【闘病】「人工肛門になった自分も好きになれる私がいる」 潰瘍性大腸炎で大腸全摘した女性(2/2ページ)

「白のプラスマーク」が意味すること

編集部
現在は、永久人工肛門で日々の暮らしを取り戻していると?
木村さん
おかげさまで、障がい者雇用枠による就職がかないました。ただ、「私が人工肛門であること」は、見た目でわからないんですよね。「人工肛門」という仕組み自体も、十分には知られていないようです。ですから、お手入れなどで度々席を外していると、「サボっている」と受け止められかねません。また、重い荷物を持ってはいけないことになっているので、業務拒否のような誤解もされることがあります。
編集部
人工肛門に対して、周囲の理解が必要ということですか?
木村さん
最低限でも、直の上司には理解しておいていただきたいですよね。加えるとしたら、イザというときに自分のポジションを代わってくれる同僚でしょうか。その場で人工肛門であることは言ってもいいのですが、そこに至るまでの経緯に苦心します。「人工肛門って何? どうしてそんなことになったの?」といったような質問がずっと続きかねないのです。
編集部
補助が必要なことを知らせるサインとして「ヘルプマーク」のようなものはないのですか?
木村さん

編集部
一方、医療従事者へ望むことはありますか?
木村さん
自分にマッチした人工肛門の装具がなくて困っています。20年前と比べたら種類は増えましたが、まだまだ足りていない印象です。医療従事者は、よく「個人差がある」と言いますが、それなのに人工肛門の装具が画一的って矛盾しているように感じます。個人差を反映できるような装具の登場が待ち遠しいです。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
木村さん
術後のことになりますが、幸いにして近所に、「ホットヨガスタジオ」ができたのです。最初は興味半分で通っていたのですが、それがきっかけで、インストラクターの資格を取るまでに至りました。「どうして私だけが」というネガティブ思考からは、なにも生まれません。どんな結果であれ、「自分を好きになる」というポジティブ思考から未来が開けていくと実感しています。ぜひ、自分を好きになって、SNSなどで失敗談や成功談などで一緒に盛り上がりましょう。その書き込みを読んで、「私も自分が好きになった」と言ってくださる方が増えれば、とてもうれしいです。
編集部まとめ
人工肛門には筋肉が付いていませんから、意図して便を止めることも排出することもできません。さらに、腸内のガスによっても膨れるため、定期的なメインテナンスが必要になります。ところが、普通に衣服を着ていると、その存在は判別できません。この点が、誤解や偏見の根っこなのでしょう。「オストメイトマーク」は、こうした“当を得ていない、社会的制裁の目線”を防ぐためのものです。「紺色の上半身に入った白いプラスマーク」を見かけたら、この記事にあった人工肛門のことを思い浮かべてください。




