「奇跡の治療」「最高の医療」はデマ! 『標準治療』の真価とフェイク情報の見分け方

がん治療などでよく耳にする「標準治療」。言葉の響きから、「一般的すぎて効果がない治療」と誤解する方もいるかもしれません。しかし、標準治療とは、医療現場で「ゴールドスタンダード(最善基準)」と呼ばれる重要なものです。つまり標準治療は、厳格な臨床試験によって効果と安全性が確認され、国が保険適用を認める治療法。そこで、病理医で薬剤師の峰宗太郎先生になぜ「ゴールドスタンダード」と呼ばれるのか、その価値を解説してもらうとともに、たくさんの医療情報の中から、信頼できる情報を選ぶポイントを教えてもらいました。

監修医師:
峰 宗太郎(医師)
標準治療は「効果がない」の誤解

編集部
標準治療は効果があまり期待できない治療なのでしょうか?
峰先生
いいえ。むしろ標準治療は現状で、もっとも検証がなされており、効果があるからこそ保険適用されている治療法です。「標準治療こそが王道」と考えてください。
編集部
日本の標準治療は世界的に見て差がありますか?
峰先生
日本の標準治療は世界水準に近く、高い技術と研究によって評価されています。ただ、薬や治療の承認プロセスの違いから、最新治療から遅れることもあります。
編集部
「標準治療」と国に認められることは大変なのでしょうか?
峰先生
非常に大変です。厳格な臨床試験で効果や安全性を証明する必要があり、時間と費用もかかります。国に認められることで多くの患者さんに利益があります。
信頼できる医療情報の見分け方

編集部
私たちはどんな医療情報を信じればよいですか?
峰先生
情報の「中身そのもの」を見ることが大切です。公的な情報を含めて複数の情報をチェックし、真実を探る姿勢が必要です。
編集部
具体的に公的情報源はどのように探せばいいでしょうか?
峰先生
国の機関や国際機関、公的研究機関の情報が信頼できます。日本の情報だけでなく、海外の情報も見るとよいですね。
編集部
逆に避けた方がいい情報はありますか?
峰先生
「奇跡の」「最高の」といった強い言葉には警戒をするようにしましょう。医学系出版社の書籍や厚生労働省運営のサイト「eJIM」などはおすすめです。
SNSの医療情報に惑わされないコツ

編集部
SNSの医療情報で気をつけることは?
峰先生
外科医の山本健人先生が推奨する「だしいりたまご」という合言葉が役立ちます。根拠を丁寧に確認し、感情や直感で判断しないことです。
編集部
「だしいりたまご」とは具体的に何ですか?
峰先生
情報の信頼性を確認する際のポイントの頭文字です。詳しくは、「山本健人 だしいりたまご」などで検索すればヒットしますので、参考にしてほしいのですが、たとえば「し」は「出典があるか?」という意味です。「い」は「いつ発信されたか」、つまり情報の鮮度を確認します。「ま」は「まずはいったん保留」。即断せず、複数の情報を比較する冷静さが大切です。
編集部まとめ
「標準治療」はシンプルな名前ですが、その背後には膨大な研究と厳格な審査が存在します。峰先生のお話を通して、医療情報の選び方にも通じる重要な視点を学びました。SNS時代だからこそ、情報の見極め力を身につけて、自分や大切な人の健康を守る知恵を育てていきたいと感じました。