【闘病】受け止めきれない「乳がん」の発覚。マンモグラフィは“毎年”受けていた…

毎年マンモグラフィ検査を受けていた山田さんでしたが、ある日ふと触れたしこりに違和感を覚えすぐに病院を受診。一度は「良性だと思われる」と医師に言われるも、念のために組織の一部を採取して調べる針生検を希望。その結果「乳がん」が発見されました。また、現在は医学的な治療と並行して、心のケアも大切にしながら前向きに病と向き合う山田さん。その歩みについて、詳しく話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年7月取材。

山田香織さん
念のための追加検査で「がん」が発覚

編集部
はじめに、山田さんが乳がんと診断されたきっかけは何でしたか?
山田さん
ある日、ベッドで横になっているとき、胸に硬いしこりのようなものを感じました。立っているときにはわからず、肋骨に近い場所だったため、横になって初めて気づいたのだと思います。痛みはありませんでしたが、不安もあったので乳腺外来を受診しました。エコーでは「形としては良性だと思います」と言われましたが、念のため針生検を受けたところ、乳がんであることがわかりました。
編集部
診断時の病気の状況を教えてください。
山田さん
診断の結果、ステージ2Aの乳がんであることがわかりました。HER2陽性(がん細胞の増殖に関係するHER2タンパクが乳がん細胞の表面にたくさん存在)とホルモン受容体陽性(女性ホルモンを栄養として増殖する)というタイプで、比較的進行が早いと言われています。腫瘍の大きさは約2cmでした。
編集部
診断されたときの心境を聞かせてください。
山田さん
自分のことではないような、まるで夢の中にいるような感覚でした。体は元気なのに、「がん」という言葉も、これから始まる抗がん剤治療の現実も、うまく受け止めることができませんでした。今までいた世界から切り離されたような感覚で、強い孤独を感じていました。
編集部
診断から現在まで、どのような治療をされましたか?
山田さん
術前化学療法(手術前におこなう抗がん剤治療)として、まず2種類の抗がん剤を組み合わせた治療法であるEC療法(エピルビシン+シクロホスファミド)と、ドセタキセルの投与を受けました。HER2陽性のため、トラスツズマブとペルツズマブ(細胞の増殖に関わるHER2タンパクを過剰発現している乳がんに対する代表的な治療方法)を併用する治療がおこなわれました。抗がん剤の点滴治療をスムーズに進めるため、左胸にはCVポート(中心静脈ポート)を埋め込む手術も受けました。その後、部分切除の手術を経て、現在は分子標的治療薬である「フェスゴ(ハーセプチン+パージェタの皮下注射)」を3週間ごとに継続中です。また、ホルモン治療として、ゾラデックスとタモキシフェンという薬も併用しています。
編集部
病気になり、気持ち的にも体調的にも不調なときは、治療以外でどんなことを取り入れていますか?
山田さん
病気や薬の影響で心が沈むときには、自分が「心地よい」と感じられる時間を意識して過ごすようにしています。好きなアイテムを身につけたり、心を整えるケアを取り入れたりすることも、私にとっては治療の一部のように感じています。治療に向き合いながら、自分自身をいたわる時間を重ねていくことが、前に進む力になっていると感じています。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
山田さん
体調は比較的安定しています。副作用として疲れやすさや関節の痛み、体力の低下もあるため、無理をせず「ほどほど」を心がけて暮らしています。北海道でハーブを育て、それを使ったスキンケア製品を手作りする仕事も続けています。畑で体を動かす時間は、私にとってちょうどよいリハビリにもなり、心と体のバランスを保つ助けになっています。
編集部
発症からこれまでに、印象的な出来事があれば聞かせてください。
山田さん
「全摘するべきか、部分切除にするか」で、手術直前まで本当に悩みました。主治医からは「部分切除で大丈夫」と言われていましたが、SNSなどで体験談を読むと、全摘を選んでいる人が多いように感じられ「リスクを完全になくしたい」という思いとの間で揺れました。そんなとき、院内の相談支援センターの人に相談し、それが部分切除の決断の後押しになりました。私にとっては、胸を残したことが術後の心の回復に非常に大きな意味がありました。部分切除に伴う放射線治療はたしかに大変でしたが、主治医を信じ、この選択をしてよかったと今では思っています。
病気になったからこそ感じたこと、わかったこと

編集部
山田さんにとっての心の支えは何でしょうか?
山田さん
私にとっての心の支えは、仕事を続けながら社会とつながっていられることです。長年一緒に仕事をしてきたパートナーの存在も大きく、抗がん剤治療で私が髪を丸刈りにしたとき、彼女も同じ髪型にしてくれました。また、製品を使ってくれるお客さんや、家族・友人、同じ病気と向き合う人たちとの交流にも励まされています。治療の中で「一人ではない」と感じられたことが支えになっています。
編集部
闘病する中で後悔していることや、やってよかったと思われることはありますか?
山田さん
後悔しているのは、マンモグラフィだけでなくエコー検査も受けていればよかったということです。私のがんはマンモグラフィでは見つけにくい位置にあったそうです。マンモグラフィだけでなくエコー検査も大切だと、術後になって初めて知りました。やってよかったことは、治療中でも「変化を楽しむ」という視点を持てたことです。髪が抜けたときには、洋服を作っている知人にお願いして、植物染めのヘアターバンを作ってもらいました。お気に入りのものを身につけることで、鏡を見るたびに気持ちが少し明るくなりました。現在抗がん剤が終わって約7カ月、髪はだいぶ生えそろいましたが、ターバンは今でも使用しています。また、頭皮のケアができたこともよかった点の一つです。
編集部
頭皮のケア、闘病中の思いもよらぬ副産物でしたね。
山田さん
はい。抗がん剤治療前は長年、頭皮湿疹に悩んでいたのですが、髪がなくなったことでしっかり保湿ができるようになり、結果的に湿疹が改善されたのだと思います。治療の副作用をただ「つらいこと」として終わらせず、自分なりにケアすることで思わぬよい変化が生まれたと感じています。
編集部
病気になったことで今後、医療従事者に期待することはありますか?
山田さん
医療スタッフの皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。治療中は、ちょっとした声かけや気づかいに何度も救われました。医療に携わる人々が、無理なく働き続けられる環境が整っていくことを願っています。支える側の人たちが守られることが、結果的に患者の安心にもつながると思っています。
心や体の違和感を無視しないで

編集部
検診をためらっている読者へアドバイスはありますか?
山田さん
両親ともにがんではなく、私自身も「自分はならないだろう」と思っていた病気が、ある日突然やってきました。食事や運動など、健康的な生活は比較的心がけていたと思います。この記事が、検診を少しためらっている方にとって、ご自身の体のことを考える小さなきっかけになればうれしいです。
編集部
最後に、読者や現在闘病している方々に向けてのメッセージもお願いします。
山田さん
乳がんは治療期間が長く、そのため病気のことを周りに伝えられず、不調を抱えたまま頑張っている人も少なくないと思います。私自身も、無理をしてしまう日があります。闘病中は不安を抱え、周りに理解されないと感じることもあるかもしれません。どうか無理をせず、ご自身を大切にしながら、自分のペースで過ごしていただけたらと思います。私も、そうありたいと思いながら日々を過ごしています。
編集後記
セルフチェックと、追加の検査を自ら希望し「がん」が発覚した山田さん。この積極的な行動が早期発見につながりました。今回の山田さんの体験談から「自分の体は自分で守り、整える」というメッセージが伝わってきました。自分の体だからこそ、検査や治療にも受動的ではなく積極的に取り組むのが大切なのだと感じさせられました。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。





