家族が『認知症』と診断されたら? 初期対応と知っておきたい制度・支援【医師監修】

家族が「認知症」と診断されると、「これからどうなっていくのだろう」「何を準備すればよいのだろう」と不安や戸惑いを感じる人も多いのではないでしょうか。認知症は、早期から適切に対応することで、生活の質を保ちやすくなる場合があります。今回は、認知症の基本的な知識から、診断後の初期対応、利用できる制度や支援について、川口並木クリニック院長の神谷先生に聞きました。
※2026年2月取材。

監修医師:
神谷 文雄(川口並木クリニック)
認知症とはどのような疾患か

編集部
認知症とは、どのような疾患なのでしょうか?
神谷先生
認知症は、さまざまな原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障が生じる状態を指します。記憶力だけでなく判断力や理解力、考える力などが徐々に低下していく点が特徴です。
編集部
認知症で悩んでいる人は、多いのでしょうか?
神谷先生
高齢化に伴い、治療や対応が必要な認知症の患者数は年々増えています。本人だけでなく、家族が悩みや不安を抱えながら、生活しているケースも非常に多い傾向にあります。
編集部
「認知症=物忘れ」というイメージがあります。
神谷先生
認知症の中核となる症状の一つとして短期記憶障害はあります。しかし、認知症には新しい出来事を覚えにくくなる一方で、昔のことは比較的よく覚えているという特徴があります。ほかにも、日時や場所が分からなくなる、言葉が出にくくなるといった症状が見られることがあります。
編集部
ほかに症状はありますか?
神谷先生
以前は普通にできていた作業が難しくなったり、趣味などを楽しもうとしなくなったり、時には性格が変わったように感じられたりすることですね。怒りっぽくなったり、無気力になったりなど、一見すると認知症と気付きにくい、いわゆる周辺症状(BPSD)も問題となります。
認知症は進行する! 早期対応がポイント

編集部
認知症は、時間とともに進行していくのでしょうか?
神谷先生
はい、多くの認知症は進行性の疾患です。ゆっくりではあるものの、症状の内容や程度は時間とともに変化していきます。症状が変化していくため、時々の状態に合わせた対応が重要です。
編集部
認知症の初期段階では、本人は自身の変化に気付きにくいのですか?
神谷先生
変化に気付きにくいイメージを持つ人がほとんどですが、近年の知見では、MCI(軽度認知障害)の前段階としてSCI(主観的認知低下)があると考えられています。SCIの段階では、周囲が気付くよりも先に、本人が「何かいつもと違う」「少しおかしい」といった違和感を自覚することが少なくありません。気のせいだと片付けず、違和感を自覚した時点で、一度医療機関に相談してください。最近は、「認知症の専門的な診療窓口」や「物忘れに関する相談窓口」など、専門的に対応する医療機関も増えてきています。
編集部
早い段階で対応することに意味があるのでしょうか?
神谷先生
早期に対応することで、進行を緩やかにしたり、症状が出にくい状態を保てたりする可能性があります。また、家族や周りの人も、適切な関わり方を知ることにより、お互いの生活の不安やストレスを軽減することが期待できます。さらに、本人や家族が今後の生活について考える時間を持てる点でも大きな意味があります。
編集部
認知症には種類があると聞きました。
神谷先生
アルツハイマー型認知症をはじめ、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。種類によって症状の出方や経過、対応が異なるため、鑑別診断が重要です。
治療と制度・支援の考え方

編集部
「認知症かな?」と思って医療機関を受診した場合の流れを教えてください。
神谷先生
まず、現在困っている症状や生活背景、持病などについて質問票を記入してもらいます。回答内容を基に記憶力の質問検査、画像検査(MRI、脳血流SPECT、ダットスキャン)、血液検査など、必要に応じた検査を行い、認知機能低下の原因となる疾患がないかを確認します。
編集部
認知症と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか?
神谷先生
認知症の治療には、薬だけでなく、日常生活を支える工夫や周囲のサポートも大切で、運動や食事、難聴への対応などが有効です。アルツハイマー病の軽度認知障害に該当する場合は、アミロイドβタンパクを除去する治療についても説明します。患者さんと家族の希望があれば、専門施設へ紹介し、アミロイドPETや脳脊髄液の検査を行った後、アミロイドβ除去の点滴治療が開始されるケースがあります。当院でも対応していますが、医療機関によっては、厳格な適応基準を満たした上で点滴治療導入後の継続治療を行うことも可能です。症状や暮らしの状況に合わせて、利用できる支援制度や環境づくりについても案内し、安心して生活を続けられる体制を整えていきます。
編集部
認知症患者を支える家族として、知っておきたい制度や支援について教えてください。
神谷先生
認知症と診断された場合、介護保険制度などの公的な支援を利用できます。介護認定の結果や症状の程度に応じて、必要なサービスを組み合わせながら生活を支えていきます。症状や生活環境は一人ひとり異なるため、どの制度や支援が適しているかを家族や支援者と一緒に整理していくことが大切です。一人で暮らしている場合、地域包括支援センターと連携して、見守りや支援体制を整えることもあります。また、安全な生活が難しくなってきた場合には、施設入所などを検討することもあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
神谷先生
認知症患者さんへの対応には、さまざまな選択肢があります。現在は国の施策として「認知症施策推進基本計画」が進められており、本人や家族の視点を大切にしながら、その人らしい生活を支える考え方が重視されています。本人の思いや希望に耳を傾け、納得できる対応を一緒に考えていくことが大切です。
編集部まとめ
認知症は進行性の疾患ですが、早期から適切な診断と支援につなげることで、本人と家族の生活を支えやすくなります。今は、さまざまな制度や支援もあります。「あれ?」と思ったら早い段階で医療機関に相談し、治療や支援、制度を上手に活用することが大事です。
医院情報

| 所在地 | 埼玉県川口市並木3-34-17 |
| 診療科目 | 内科、小児科、神経内科 |
| 診療時間 | 午前: 月火水金 9:30~11:30 木 10:00~12:00 土 9:30~12:00 (科目毎曜日あり) 午後: 月水金 15:00~18:00 火 15:00~19:00 木 13:00~17:00 (科目毎曜日あり) |
| 休診日 | 日・祝 |


