「寿司や刺身」などの生魚を食べてお腹が痛くなるのはなぜ?【医師監修】
公開日:2025/05/12

寿司や刺身・カルパッチョなど、生の魚を食べた後に、お腹が痛くなった経験はありませんか? もしかすると、アニサキスが胃や腸の内壁に刺入したことが原因かもしれません。 この記事ではアニサキス症の症状やアニサキスの多い魚種、治療法を解説します。 アニサキスについて正しく理解し、安心感を持って日本の魚食文化を楽しみましょう。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
目次 -INDEX-
生魚を食べたことによる腹痛の原因はアニサキス症の可能性がある
アニサキスは魚介類の内臓に寄生している線虫の仲間です。イワシ・アジ・サバ・サンマ・カツオ・サケ・イカなどの魚介類から発見されることが多いです。寄生している魚介類が死ぬと、アニサキスは内臓から筋肉に移動します。刺身やカルパッチョなど生魚の身に潜んでいるアニサキスを食べると、アニサキスが体内に侵入し、アニサキス症を引き起こす可能性があります。
アニサキス症の主な種類と症状
アニサキス症は、アニサキスが消化管の内壁に刺入することで起こる食中毒です。アニサキスが寄生する部位やアレルギーの有無などによって症状が異なります。胃アニサキス症
アニサキスが胃の内壁に刺入して胃アニサキス症を発症します。みぞおち付近の痛みや吐き気・嘔吐などの症状が生じます。食後数時間から10時間後に症状が出ることが多いです。アニサキス症の症例で特に多いのが胃アニサキス症です。
腸アニサキス症
アニサキスが腸に達し、内壁に付着すると腸アニサキス症を発症します。食後10数時間から数日後に、激しい下腹部痛や発熱、腹膜炎の症状が現れます。腸アニサキス症では、腸閉塞や腸に穴が開く腸穿孔になることもあるので注意が必要です。
消化管外アニサキス症
稀なケースですが、アニサキスが消化管を突き破って消化管外へ出てしまい、大網・腸間膜・腹壁皮下へ侵入する場合があります。アニサキスが侵入した場所で肉芽腫が形成され、激しい腹痛などの症状があらわれます。胃アニサキス症や腸アニサキス症と比べて症例が少ないため、一般のクリニックで処置できないことが多いです。
アニサキスアレルギー
アニサキスをアレルゲンとして、じんましんや喘息、ひどい場合はアナフィラキシーなどのアレルギー症状が現れることがあります。アニサキスアレルギーは生きたアニサキスが体内に侵入した場合だけではなく、アニサキスの死骸が体内に侵入した場合も発症します。
アニサキス症の治療法
胃アニサキス症では、胃カメラでアニサキスを確認し摘出します。腸アニサキス症では、対症療法を行うか場合によっては手術を必要とします。消化管外アニサキス症では、症状によって手術が必要です。現在、アニサキスを駆虫する効果的な薬は開発されていません。アニサキスアレルギーについては、アレルギーに関する対症療法を行います。アナフィラキシーが生じた場合は、緊急に処置が必要です。
まとめ
生の魚介類を食べる機会の多い日本人にとって、アニサキス症は注意しなければならない食中毒の一つです。
アニサキスは、70度以上または60度以上で1分間加熱、もしくは-20度以下で24時間冷凍することで死滅できます。
生の魚介類を食べた後に腹痛症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。




