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佐藤B作、胃がん手術後に「まさかの食道がん」発覚… 死を覚悟した壮絶闘病(1/2ページ)

 公開日:2025/03/21

胃がんは初期症状が少なく、発見が遅れることが多いがんの一つです。胃の3分の2を切除し一命をとりとめた矢先、食道がんが見つかった佐藤B作さんですが、どのような闘病生活を送っていたのでしょうか。放射線治療や抗がん剤治療、免疫療法など、壮絶な闘いを振り返りながら、胃がんの実態について深掘りします。がんと向き合う皆様に向けて、今回は昭和大学医学部腫瘍内科主任教授で日本がん治療認定医機構がん治療認定医の角田卓也先生と佐藤B作さんにお話しいただきました。

【写真あり】佐藤B作「胃がんの次は食道がん…」苦闘中の姿

佐藤B作さん

佐藤B作(俳優)

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1949年2月13日生まれ。福島県出身。1973年 劇団東京ヴォードヴィルショー結成。「日本の喜劇」にこだわった公演活動を続けながら2023年 創立50周年を迎える。結成以来座長を務める。〈受賞歴〉・1986年 第21回紀伊國屋演劇賞個人賞(『吉ちゃんの黄色いカバン』)・22年 第29回読売演劇大賞優秀男優賞(『ザ・空気ver.3』)/第47回菊田一夫演劇賞(『サンシャイン・ボーイズ』)・24年 第45回松尾芸能賞優秀賞。また、劇団としても・1978年 第15回ゴールデンアロー賞芸能賞(新人賞)・13年 第48回紀伊國屋演劇賞団体賞など受賞歴多数。

角田卓也先生

監修医師
角田 卓也(日本がん治療認定医機構がん治療認定医)

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1987年和歌山県立医科大学卒業。米シティー・オブ・ホープがん研究所に留学。東京大学医科学研究所准教授などを経て2010年がんに対する新薬開発のバイオベンチャー代表取締役社長に就任。16年昭和大学臨床免疫腫瘍学講座の教授。18年より現職の内科学講座の腫瘍内科部門主任教授/腫瘍センター長。専門分野は腫瘍内科学・腫瘍免疫学。日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本外科学会認定登録医、日本消化器外科学会認定登録医・指導医、臨床研修指導医。

治療を先延ばしたのが間違いだった…「胃がん」発覚当時の後悔

治療を先延ばしたのが間違いだった…「胃がん」発覚当時の後悔

角田卓也先生角田先生

現在の体調はいかがですか?

佐藤B作さん佐藤さん

今でも油断はできませんが、医師からは完治の診断を受けています。

角田卓也先生角田先生

元気に過ごされているとのことで安心しました。胃がんが発覚したきっかけや当時の状況について教えてください。

佐藤B作さん佐藤さん

自覚症状は何もなく、痛くも痒くもない状態でした。共演者から「最近、酒が残るって聞いたけど、健康診断は行っているのか?」と声をかけられ、何年も受けていないなと思い、健康診断を受けに行ったところ、胃がんが見つかりました。

角田卓也先生角田先生

自覚症状はなかったのですね。

佐藤B作さん佐藤さん

はい。お酒もご飯も美味しいと感じていましたし、体重が減るということもなかったので「こんなに元気なのに、がんがあるなんて」と驚きました。さらに、開腹してみないとどのくらいがんが広がっているかわからないから、明日にでも手術しなければならないと言われるほどの状況でした。

角田卓也先生角田先生

そうなのですね。すぐに治療はおこなったのですか?

佐藤B作さん佐藤さん

いいえ。手術は1ヵ月後におこないました。ちょうど劇団の公演が残っていて、ひと月だけ待ってほしいと医師に頼んだところ、先生に「君は死んでもいいのか」と激怒されてしまいました。しかし、当時は劇団員の生活もあり、公演を投げ出すわけにはいかないという想いでいました。手術室に入るときは、死を覚悟し、もう最後の橋を踏んだなと思っていました。

角田卓也先生角田先生

ステージはどのくらいと診断されたのですか?

佐藤B作さん佐藤さん

ステージ1か2だったと思います。

角田卓也先生角田先生

胃がんが発覚する前に、人間ドックや健康診断は一度も受けていなかったのですか?

佐藤B作さん佐藤さん

今は半年ごとに検診に行っていますが、当時は全く行っていませんでした。病院は怪我や病気を患った時に行くものだと思っていました。ちなみに、胃がんはどのようなことが原因で発症するのですか?

角田卓也先生角田先生

胃がんの一番の原因はピロリ菌だと言われています。最近は血液検査でもピロリ菌がいるかどうかがわかります。ピロリ菌は幼少期に井戸水などを通じて感染することが多いと言われており、ほかにも、子どもに口移しで何かを食べさせた際に感染する可能性も指摘されています。そのほかには、お酒とタバコも原因として挙げられます。

佐藤B作さん佐藤さん

そうなのですね。私の場合は症状がありませんでしたが、症状が出る場合もあるのでしょうか?

角田卓也先生角田先生

胃の出入口にがんができた場合には、食べたものがつっかえることがありますが、初期のがんで転移していない場合、基本的に症状は出にくいと言われています。がんがお腹の中や肝臓、肺、脳に転移している場合には、各臓器に応じた症状が現れることがあり、既に進行してしまっている可能性もあります。

佐藤B作さん佐藤さん

怖いですね。痛くなったら手遅れなのですね。

角田卓也先生角田先生

佐藤さんが実際におこなった手術について教えてください。

佐藤B作さん佐藤さん

1ヵ月手術を先延ばしにしたことで、当初予定されていた胃の3分の1の切除では済まず、最終的に腹腔鏡手術で3分の2を切除することになりました。今考えると先延ばしにせず、すぐに手術するべきだったと思います。

角田卓也先生角田先生

昔は開腹手術と言ってお腹を大きく切る手術が主流でしたので、術後の回復にも時間がかかっていましたが、今は傷口も小さく、術後の痛みも少なく、日常生活に戻るまでの期間も短くなります。胃を3分の2切除した後、食事など生活に変化はありましたか?

佐藤B作さん佐藤さん

最初の数ヵ月は病院から指示された消化されやすいメニューを食べていました。術後は食欲が無い状態でしたが、その後は好きなものを食べています。お酒も最初は美味しいと思えませんでしたが、今は美味しいと感じるようになりました。

角田卓也先生角田先生

そうなのですね。胃が小さくなっているので食欲が落ちる方もいらっしゃいます。患者さんに食事指導する際には、間食することと、よく噛むことを指導します。

佐藤B作さん佐藤さん

きちんとしたものを噛んで食べると元気が出ると実感しました。私は手術をしましたが、手術以外にはどのような治療方法があるのでしょうか?

角田卓也先生角田先生

がんの治療方法には大きく分けて手術療法、放射線療法、化学療法、免疫療法の4種類があります。手術療法と放射線療法は局所療法と言って、がんが局所に留まっている場合に適応となります。化学療法と免疫療法は主にがんが全身に広がっている場合に適応となります。

佐藤B作さん佐藤さん

免疫療法とは、どのような治療なのでしょうか?

角田卓也先生角田先生

もともと私たちはがん細胞を排除する免疫を持っていますが、がん細胞は免疫の攻撃から逃れる仕組みを持っており、免疫チェックポイント阻害薬を使うことで、そのブレーキを解除し免疫細胞が本来の力を発揮できるようになります。

佐藤B作さん佐藤さん

実は、胃の手術をした後に「食道にもがんがあり、見えない部分に隠れているかもしれないです」と言われ、放射線治療と抗がん剤治療に加え、免疫療法も受けて現在は完治しています。

角田卓也先生角田先生

そうでしたか。免疫療法の中でも免疫チェックポイント阻害剤は保険適用の治療方法で、高額療養費制度も用いることができます。がんが全身に広がっているステージ4の方でも完治する可能性が期待でき、近年大きな注目を集めています。

佐藤B作「食道がん」で止まらぬ試練。辛すぎる2度目の闘病生活

この記事の監修医師

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