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【初公開】桑野信義、大腸がんステージ3で「人工肛門の姿」排泄障害の地獄を告白(2/2ページ)

 公開日:2025/06/25
【初公開】桑野信義、大腸がんステージ3で「人工肛門の姿」排泄障害の地獄を告白

桑野信義、人工肛門を外し「トイレ3時間おき、オムツ生活」過酷な再出発を語る

桑野信義、人工肛門を外し「トイレ3時間おき、オムツ生活」過酷な再出発を語る

端山軍先生端山先生

桑野さんが実際に受けられた治療について教えてください。

桑野信義さん桑野さん

まずは抗がん剤治療から始まり、その後15時間に及ぶロボット手術(ダビンチ手術)を受け、手術後は再び抗がん剤治療をおこなうという治療の流れでした。一生人工肛門での生活は避けたいという思いが強く、そのためには手術前にがんをできるだけ小さくする必要があり、術前の抗がん剤治療を受けることになりました。副作用は現在も残っています。

端山軍先生端山先生

手術時間も長く、大変な治療でしたね。大腸がんの一般的な治療方法はがんの進行度によって異なりますが、ステージ4の場合を除き、基本的には内視鏡で切除可能な早期がんであれば内視鏡治療、それ以外は手術が選択されます。手術の前に抗がん剤治療をおこなう治療方法は比較的新しいアプローチだと思います。実際に抗がん剤治療はつらくありませんでしたか?

桑野信義さん桑野さん

抗がん剤治療は本当につらかったですね。術後の抗がん剤治療は途中で断念してしまいました。術前・術後ともに副作用が強く、特に手足のしびれや口内炎、歯ぐきの退縮、下痢の症状がとてもつらかったです。肌に色素沈着も残り、現在もしびれと下痢の症状が後遺症として残っています。

端山軍先生端山先生

抗がん剤はがん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にも影響を与えるため、副作用が出やすいのです。術前はがんを小さくして手術を安全におこなうため、術後は再発を防ぐために使われます。代表的な副作用には、吐き気やしびれ、倦怠感などがあります。人によっては、吐き気止めが効かない場合もあります。

桑野信義さん桑野さん

私もまさにその一人で、吐き気止めはあまり効きませんでした。一時は気分が滅入るほどの状態となり、精神的にも厳しいものでした。それでも治療を乗り越えられたのは支えてくれる家族やスタッフ、そして「絶対に治してみせる。人工肛門は外す」という強い目標があったからだと思っています。

端山軍先生端山先生

桑野さんの場合は、強い抗がん剤を使用したことで副作用も強く出ていたのではないかと推察します。抗がん剤の副作用は一時的のものもありますが、治療後も後遺症として残るケースも少なくありません。

桑野信義さん桑野さん

私は音楽活動でトランペットを吹く機会もあるため、手のしびれや歯ぐきの退縮による歯のぐらつきは特に気がかりです。インプラント治療の時間も取れず、現在は週に2回ほど歯科へ通院し、応急的な処置で対処している状況です。

端山軍先生端山先生

人工肛門をご経験されたとのことですが、当時の状況や心境について教えてください。

桑野信義さん桑野さん

初めから「一生人工肛門は嫌だ」と言っていたので、主治医の先生も頑張ってくださり、一時的な人工肛門生活ではありました。術前の説明では、人工肛門が左側についていたら一生人工肛門、右側についていれば一時的な人工肛門だと説明されていました。手術後に右側についていることを確認した時はとてもほっとしたことを覚えています。

端山軍先生端山先生

人工肛門は腫瘍の位置や治療方針によって設置位置が変わります。手術の難易度で言えば左側につける永久人工肛門のほうが容易ではありますが、桑野さんは右側に設置されたとのことで難易度の高い手術であったと思います。永久的な人工肛門になる方も少なくありません。

桑野信義さん桑野さん

なぜ一時的に人工肛門にする必要があるのでしょうか?

端山軍先生端山先生

直腸を全て切除する場合は、肛門も閉鎖されるため一生人工肛門で生活する必要が出てきます。一方で、一時的な人工肛門の場合は、腫瘍がある部分の腸を切除した後に、残った腸と腸を縫合しますが、縫合不全を予防するために人工肛門を使用して、手術した箇所を保護する役割があります。

桑野信義さん桑野さん

そのような意味があるのですね。私は3ヵ月間人工肛門での生活を送りましたが、常に注意を要する日々でした。3時間ごとにトイレに行き、排便物を処理する必要がありましたし、2〜3日に一度は人工肛門全てを交換しなければならず、大変な思いをしました。

端山軍先生端山先生

人工肛門の管理方法を覚えることも大変ではありませんでしたか?

桑野信義さん桑野さん

一般的には漏れてしまうことや人工肛門が外れてしまうことが多くあるようなのですが、3ヵ月間一度も便が漏れることなく生活することができ、看護師さんにも優等生だと褒めていただきました。

端山軍先生端山先生

それは素晴らしいことだと思います。人工肛門について公表することに抵抗はありませんでしたか?

桑野信義さん桑野さん

初めは抵抗がありましたが、人工肛門の人がとても多くいることを知り、むしろ隠していることの方が恥ずかしいと感じるようになり、公表することに抵抗がなくなりました。

端山軍先生端山先生

桑野さんのお話を聞いて、人工肛門に対して前向きに考えられる方が増えるといいなと思います。人工肛門を外した後の生活について教えていただいてもよろしいでしょうか?

桑野信義さん桑野さん

人工肛門を外した後も、それはそれで地獄でした。3ヵ月間お尻を使っていなかったので、意思に関係なく排泄してしまう状態が続き、オムツや生理用ナプキンを使いながらの生活でした。汚れるとすぐにオムツを取り替えなければならないですし、肌もかぶれてしまい、本当に苦労しました。今は少しずつ改善していますが、今でもオムツは欠かせない状況です。

端山軍先生端山先生

とても大変な状況だと思います。中には、そのような生活に耐えられず、人工肛門に戻す選択をする人もいるほどです。来年の2月で寛解とのことですが、再発防止のために心がけていることはありますか?

桑野信義さん桑野さん

抗がん剤治療を終えた後、いろいろ調べて自分にとっていいと思う健康法を実践しています。食生活には特に気をつけるようになりました。もともと糖尿病もありましたが、今はHbA1cが6.1まで下がっています。目標を持ち、バイタリティーを高めることが免疫力を上げることにもつながるのではないかと感じています。

端山軍先生端山先生

医学的な証明は難しい部分もありますが、強い意志や明確な目標を持つことが回復に良い影響を与える可能性もあります。最も重要なことは、早期発見・早期治療です。大腸カメラは保険制度上、初回の検査から受けられないこともありますが、検診を定期的に受け、便潜血検査での異常など、何か症状があれば自己判断せずに病院を受診することが重要です。

桑野信義さん桑野さん

今だからこそ言えますが、もっと早く健康診断を受けておけばよかったと思います。もし当時、検診や内視鏡検査を受けていれば、これほどまでにつらい経験をせずに済んだのではないかと今では感じています。

端山軍先生端山先生

大腸カメラは近年、鎮静剤の使用によって苦しい検査ではなくなってきており、鎮静剤を使用すると眠っている間に検査が終了します。ポリープの段階で発見し切除することで、大腸がんの発症そのものを防ぐことが可能です。定期的な検診をぜひ習慣にしていただきたいと思います。

桑野信義さん桑野さん

私もがんにはならないと思っていたように「自分は大丈夫」「病気とは無縁だ」と思い込んでしまう気持ちは、誰にでもあるのかもしれません。しかし、がんは誰にでも起こり得る病です。少しでも異変を感じたら自己判断せず、早めに受診をしていただきたいと思います。

編集部まとめ

抗がん剤治療の副作用や人工肛門、排泄障害など、私たちが想像する以上に過酷な日々を乗り越えてきた桑野さんの言葉には重みと説得力がありました。がんは誰にでも起こり得る病気であり、ほんのわずかな異変を見逃さず、早期に受診することの大切さを改めて感じました。本記事が読者の皆様にとって、大腸がんをはじめとするがんへの理解を深め、検診の重要性を再認識するきっかけとなりましたら幸いです。

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この記事の監修医師