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「ピロリ菌検査」の費用は?受ける頻度は一生に一回でいい?医師が徹底解説!

 公開日:2023/12/26
「ピロリ菌検査」の費用は?受ける頻度は一生に一回でいい?医師が徹底解説!

ピロリ菌検査とは?Medical DOC監修医が発見できる病気や健康診断や消化器内科診察でのピロリ菌検査で検査結果の見方と所見等を詳しく解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

ピロリ菌検査とは?

ピロリ菌は、胃や小腸の炎症や潰瘍の原因となる細菌のことです。正式には、ヘリコバクター・ピロリ菌といいます。
ピロリ菌検査は、胃にピロリ菌がいるかどうかを調べる検査です。大きく分けて、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。
今回の記事では、このピロリ菌検査について詳しく解説し、どこで、または何科を受診するのが良いのかについても述べていきます。

胃粘膜のピロリ菌検査とはどんな検査?

胃粘膜のピロリ菌検査には胃内視鏡(胃カメラ)を使う方法と使わない方法があります。

胃の内視鏡を使う方法では、生検という実際に胃の組織をとる検査を行います。

  • 迅速ウレアーゼ試験
    胃の組織を用いて、ピロリ菌がもつウレアーゼによって産生するアンモニアによるpHの変化をpH指示薬によって検出し、ピロリ菌の存在を間接的に確認する方法です。
  • 鏡検法
    内視鏡検査で生検された組織をホルマリン固定組織標本とし、顕微鏡で観察することで、ピロリ菌を直接観察する方法です。
  • 培養法
    ピロリ菌を唯一直接的に証明する方法です。ピロリ菌の除菌治療の際に重要となる、薬剤の感受性(どの薬が効くのか)を調べることもできます。

内視鏡を使わない検査では、以下のような方法があります。

  • 尿素呼気試験(urea breath test: UBT)
    13Cという炭素の一種を含んだ尿素を内服するという検査です。
    胃の中にピロリ菌がいると、ピロリ菌がもつウレアーゼによって尿素が二酸化炭素(13CO2)とアンモニアに分解されます。そして、13CO2が消化管から血液の中に入り、呼気の中に排泄されます。この呼気を調べ、13Cの増加率を調べるという方法です。
  • 抗体測定法
    ピロリ菌が感染すると、胃粘膜で免疫反応が起こり、抗体が作られます。
    抗体測定法は、この抗体を調べる検査で、間接的に感染しているかどうかを調べる方法です。通常は、血液や尿を用いますが、唾液を用いた測定法もあります。血液の抗体の測定のために、専用のキットが開発されています。この検査で測定される抗体価という数値にカットオフ値を設け、陽性か陰性かを判定します。
  • 便中抗原測定
    胃から消化管を経て排泄されるピロリ菌に由来する抗原を検出する検査法です。

胃のピロリ菌検査で何がわかる?

ピロリ菌検査は、人間ドックなどでの採血検査が最も簡単な方法となるかと思われますが、ピロリ菌が血液中にいる訳ではないので、血液検査の精度には限界があります。
内視鏡によるピロリ菌検査では、実際に胃の粘膜を観察することができます。ピロリ菌がいる胃の粘膜と、そうでない粘膜には差が生じます。ピロリ菌がいない胃の粘膜は、表面が艶やかで粘液はサラサラとしており、胃のヒダは細長く真っ直ぐに走行しています。一方、ピロリ菌がいる胃は、全体的に粘膜が赤くなっており、粘液は白濁し粘っこく、胃のヒダが太く蛇行していることもあります。

ピロリ菌検査の費用は?

特に症状がない方が、人間ドックや定期健康診断のオプションとしてピロリ菌検査を受ける際は、自費診療になります。胃痛などの症状があり内視鏡検査で慢性胃炎が証明された場合は、ピロリ菌検査および除菌が保険適用となります。
血液検査などの料金や費用が自費でいくらになるかは医療機関によって異なるため、受けようとしている病院やクリニックに事前に確認すると良いでしょう。5,000~10,000円が目安となります。
自治体によっては、若い世代のピロリ菌検査を無料で行っている場合もありますので、お住まいの自治体のHPなどで確認してみてください。

ピロリ菌検査前日や当日の注意点

ピロリ菌検査のための尿素呼気試験の結果を正確なものにするためには、注意点があります。
13Cを多く含むとうもろこしやパイナップル、豚・鶏肉、卵などを食べると測定に影響が出る可能性があります。そのため、こうした食べ物は検査の数時間前から取らないようにし、検査は食事のあと最低4時間は空けるようにします。また、検査前は禁煙し、喫煙した後30分以上空けて検査を行います。

ピロリ菌検査を受けることで健康リスクはある?

ピロリ菌検査を受けることでの健康リスクとしては、内視鏡検査を行う場合には、それに伴う偶発症の可能性があります。例えば、消化管出血や穿孔(せんこう;穴が開くこと)、麻酔をかけて内視鏡検査を行う場合には、その麻酔による事故も可能性としてはあります。

ピロリ菌検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見

ここまではピロリ菌検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

ピロリ菌検査の結果の見方・分類と主な所見

ピロリ菌検査を受け、ピロリ菌がいると疑われた場合には、消化器内科を受診しましょう。
健康診断では、胃がんのリスク層別化検査として、胃がんリスク(ABC)検診を受けることも可能です。これは、ペプシノゲンという胃の粘膜の萎縮の程度を調べる検査と、ピロリ菌抗体が血液中にあるかどうかを血液検査で調べるものです。

抗ヘリコバクターピロリ抗体
(-) (+)
ペプシノゲン (-) A群:発症リスクは極めて低い。
検診は5年に1回で良い。
B群:発症リスクは平均的。
検診は3年に1回で良い。
(+) C群:発症リスクは高い。
検診は2年に1回で、必ず内視鏡検査を受ける。
D群:発症リスクは高い。
該当者が少ないため、C群として扱う。

また、ピロリ菌検査を受けたことがある方はE群となります。
胃がんになるリスクとしては、A群、B群、C群、D群の順に高くなっていきます。

ピロリ菌検査の結果で精密検査が必要な基準と内容

ピロリ菌がいないという結果がでた場合でも、年に1回の頻度で胃がん検診は受けるようにしましょう。また、例えば先ほど述べたABC検診でB、C、D群の方は、内視鏡での胃の検査を受けるようにしましょう。特に、Cの方は胃がんの発症リスクが高いので、消化器内科を受診し、ピロリ菌除菌を行い内視鏡検査を定期的に受けることが勧められます。
ピロリ菌感染の胃炎の除菌治療は、保険適用となります。3種類の薬を7日間投与する3剤併用療法が標準的な治療です。

「ピロリ菌検査」で発見できる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「ピロリ菌検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

ピロリ菌感染症

ピロリ菌は、小児期に感染することが多く、それ以降の時期に感染することは少ないと報告されています。井戸の飲み水などからの感染や、ピロリ菌に感染した人の唾液を介した感染が考えられています。そのため、基本的にはピロリ菌検査を受けるのは一生に一回でいいとされています。
ピロリ菌は、胃の粘膜に持続的に感染し、胃炎を引き起こすとともに、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんや胃の低悪性度リンパ腫であるMALTリンパ腫の発生にも関係しているといわれています。

胃炎

免疫反応が未熟な幼少期の胃粘膜にピロリ菌が感染すると、慢性胃炎が生じるとされています。多くの場合には無症状で、生涯胃炎の状態が続きます。しかし、慢性胃炎によって胃の粘膜が強いダメージを受けると、菌が住めなくなり、ピロリ菌が自然消滅することもあります。
一方で、成人でピロリ菌に初感染すると、免疫反応が強く現れ、急性胃粘膜病変が発生し、菌が排除され慢性胃炎にはなりにくいです。

胃がん

疫学的な研究から、ピロリ菌感染と胃がんの間には深い関係があることがわかっています。
ピロリ菌陽性者は、陰性の人よりも6~22倍の頻度で胃がんが生じると言われています。陽性者の中でも、強く胃の粘膜が萎縮していたり、胃の体部という部分に胃炎があったりする方で胃がんのリスクが高いとされています。
ピロリ菌の除菌によって、胃の粘膜の炎症が改善され、胃がん予防の効果があるかどうか、現在研究がなされています。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、赤血球のヘモグロビンを構成するために重要な元素である鉄が不足することで生じる貧血のことです。主な原因は、月経や消化管出血などで鉄が多く失われることや、成長や妊娠によって鉄の必要量が多くなることとされています。
一方、鉄が失われる原因が特定できない場合にピロリ菌感染の関連が疑われる症例もあります。この場合には、ピロリ菌の除菌と鉄剤の投与で貧血の改善がみられる可能性があります。

慢性蕁麻疹

ピロリ菌には慢性蕁麻疹との関連もあります。慢性蕁麻疹の患者さんで、ピロリ菌の感染率は70%以上とされています。そして、ピロリ菌除菌によって慢性蕁麻疹の改善がみられるという報告も多数あります。ピロリ菌が感染することで、胃粘膜のバリアが破られ、食物の中のアレルゲンが吸収されやすくなることで、アレルギー反応が出やすくなるのではないかと考えられています。

「ピロリ菌検査」で引っかかる理由はピロリ菌以外にもある?

ピロリ菌検査の一つである尿中の抗体を調べる検査については、偽陽性となることが頻度は低いながら報告されています。つまりピロリ菌感染はしていないにも関わらず、陽性と判定されてしまうのです。
この理由としては、ピロリ菌の治療後や、ガンマグロブリンという薬剤の投与後、蛋白尿の影響などがあるとされています。そのため、非侵襲的な検査でピロリ菌陽性と判定された場合にも、内視鏡での胃粘膜のチェックはやはり必要と考えられます。

「ピロリ菌検査」についてよくある質問

ここまで検査でわかる可能性のある病気や診断結果の見方などを紹介しました。ここでは「ピロリ菌検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ピロリ菌検査を受ける頻度は一生に一回で大丈夫ですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

ピロリ菌には成人になってから感染することはほとんどないため、ピロリ菌検査は一生に一回でいいとされています。

ピロリ菌検査で胃にピロリ菌が見つかったら除菌できますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

内視鏡検査でピロリ菌に感染した胃炎だと診断されれば、保険診療で除菌することが可能です。

ピロリ菌検査は何歳から受けた方がいいですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

ピロリ菌検査を何歳から受けた方が良いかについては、特に定まったものはありません。ただし、早く除菌した方が胃がんの予防効果が高まると考えられています。

ピロリ菌検査はどうやって調べますか?呼気や内視鏡でもわかりますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

ピロリ菌検査は呼気検査や血液検査、便での検査があります。また、内視鏡で実際に胃の粘膜を調べる検査もあります。

検査でピロリ菌が見つかっても除菌しないほうがいい場合もあるのですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

検査を行い胃にピロリ菌が感染していると判明した場合、胃潰瘍や胃がん予防のため除菌することをお勧めします。

まとめ「ピロリ菌検査」で胃がんのリスクを早期発見!

ピロリ菌検査は、現在胃がんであるかどうかを調べる検査ではなく、将来胃がんになりやすいかどうかを知り、必要であれば治療につなげるためのものです。
健康診断でピロリ菌検査陽性と判定された場合には、消化器内科を受診しピロリ菌除菌について医師と相談しましょう。

「ピロリ菌検査」の異常で考えられる病気

「ピロリ菌検査」の検査結果から医師が考えられる病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器系の病気

  • ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
  • 胃MALTリンパ腫
  • 胃過形成性ポリープ
  • 胃びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫
  • 直腸MALTリンパ腫

血液系の病気

皮膚科系の病気

  • 慢性蕁麻疹

神経系の病気

内分泌系の病気

ピロリ菌感染と関連があると考えられている病気にはさまざまなものがあります。多くはピロリ菌除菌が勧められます。

この記事の監修医師