『白内障手術』の多焦点眼内レンズ、向いている人の特徴と診断基準【医師解説】

「白内障手術」では、眼内レンズの選択が、術後の見え方や生活の質を大きく左右します。中でも多焦点眼内レンズは、向き不向きが分かれる選択肢です。どんな人が適しているのか、検討時に重視される診断基準や注意点を平井德久眼科の德久先生に聞きました。
※2026年2月取材。

監修医師:
德久 照朗(平井德久眼科)
多焦点眼内レンズのメリットとデメリット

編集部
初めに、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの違いを教えてください。
德久先生
単焦点眼内レンズは、近くか遠くあるいは中間の、どちらか一つの距離にピントを合わせるレンズです。一方、多焦点眼内レンズは、複数の距離が見えるように設計されており、眼鏡に頼らない生活を目指せるのが大きな利点です。
編集部
多焦点眼内レンズにデメリットはありますか?
德久先生
屈折型や回折型の多焦点眼内レンズは、構造上、単焦点眼内レンズに比べてシャープさやコントラストがやや劣る場合があります。さらに回折型の多焦点眼内レンズの場合、光がにじんで見えたりまぶしく感じたりする「ハロー・グレア現象」が起きることもあります。夜間や暗所では違和感が出やすく、夜間運転が多い人は注意が必要です。見え方には個人差があるため、「どのレンズが適しているのか」は、医師に相談してほしいと思います。
編集部
多焦点眼内レンズの種類について教えてください。
德久先生
白内障手術で用いる多焦点眼内レンズには、焦点深度拡張型、屈折型、回折型の3種類があります。中でも焦点深度拡張型は性能に優れ、私も多く使用しているレンズです。眼鏡の掛け替えが減り、仕事や家事、外出時の利便性が高まるため、特に老眼鏡を頻繁に使っていた人の場合、生活の質の向上が期待できます。最近は、焦点深度拡張型の多焦点レンズを選ぶ人が多い傾向にあります。
編集部
焦点深度拡張型の多焦点眼内レンズには、どのような特徴があるのですか?
德久先生
焦点深度拡張型の多焦点眼内レンズは、遠方から中間距離まで自然にピントが合い、見え方の質が落ちにくいのが特徴です。コントラストの低下や違和感が少なく、日常生活での使いやすさに優れているため、より多くの人のニーズに合うレンズといえます。また、このレンズを使用することで老眼鏡を掛ける頻度が減り、生活が便利になるのもメリットの一つです。
多焦点眼内レンズを選択すべき人と診断基準

編集部
どのような人が多焦点眼内レンズに向いていますか?
德久先生
多焦点眼内レンズは、白内障手術後にできるだけ眼鏡に頼らず生活したい人に適しています。多くのケースで第一選択肢となるレンズです。
編集部
白内障の診断では、何をチェックしますか?
德久先生
進行度だけでなく、黄斑変性や緑内障、角膜疾患の有無を詳しく確認します。これらの病気がある場合、多焦点眼内レンズの性能を十分に発揮できない可能性も考えられます。また、角膜の形状や乱視の程度も重要な判断材料になります。
編集部
生活習慣も判断材料になりますか?
德久先生
はい、重要な判断材料ですね。日中の活動が中心で、近方から遠方まで幅広く見たい人には、単焦点眼内レンズよりも多焦点眼内レンズが適しています。
編集部
単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ、どちらが合うかはどう判断すればいいのでしょうか?
德久先生
医師に自分の生活習慣とニーズを伝えてください。例えば、遠くと近くを頻繁に見比べるなど活動性が高い人、運転中に遠方とカーナビを交互に見る人、ゴルフを楽しむ人は、見える範囲が広い多焦点眼内レンズが向いています。一方で、手元を裸眼でしっかり見たかったり、細かい作業が多かったりする近視の人は、単焦点眼内レンズの方が適しているという場合もあります。人によって選択すべきレンズが異なるので、診察の際にできるだけ詳細に希望を伝えてほしいと思います。
編集部
若い世代にも、多焦点眼内レンズは適していますか?
德久先生
老眼があまり進んでいない段階で単焦点眼内レンズを入れると、術後に老眼が急速に進むケースがあるため、若い世代が多焦点眼内レンズを選ぶメリットは大きいといえます。多焦点眼内レンズは単焦点眼内レンズに比べ、治療費が高額になることが多いものの、生活の快適さが長く続くことを考えると、結果的にコストパフォーマンスが高い選択になる場合もあります。
多焦点眼内レンズ使用時の注意点

編集部
手術前に理解しておくべきことを教えてください。
德久先生
多焦点眼内レンズの種類によっては、見え方の質を担保しつつ眼鏡が必要ない程度にまで向上しているものの、全ての距離が完璧に見えるわけではありません。メリットだけでなくデメリットや限界について十分な説明を受け、期待し過ぎないことが大切です。
編集部
術後すぐに見え方は安定しますか?
德久先生
術後すぐは、見え方が安定しないケースがあります。また、脳が新しい見え方に順応するまでに数週間から数カ月かかることもあるため、その間に違和感を覚えるかもしれません。多くの場合、時間とともに改善しますが、焦らず経過を見る姿勢が大事です。
編集部
術後に注意すべき生活上のポイントはありますか?
德久先生
運転や細かい作業は、見え方が安定してから徐々に再開するのが望ましいとされています。あとは、感染や炎症を防ぐために、医師の指示に従って点眼することですね。見え方に不安があったら自己判断せず、気になる症状があれば早めに相談してください。
編集部
メリットやデメリットを理解した上で、手術を受けることが大事なのですね。
德久先生
そうですね。最も大切なのは、見え方に対する自分の優先順位を明確にし、医師と共有することです。「眼鏡を掛ける回数を減らしたい」「手元までクリアに見たい」など、希望は人それぞれ違います。十分なカウンセリングを受け、納得した上で眼内レンズを選択することが重要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
德久先生
多焦点眼内レンズは近年大きく進化しており、多くの人に適応となる優れたレンズです。しかしながら、必ずしも全ての人に適しているわけではありません。乱視の有無や目の状態などを総合的に判断し、どのレンズを選択するかが大切です。眼内レンズに対する考え方は、医師の経験によって変わります。また、多焦点眼内レンズは選定療養となるため、医療機関によって価格帯も幅があります。納得のゆく選択をするためにも、セカンドオピニオンも含めて、慎重に医療機関を選びましょう。
編集部まとめ
多焦点眼内レンズは著しい進化を遂げ、選択肢が広がっています。目の状態やライフスタイル、費用面まで含めて比較検討することが大事です。説明に納得できない場合は、別の医師の意見を聞くのもいいでしょう。信頼できる医療機関を選ぶことが、術後の満足につながります。
医院情報

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| 診療科目 | 眼科 |
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