話題の「やせ薬」GLP-1は安全なのか? 副作用・肝臓への影響を専門医が解説

「飲むだけで痩せる」「注射するだけでラクに痩せられる」と話題のGLP-1ダイエット。SNSや美容クリニックの広告で見かけて、気になっている方も多いのではないでしょうか。しかし、GLP-1受容体作動薬はもともと糖尿病の治療薬であり、肝臓をはじめとする臓器への影響が十分に知られていません。そこで、日本肝臓学会専門医であり臨床心理士でもある「SUGAR」の佐藤先生に、「GLP-1薬が肝臓に与える影響と、安全に向き合うための知識」について伺いました。

監修医師:
佐藤 将人(SUGAR LLC)
GLP-1ダイエット薬と肝臓の意外な関係

編集部
そもそもGLP-1とは何ですか? なぜ「やせ薬」として使われているのか教えてください。
佐藤先生
このGLP-1の作用を人工的に再現したのが「GLP-1受容体作動薬」で、セマグルチド(ウゴービなど)やチルゼパチド(ゼップバウンドなど)などがあります。
編集部
GLP-1受容体作動薬はダイエットを目的とした薬なのですか?
佐藤先生
編集部
GLP-1受容体作動薬ですが、副作用や安全性の観点から、肝臓への影響を気にする声もあります。実際のところはいかがでしょうか?
佐藤先生
また、肝臓の線維化(硬くなること)の改善も36.8%で認められています。
編集部
副作用どころか、むしろ肝臓の状態を改善する可能性があるということですか?
佐藤先生
ただし、これらの研究結果はあくまで医師の管理下で適正に使用した場合のデータです。自己判断での使用とは状況がまったく異なることを、肝臓専門医として強調しておきます。
編集部
代謝を改善するからこそ、肝臓にも良いのですね。ちなみに最近、脂肪肝の呼び名が変わったというのは本当ですか?
佐藤先生
この変更の背景には、「fatty(脂肪の)」という言葉が持つスティグマ(偏見)を解消する意図があります。世界人口の約30%が羅患しているとされ、GLP-1薬の治療ターゲットとしても注目されています(※4)。健康診断で「脂肪肝」と言われたことがある方は、この新しい名前を覚えておくといいかもしれません。
肝臓専門医が警告するGLP-1ダイエットのリスク

編集部
結局のところ、ダイエット目的でGLP-1薬を使うことは問題ないのでしょうか?
佐藤先生
さらに、PMDA(医薬品医療機器総合機構)もダイエット目的での使用に対して正式に注意喚起を発出しています。適応外使用で健康被害が起きた場合、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性がある点も重要です(※6)。
編集部
GLP-1薬の副作用にはどのようなものがありますか?
佐藤先生
また、頻度は低いものの、急性膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺(胃の動きが極端に低下する状態)といった重篤な副作用も報告されています(※7)。
編集部
肝臓への副作用についても教えてください。
佐藤先生
臨床心理士と中小企業診断士でもある立場から申し上げると、「副作用が怖いから一切ダメ」でも「SNSで良いと聞いたから大丈夫」でもなく、リスクとベネフィットを冷静に天秤にかけることが大切です。
編集部
GLP-1薬をやめるとリバウンドすると聞きました。本当でしょうか?
佐藤先生
ある研究では、セマグルチド中止後1年間で減量分の約3分の2がリバウンドしたとの報告もあります(※8)。このことは、GLP-1薬が「飲んでいる間だけ効く対症療法」であり、根本的な生活習慣の改善なしには持続的な効果が得られないことを意味しています。
編集部
単に体重が戻るだけでなく、肝臓そのものにもダメージがあるのでしょうか?
佐藤先生
結局のところ、「無理なく、長期的に、いかに生活習慣を整えていくか」。これは最新の薬が登場しても変わらない、昔からずっと大切にされてきた健康の本質です。薬はあくまで補助であり、主役は私たち自身の日々の生活習慣の改善であることを、肝臓専門医として改めてお伝えしたいと思います。
GLP-1薬との正しい付き合い方と肝臓を守るセルフケア

編集部
GLP-1薬を使用中に、肝臓のために気をつけるべきことはありますか?
佐藤先生
編集部
数値のモニタリング以外に、日常生活で特に意識すべき点はありますか?
佐藤先生
編集部
GLP-1薬に頼らず脂肪肝を改善する方法についても教えてください。
佐藤先生
編集部
具体的にどのようなことをおこなえばいいのでしょう?
佐藤先生
「それができないから薬に頼りたい」と思う気持ちは臨床心理士として理解できます。しかし、まずは自分にできる小さな一歩から始めることが、結果的に最も持続可能で安全な方法です。
編集部
GLP-1薬の使用を検討している場合、どこに相談すべきですか?
佐藤先生
また、肝臓にすでに問題がある方は、投与前に肝機能の詳細な評価が必要です。個人輸入やオンラインでの安易な入手は、偽造薬のリスクや適切な医学的管理を受けられないリスクがあり、極めて危険です。ご自身の肝臓と健康を守るために、必ず対面で診察を受けた上で判断してください。
編集部まとめ
GLP-1受容体作動薬は、適切に使えば脂肪肝を改善する可能性のある薬です。しかし、ダイエット目的での安易な使用には消化器系の副作用やリバウンドなど、見過ごせないリスクが伴います。まずは健康診断の肝機能の数値を見直し、必要であれば専門医に相談することが第一歩です。体重の7〜10%の減量で脂肪肝は大きく改善します。「楽して痩せたい」気持ちを否定するのではなく、正しい知識で自分の体を守る選択をしてください。
参考文献
- ※1.Drucker DJ. Mechanisms of Action and Therapeutic Application of Glucagon-like Peptide-1. Cell Metab. 2018;27(4):740-756.doi:10.1016/j.cmet.2018.03.001
- ※2.Sanyal AJ, Newsome PN, Engbretsen KA, et al. Phase 3 Trial of Semaglutide in Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis. N Engl J Med. 2025;392(21):2089-2099.doi:10.1056/NEJMoa2413258
- ※3.Newsome PN, Buchholtz K, Cusi K, et al. A Placebo-Controlled Trial of Subcutaneous Semaglutide in Nonalcoholic Steatohepatitis. N Engl J Med. 2021;384(12):1113-1124.doi:10.1056/NEJMoa2028395
- ※4.Rinella ME, Lazarus JV, Ratziu V, et al. A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. Hepatology. 2023;78(6):1966-1986.doi:10.1097/HEP.0000000000000520
- ※5.日本糖尿病学会. GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解. 2023年11月28日改訂.
- ※6.PMDA(医薬品医療機器総合機構). GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ.
- ※7.Sodhi M, Rezaeianzadeh R, Kezouh A, et al. Risk of Gastrointestinal Adverse Events Associated With Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists for Weight Loss. JAMA. 2023;330(18):1795-1797.doi:10.1001/jama.2023.19574
- ※8.Wilding JPH, Batterham RL, Davies M, et al. Weight regain and cardiometabolic effects after withdrawal of semaglutide. Diabetes Obes Metab. 2022;24(8):1553-1564.doi:10.1111/dom.14725
- ※9.Vilar-Gomez E, Martinez-Perez Y, Calzadilla-Bertot L, et al. Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis. Gastroenterology. 2015;149(2):367-378.doi:10.1053/j.gastro.2015.04.005




