリ菌尿素呼気検査」当日に歯磨きしても大丈夫?検査の流れを医師が徹底解説!
公開日:2025/08/05

ピロリ菌尿素呼気検査当日に歯磨きをしても大丈夫?Medical DOC監修医がピロリ菌尿素呼気検査当日の歯磨き・注意点や流れ・検査でわかる病気などを解説します。

監修医師:
中村 雅将(医師)
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弘前大学医学部卒業。弘前大学大学院医学研究科卒業。腎臓専門医・透析専門医・内科専門医として弘前大学、徳島大学、社会医療法人川島会川島病院、医療法人清永会矢吹病院などで臨床経験を積み、現在は医療法人さくら さくら記念病院に副院長として勤務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本腎臓学会専門医・指導医、日本透析医学会専門医・指導医の資格を有する。
目次 -INDEX-
ピロリ菌とは?
一般的にピロリ菌と呼ばれている細菌ですが、正式な名称はヘリコバクター・ピロリ( Helicobacter pylori)です。胃の粘膜に生息し、胃酸の厳しい環境でも生存できる特異な能力を持っています。らせん状の形をしており、鞭毛を使って胃壁に侵入します。 食べ物や水、唾液を介した接触など主に口を介して感染します。衛生環境が悪い地域や発展途上国では感染率が高いとされます。多くの人が幼少期に感染しますが、大人でも感染する可能性があります。 ピロリ菌感染だけでは自覚症状がみられることは少ないですが、胃の痛みや不快感、胸やけ、嘔気や嘔吐、食欲不振、腹部膨満感といった症状が現れることがあります。ピロリ菌は慢性胃炎や、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がん、MALTリンパ腫、機能性ディスペプシアといった病気を引き起こすことがありますが、抗生物質(2種類)と胃酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)の併用による除菌療法を行うと約70~90%の確率で完全に除菌ができるといわれています。ピロリ菌は適切に治療すれば多くの健康リスクを軽減できますが、症状やリスクがある場合は医師に相談することをお勧めします。ピロリ菌尿素呼気検査とは?
ピロリ菌に感染しているかを調べる検査としては、尿素呼気検査や、血液検査(ピロリ菌に対する抗体の有無を調べる)、便検査(ピロリ菌の抗原を検出)、内視鏡検査(胃の組織を採取して調べる)といった方法がありますが尿素呼気検査は、主にピロリ菌感染の有無を調べるための検査です。具体的には、以下のような仕組みで行われます。 標識された尿素を摂取安定同位体(たとえば^13C)や放射性同位体(^14Cなど)で標識された尿素を含む検査薬を服用します。
ピロリ菌のもつウレアーゼが尿素を分解
胃の中にピロリ菌が存在すると、菌がもつウレアーゼという酵素の働きにより、服用した標識尿素がアンモニアと二酸化炭素(CO₂)に分解されます。
標識二酸化炭素を呼気として排出
分解されてできた標識付きの二酸化炭素が血液を介して肺へ運ばれ、呼気として体外に排出されます。
呼気中の同位体濃度を測定
一定時間後に呼気を採取し、同位体濃度を測定することでピロリ菌の有無を調べます。尿素が分解されていれば、ピロリ菌に感染している可能性が高いと判断されます。
このように、尿毛検査素呼気検査は胃カメラによる内視鏡検査などに比べて侵襲が少なく、精度が高いとされているため、ピロリ菌感染の有無のスクリーニング検査や、除菌後の陰性化確認などによく用いられます。
ピロリ菌尿素呼気検査はどこでできるの?
尿素呼気検査は、ピロリ菌感染の検査として総合病院の消化器科や内科・消化器内科を標榜するクリニックで実施されます。検査には専用の試薬や検査機器が必要なため、あらかじめ日時を調整して行うことが一般的です。一般的には医師の診察をうけ、必要に応じて尿素呼気検査の予約や検査日の調整を行います。まずは近隣の内科・消化器内科や専門クリニックに問い合わせ、尿素呼気試験を行っているか確認すると良いでしょう。ピロリ菌尿素呼気検査当日に歯磨きをしても大丈夫?
ピロリ菌尿素呼気試験では、検査当日は朝食抜きで、飲食はできません。胃内の粘膜に食べ物や粘液が付着すると正確な判定ができないためです。検査当日に歯磨きやうがいを行っても検査に影響はありません。ピロリ菌尿素呼気検査の注意点と流れ
ピロリ菌尿素呼気試験における、注意点や検査の流れについて以下に説明します。注意点を守ることで正確な診断結果が得られます。詳細については主治医や検査機関に確認することをお勧めいたします。ピロリ菌尿素呼気検査の前日の注意点
前日の夕食は通常通りで構いませんが、消化の良いものを選び、脂っこいものや大量の食事は控えるのが望ましいです。検査当日の空腹状態を維持するため、前日の夜9時以降は何も食べないでください。一部の薬(抗生物質、プロトンポンプ阻害薬(PPI)など)は検査結果に影響する可能性があるため、検査の2週間前から中止するよう指示されることがあります。医師の指示に従い、服用中の薬の中止や継続を確認してください。検査の精度を保つため、検査前日はアルコールを摂取しないようにしてください。ピロリ菌尿素呼気検査の当日の流れ
ピロリ菌尿素呼気検査当日の流れを解説します。検査を受ける医療機関によって手続き等に若干の違いがありますので、詳細については検査を受ける医療機関で確認をしましょう。 ≪受付≫受付を行い、問診票など必要な書類を提出します。
≪準備≫
空腹状態を確認されます。通常、6〜8時間以上絶食が必要です(水は少量飲むことができます)。服用中の薬や健康状態について再確認が行われる場合があります。
≪検査の開始≫
・基準呼気の採取
検査の最初に、空の試験管や袋に息を吹き込んで基準となる呼気を採取します。
・尿素を含む薬剤の服用
尿素に炭素同位体(C13またはC14)が結合した薬剤を水で服用します。
・一定時間の待機
薬剤が体内で分解されるのを待つため、15〜30分程度待機します。
・検査後の呼気の採取
再び息を袋に吹き込んで検査終了です。
ピロリ菌尿素呼気検査の当日の注意点
検査当日は何も食べず、空腹状態を保つようにします。水分摂取は少量の水のみ可です。コーヒーやジュースは飲んではいけません。喫煙も検査結果に影響する可能性があるので、当日は控えましょう。ガムやキャンディーなど当分や香料が含まれるものも摂取しないようにしましょう。検査後は通常の飲食が可能です。検査結果は後日説明される場合が多いため、医師からの連絡を待ちましょう。ピロリ菌尿素呼気検査でわかる病気・疾患は?
ここではMedical DOC監修医がピロリ菌尿素呼気検査でわかる病気・疾患について解説します。ピロリ菌尿素呼気検査が陽性となった場合、以下のような病気が考えられます。慢性胃炎病気・疾患
慢性胃炎は、胃の粘膜に長期間にわたって慢性的な炎症が生じる状態を指します。原因としては、ピロリ菌感染が最も代表的ですが、その他にも自己免疫異常、ストレス、生活習慣など様々な要因が関係します。 香辛料など胃粘膜を刺激しやすいものを控え規則正しい食生活を心掛けましょう。喫煙や過度の飲酒は胃粘膜に負担をかけるため、控えることが推奨されます。ストレスの軽減は自律神経のバランスが整い、胃の不調を軽減する助けとなります。 治療として、胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーを使用するほか、胃の粘膜を保護する薬剤が処方される場合があります。症状の緩和、炎症の悪化防止に有効です。検査でピロリ菌感染が確認された場合には除菌治療が行われます。一般的には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と2種類の抗生剤を組み合わせて1週間程度服用します。 食欲不振、吐き気、体重減少がみられたり、胃痛や不快感が一週間以上続いたり断続的に繰り返す場合は、一度医療機関を受診することをお勧めします。また、家族がピロリ菌陽性と判明している場合や、過去に胃・十二指腸潰瘍や胃がんの治療歴がある場合、検査を受けることで適切な治療につながります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍病気・疾患
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃酸やピロリ菌などの影響で胃や十二指腸の粘膜が傷つき、深い傷(潰瘍)を形成する病気です。主な原因としては、ヘリコバクター・ピロリ感染、胃酸分泌の過剰、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の長期使用、さらに喫煙や飲酒、ストレスなどの生活習慣が挙げられます。潰瘍が進行すると、上腹部の痛みや不快感、食欲不振、吐き気などの症状が続くほか、出血が起これば黒色便や吐血といった深刻な状態に陥ることもあります。 治療の基本は、まずピロリ菌が検出された場合の除菌療法です。抗生物質とプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用により、潰瘍の再発リスクが大幅に低減します。また、PPIやH2ブロッカーを使って胃酸の分泌を抑制し、粘膜保護薬で潰瘍を覆うことで修復を促します。NSAIDsを常用している場合は、医師に相談して代替薬の検討や胃保護剤の追加を行うのも重要です。 病院を受診すべき目安としては、上腹部の痛みが長引く、食欲低下や体重減少が見られる、黒色便や吐血といった出血が疑われる症状がある場合などが挙げられます。これらの症状が放置されると、穿孔(粘膜に穴が開く)や大量出血など命に関わる合併症に至る恐れがありますので、早めに内科や消化器内科での検査・治療を受けることが大切です。胃がん病気・疾患
胃がんは、胃の粘膜細胞ががん化して増殖することで生じる悪性腫瘍を指します。日本などのアジア諸国に多いがんの一つで、初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れやすい特徴があります。主な原因としてはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染による慢性胃炎が深く関わるほか、塩分の高い食事や喫煙・飲酒といった生活習慣もリスクを高めます。加齢や遺伝的要素によって発症リスクが増す場合もあるため、幅広い年代で注意が必要です。 治療法は、がんの進行度や患者の健康状態によって異なります。早期胃がんの場合は内視鏡的切除が行われることが多く、粘膜を部分的に切除することで治癒が期待できます。進行した場合は、胃の一部または全体を取り除く手術のほか、抗がん剤や放射線治療、最近では免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬といった新しい治療も選択肢となります。 病院を受診すべき目安としては、胃痛や胸やけ、体重減少、食欲不振、吐き気・嘔吐などの症状が長く続く場合が挙げられます。さらに、黒色便や吐血を伴う場合は胃内出血の可能性が高いため、早急な診察が必要です。ピロリ菌感染が確認されている方や、慢性胃炎、胃潰瘍の既往がある方、家族に胃がんの患者がいる方などは定期的な検診を受けることで早期発見に繋がります。疑わしい症状があれば自己判断せず、速やかに専門医を受診しましょう。MALTリンパ腫
MALTリンパ腫(マルトリンパしゅ)とは、粘膜関連リンパ組織(MALT:Mucosa-Associated Lymphoid Tissue)から発生する悪性リンパ腫の一種で、胃に最も多く認められます。大きな特徴として、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染による慢性炎症が深く関わっており、長期にわたり胃粘膜が刺激を受けることでリンパ球が異常増殖し、リンパ腫へと進展すると考えられています。初期段階では症状が乏しいことが多いものの、進行すると胃の不快感や痛み、食欲不振などが現れる場合があります。 治療はまず、ピロリ菌感染が確認された場合にピロリ菌除菌療法を行い、これだけで寛解に至る症例も少なくありません。除菌後もリンパ腫が残る場合やピロリ陰性例では、放射線治療や化学療法、免疫療法などを組み合わせて治療を進めます。病院へ行くべき目安としては、胃痛や胸やけ、原因不明の体重減少、吐血や黒色便などが挙げられます。また、慢性的な胃の不調やピロリ菌陽性と診断されたことがある方、あるいは胃カメラ検査で異常が認められた方は、早めの受診と経過観察が重要です。症状が軽くても自己判断で放置せず、定期的な検査や専門医の診察を受けることで早期発見・治療につなげましょう。機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia)とは、胃や上腹部の不快感や痛み、膨満感などの症状が持続・繰り返し起こるにもかかわらず、内視鏡検査などで明らかな異常が見つからない状態を指します。原因としては、生活習慣の乱れやストレス、ピロリ菌感染、胃酸分泌の過剰などが考えられますが、いずれにしても胃の働きや自律神経のバランスが乱れることで症状が起こりやすいとされています。 治療法としては、症状を和らげるために胃酸分泌抑制薬や胃腸機能調整薬、抗不安薬などを使用する場合があります。加えて、食生活や睡眠習慣の改善、適度な運動、ストレスケアなどの日常生活の見直しも重要です。これらを併用しながら、医師と相談して最適な治療を見つけることで、症状の軽減や再発の予防が期待できます。 病院へ行くべき目安としては、胃もたれや膨満感、胸やけなどの不快症状が長期に続く場合、体重減少や食欲不振が目立つ場合、吐き気・嘔吐が繰り返し起こる場合などが挙げられます。特にこうした症状が慢性的に続き、日常生活に支障をきたしている場合には、早めに消化器内科などを受診し、内視鏡検査を含む精密検査で機能性ディスペプシアかどうかを判別することが大切です。自己判断で放置せず、適切な検査と治療を受けることで症状のコントロールにつなげましょう。「ピロリ菌尿素呼気検査当日の歯磨き」についてよくある質問
ここまでピロリ菌尿素呼気検査当日の歯磨きなどを紹介しました。ここでは「ピロリ菌尿素呼気検査当日の歯磨き」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ピロリ菌尿素呼気検査当日の水分補給は問題ないでしょうか?
中村 雅将 医師
検査当日の水分補給は水を少量摂取する程度なら検査結果に影響はないでしょう。ただしコーヒーやジュースは検査結果に影響する可能性がありますから避けましょう。スポーツドリンクも同じ理由から避けるようにしましょう。
まとめ あなたの胃の不調、ピロリ菌尿素呼気検査で原因がわかるかもしれません
ピロリ菌尿素呼気検査を行う当日の検査前には飲食を行わない必要がありますが、歯磨きやうがいを行うことは検査に影響がありません。 ピロリ菌検査は胃がんをはじめ胃の不調を調べる検査として有用です。ピロリ菌は適切に治療すれば多くの健康リスクを軽減できるため、胃の不調を示唆する症状がある場合や、病気の発病予防として検査を受けたい場合などには医師に相談して検査を受けるようにしましょう。「ピロリ菌尿素呼気検査」の異常で考えられる病気
「ピロリ菌尿素呼気検査」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。消化器系の病気
- 慢性胃炎
- 胃・十二指腸潰瘍
- 胃がん
- MALTリンパ腫
- 機能性ディスペプシア


