「腹部エコー検査」では何が分かる?費用や食事の注意点など医師が解説!
腹部エコー検査とは?Medical DOC監修医が腹部エコー検査で発見できる病気や検査結果の見方と所見、胃がんや脂肪肝・尿管結石・子宮筋腫等を詳しく解説します。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
目次 -INDEX-
腹部エコー検査とは?
お腹の痛みが出た時や健康診断、検診などで腹部エコー検査を受けたことがある方は少なからずいらっしゃるかと思います。今回は腹部エコー検査でわかること、どんな長所のある検査なのかを分かりやすく解説していきます。
腹部エコー検査とはどんな検査?
腹部エコー検査とは、端的にいうと「お腹の臓器の形態、状態がリアルタイムでわかる検査」です。超音波を使った検査で、X線やCT検査のように被曝もなく、また痛みもありません。
基本的には仰向け(上向き)で寝転んだ状態で、専用のジェルを塗ったプローべという特殊な器具をお腹に当てます。検査内容にもよりますが、検査時間は大体10〜15分ほどです。
主に肝臓や胆のう、膵臓、腎臓、脾臓、膀胱、大腸、子宮や卵巣といった腹部の臓器が対象になります。エコー検査では空気を含む臓器が苦手であり、肺や胃・腸などは若干観察しづらい傾向にあります。
腹部エコー検査で体の何がわかる?
腹部エコー検査でわかることは、腹部臓器(肝臓や胆のう、膵臓、腎臓、脾臓、膀胱、子宮や卵巣など)の形の異常や血流などです。具体的には各臓器の腫瘍や結石、出血や血流障害などがわかります。
腹部エコー検査の費用は?
検査費用は3割負担の場合で1,500~2,000円程度、1割負担の場合は500円程度になります。
腹部エコー検査前日や当日の注意点
腹部エコー検査を受ける際は、前日の夕食以降は固形物を摂取しないことが推奨されています。当日も水分摂取は構いませんが、食事は抜いた状態で検査を受けた方が正確な診断につながります。前日の飲酒も検査結果に影響を与える可能性がありますので控えるようにしましょう。
腹部エコー検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは腹部エコー検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
腹部エコー検査結果の見方と主な所見(胃がん・脂肪肝・尿管結石・子宮筋腫等)
検査結果ではさまざまな所見がつきますので、しばしば指摘される代表的な疾患がどのような所見として記載されるか解説します。
脂肪肝では「高輝度肝・肝腎コントラスト・脈管不明瞭化・深部減衰のいずれかを認める」と記載されます。
尿管結石では「径◯mmの石灰化像」と表記されることが多いです。また子宮筋腫では「直径◯cm 、やや低エコーの類円形の充実性腫瘤性病変」と表現されることが多いですが、子宮筋腫はさまざまな変性を起こすため、一概には言えません。
以上のように各疾患にはそれぞれ詳細な所見がつきますが、難しい用語も多くすぐには理解できないかもしれません。重要なのはその結果を踏まえて、そのような判定が出ているかです。判定によっては数ヶ月ごとの経過観察や早急な再検査、早期治療を促すものがありますので、それに従って必ず医療機関を受診してください。
腹部エコー検査の再検査基準と内容
腹部エコー検査で再検査となる場合の基準は、異常所見はあるものの明らかな良性病変を認めるもの、もしくは良性悪性の判定困難ではあるが過去2回以上の検査で変化がないもの、とされています。
つまり良性悪性の判定が難しいもの、過去の検査から変化があるものなどは再検査よりも緊急度が高い「要医療(治療や生検)」という判定になります。
基本的にはその腹部エコー検査を受けた医療機関で再検査を行いますが、難しい場合は紹介された高次医療機関で再検査や精密検査が実施されることが多いです。緊急度としては再検査よりも要医療の方が急ぐ必要がありますが、どちらにせよ可能な限り早く医療機関を受診することを勧めます。
「腹部エコー検査」でわかる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「腹部エコー検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃がん
胃がんは文字通り、胃粘膜に発生した悪性腫瘍のことです。初期では自覚症状が出現することは稀で、かなり進行してから自覚する場合も多いです。症状は、腹痛や胃の不快感、吐き気、食欲が出ない、といったものです。それに加えて、胃がんから出血することもあり、黒色便や貧血から見つかる場合もあります。
胃がんの発生要因として、喫煙、アルコールの多量摂取、暴飲暴食、運動不足、肥満、ピロリ菌感染などが判明しています。
対処法としては、まず上記の要因を避ける生活を心がけ、定期的な胃がん検診を受けることです。検診の内容は、問診や胃部X線検査または胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)です。腹部エコー検査では、進行胃がんというある程度大きくなってしまった癌を見つけることは可能ですが、粘膜組織に止まる早期胃がんを見つけることは困難です。腹部エコー検査で異常がないからといって、胃癌の可能性を否定できるわけではないということに注意してください。
胃がん検診(胃部X線検査または胃カメラ)でもし検査結果が「要精密検査」となった場合は、必ず精密検査を受けましょう。精密検査では胃カメラで生検という組織を詳しく調べる検査が行われ、胃がんの詳しい分類を調べ、治療法を決定します。
脂肪肝
脂肪肝とは、肝細胞に脂肪が蓄積し、肝機能が低下する可能性がある状態を指します。この病態は、肥満、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病が主な原因とされています。特に、不健康な食生活や運動不足による肥満が大きな影響を与えます。
脂肪肝は初期段階では無症状のことが多いです。しかし長期間放置すると肝炎や肝硬変、肝臓がんへと進行するリスクがあります。
治療に関しては、まずは生活習慣の見直しを中心に行います。適度な運動とバランスの良い食事により体重を適正に保つことが重要で、アルコールの摂取も控えるべきです。
受診すべき診療科は一般内科、消化器内科です。定期的な健康診断で脂肪肝と指摘された場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
尿管結石
尿管結石とは、腎臓から尿管、膀胱、尿道という“尿路”の途中、特に尿管で石が詰まってしまい、激しい痛みを引き起こす疾患です。男性に多く、これは結石の成分となるシュウ酸を、男性ホルモンが増加させるためと考えられています。 症状に対する対処法は、まずは痛み止めの内服です。お手持ちにロキソニンなど非ステロイド性抗炎症薬がある場合はそれを内服します。結石は10mm以下の場合は、基本的に痛み止めで対応して自然に排石されるのを待ちます。結石の大きさが10mmを超えるものは、体外衝撃波結石破砕術や経尿道的結石破砕術などを用いて、積極的に結石を除去することがあります。 これらの判断は専門の医師の診断が必須となりますので、速やかに医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は泌尿器科です。尿路結石だけでは緊急性はないため日中の受診でも構いません。ただし、発熱や悪寒戦慄が伴った場合は、結石の関与した複雑性尿路感染という状態に陥っており緊急性が高くなります。その際は夜間休日問わず医療機関を受診しましょう。
子宮筋腫
子宮筋腫はその名の通り子宮に発生する腫瘍です。
悪性ではありませんが、過多月経や月経痛などの月経異常やそれに伴う貧血と、腹部の圧迫感や下腹部痛などが生じることがあります。年齢的に更年期障害の一つだろうと自己判断して、病院を受診されない方がおられますが、お腹の張りは更年期障害に特有の症状というわけではないので、医療機関の受診を勧めます。 受診すべき診療科は産婦人科です。内診や腹部エコー検査、CT・MRIなどの画像検査で診断に至ります。無症状の場合は定期的にサイズをチェックするだけで問題ありませんが、日常生活に影響を及ぼす場合は、子宮摘出術などが検討されます。貧血で、ふらつきや転倒する頻度が増加している際は、すぐに医療機関を受診しましょう。
「腹部エコー検査」で引っかかる理由は?胃がん・脂肪肝・尿管結石・子宮筋腫等
腹部エコー検査では正常臓器の像では見られない大きさや腫瘍性病変、形態の変化などが見つかると引っかかります。そもそも症状が出る前に疾患を発見して予防するのが腹部エコー検査の一つの意義ではありますが、定期的な腹痛やふらつきなどが見られる際は、特に尿路結石や子宮筋腫(女性の場合)が発見される可能性がありますので注意してください。
「腹部エコー検査」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「腹部エコー検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
健康診断の腹部エコー検査(超音波検査)では何を調べていますか?
中川 龍太郎 医師
腹部臓器(肝臓や胆のう、膵臓、腎臓、脾臓、膀胱、子宮や卵巣など)の腫瘍や結石、出血や血流障害などを調べています。
腹部エコー検査はどういった時に受けるべきですか?
中川 龍太郎 医師
腹痛などの症状がある時はもちろんですが、40歳以上であれば健康管理目的に1年に1回程度は腹部エコー検査を受けてもいいと考えます。
腹部エコー検査は何時間前まで食事できますか?
中川 龍太郎 医師
何時間前まで食事可能かと言われると難しいですが、「前日の夕食以降は固形物を摂取しない」ことが推奨されていることを考慮すると、検査までに少なくとも12時間は空けていただく必要があると思われます。
腹部エコー検査はどのくらいで結果が分かりますか?
中川 龍太郎 医師
医療機関によってまちまちですが、1週間程度の施設が多いようです。
まとめ 「腹部エコー検査」で病気を早期発見!
腹部エコー検査の利点は、被曝もなく痛みもなくリアルタイムに腹部臓器を調べられる点です。腹痛など症状がある時には当然用いられる検査方法ですが、まだ症状がない段階で疾患を見つけることにも長けた検査と言えます。
特に脂肪肝では、自覚症状はないですが、気づかずに放置していると肝硬変へとつながる病気ですので早期発見、早期治療が重要です。
健康管理の一つとして、定期的な腹部エコー検査をぜひご活用ください。
「腹部エコー検査」の異常で考えられる病気
「腹部エコー検査」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器系の病気
- 脂肪肝
- 進行胃がん
泌尿器科の病気
婦人科の病気
腹部エコー検査をきっかけに発見される代表的な疾患がこれらですが、他にもさまざまな疾患が見つけられます。自覚症状がなくとも、何か異常を指摘されたら一度医療機関を受診しましょう。