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【初公開】桑野信義、大腸がんステージ3で「人工肛門の姿」排泄障害の地獄を告白(1/2ページ)

 公開日:2025/06/25
【初公開】桑野信義、大腸がんステージ3で「人工肛門の姿」排泄障害の地獄を告白

血便を痔と思い込み、3年間も受診を先送りにしていた桑野信義さん。ようやく受けた検査の結果は、直腸がんステージ3bでした。抗がん剤治療と15時間に及ぶロボット手術、そして人工肛門の造設を経験し、現在もなお、後遺症や排泄障害と向き合う壮絶な日々を送っています。今回は桑野さんの体験を通じて、大腸がんにまつわる情報と検診の重要性について、日本消化器外科学会専門医の端山軍医師と桑野信義さんにお話していただきました。

【写真あり】桑野信義、人工肛門の姿

桑野信義さん

桑野 信義(タレント・ミュージシャン)

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1980年シャネルズ(後のラッツ&スター)のトランペッターとして、シングル『ランナウェイ』でデビュー。フジテレビ『志村けんのバカ殿さま』の“じぃ”などバラエティー番組にも多数出演し“くわまん”の愛称で親しまれる。K3Bでは“モーレツラッパ吹き”としてメンバーをまとめる。主な出演作品にフジテレビ『カスペ!志村けんのバカ殿さま』『ハモネプ☆スターリーグ』、テレビ埼玉『くわまんのパチパチTV』、CM『明治乳業「うまかぼー」』、舞台『志村魂』などがある。2020年に大腸がんを発症し闘病生活をおくる。2022年には自身の闘病記を出版。

端山軍先生

監修医師
端山 軍(おなかとおしりのクリニック東京大塚 院長)

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2002年帝京大学医学部卒業。日本大腸肛門病学会専門医・指導医。日本消化器病学会消化器病専門医・指導医。日本外科学会専門医・指導医。日本消化器外科学会専門医・指導医。日本癌治療認定医機構がん治療学会認定医。消化器がん治療認定医。外科医として23年間、帝京大学医学部附属病院で勤務し准教授を歴任。消化器疾患や肛門疾患の診療・治療に携わる。数多くの治療を通じて、病気の早期発見・早期治療がいかに重要であるかを実感し、その重要性を地域の皆様と共有したいという思いから、胃腸科・肛門科を専門とするクリニックを開業。大腸がんの撲滅を目標に掲げ、内視鏡検査を中心とした高品質な医療を提供している。

「死ぬのか」痔と思い込み、血便でも3年放置し続けた先の恐怖

「死ぬのか」痔と思い込み、血便でも3年放置し続けた先の恐怖

端山軍先生端山先生

現在の体調はいかがですか?

桑野信義さん桑野さん

体調は良好です。寛解とされるのは5年後とのことで、来年2月がその節目になります。ただ、人工肛門を外した後から排泄障害と診断され、今もオムツを着用する生活を続けています。実のところ、人工肛門を外した後からが本当の闘いの始まりでした。

端山軍先生端山先生

体調は良好とのことで安心しましたが、今も後遺症でつらい思いをしているのですね。現在、何か治療は継続されていますか?

桑野信義さん桑野さん

治療は終了していますが、CTやMRIなどの検査は今も欠かさず、定期的に通院しています。

端山軍先生端山先生

がんの治療が終わった後も定期的な検査は重要ですね。今後も欠かさず検査をしていただきたいと思います。がんが発覚した当時のことを教えていただいてもよろしいですか?

桑野信義さん桑野さん

はい。もともと大酒飲みで芸能界という仕事柄、どうしても生活は不規則になりがちでした。下痢と便秘を繰り返すことも多く、特に気にしていなかったのですが、ある時から便秘がひどく排便が難しくなりました。トイレットペーパーに血がついていたこともありましたが、ウォシュレットの使いすぎによる切れ痔ではないかと思ったり、病気ではないと自分に言い聞かせたりしていました。

端山軍先生端山先生

そうなのですね。仕事の特性上、なかなか病院に行くタイミングも見つかりづらいかもしれませんね。病院嫌いではありませんでしたか?

桑野信義さん桑野さん

たしかに病院に行きたくないという気持ちが強く、なかなか受診に踏み切れませんでした。それでも、次第にふらつきやめまいといった症状が出てきて、これはただ事ではないと感じ始めました。そんな私の背中を押してくれたのが、マネージャーや家族で、気づけば症状が出始めてからすでに3年が経っていました。

端山軍先生端山先生

かなり強く症状が出始めてから病院に行かれたのですね。診断に至るまではどのような検査を受けられましたか?

桑野信義さん桑野さん

64歳で初めて内視鏡検査を受けました。特にお尻を見せるのが嫌で今まで避けてきましたが、麻酔を使用した検査だったので思っていたほどつらくはありませんでした。検査の結果、ポリープが見つかり内視鏡では取りきれないほど大きなものがあることがわかりました。数日後、先生から写真を見せてもらいながらステージ3bの直腸がんであること、そしてリンパ節への転移もあることを告げられました。

※大腸がんは、大腸に発生するがんの総称で、直腸がんは大腸がんの一種

端山軍先生端山先生

がんの診断を受けた時、どのような心境でしたか?

桑野信義さん桑野さん

まさか、ステージ3bにまで進行しているとは思っていませんでした。「自分は死ぬのか」と聞いたら、先生は「頑張ってみましょう」とだけ答えました。その時になって、ようやくこれは本当に危ないと自覚したことを覚えています。

端山軍先生端山先生

ステージ3とは、リンパ節転移があることを指します。

桑野信義さん桑野さん

さすがに大変な状態だと思いました。ちなみに、大腸がんの初期症状にはどのようなものがあるのでしょうか?

端山軍先生端山先生

大腸がんは初期の段階では自覚症状が出にくいため、健康診断の便潜血検査などで早期に発見されるケースがあります。ある程度進行してくると、血便や便が細くなるといった排便異常、体重減少、貧血、食欲不振、腸閉塞などの症状が現れるようになります。桑野さんも体重がかなり減少したとお聞きしました。

桑野信義さん桑野さん

はい。10kgほどは減少したと思います。もともとあまり食べないタイプではありましたが、それでも食欲がなくなっていきました。体がどんどん弱っていく感じでしたね。血便をきっかけに受診される方も多いと思いますが、私の場合は血便を痔だと思い込んでいました。がんと痔の違いを自分で判断することは可能なのでしょうか?

端山軍先生端山先生

患者さん自身が痔による出血なのか、それともがんによる出血なのかを判断するのは非常に難しいと思います。痔は肛門に近い場所での出血が多く、大腸がんの場合はより奥から出血することが多いのですが、肉眼での見分けは困難です。血便があれば必ず内視鏡検査を受けることをおすすめします。

桑野信義さん桑野さん

今考えてみれば、早く受診するべきだったと思います。体重減少やふらつき、めまいの症状はがんの進行を意味していたと思うと怖いですね。大腸がんの原因についても教えてください。

端山軍先生端山先生

大腸がんのリスク要因としては、加齢や生活習慣の乱れ、食生活の欧米化が挙げられます。肉類や脂っこい食事の摂取量が増え、食物繊維が不足すると、がんのリスクが高まるとも言われています。遺伝性の大腸がんもありますが、それは全体のごく一部です。多くは自然発生的に起こるもので、特に50代から発症率が上がり、60~70代がピークになります。

桑野信義さん桑野さん

そうなのですね。私も当時、生活習慣はとても乱れていたと思います。

端山軍先生端山先生

桑野さんはご家族で大腸がんの方はいらっしゃいましたか?

桑野信義さん桑野さん

家族で大腸がんの人はいないので、遺伝が原因の大腸がんではないと思っています。大腸がんの検査方法についても教えてください。

端山軍先生端山先生

便潜血検査で異常が見つかった場合、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で詳しく検査をします。CTやMRIを併用することもありますが、最終的な診断は大腸カメラでおこなうのが基本的な方法です。桑野さんのように、治療後も半年に1回は画像診断をおこない、再発の有無をチェックする必要があります。

桑野信義さん桑野さん

大腸がんのステージごとの生存率や再発率についても教えてください。

端山軍先生端山先生

大腸がんの5年生存率は70%ほどと言われています。桑野さんのようにステージ3の場合、5年生存率は50〜60%ほど、再発率は30%ほどです。ステージ2の場合は5年生存率が70%ほど、再発率が15%ほどです。ステージ1では5年生存率は90%以上、再発率も5%ほどまで下がります。ステージ4になると、治療が難しくなり、5年生存率も20%前後と低くなります。

桑野信義さん桑野さん

病気になってからは、いろいろ調べるようになりましたね。生存率や再発率のデータは昔は興味もありませんでしたが、今は自分ごととして真剣に勉強しています。

端山軍先生端山先生

大腸がんの多くはポリープが大きくなることで発生する可能性があることがわかっています。ポリープにも種類があり、腫瘍性と非腫瘍性のものがありますが、大腸カメラをおこない、早期発見・早期治療をおこなうことで大腸がんの予防につながります。ぜひ、皆さんには一度でも大腸カメラをしていただきたいと思います。

桑野信義さん桑野さん

そうですね。自己判断せず、早めの受診が大切だと実感しました。

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この記事の監修医師