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「大腸がんに気づくきっかけ」とは? 早期発見のために知っておくべきことについて医師が解説

 公開日:2025/04/22
「大腸がんに気づくきっかけ」とは? 早期発見のために知っておくべきことについて医師が解説

大腸がんは早期発見・治療することで完治する可能性は高く、決して恐れるだけの病気ではありません。一方で、初期にはほとんど症状がないため、気づかないまま進行してしまうケースも少なくないと言います。今回は、大腸がんの初期症状や進行した場合の兆候、早期発見のためにできる検査や予防法について、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院 院長の柏木宏幸先生に詳しく解説していただきました。

柏木 宏幸

監修医師
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)

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2010年埼玉医科大学卒業後、沖縄にて初期臨床研修をおこない、東京女子医科大学病院消化器病センター内科へ入局。女子医科大学病院消化器内科助教となり複数の出向病院で勤務し、2023年4月に池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、一般社団法人日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医、難病指定医。

大腸がんの初期症状

大腸がんの初期症状

編集部編集部

はじめに大腸がんの初期症状について教えてください。

柏木 宏幸先生柏木先生

基本的にがんの初期症状はない場合が多いとされています。症状が出現したときには、ある程度進行していることが多いですが、がんが発生した場所によっては早期から症状が認められることもあります。初期の大腸がんの場合は、無症状の場合がほとんどです。ある程度早い段階で見つかるケースは肛門に近い直腸やS状結腸にがんができて出血しているケースですが、そのような状態でもがんは進行している場合が多いですね。漠然とした違和感や軽い消化器症状をきっかけに、大腸内視鏡検査をしたら大腸がんが見つかるということは多くあります。

編集部編集部

初期症状が現れないことのほうが多いのですね。

柏木 宏幸先生柏木先生

そうですね。大腸がんの症状の多くは進行しないと出現しません。便などの刺激により大腸がんから出血して、血便で気づかれることはありますが、多くは肉眼ではわからないくらいの微量な出血が起こります。わずかな出血を検出してくれる検査が「便潜血検査」であり、大腸がん検診で用いられています。

編集部編集部

大腸がんの初期症状と似た症状が見られる、ほかの疾患はありますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がんの初期に起こりえる症状と似た症状が見られる疾患には様々なものが挙げられます。血便に関しては「痔」、その他「良性疾患(憩室出血、感染性腸炎など)」による出血でも起こりえます。腹痛や腹部膨満感、便秘、下痢といった消化器症状は「便秘症」や「過敏性腸症候群」「腸炎」などでも起こります。いずれにしても総合的な評価とともに経過や症状から医師は患者さんに検査を提案しますので、普段と異なる症状があれば医療機関への受診が勧められます。

大腸がんの症状と早期発見による生存率

大腸がんの症状と早期発見による生存率

編集部編集部

大腸がんの進行期にはどのような症状が現れますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がんが進行した場合の症状は、血便腹痛腹部膨満感便秘下痢貧血食欲不振体重減少倦怠感などがあります。便が通る際に大腸がんから出血して血便を起こし、血便が持続すると、貧血を引き起こすことがあります。そのため、ふらつきや息切れといった貧血症状で受診される方もいます。また、大腸がんは進行すると腫瘍が大きくなるので、便が通りにくくなります。その結果、便秘になり、腹痛や腹部膨満症状を起こすこともあれば、便が細くなることや水分吸収の異常が起こり、下痢症状が出るなど、排便の変化が起こります。便が完全に通過できなくなると腸閉塞といって、嘔吐や腹痛などの激しい症状が起こります。さらに進行すると肝臓や肺など全身に転移するため、食欲不振や体重減少、倦怠感などの全身症状を起こすこともあります。

編集部編集部

大腸がんで起こるような症状が見られた場合は、すぐに受診すべきなのでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

通常は年齢や経過、症状から大腸がんの可能性や、その他の疾患リスクも考え、必要な検査を提案されます。様々な症状に関して、ほかの病気でも起こりえることから医師でも判断が難しい場合もあるため、自己判断は難しいと思います。気になる症状がある場合は、長い間症状を放置することはせずに、受診することをお勧めします。血便や健診の便潜血検査陽性が出たときに痔だろうと自己判断されて、結果的に進行性の大腸がんであったというケースが度々あるため注意が必要です。

編集部編集部

具体的にどのような症状がある場合に受診すべきですか?

柏木 宏幸先生柏木先生

これまでに経験したことのない症状がある、40歳以降で消化器症状がある場合には早めに受診すべきだと思います。また20代、30代の人でも大腸がんの家族歴がある方は早めに受診すべきですし、大腸がん以外に治療が必要な病気(炎症性腸疾患など)が隠れていることもありますので、症状が続く場合や変化があれば受診していただくことをお勧めします。

編集部編集部

大腸がんが早期発見されると、生存率はどのくらい上がりますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

早期発見すると95%以上の人が治ります。さらに早期発見であるほど、生存率は高くなります。がんは進行の程度(ステージ)によって、治療法や生存率が変化します。ステージはⅠ期〜Ⅳ期まであり、生存率を表す指標は5年生存率(がんと診断された人が5年後に生存している割合を表したもの)です。大腸がんの5年生存率はⅠ期 98.8%、Ⅱ期 90.9%、III期 85.8%、Ⅳ期 23.3%です。ほかのがんと比較しても、大腸がんはステージⅠ期の生存率は非常に高く、ステージⅡ期・Ⅲ期であっても手術や術後補助化学療法による治療効果が期待できます。しかし、ステージⅣ期という遠隔転移を認めた状況では、ステージⅢ期の生存率と大きな差があり、早期発見により治療することで生存率が大きく変わる代表的ながんといえます。

大腸がんを早期発見、予防する方法

大腸がんを早期発見、予防する方法

編集部編集部

大腸がんを早期発見するためには、一般的にどのような検査が必要ですか?

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸の検査は便潜血検査大腸内視鏡検査注腸検査大腸CT検査があります。それぞれの検査にはメリット・デメリットがあり、検査の簡便さや状況により検査法を選択します。早期の大腸がんを発見するための精密検査として、一般的なのは大腸内視鏡検査です。内視鏡(スコープ)を肛門から挿入し観察するため、腸の内部を直接確認することで色調の変化や微小な凹凸の変化を確認することができ、大腸がんだけでなく炎症などの評価にも有用です。病気が疑われた場合にも生検(病理診断)や腫瘍切除などをおこなうことができます。最近では鎮静剤を使用することにより、以前と比べて楽に検査を受けられる施設が増えています。

編集部編集部

便潜血検査や大腸内視鏡検査は、何歳からどのくらいの頻度で受けるのが良いですか?

柏木 宏幸先生柏木先生

各市町村でおこなわれる大腸がん検診(便潜血検査)は40歳から対象となり、毎年定期的に検査を受けることが推奨されます。過去の統計からも40歳から大腸がんを発症する方が多いことから、大腸内視鏡検査も40歳を目途に受けていただくことが勧められます。一方で、20代、30代で大腸がんを発症するケースもあり、ご家族に大腸がんを患った方がいる場合や喫煙者、肥満の人、消化器症状が認められる場合には40歳未満であっても大腸内視鏡検査を受けていただきたいですね。大腸内視鏡検査に関しては大腸ポリープ切除の有無、切除した個数によって定期検査の間隔が変わるため、主治医に確認することをお勧めします。

編集部編集部

大腸がんを予防する方法についてアドバイスを教えてください。

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がんの予防としては「大腸内視鏡検査を受けること」「生活習慣に注意頂くこと」です。大腸がんの多くは良性のポリープ(腫瘍)が原因となるため、大腸がんの前段階である大腸ポリープの早期治療が重要です。そのため、大腸がんを発症する前に大腸内視鏡検査を受けていただくことが勧められます。また、生活習慣に関しては偏った食生活の改善、加工肉や赤肉類の食べすぎに注意、カルシウムの摂取、食物繊維の摂取、節酒、禁煙、運動不足の解消、腸内環境を整える、肥満を改善するなどが挙げられます。

編集部まとめ

大腸がんは初期に明確な症状が出にくいため、定期的な検診や日頃の体調変化に敏感になることが大切です。特に40歳を過ぎた方や、家族歴がある方は、早期発見のためにも便潜血検査や大腸内視鏡検査を積極的に受けることが勧められると教えていただきました。また、食生活や運動習慣の見直しも、大腸がんの予防につながると改めて学ぶことができました。本稿が読者の皆様にとって、大腸がんへの理解を深めるきっかけとなりましたら幸いです。

医院情報

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院
所在地 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-21-1 ラグーン池袋ビル6F
アクセス 「池袋駅」35番出口より徒歩3分
「東池袋駅」2番出口より徒歩5分
診療科目 消化器内科、内視鏡内科、内科

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