「中性脂肪」とは?基準値や病気のリスク・改善方法などを医師が徹底解説!
中性脂肪とは? Medical DOC監修医が血液検査でわかる中性脂肪の見方や基準値・主な原因と数値が高い/低い場合の病気のリスク・対処法などを解説します。
監修医師:
丸山 潤(医師)
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
目次 -INDEX-
中性脂肪とは?
中性脂肪とは、3本の脂肪酸とグリセロールから作られており、肉や魚、食用油などに含まれている物質のことです。体脂肪の大部分を占めていることから、太ってる方では値が高くなりやすいことで知られています。トリグリセリドやトリグリセライドと呼ばれることも多いでしょう。中性脂肪と聞くと「体に悪い」「血液がドロドロになる」とイメージされる方も多いのではないでしょうか。たしかに、中性脂肪が増えすぎると悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが増えるため、動脈硬化のリスクが増加します。しかし、中性脂肪は体にとって必要なものです。重要なエネルギー源となるため、体にとっては必要不可欠な物質です。生命維持に必要なエネルギー源となるほか、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収を助けたり、体を寒さから守って体温を維持したりする働きもあります。
中性脂肪が高い場合のリスクと対策
中性脂肪は体にとって必要なものですが、値が高すぎるとリスクを伴います。では、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。基準値より高い時に起こることや中性脂肪を下げる方法について解説します。
中性脂肪が基準値より高いとどうなる?
中性脂肪が150mg/dl以上になると、高トリグリセライド血症と診断されます。年齢とともに平均値が高くなりやすい傾向にあるため気をつけましょう。中性脂肪が高くなる主な原因は、食べ過ぎや飲み過ぎです。脂質や糖質、タンパク質を摂り過ぎることで、余ったエネルギーが中性脂肪に変換されて値が高くなります。中性脂肪が基準値より高くなっても、ほとんどの場合で自覚症状が出ることはありません。基準値を超えると高くなるリスクとしては、次のものが代表的です。
- 肥満
- メタボリックシンドローム
- 動脈硬化
- 異所性脂肪
- 急性膵炎
- 大腸腺腫
中性脂肪が増えすぎると、体内に蓄積されて肥満を招きます。腹部に脂肪がつくメタボリックシンドロームとも関係が深いため要注意です。LDLコレステロールを増やすことで動脈硬化を進行させたり、肝臓や筋肉など本来は脂肪がない場所に中性脂肪がたまる異所性脂肪を起こしたりもします。強い激痛を伴う急性膵炎のリスクを高めることでも知られているため、日頃から中性脂肪が上がらないように気をつけなければなりません。大腸腺腫は悪性腫瘍ではないものの、がんに進行することがあるので注意が必要です。
中性脂肪を多く含む食べ物としては、バターやクリーム、牛肉や豚肉などが知られています。このほか、お菓子やジュースなど糖質の多いものやビールや酒なども中性脂肪を高める原因となるので摂取量を減らすように気をつけましょう。
健康診断で中性脂肪が高いと言われたら?
健康診断で中性脂肪が高いと言われたら、まずは生活習慣の見直しが必要です。食べ過ぎや飲み過ぎ、太り過ぎや運動不足が続くと中性脂肪は値が高くなりやすくなります。中性脂肪だけ高いと言われる方もいますが、なかにはコレステロールを同時に指摘される方もいるでしょう。コレステロールを指摘された場合もまずは生活習慣の見直しを行います。
中性脂肪を下げる方法は?
中性脂肪を下げるには薬を使う方法のほか、生活習慣の見直しを行う方法があります。まずは食生活の見直しを行いましょう。具体的には中性脂肪が増えやすくなる原因である脂質や糖質を含む食事を控えます。飽和脂肪酸を多く含む動物性油脂ではなく、不飽和脂肪酸を多く含む植物油脂を選ぶようにすることも大切です。アルコールを飲む方は節酒も心がけましょう。飲み過ぎは中性脂肪の値を高めてしまいます。このほか、有酸素運動も効果的です。本格的な運動を行う時間がない方は、エレベーターではなく階段を使ったり、早歩きを意識したりするだけでも構いません。
中性脂肪が低い場合のリスクと対策
中性脂肪が高いことを気にする方は大勢いますが、実は低すぎるのも問題があります。中性脂肪の基準範囲は30~149mg/dlが正常とされており、29mg/dl以下になると異常です。
中性脂肪が基準値より低いとどうなる?
中性脂肪が基準値よりも低くなる原因としては、極端な食事制限や過度な運動、肝機能の低下などが挙げられます。脂質や糖質を極端に摂らない食生活を続けていると、中性脂肪を作り出すことができず、値が低くなってしまうのです。また、アスリートレベルの運動は中性脂肪を大量に消費してしまいます。肝機能の低下は中性脂肪の合成や貯蔵がうまくいかなくなる原因です。中性脂肪が基準値より低くなると、疲れやすくなったり寝ても体力が回復しなかったりなどの症状が出るようになります。大きな病気を引き起こす原因にはなりにくいのですが、手足が冷えやすくなったり肌が荒れたりすることも少なくありません。
健康診断で中性脂肪が低いと言われたら?
健康診断で中性脂肪が低いと言われたら、食生活や運動習慣の見直しを行うことが大切です。脂質や糖質を減らしすぎていないか、過度な運動を行っていないか見直してみましょう。思い当たるものがない場合は、肝機能に問題がないかを調べてもらうのも一つの方法です。
中性脂肪を上げる方法は?
中性脂肪を上げるためには、3食バランス良く食べることが大切です。脂質や糖質を必要以上に減らしすぎず、肉や魚、卵などを適度に摂るようにします。運動を行う習慣がある方は、過度に体を動かしていないかバランスを見直してください。肝機能に問題がある場合は、医師の指示に従って治療を受けましょう。
健康診断の中性脂肪の見方と基準値・再検査が必要な数値・診断結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
健康診断・血液検査の「中性脂肪」の基準値と結果の見方
中性脂肪(トリグリセリド)の基準値は30~149mg/dlです。値がこの数値の範囲にある場合は正常だと言えます。ちなみにLDLコレステロールは140mg/dl未満、HDLコレステロール40mg/dl以上が正常範囲です。中性脂肪の値が300mg/dl以上の場合は虚血性心疾患のリスクが高くなります。
健康診断・血液検査の「中性脂肪」の異常値・再検査基準と内容
150mg/dl以上ある時は中性脂肪が高い状態、29mg/dl以下の場合は低い状態だと言えます。中性脂肪の値を検査する方法としては、採血が一般的です。費用は3割負担の場合、1,000円ほどかかることが多いでしょう。中性脂肪に関する再検査や精密検査は一般的な内科で受けられます。値が300mg/dl以上の場合は危険な状態ですので、できるだけ早く受診してください。中性脂肪の再検査の結果、値が高いと判断された場合は必要に応じて生活習慣の指導をされたり薬が処方されたりします。
健康診断・血液検査の「中性脂肪」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「中性脂肪」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
肝硬変
肝硬変とは、肝臓内に繊維組織が増えることで肝臓が硬くなる病気のことです。原因としては、飲酒や肝炎ウイルスへの感染、脂肪肝などが挙げられます。肝硬変を完治させることは難しいため、今よりも症状が悪化しないように現状維持することが基本の治療法です。初期の段階ではほとんど自覚症状がありませんが、症状が進行すると腹水や黄疸、羽ばたき振戦や手掌紅斑などが見られます。このような症状が見られたらすぐに消化器内科や内科を受診しましょう。
脂質異常症
脂質異常症とは、LDLコレステロールやHDLコレステロール、中性脂肪などの脂質が基準値から外れた状態のことです。「コレステロールが高い」と言われた場合は、LDLコレステロールの値が高い状態だと考えられます。LDLコレステロールは悪玉コレステロールとも呼ばれており、値が高くなるおもな原因は飽和脂肪酸の摂り過ぎです。LDLコレステロールが高い場合は、まず食事や運動習慣の見直しを行うことになります。値が高めもしくは低めと言われたら、なるべく早めに内科を受診しましょう。
糖尿病
糖尿病とは、高血糖の状態が慢性的に続く病気のことです。生まれつきインスリンを作る力が弱かったり、生活習慣によってインスリンが分泌されづらい、もしくは効きづらい状態になったりすることが原因として知られています。糖尿病そのものを治すことはできないため、血糖値のコントロールを行っていくことが基本です。血糖値が高めだと言われた場合や、初期症状である喉の渇きや多飲、多尿などの症状が出ている時は早めに内科を受診しましょう。
「中性脂肪」が高い時、低い時の正しい対処法・改善法は?
中性脂肪が高い時、もしくは低い時はまず食生活の改善を行うことが大切です。値が高いときは糖質や脂質の摂り過ぎに気をつけ、低いときは積極的に糖質や脂質を摂るようにします。中性脂肪の値が高くてもとくに自覚症状はありません。一方で、低い場合は疲れやすくなることがあります。体内のエネルギーがたりない状態なので、3食バランス良く食事を摂るようにしてください。中性脂肪が高い場合は、DHAやEPAが多く含まれている魚介類の摂取がおすすめです。魚介類を摂ることで中性脂肪を下げることができます。低い場合は肉や魚、卵などを含めたバランスの良い食事を摂りましょう。値を早く正常に戻したい場合は、食事や運動の見直しを行うことが大切です。
「中性脂肪」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「中性脂肪」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
中性脂肪の危険な数値と基準値を教えてください。
丸山 潤 医師
基準値は30~149mg/dlです。300mg/dl以上になると虚血性心疾患のリスクが高まると言われています。
健診で中性脂肪が150mg/dLだと脂質異常症の可能性がありますか?
丸山 潤 医師
可能性がまったくないとは言い切れません。わずかながらですが基準値を超えています。中性脂肪を減らすには生活習慣や運動習慣の見直しを行いましょう。
中性脂肪を下げる飲み物や食べ物はありますか?
丸山 潤 医師
魚介類や海藻、きのこ、野菜などは中性脂肪を下げるのに役立ちます。中性脂肪を減らす飲み物としては、ポリフェノールを多く含むお茶も良いでしょう。中性脂肪のコントロールに役立つレシピなども公開されていますので、そちらも参考にしてみてください。
中性脂肪は薬やサプリで下げることができますか?
丸山 潤 医師
中性脂肪を下げる薬にはフィブラート系製剤やEPA製剤などがあります。中性脂肪に良いとされるサプリメントもありますが、薬とは違って効果が確証されたものではありません。サプリを使っても構いませんが食生活や運動習慣をベースとした見直しが重要です。
ストレスが原因で中性脂肪が低くなることはありますか?
丸山 潤 医師
ストレスが原因で中性脂肪が高くなることはあります。副腎皮質からコルチゾールが分泌されて中性脂肪の代謝が悪くなるためです。
まとめ 「中性脂肪」の異常は肥満や動脈硬化に注意!
中性脂肪が高くなると、肥満や動脈硬化、異所性脂肪などの症状が表れる可能性があります。値が高いからといってすぐに命に関わるわけではありませんが、じわじわと健康をむしばんでいくため注意しましょう。中性脂肪は高くても自覚症状がほとんどありません。健康診断で高めだと指摘された場合は、なるべく早めに医療機関を受診しましょう。
「中性脂肪」の異常で考えられる病気
「中性脂肪」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
中性脂肪にはさまざまな病気との関連性があります。基準値よりも値が高い、もしくは低い場合は早めに医療機関を受診しましょう。