「胃カメラ」の検査方法は口からと鼻からで違う?費用や当日の流れなど医師が解説!
胃カメラは何がわかる?Medical DOC監修医が胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)の検査費用や発見できる病気・検査前後の注意点などを詳しく解説します。
監修医師:
丸山 潤(医師)
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
目次 -INDEX-
胃カメラ(内視鏡検査)とは?
胃カメラとは、正確には「上部消化管内視鏡検査」を指します。内視鏡の先端についている
カメラで胃の内部を撮影することで胃粘膜表面の色調変化や凸凹を捉え、より確実な診断・治療に繋げることができます。近年は健康診断や人間ドッグで行われることも多く、以前と比べ受ける機会の多い検査となりました。
胃カメラにより胃がん死亡率が減少することも示されており、胃がんを含む疾患の早期発見につながります。
胃カメラ(内視鏡検査)とはどんな検査?検査方法は口からと鼻からで違う?
胃カメラは従来のバリウムを使用した胃透視検査と比較し、より直接的に病気を見つけられる検査となります。また、ピロリ菌の検査を同時に行うことや、疑わしい所見があればその場で胃の一部を採取(生検)し病理診断を行うことで病変の確定診断を行うこともできます。被曝の危険性もなく優れた検査ですが、カメラを体内に入れるため苦痛を伴う場合もあります。
胃カメラの種類には口からカメラを入れる「経口内視鏡」と鼻からカメラを入れる「経鼻内視鏡」の2種類があります。
いずれの検査も、口や鼻に麻酔をかける薬剤を塗布してから行いますが、苦痛を和らげるために鎮静剤などを使用する場合があります。検査は通常5分から10分程度で終了します。検査前後に食事制限があるため注意が必要です。
経口内視鏡の場合は検査時の不快感が強いことや検査中に会話ができないといったデメリットがありますが、経鼻内視鏡では取れないような大きな病巣も切除することができます。
胃カメラの検査費用・保険適用の有無
胃カメラの検査費用は保険適応外の場合、約1万円~2万円です。使用するカメラの種類、鎮静剤の使用の有無、施設などによって費用は異なります。医師が胃カメラの必要があると判断した場合や検診結果で胃カメラの必要性が認められる場合は保険適用となることがありますが、無症状で検査のみが目的であれば基本的に保険適応外となります。
胃カメラの鎮静剤とは?
胃カメラで使われる鎮静剤には、ミタゾラム、ジアゼパム、プロポフォール、デクスメデトミジンなどがあります。鎮静剤のメリットとしては何といっても検査の苦痛が軽減されることが挙げられます。中には眠っている間に検査が終わったという例もあります。何度も胃カメラを受ける方もいらっしゃることを考えると大きなメリットと言えます。
一方で鎮静剤のデメリットとしては、血圧や呼吸の変動が起こる場合があるということが挙げられます。また、検査終了後に鎮静剤の効果が切れるまで別部屋などで休む必要があり、来院方法もご自身が運転しない方法を選ぶ必要があるなどの制限もあります。
胃カメラ前日・当日・検査後の流れ
胃カメラには検査前後の食事制限や注意点があります。以下に重要な点をまとめていますが、各施設ごとで時間や内容は異なりますので、実際に検査を受けられる施設の規定に従ってください。
胃カメラ前日の食事や準備
日中の食事は特に問題ありませんが、検査前日の夕食後から絶食となります。水分摂取は夕食後も可能ですが、アルコールや乳製品は避けましょう。検査の時間によっては当日の朝食まで飲食可能となる場合もあります。
胃カメラ当日の食事や準備
検査が終わるまで食事は食べないようにしましょう。胃の内部に食物残渣が残り、正確な検査ができません。水分摂取は可能ですが、濃い色のついていない飲み物のみ可能です。なるべく水やお茶などにしましょう。
食事を摂ることができないため、激しい運動などは避けましょう。
胃カメラ検査後の注意点
検査後の食事にはアルコール含め特に制限はありません。ただし、胃カメラ時に組織採取などの検査をした際は制限があることがありますので、検査後の指示に従って下さい。
検査時に鎮静剤を使用した場合は、鎮静剤の効果が切れるまで待機してからの帰宅となるため少し時間がかかります。また、鎮静剤を使用する可能性があるため、検査日はご自身で運転する乗り物(自転車や自動車など)では来ないように気をつけましょう。
入浴や運動など生活の制限はありません。稀に検査の合併症として胃の内部からの出血が起こることがあります。万一便が黒くなるなどの変化があれば病院を受診しましょう。
胃カメラでわかる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「胃カメラ」で発見できる病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
ポリープ
胃ポリープとは胃の内部にできる良性の腫瘍です。過形成ポリープ・胃底腺ポリープ・特殊型に大きく分類されます。
過形成ポリープの原因として大きく関連していると言われているのがピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)です。他のポリープはピロリ菌の感染とは関係なく発症します。遺伝性のあるポリープもあります。
ポリープ自体は自覚症状が乏しいため、胃カメラなどの検査で発見されることがほとんど
です。基本的に多くは治療の必要がないものですが、過形成ポリープは稀にがん化することもあるため定期的な診察が必要です。また、サイズの大きいものや出血しているものなどは消化器内科で内視鏡下に切除の適応となります。
胃炎
胃炎には急性胃炎と慢性胃炎があり、一般的には慢性胃炎のことを指します。慢性胃炎の多くはヘリコバクター・ピロリ菌が原因とされており、自己免疫や薬剤、ストレスが原因となることもあります。
治療法としては原因となる薬剤やストレスの除去やピロリ菌の除菌が必要です。除去が難しい場合は胃粘膜を保護する薬や胃酸を抑える薬などを使用します。
強い腹痛や嘔吐、吐血などを認める場合は出血や胃潰瘍を生じていることもあり、消化器内科の受診が必要です。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃液や胃の内容物が食道に逆流することにより食道の粘膜に炎症を起こす疾患です。日本人の10%が持つ疾患で、有病率は高いと言えます。
原因には食べ過ぎやアルコール摂取、喫煙、姿勢などが考えられており、治療法としては胃酸を抑える薬に加え生活習慣の改善も求められています。重症の場合は外科的治療を勧める場合もあります。
症状が長期間続くとがんの原因にもなると言われているため、胸焼けや胸痛が長く続く場合は消化器内科を受診しましょう。
胃がん
胃がんとはその名の通り、胃にできるがんのことです。現在、多くの胃がんはピロリ菌の感染による萎縮性胃炎が原因として考えられているため、ピロリ菌が陽性となった方は早めの除菌をお勧めします。
治療法としては基本的には外科的に切除を行います。大きさや転移の有無などにより、化学療法・放射線療法を行うこともあります。また、切除の際に周囲のリンパ節も同時に切除することもあります。術後も定期的に診察を受け、再発や転移がないか確認します。
胸焼け・吐き気・腹痛などが持続する場合、食欲不振や体重減少が見られる場合は消化器内科を受診しましょう。一方で進行しても自覚症状が現れにくい場合もあり、健康診断や人間ドッグを定期的に受けることが重要です。
「胃カメラ」は何歳から受ける?受けた方がいいのはどんな人?
近年胃がんの罹患率・死亡率は少しずつ減少してきています。40歳代では胃カメラを使用した胃がん検診による不利益が50歳以上よりも大きいと言われており、胃がん検診の対象としては50歳以上が望ましいとされています。
しかし、胸焼け、胸痛、食欲不振などの自覚症状がある場合は年齢に関わらず消化器内科を受診し診察を受けることをお勧めします。
「胃カメラ」についてよくある質問
ここまで検診の内容や発見できる病気などを紹介しました。ここでは「胃カメラ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
内科で胃カメラ・内視鏡検査を受けたほうがいいのはどんな人ですか?
丸山 潤 医師
以前にピロリ菌感染やピロリ菌除菌後も萎縮性胃炎などの粘膜変化が認められている方は定期的な検査をお勧めします。ピロリ菌陰性の方も、胸焼け、胸痛、食欲不振などの自覚症状がある場合は検査を受ける方が良いでしょう。
胃カメラは痛いと聞きますが鼻と口どちらからが苦しくないですか?
丸山 潤 医師
一般的に鼻から検査を行う方が苦痛は少ないと言われています。ただ、口からの検査はもし大きな病変が見つかった時に検査時に切除できることがあるというメリットもあります。病院によって検査時に鎮静剤を使用してもらえるところもありますので、ご不安な方は検査前に相談されることをお勧めします。
胃カメラは何歳から受けた方がいいですか?
丸山 潤 医師
上記のように50歳以上の検査が勧められていますが、もちろん若年でも胃の変化を認めることはありますのでご心配であれば検査を受けていただくことは可能です。特に自覚症状のある方は早めの検査をお勧めします。
胃カメラは予約なしで病院に当日行ってもその場で受けられますか?
丸山 潤 医師
前日から絶食する必要がありますので、緊急時を除きほとんどの病院は予約してからでないと胃カメラを受けることができません。予約が埋まっている場合もありますので、検査ご希望の方はなるべく早く受診すると良いでしょう。
まとめ 胃カメラで胃がんを早期発見
胃カメラ、と聞くと怖い印象をお持ちの方も多いと思います。昔は検査時の苦痛が強い検査でしたが、近年は鎮静剤の利用やカメラの改良、経鼻胃カメラの登場により以前と比べると受けやすい検査になっています。
胃がんはかつて日本人の死因の1位でした。近年胃がんの罹患率の減少は見られますが、未だ日本人男性では第3位・女性では第4位の死因となっています。胃がんは早期発見・早期治療で予後を改善させることが可能な疾患です。胃がん以外にもこの記事に書かれた疾患の多くは胃カメラで診断することが可能です。
ぜひ恐れることなく胃カメラを受けていただき、早期発見に繋げていただければ嬉しいです。
「胃カメラ」で発見できる病気
「胃カメラ」から医師が発見できる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胃カメラは胃粘膜表面の色調変化や凸凹を捉え、胃にある病気を正確に診断し治療に繋げることができます。ぜひ定期的に胃カメラの検査を受けて、がんを予防しましょう。