「聴力検査」の結果の見方・高音や低温が聞こえない原因はご存知ですか?
聴力検査とは?Medical DOC監修医が健康診断や耳鼻科の聴力検査で発見できる耳の病気や検査結果の見方と正常値・異常値等を詳しく解説します。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
目次 -INDEX-
聴力検査とは?
聴力検査とは、その名の通り、どれくらい聞こえるかという聴力を調べる検査です。聴力検査には、会話法聴力という日常生活の中でしっかりやりとりができるかをみる語音聴力検査や、ヘッドホンで音を聞いて聴力を調べる標準純音聴力検査というものがあります。
一般的に聴力検査というと、後者の標準純音聴力検査のことを指します。
聴力検査とは耳のどんな検査?
聴力検査(標準純音聴力検査)では、防音室でヘッドホンを当て、低い音から高い音までさまざまな音の高さの聞こえ方を調べます。検査の流れは、ヘッドホンから流れてくる音が聞こえたらスイッチを押す、聞こえなくなったら離す、というシンプルなものです。
音が聞こえている間はスイッチを押しておく、と考えてください。
聴力検査で聞こえ方を調べると体の何がわかる?
聴力検査では、高い音から低い音まで、さまざまな高さの音が聞こえるかどうかを調べます。それと同時に気導、骨導という2つの経路でも測定します。
通常、私たちが音を聞く際は、音が耳の穴を通って鼓膜を振動させ、耳小骨を通って蝸牛という部分に伝わります。ここで音の振動が、神経の興奮という電気信号に変換されて、脳に聴覚情報として伝わっていきます。
気導とは、記載した通りの音の伝わる経路のことを指し、骨導とは耳小骨までの部分を省略して、側頭骨(頭蓋骨の側面部分)から直接蝸牛へ振動を送る経路のことです。気導と骨導を両方調べることで、耳のどの部分で難聴になっているのか(伝音難聴か感音難聴かの判別)を判断することができます。
聴力検査の費用は?
標準純音聴力検査の場合、3割負担で約1,100円の費用になります。
聴力検査で高音が聞こえない原因は?
聴力検査で高音が聞こえない原因としては、突発性難聴やムンプス難聴、聴神経腫瘍、蝸牛耳硬化症、音響外傷、外リンパ瘻などさまざまです。
また、加齢とともに見られる加齢性難聴でも、高音から聞こえなくなるのが一般的です。
聴力検査で低音が聞こえない原因は?
低音が聞こえにくくなる原因としては、メニエール病や急性低音障害型感音難聴などが考えられます。また加齢性難聴も進行すると、低音域も聞こえづらくなります。
聴力検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは聴力検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
聴力検査結果の見方・年齢別の正常値と主な所見(dB/Hz)
聴力検査では、所見あり・所見なしという結果が返ってきます。
ここでいう所見とは、異常所見という意味合いになりますので、正常に聞こえていれば「所見なし」、聞こえていなければ「所見あり」となります。
正常値に関しては、下の表を参考にしてください。
基準範囲 | 要注意 | 異常 | |
---|---|---|---|
1000Hz(低音域) | 30 | 35 | 40以上 |
4000Hz(高音域) | 30 | 35 | 40以上 |
先に述べたように、加齢とともに高い音は聞こえづらくなるので、高音域(4000Hz)の聴力は低下するのが一般的です。
そのため、若年者であれば40dB以上の音でないと聞こえないというのは異常ですが、高齢者では40dB程度聞こえれば異常なしと判断されることもあります。
聴力検査の結果で精密検査が必要な基準と内容
聴力検査の結果で所見あり、という結果が返ってきた場合、まずは最寄りの耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。検査としては標準純音聴力検査の結果から、どの音域が聞こえないのか、伝音難聴か感音難聴か、そして問診やCT・MRIなどの画像検査を用いて、病気を絞り込んでいくことになります。
そのため、難聴の精査としては各検査ができる比較的大きな病院の耳鼻科に紹介されることが多いです。
難聴は命に関わる病気ではありませんが、生活の質に大きく影響しますので、できるだけ早い日程で精密検査を受けるようにしましょう。
「聴力検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「聴力検査」で発見できる可能性がある病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
突発性難聴
突発性難聴とは、その名の通り「即時的に、また朝に目が覚めて気がつくような難聴」といった突然の難聴が主な症状です。そのほかに耳鳴りや耳閉感(耳が詰まったような感覚)、めまいなども見られることが多いです。高齢者に多く、60歳代での発症が最も多く見られています。また、後に紹介するメニエール病など他の疾患を検索したうえで、診断に至らず原因不明ということも診断基準になっています。
この病気に対しては、ご自身でできる対処法はありません。早急に医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は耳鼻咽喉科です。問診や聴力検査、画像検査などを用いて診断を行うのが一般的です。
治療にはステロイド剤や、血管拡張薬、ビタミン剤などの投与が多いです。
メニエール病
メニエール病は、鼓膜のさらに奥にある内耳という部位を満たす内リンパ液が過剰に生産された状態(内リンパ水腫)から発症するとされています。特徴的な症状は、難聴や耳鳴り、耳閉感、めまいを繰り返す病気です。この内リンパ水腫がどうして起こるのかはいまだにわかっていません。
発症初期には聴力低下が回復することもある(可逆性がある)のですが、徐々に増悪して不可逆性になる(聴力が下がったままになる)こともあります。さらに、難聴は片方で発症することが多いですが、めまい発作を繰り返すうちに、両耳が難聴になることが知られています。
ご自身で出来る対処法は、めまいが起きてしまった時にとにかく安静にすることです。また予防法としては、出来るだけストレスを回避して過労や睡眠不足にも注意することが重要です。しかし症状が繰り返す場合は、医療機関を受診しましょう。
何度もめまいや難聴の症状を繰り返していると、症状は不可逆的になってしまいます。
主な診療科は耳鼻咽喉科です。メニエール病は日常生活の質を著しく低下させる病気です。何度か繰り返した場合は、できるだけ早い日程で医療機関を受診してください。
耳硬化症
耳硬化症とは、鼓膜の奥にある耳小骨という骨のうち、アブミ骨という骨の動きが徐々に悪くなる病気です。耳小骨は鼓膜から受け取った振動を脳へ伝達する役割がありますが、この耳小骨の動きが鈍くなるため、うまく振動を伝達できず、伝音難聴が見られます。これによって徐々に進行する難聴、めまいが主な症状です。
思春期以降に発症し、初期は軽度の難聴ですが、長期間治療や検査をせずにいると、高度の難聴になる可能性もあります。
この病気に対しては、ご自身でできる対処法はありません。早急に医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は耳鼻咽喉科です。治療はアブミ骨手術が唯一の根治療法になります。進行してしまう前に、早めに受診するようにしましょう。
耳垢塞栓
耳垢塞栓とは、その名の通り、耳垢が詰まっている状態のことを指します。本来、耳垢は勝手に外に排出される作用(自浄作用)があり、詰まってしまうことは基本的にありません。しかし、外耳道(耳の穴から鼓膜までの部分)の形が特殊で耳垢が溜まりやすい人や、高齢者では自浄作用が低下しており、耳垢塞栓を起こすことがあります。
大きな耳垢で物理的に外耳道を塞いでいるため、音が鼓膜に伝わりにくくなり、聴力低下を引き起こします。
対処法は耳垢を取り除くことですが、これは耳鼻咽喉科で行っていただくことをお勧めします。耳垢を綺麗に取っておこうと、自身で頻繁に耳掃除をされる方がおられますが、耳垢の取りすぎは外耳道を傷つけてしまったり、外耳道炎を起こしたり、といったリスクがあります。専門の医療機関である耳鼻科で取り除いてもらいましょう。
高齢の方が最近聞こえにくいと感じていたら、耳垢塞栓が原因だったということもありますので、聞こえづらさがあれば一度受診するようにしてください。
「聴力検査」で引っかかる理由は?
聴力が正常以下になっている時に引っかかります。最近聞こえづらいな、という症状がある方やめまいが頻繁に起こるという方は、積極的に受けるようにしましょう。
「聴力検査」についてよくある質問
ここまで検査の特徴や異常があった場合の対処法などを紹介しました。ここでは「聴力検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
聴力検査の結果はどのくらいでわかりますか?
中川 龍太郎(医師)
医療機関によってまちまちなので一概には言えません。
聴力検査に引っかかったらどうすればいいですか?
中川 龍太郎(医師)
まずは近隣の耳鼻咽喉科を受診しましょう。
聴力検査は新生児でもできますか?
中川 龍太郎(医師)
聴力検査(標準純音聴力検査)は、音が聞こえたらボタンを押す、という方法ですので当然新生児では出来ません。代わりに聴性脳幹反応(ABR)という検査で、聴覚のスクリーニング検査を行うのが一般的です。
健康診断の聴力検査で難聴が見つかったら治療できますか?
中川 龍太郎(医師)
難聴の原因疾患によって、対処法、治療法、またその治療効果もさまざまです。もちろん治療が可能な病気も多数ありますので、まずは早めに精密検査を受けるようにしましょう。
50代の聴力検査の正常値はどれくらいですか?
中川 龍太郎(医師)
研究結果によってまちまちですが、低音域(1000Hz)では11-13dB程度、高音域(4000Hz)では20dB程度となっています。高音域の方が聞こえづらいものの、聴力検査で引っかかるほどではない、という値が多いです。
まとめ 「聴力検査」で難聴を早期発見!
聴力検査の概要について解説しました。難聴は急性でも慢性でも、早期発見、早期治療が重要です。健康診断で引っかかった場合や、聞こえづらさを自覚している場合は、早めに耳鼻科医の診察を受けるようにしてください。
「聴力検査」の異常で考えられる病気
「聴力検査」の異常から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
聴力検査の異常から考えられる疾患は多岐にわたります。ご自身で判断することは困難ですので、症状の自覚があったり検診で引っかかった際は、早めに耳鼻科で精密検査を受けるようにしてください。