【医師解説】イエモン・吉井和哉が発症した「喉頭がん」の主な症状や原因とは?
THE YELLOW MONKEYのボーカル・吉井和哉さん(57)が喉頭がんを患っていたことを、10月11日(水)、同バンドの公式HPが公表。同時に、2023年の年明けには根治していたことも明らかにしました。しかしながら、まだ歌唱を行うには万全の状態にはないため、2023年12月28日(木)に予定していた日本武道館公演は開催を見送ることも発表されています。吉井さんに降り掛かった喉頭がんについて、症状・診断・治療方法・予防法などを解説します。咽頭は食べたり話したりするために存在する、とても重要な部分です。気管の入口にあり声帯もあるこの部分ががんになると、治療後も会話や食事の機能のことで色々と問題が出てきます。もし喉頭がんになっても初期段階で異変に気づけるよう、ここでは代表的な症状や検査方法・余命や生存率について詳しく説明します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
喉頭がんの症状・原因とは
喉頭がんはどんな病気なのですか?
同じ喉頭でも機能によって細かく分かれているため、悪性腫瘍が発生する場所によって声門がん・声門上部がん・声門下部がんの3つに分類し、区別しています。喉頭がんの中でも飛び抜けて多いのが声門がんです。すべての喉頭がん患者さんの半数以上が声門がんと診断されています。
喉頭がんの自覚症状を教えてください。
声の調子が硬い感じがする、息が漏れるような違和感があると訴える患者さんもいらっしゃいます。がんがひどくなると声の変化も激しくなり、発声の度に呼吸しにくいと感じるでしょう。血痰が出ることもありますが、こういった明らかな変化が起きるため比較的早期発見に繋がりやすい一面があります。一方、同じ喉頭がんでも声門上部がんは声の変化よりも先に咽喉の異物感に気づくケースが大半です。
食事のときに飲み物や食べ物を飲み込むと痛みを感じることも珍しくありません。ただ、こういった咽喉の異常は風邪のときの症状と似ているため、すぐにがんを疑うことができずに病院の受診が遅れるケースが多くなります。声門下部がんの場合も自覚症状がほとんどないケースが大半です。がんが進行して、ようやく声の変化や呼吸のしにくさに気づくことができます。病院を受診するときには既に初期を通り越しているパターンが目立つがんです。
喉頭がんの主な原因はなんですか?
60歳以上で発病しやすくなりますが、若い頃から中高年になるまで煙草を吸い続けている方は本当に喉頭がんに警戒しなくてはいけません。喉頭に腫瘍ができるのは10対1の割合で男性が多いです。またお酒も発症原因と無関係ではありません。アルコール代謝物のアセトアルデヒトの影響によって、アルコールで顔が赤くなる方が定期的に飲酒を繰り返すとがんが発生しやすくなることが判明しました。
喉頭がんの診断方法と治療方法
喉頭がんの診断方法を知りたいです。
腫瘍の一部を採取する病理検査で、顕微鏡で組織の状態を詳しく調べなくてはいけません。この病理検査によって最終的に病名を確定します。
喉頭がんではどんな検査をするのですか?
ガンマ線がどのように体内で放出されているかどうか画像で確かめることができます。最終的な治療方針を決めるためにも、リンパ節などほかの部位にも転移していないかどうか確認しなければなりません。肺がん・胃がん・食道がんも同時に発症している可能性もあるため、疑いがあるときは重複がんかどうか確かめるための上部消化管内視鏡検査も必要です。
喉頭がんの治療方法を教えてください。
もし進行してしまっている場合は命を優先するために喉頭をすべて摘出する手術が行われます。もし全摘出手術が行われた場合は、再建するための遊離組織移植術を検討しなければなりません。喉頭を残すかどうかの問題は大切な問題で、抗がん剤・射線治療・免疫療法など複数の治療法を組み合わせて治療を進めることになります。
喉頭がんは完治しますか?
ただ、ほかのがんにもいえるように喉頭がんも早期発見、早期治療で病気の進行を送らせ再発のリスクに備えることができます。治療法も色々あるのでとにかく早い段階で医療機関を受診することが大切です。
喉頭がんの予防法
喉頭がんは予防できますか?
アルコールも煙草も依存傾向がある嗜好品です。日常的に嗜むうちに、いつの間にか過剰摂取しているケースは珍しくありません。過剰な飲酒や喫煙は喉頭がんに限らずほかの病気も招きやすくすると考えられています。
喉頭がんを疑うべきサインを教えてください。
血痰や痛みが出る段階では病状が進んでいることが大半ですが、特に喫煙や飲酒の習慣がある方は咽喉周りに異変がないか普段から意識しておきましょう。
喉頭がんの余命・生存率を知りたいのですが…。
比較的進行してから治療を受けたⅣ期の患者さんでも生存率は50%なので、決して低い数字ではありません。喉頭がん全体では約80%の生存率をキープしています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
明らかな異常が出てから病院に行くのではなく、「少しおかしいかも知れない」と感じるぐらいでも、念のために受診することが大切です。
市区町村が無料で実施している定期検診もおおいに利用しましょう。がんを早く見つけるための行動を起こすことが、ご自身や家族のためにも必要です。
編集部まとめ
原因がはっきり分かっていないがんも多い中、喉頭がんの場合は喫煙や過度の飲酒の問題が影響することが分かりました。嗜好品をいきなりやめるのは簡単ではありません。
しかし将来健康な身体で長生きするためにも、煙草の吸いすぎやお酒の飲みすぎを自覚している場合は早い段階で生活習慣を改めるのが理想的です。
今はやめていても過去にヘビースモーカーだった時期があるなら、積極的にがん検診を受けた方が良さそうです。初期の5年生存率が95%と高いことからも分かるように、早期発見・早期治療によって対応できる病気と考えられます。