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「奇跡の治療」「最高の医療」はデマ! 『標準治療』の真価とフェイク情報の見分け方

 公開日:2025/03/25
「奇跡の治療」「最高の医療」はデマ! 『標準治療』の真価とフェイク情報の見分け方

がん治療などでよく耳にする「標準治療」。言葉の響きから、「一般的すぎて効果がない治療」と誤解する方もいるかもしれません。しかし、標準治療とは、医療現場で「ゴールドスタンダード(最善基準)」と呼ばれる重要なものです。つまり標準治療は、厳格な臨床試験によって効果と安全性が確認され、国が保険適用を認める治療法。そこで、病理医で薬剤師の峰宗太郎先生になぜ「ゴールドスタンダード」と呼ばれるのか、その価値を解説してもらうとともに、たくさんの医療情報の中から、信頼できる情報を選ぶポイントを教えてもらいました。

峰 宗太郎

監修医師
峰 宗太郎(医師)

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京都大学薬学部・名古屋大学医学部医学科を卒業後、東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所、アメリカ国立衛生研究所(NIH)・アレルギー感染症研究所(NIAID)などで病理学(血液病理・感染病理)・ウイルス学・免疫学・ワクチンの研究および診療に従事。2022年から2024年にかけては国立感染症研究所の主任研究官として新興ウイルス感染症やワクチンの研究に携わり、2024年は厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部で厚生労働技官/医療専門職を務めた。X(旧Twitter)などを通じてエビデンスに基づく情報発信に努め、多くのフォロワーから「ばぶ先生」の愛称で親しまれている。現在は病理診断と同コンサルティング、外来や訪問診療を含む医療プラクティス、製薬戦略、医学的・医療政策アドバイザリー、複数機関の研究員などとして実地医療、研究、情報発信・広報などに従事している。医師・薬剤師・博士。近著に『病理医が切実に伝えたい 病気の仕組みと予防の正解』がある。

標準治療は「効果がない」の誤解

標準治療は「効果がない」の誤解

編集部編集部

標準治療は効果があまり期待できない治療なのでしょうか?

峰宗太郎先生峰先生

いいえ。むしろ標準治療は現状で、もっとも検証がなされており、効果があるからこそ保険適用されている治療法です。「標準治療こそが王道」と考えてください。

編集部編集部

日本の標準治療は世界的に見て差がありますか?

峰宗太郎先生峰先生

日本の標準治療は世界水準に近く、高い技術と研究によって評価されています。ただ、薬や治療の承認プロセスの違いから、最新治療から遅れることもあります。

編集部編集部

「標準治療」と国に認められることは大変なのでしょうか?

峰宗太郎先生峰先生

非常に大変です。厳格な臨床試験で効果や安全性を証明する必要があり、時間と費用もかかります。国に認められることで多くの患者さんに利益があります。

信頼できる医療情報の見分け方

信頼できる医療情報の見分け方

編集部編集部

私たちはどんな医療情報を信じればよいですか?

峰宗太郎先生峰先生

情報の「中身そのもの」を見ることが大切です。公的な情報を含めて複数の情報をチェックし、真実を探る姿勢が必要です。

編集部編集部

具体的に公的情報源はどのように探せばいいでしょうか?

峰宗太郎先生峰先生

国の機関国際機関公的研究機関の情報が信頼できます。日本の情報だけでなく、海外の情報も見るとよいですね。

編集部編集部

逆に避けた方がいい情報はありますか?

峰宗太郎先生峰先生

「奇跡の」「最高の」といった強い言葉には警戒をするようにしましょう。医学系出版社の書籍や厚生労働省運営のサイト「eJIM」などはおすすめです。

SNSの医療情報に惑わされないコツ

SNSの医療情報に惑わされないコツ

編集部編集部

SNSの医療情報で気をつけることは?

峰宗太郎先生峰先生

外科医の山本健人先生が推奨する「だしいりたまご」という合言葉が役立ちます。根拠を丁寧に確認し、感情や直感で判断しないことです。

編集部編集部

「だしいりたまご」とは具体的に何ですか?

峰宗太郎先生峰先生

情報の信頼性を確認する際のポイントの頭文字です。詳しくは、「山本健人 だしいりたまご」などで検索すればヒットしますので、参考にしてほしいのですが、たとえば「し」は「出典があるか?」という意味です。「い」は「いつ発信されたか」、つまり情報の鮮度を確認します。「ま」は「まずはいったん保留」。即断せず、複数の情報を比較する冷静さが大切です。

編集部まとめ

「標準治療」はシンプルな名前ですが、その背後には膨大な研究と厳格な審査が存在します。峰先生のお話を通して、医療情報の選び方にも通じる重要な視点を学びました。SNS時代だからこそ、情報の見極め力を身につけて、自分や大切な人の健康を守る知恵を育てていきたいと感じました。

この記事の監修医師

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