【闘病】「顔が変わった」容姿変貌と嘲笑の地獄… 女子学生を襲った『バセドウ病』

今回話を聞いたのは、バセドウ病を経験したYamaさん(仮称)です。Yamaさんは10代でバセドウ病を発症。多感な時期にさまざまな体験をしました。目に見えにくい疾患を抱えるつらさ――Yamaさんが闘病の苦労を語ります。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年8月取材。

Yamaさん(仮称)
少しでも受診が遅れていたら、命に関わっていた

編集部
初めに、Yamaさんの発症したバセドウ病について教えてもらえますか?
Yamaさん
バセドウ病は自己免疫疾患の一種で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることにより、さまざまな症状が表れる病気です。具体的な症状を挙げると脈が速くなる、汗を大量にかく、急激な体重減少、イライラ、食欲の増進、目が前に飛び出る(眼球突出)など。20~30代の若年女性に多い傾向があるそうです。
編集部
Yamaさんのバセドウ病が判明した経緯について教えてもらえますか?
Yamaさん
2013年8月ごろから多汗、疲れやすさ、食欲の増加が見られました。「夏の暑さのせいだ」と放置していたこともあったのか、2013年10月に入ると微熱とひどい倦怠(けんたい)感が1週間ほど続き、しまいには起き上がれないほどの状態になって。「さすがにまずい」と思って地元の総合病院を受診しました。症状を看護師に伝えたところ、「リウマチじゃないですか?」というアドバイスをもらい、整形外科へ。血液検査を受けた結果、リウマチではありませんでしたね。検査後の診察で喉仏の下の腫れを指摘されたところから、事態は急変します。先生の顔が変わり、「今すぐ耳鼻科でエコー検査と救急科で採血を受けてください」と促され、言われるがまま耳鼻科と救急科へ行くことになりました。そして、紹介先の耳鼻科でエコーを受けた後に医師から、「バセドウ病という病気です」と伝えられたのです。「あと1週間病院に来るのが遅かったら、救急車の中か家で死んでいましたよ」とも言われました。
編集部
バセドウ病と診断された時の心境を教えてください。
Yamaさん
命が危なかったことを同時に伝えられたので、頭が真っ白になりました。「私、死んじゃうの?」と頭がいっぱいになり、ほかのことを考える余裕は全くありませんでしたね。
編集部
治療は通院で行われたのでしょうか? それとも、入院して行われたのでしょうか?
Yamaさん
内科医同士で話し合った結果、通院治療となりました。2週間に一度採血検査を行い、診察と数値の確認をしながらの闘病生活でしたね。
編集部
治療方針は、どのようなものだったのですか?
Yamaさん
まずは、抗甲状腺薬の投薬治療で様子を見ることになりました。でも、2年経過しても状態の改善が見られず、完治の見込みもありませんでした。そこで、自分で調べてセカンドオピニオンを検討し、甲状腺疾患専門の病院を受診することにしました。その専門病院で甲状腺全摘出術を受け、現在はホルモン剤を飲んで過ごしています。
見た目には分からない病気のせいで周囲の目が気になる

編集部
バセドウ病は、外見にも変化を及ぼすことがあるそうですね。発症後に変わった点があれば教えてください。
Yamaさん
先ほども話した通り、治療を始めて2年間、抗甲状腺薬を処方されて飲んでいましたが、それほど状態は改善しませんでした。むしろ多汗、動悸(どうき)、激しい息切れ、食欲増進、頻脈、激しい倦怠感があるくらいでしたね。外見でいうと私の場合は眼球突出がひどく、周囲から「顔が変わったね」と言われました。涼しい気温の中で歩いていても汗をかいたり、ゆっくり歩いていても息が切れたりしてしまうため、好奇の目で見られてしまって。それがとても嫌でしたね。また当時は学生で、激しい運動を禁止されていたこともあり、体育の時間が憂鬱(ゆううつ)でした。病気に対しての浸透度がまだ低く、見学を申し出ても先生やクラスメイトの理解を得られませんでしたから……。周りから「サボっている」と思われるのがつらかったですね。
編集部
つらい日々の中、心の支えになったものは何でしょうか?
Yamaさん
まずは友人と大好きな音楽ですね。あとは、アルバイト先に同じ甲状腺疾患と闘いながら働いている人がいたことも心の支えになっていました。学生時代の友人は、私が体調を崩して学校に行けないときも連絡をくれ、心配してくれました。音楽は、つらいときにいつも私を支えてくれた大事な存在です。周りから好奇の目で見られたり、ひそひそ話をされたりするときは、自分の世界に入るためにずっと音楽を聴いていましたね。アルバイト先の人は、片方の甲状腺を摘出する手術を経験していたため、バセドウ病の症状が出て苦しいときに、よく私の話を聞いてくれました。
編集部
発症当時の自分にもし声を掛けられたら、どういった助言をしますか?
Yamaさん
「少しでもおかしいなと思った時点で病院に行ってほしい」と伝えます。あのまま「おかしい」と思いながらも放置し続けていたら、危うく命を落とすところでしたから。
編集部
現在の体調や生活について教えてください。
Yamaさん
先ほども少し話題に出ましたが、手術で甲状腺全摘出をしているため、今は甲状腺ホルモンを補う薬を服用しながら過ごしています。病気の特性上、人より疲れやすさやだるさを感じやすく、行動時間を少なめにしたり、こまめに休憩を取ったり、ゆっくり歩いたり、半日は布団の上でゴロゴロしながら動画鑑賞をしたりするなど、日常の過ごし方を工夫しています。また、ホルモン分泌のバランスが乱れている影響で代謝のコントロールがうまくいかず、汗をかきやすい状態ということもあって、夏はこまめに水分補給するようにしています。
編集部
バセドウ病患者として、「バセドウ病の知識がない人にこれだけは知っておいてほしい」ということがあれば教えてください。
Yamaさん
バセドウ病を発症すると眼球突出や急激な体重減少などにより、容姿が変わることもあります。知識がない人には、「見た目に対して何か発言することで傷ついてしまう人がいる」ということを知ってもらいたいですね。本人が望んでなったわけではないことを理解し、優しい言葉掛けと対応をしてもらえることを切に願います。
編集部
医療従事者に期待すること、望むことはありますか?
Yamaさん
たくさんの医療従事者に支えられて今の私がいます。こうして生きられているのも多くの医療従事者が関わってくれたからだと心から感じているし、本当に感謝しています。とにかく「ありがとうございます」という気持ちを伝えたいですね! ただ、世の中にはまだまだ、バセドウ病について知らない人が大勢います。医療従事者の力で、バセドウ病についての情報が広まってほしいですね。
編集部
Yamaさんが自身の闘病体験を通じて、一番伝えたいことは何でしょうか?
Yamaさん
「少しでも体の様子がおかしいなと感じたら、まずは病院を受診してほしい」ということですね。早期発見・早期治療すれば、状態もよくなりやすいですから……。また、バセドウ病の症状は個人差が表れやすいと感じています。治療にはいろいろな方法があるので、自分の体や医師の意見を参考にしながら進めていってください。
編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
Yamaさん
自分が分からない、知らないだけで、内臓疾患や内分泌の障害で闘病している人はたくさんいます。もしかしたら身近な友人や職場の人が、人には話さないだけで何かを抱えているかもしれません。それくらい病気は目に見えないものなのです。だからこそ、つらそうにしている人を見たら「もしかしたら何か病気を持っていてつらいのかもしれない」と想像力を膨らませ、思いやりをもって接してほしいなと思います。「あなたを気にかけています」というサインがあるだけでも、その人の心の支えになるはずです。
編集後記
バセドウ病の女性患者数は、男性に比べて約5倍いるといわれており、若い女性は特に注意すべき病気です。病気と気付きにくい症状の多いバセドウ病を早期発見・早期治療するには、普段から自分自身の体調に目を向けることが大切です。普段とは違う症状、体の違和感などがあるときは、医療機関に相談し、悪化する前に治療を開始しましょう。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
田島 実紅(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。



