失神と心停止の違いを循環器専門医が解説 「命に関わる失神」を見分ける4つの危険なサインとは

突然意識を失って倒れる「失神」は、多くの人にとって不安を感じる状態です。「心臓が止まったのでは?」と心配になる方も少なくありませんが、全ての失神が命に関わるわけではありません。一方で、心臓の病気が原因となる危険な失神が隠れていることもあり、見逃さないことが重要です。そこで今回は、失神の仕組みや原因、注意すべきサイン、受診の目安について、川崎かかりつけクリニック院長の伊藤先生に詳しく解説していただきました。
※2026年3月取材。

監修医師:
伊藤 賀敏(川崎かかりつけクリニック)
目次 -INDEX-
数秒の血流停止が引き金に 循環器専門医が教える「失神」の正体

編集部
失神とは、医学的にはどのような状態を指すのでしょうか?
伊藤先生
失神とは、脳への血流が一時的に低下または停止することで、意識を失う状態です。脳は非常にエネルギー消費が多い臓器であり、6~10秒ほど血流が途絶えると機能を維持できなくなります。その結果、脳の機能が一時的に停止する、いわばシャットダウンすることで失神が起こります。通常は短時間で回復しますが、原因によっては重大な病気が隠れていることもあります。
編集部
失神が起こるとき、体の中ではどのようなことが起きているのでしょうか?
伊藤先生
失神の瞬間には、脳への血流低下によって意識を保てなくなり、突然倒れることがあります。脳の働きが一時的に停止するため、転倒時に手をつくことができず、頭部外傷の原因になることもあります。また、尿失禁や便失禁を伴うこともあり、周囲から見ると強い症状に見える場合もあります。これは脳の機能が一時的に停止することによる生理的な反応として起こる現象です。
編集部
失神と心停止は同じ状態なのでしょうか? 違いについて教えてください。
伊藤先生
同じではありませんが、心臓が原因の場合は密接に関係します。心臓の拍動が約3秒止まるとめまいやふらつきが出現し、6~10秒ほど止まると失神が起こることもあります。これは短時間の心停止といえます。通常は20~30秒ほどで回復しますが、拍動が再開しなければ突然死につながる可能性があります。失神は決して珍しい状態ではなく、海外の報告では、人口1000人あたり年間約6人が経験するとされています。つまり、人口100万人規模の都市では、年間で6000人、毎日15人以上が失神している計算になります。そのうち約20~30%は心臓が原因とされており、見逃せない重要な症状です。
編集部
失神はどのくらいで回復するのでしょうか?
伊藤先生
失神は通常、数秒から1分以内に回復し、比較的すぐに会話が可能になります。一方で、回復までに時間がかかる場合や回復後も意識がはっきりしない場合は、てんかんや脳の病気など別の原因を考える必要があります。
編集部
失神と似ている症状や、間違えやすい病気にはどのようなものがありますか?
伊藤先生
てんかんや脳血管障害、低血糖などが代表的です。てんかんは発作が数分続き、回復後に混乱が残ることが多いのが特徴です(ただ、学童期のてんかん発作の中には、意識が一瞬なくなるも、すぐに何事もなかったかのように振る舞うものもあります。周囲からは「注意力が散漫」「集中していない」と思われて見逃されることもあります)。脳血管障害では麻痺や言語障害が目立ち、低血糖では冷や汗や強い空腹感が前兆として現れます。これらは失神と似ていますが、原因や対応が異なるため見極めが重要です。
「心配のない失神」と「危険な失神」の違いとは

編集部
失神を引き起こす原因には、どのようなものがあるのか教えてください。
伊藤先生
失神は大きく、「反射性」「起立性」「心原性」の3つに分類されます。最も多いのは反射性失神で、自律神経の反応により血圧が低下して起こります。起立性は立ち上がった際の血圧低下が原因です。一方で、心原性失神は不整脈や弁膜症など心臓の異常によるもので、命に関わる可能性があります。
編集部
命に関わる心原性失神はどのくらいあるのでしょうか?
伊藤先生
心臓が原因となる心原性失神は全体の20~30%程度ですが、最も注意が必要なタイプです。日本では年間約12万人が院外で心停止を起こしており、1時間あたり14~15人、毎日340~360人ほどが発症している計算になります。このように、失神の背景には重大な疾患が隠れていることもあります。
編集部
特に注意すべき危険な失神の特徴はありますか?
伊藤先生
「前触れなく突然起こる」「65歳以上」「心疾患の既往がある」「心電図異常がある」といった条件です。これらの特徴が複数当てはまる場合、1年以内に突然死するリスクが高まることが報告されています。また、運動中に起こる失神や横になっている状態での発症、胸の痛みや動悸を伴う場合は特に注意が必要です。さらに、家族に突然死した人がいる場合もリスクが高いとされています。原因としては不整脈のほか、大動脈弁狭窄症や肺血栓塞栓症などが考えられます。
編集部
危険な失神と心配の少ない失神はどのように見分けるのでしょうか?
伊藤先生
反射性失神や起立性低血圧は頻度が高く、比較的予後は良好です。一方で心原性失神の場合、頻度は低いですが命に関わる可能性もあります。重要なのは発症状況や前兆の有無です。不安がある場合は、早めに医療機関で評価を受けることが重要です。
倒れた人を見かけたら? 正しい応急処置と「迷わず救急車」を呼ぶ基準

編集部
失神が起きた場合、周囲の人はどのように対応すればよいのでしょうか?
伊藤先生
まずは安全確保を最優先におこないます。次に呼びかけて反応を確認し、反応がなければ119番通報とAEDの手配をおこないます。呼吸がない、または異常な呼吸の場合は、すぐに胸骨圧迫を開始します。呼吸がある場合は横に寝かせ、足を少し高くして安静にします。
編集部
どのような場合に救急車を呼ぶべきなのでしょうか?
伊藤先生
「意識が1分以上戻らない場合」「胸痛や麻痺がある場合」「けいれんを伴う場合」「頭を強く打った場合」などは救急要請が必要です。また、「短時間に繰り返す場合」や「心臓病の既往がある場合」も、迷わず救急車を呼ぶべきです。救急車を呼ぶ際、倒れる直前の様子や前兆、意識消失の時間、顔色、けいれんの有無などは診断に重要な情報なので覚えておくようにしましょう。可能であれば動画を撮影しておくことも有用ですね。これらの情報は検査と同じくらい重要な手がかりになります。
編集部
失神を経験した場合、どのような医療機関を受診すべきでしょうか?
伊藤先生
まずは循環器内科を受診することが基本です。命に関わる心臓の原因を最優先で除外する必要があります。けいれんや神経症状がある場合は脳神経内科、軽症の場合は一般内科でも対応可能です。
編集部
失神を予防するために、日常生活で気をつけることを教えてください。
伊藤先生
反射性失神や起立性低血圧の場合は予防が可能です。「急に立ち上がらない」「水分を十分にとる」「前兆を感じたらすぐにしゃがむ」などが有効です。一方で、心臓が原因の場合は医療的な治療が必要となるため、専門医の診察が重要です。
編集部まとめ
失神は一時的な血流低下によって起こることが多く、必ずしも危険な状態とは限りません。しかし、その中には心臓の異常による命に関わる失神が含まれていることもあります。特に前触れのない失神や運動中の発症は注意が必要です。一度だけだからと放置せず、まずは循環器内科で原因を確認することが安心につながります。本稿が、失神を正しく理解し、適切に行動するきっかけとなれば幸いです。
医院情報
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| 診療科目 | 一般内科、循環器内科、美容外科、美容皮膚科 |
| 診療時間 | ・美容 皮膚科治療:9:30~17:30 外科治療:9:30~14:00 ・保険診療 循環器内科・内科 16:00~17:20 |
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