「麻疹(はしか)の抗体検査」とは?抗体がつきにくい人についても解説!【医師監修】
更新日:2025/07/16

麻疹の抗体検査とは、麻疹ウイルスに対するIgG抗体やIgM抗体の量を調べる検査です。IgG抗体検査は麻疹に対する免疫力があるかどうかを調べることができます。麻疹ウイルスに感染したことがあるか、ワクチンを接種したことがあるのかを調べるために用いられます。IgM抗体検査は、現在まさに麻疹に感染しているかどうかを診断するために有用です。

監修医師:
木村 香菜(医師)
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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
麻疹(はしか)の抗体検査とは?
麻疹の抗体検査とは、麻疹ウイルスに対するIgG抗体やIgM抗体の量を調べる検査です。IgG抗体検査は麻疹に対する免疫力があるかどうかを調べることができます。麻疹ウイルスに感染したことがあるか、ワクチンを接種したことがあるのかを調べるために用いられます。IgM抗体検査は、現在まさに麻疹に感染しているかどうかを診断するために有用です。麻疹(はしか)の抗体検査の基準値
麻疹の抗体には、IgG抗体とIgM抗体があります。なお、抗体価(こうたいか)とは、体内にどれくらいの量の抗体があるかを数値で示したものです。 抗体は、ウイルスや細菌などの異物に対抗するために体が作る防御物質で、抗体価が高いほど、その病気に対する免疫が強いことを意味します。抗体価は血液検査によって測定され、特定の病気に対する免疫があるかどうかを判断するのに使われます。 IgG抗体のEIA法(酵素抗体法)での抗体価は、4.0以上で陽性と判定されます。予防接種の記録がない場合には、抗体価2.0未満の場合にはあと2回の予防接種が必要です。2.0-15.9の場合にはあと1回予防接種が必要、16.0以上では今すぐの予防接種は不要です。 感染初期の診断に用いられるIgM抗体は、抗体価1.21 以上で陽性と判定されます。 ここでは、麻疹(はしか)の抗体検査はどこでできるのか、特にIgG抗体とIgM抗体の場合に分け、費用や保険適用の有無について解説します。麻疹(はしか)の抗体検査はどこでできるの?
麻疹の抗体検査のうち、麻疹に対する免疫がついているかどうか、あるいは予防接種が必要かどうかについて調べるためにはIgG抗体を調べます。抗体検査や予防接種については、内科や小児科、産婦人科などで実施しています。かかりつけ医がいる場合には、まずはかかりつけ医に相談するようにしましょう。 また、発熱や発疹、カタル症状(発症初期の発熱や風邪症状、頬の粘膜のコプリック斑と呼ばれる発疹など)がある際には、麻疹を疑います。この場合、内科や感染症内科などでも抗体検査を行う場合があります。この際には、血清IgM抗体、あるいは感染初期と回復期のペア血清検査として抗体価を測ります。なお、ペア血清検査とは、異なる時期に2回の血液検査を行い、抗体の増加を確認することです。麻疹(はしか)の抗体検査の費用・保険適用の有無
IgG抗体の検査を受ける際には、基本的には保険適用外で、自費診療となります。医療機関によっても異なりますが、おおよそ6,000〜7,000円ほどになるでしょう。詳しくは、検査を受けようとする医療機関に問い合わせてみましょう。 また、麻疹を診断するための血清IgM抗体検査や、ペア血清による抗体検査は保険適用となります。その際には、加入している医療保険によって自己負担額が変わります。麻疹(はしか)の抗体検査前日や当日の注意点
ここでは、麻疹に感染したことがあるかどうか調べるための抗体検査について説明します。 通常、抗体検査は血液検査のため、食事制限はありません。ただし、医師の指示がある場合は従いましょう。水分を適度に摂ることで、血液が採取しやすくなります。もしも体調が優れない場合は、検査の正確性に影響する可能性があるため、無理せず医師に相談しましょう。これらを守り、当日に備えてください。麻疹(はしか)の抗体検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは麻疹(はしか)の抗体検査について基本的なことを紹介しました。 再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。 以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。麻疹(はしか)の抗体検査の結果や数値の見方・分類と主な所見
1.抗体陽性(IgG陽性) これは、過去に麻疹に感染したか、ワクチンを接種して免疫を獲得したことを示します。陽性の結果であれば、追加のワクチン接種や特別な対策は必要ありません。 2.抗体陰性(IgG陰性) 抗体がない、または不十分な場合、麻疹に対する免疫がないことを意味します。この場合、感染リスクが高いため、ワクチンの接種が推奨されます。 3.不明確な結果 抗体数値が境界線上にある場合、再検査が必要です。特に免疫抑制状態にある人では、正確な結果が得られにくいため、医師と相談の上で追加検査を受けることが勧められます。 このように、抗体の有無や数値に基づいて免疫状態を判断し、必要に応じて適切な対策を講じることが大切です。麻疹(はしか)の抗体検査の結果で精密検査が必要な基準と内容
特に、医療関係者では、麻疹ウイルスにさらされる機会が多く、発症すると周囲への影響が大きいです。そのため、抗体検査の結果に応じてワクチン接種が必要となります。 まず、抗体検査にはEIA-IgG法やPA法、NT(中和抗体)法などがあります。 下記の表に、抗体価と、それに応じた対応を記載しています。| 検査方法 | あと2回予防接種が必要 | あと1回予防接種が必要 | 今すぐの予防接種は不要 |
|---|---|---|---|
| 抗体価 | (-) | (±)〜(+) | (+) |
| EIA法-IgG | 2.0未満 | 2.0~15.9 | 16.0以上 |
| PA法 | 16倍未満 | 16倍、32倍、64倍、128倍 | 256倍以上 |
| NT法 | 4倍未満 | 4倍 | 8倍以上 |
麻疹(はしか)を発症する主な原因
麻疹は非常に感染力の強いウイルスで、麻疹は以下のような感染経路で人から人に感染が広がります。空気感染
麻疹ウイルスは空気感染により広がります。感染者が咳やくしゃみをすることで、ウイルスが空気中に放出され、空気中で長時間浮遊します。感染者と同じ空間にいるだけで、ウイルスを吸い込み感染することがあるため、特に病院や公共の場ではリスクが高まります。 感染が疑われる場合は、内科や感染症科を受診します。感染を広げないよう、事前に病院に電話して指示を仰ぎ、マスクを着用することが重要です。麻疹はとても感染力が強く、免疫力の低い人や妊婦にとっては大きなリスクとなるため、早急な診断と隔離が必要です。飛沫感染
麻疹ウイルスは、感染者の咳やくしゃみに含まれる飛沫を介して感染します。飛沫は1〜2メートルほどの距離で周囲に飛び散り、その範囲内にいる人が吸い込むことで感染が成立します。特に人混みや狭い空間では感染リスクが高くなります。飛沫感染の疑いがある場合、内科や小児科を受診します。受診時には、感染拡大を防ぐために他の患者との接触を避ける工夫(別室での待機やマスク着用など)が求められます。麻疹の症状が出たら早めに診察を受け、飛沫による二次感染を防ぐ対策が必要です。接触感染
麻疹ウイルスは、感染者の皮膚や粘膜に触れた物(ドアノブやタオルなど)を介して感染することがあります。特に感染者が咳やくしゃみをした手で触れた物に直接触れると、手を介してウイルスが鼻や口に移り感染する可能性があります。接触感染の疑いがある場合も、内科や感染症科を受診するのが望ましいです。感染予防のためには、こまめに手を洗い、アルコール消毒をすることが重要です。また、病院受診時もできるだけ他の患者との接触を避け、院内での感染拡大防止に努めましょう。麻疹(はしか)の抗体がつきにくい人の特徴
麻疹のワクチンは1回打つと95%程度の方には抗体がつきます。しかし、中には抗体がつきにくい、あるいはワクチンを打ったにも関わらず抗体価が下がってしまう人がいます。母体からの抗体がある
乳児は、母親からもらった抗体による一時的な免疫を持っています。そのため、ワクチン接種のタイミングが早すぎると麻疹ワクチンの効果が発揮されない可能性があります。免疫不全がある
免疫不全疾患や免疫抑制療法によっても、麻疹の抗体がつきにくくなることがあります。免疫システムがうまく働いていない方は、ワクチンに対して十分な免疫反応を起こすことができない可能性があるからです。ワクチンを打ってから年数が経過している
幼児期、学童期などにワクチンを打っていても、年数が経過している方は免疫力が低下している場合があります。近年では、子供が成人するまでに大きな流行がなく、大半の方は麻疹患者に接触することなく成長します。すると、麻疹の抗体価が低下してしまうことが報告されています。麻疹(はしか)に感染しないための予防法
麻疹の予防法を解説します。ワクチン接種
麻疹は、接触感染、飛沫感染、空気感染のうちのどの感染経路でも感染します。そのため、マスクでは予防が難しいです。 麻疹のワクチンを接種しておくことで、麻疹に対する免疫を得ておくことが重要な予防法となります。麻疹の疑いがある人や麻疹患者を適切に隔離する
麻疹の疑いがある、あるいは麻疹に感染していることがわかっている方は、周囲の方と接触しないようにする必要があります。特に医療機関では、専用の部屋に隔離することが求められます。環境感染対策を実施する
清掃や消毒は、麻疹ウイルスのみならず他のウイルス性疾患の予防対策になります。特に、ドアノブなど大勢の方の手が触れる場所は、こまめに消毒するようにしましょう。「麻疹(はしか)の抗体検査」についてよくある質問
ここまで麻疹(はしか)の抗体検査について紹介しました。ここでは「麻疹(はしか)の抗体検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
麻疹(はしか)の抗体検査の数値の見方について教えてください。
木村 香菜 医師
麻疹(はしか)の抗体検査では、IgG抗体の有無や数値を確認します。検査の方法にはいろいろなものがありますが、陽性であれば免疫があり、陰性や低ければ免疫がついていないという理解でよろしいかと思います。免疫がついていない場合には、ワクチンの接種もしくは再接種が推奨されます。
まとめ 抗体検査を受けて、必要な場合は麻疹ワクチンを接種しましょう
今回の記事では、麻疹の抗体検査について解説しました。麻疹はとても感染力が強いため、あらかじめ免疫を持っておくことが大切です。そのための第一の方法は、ワクチンを打つことです。挙児希望がある方やそのパートナーの方は、特に麻疹の抗体があるかどうかを調べておくことをおすすめします。また、病院に勤める医療従事者の場合には、職場の指示に従い、抗体検査を受けるようにしましょう。十分な抗体がついていない場合、必要であればワクチンを接種しましょう。「麻疹(はしか)」で考えられる病気と特徴
呼吸器内科系の病気
- ウイルス性肺炎
- 細菌性肺炎
- 巨細胞性肺炎
耳鼻科系の病気
- 中耳炎
- クループ症候群
神経内科系の病気
- 脳炎
- 亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis:SSPE)


