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7日間装着の心電計で検出率3倍へ―オムロンが挑む心房細動の早期発見

 公開日:2026/02/24
7日間装着の心電計で検出率3倍へ―オムロンが挑む心房細動の早期発見

オムロンヘルスケア株式会社は2025年11月14日 に 都内 で開いた 記者発表会 で 、循環器事業の新たな戦略を発表しました。同社は2026年1月1日付で、JSR株式会社が展開する「ハートノート(長時間ホルター心電図解析サービス)事業」を承継。心電事業に関して、家庭から医療機関での診断、治療領域までの拡大を図り、「Going for Zero 脳心血管疾患の発症ゼロ」をビジョンに掲げ て 心疾患の早期発見と重症化予防に向けた取り組みを加速させています。本稿では、ハートノートの特徴と、オムロンヘルスケアが構築を目指すエコシステムが私たちの健康管理にどう生かされるかなどについて解説します。

岡田 歩(おかだ あゆむ)氏
岡田 歩(おかだ あゆむ)氏
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オムロン ヘルスケア株式会社 代表取締役社長

野崎 大輔(のざき だいすけ)氏

野崎 大輔(のざき だいすけ)氏

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オムロン ヘルスケア株式会社 ゼロイベント事業開発部 部長

小林 伸敏(こばやし のぶとし)氏

小林 伸敏(こばやし のぶとし)氏

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JSR 株式会社 イノベーション推進部 部長 (※発表会当時)

Charit Bhograj 氏

Charit Bhograj 氏

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TRICOG HEALTH INDIA PRIVATE LIMITED(トライコグ) CEO

日本の心疾患の現状

死因2位・医療費1位の循環器疾患

循環器疾患は日本の超高齢社会で深刻な課題となっています。日本 人の死因として循環器疾患はがん に次いで2位 (厚生労働省 2024年人口動態統計) ですが 、JSRイノベーション推進部部長の小林伸敏氏によると医療費の構成割合ではがんを上回り1位となっています。循環器疾患によるQOLの急激な低下と、医療費・介護費の高騰が大きな問題だと、小林氏は指摘します。

世界全体でみると、心疾患による年間死亡者数は約910万人に達し、これは東京23区の人口に匹敵する規模です。オムロンヘルスケアの岡田歩社長は、心疾患は自覚症状がないまま進行して突然発症するケースが少なくないと述べ、高齢化とともにリスクが高まる疾患であることを強調しました。

心房細動と脳梗塞の深刻な関係

循環器疾患の中でも特にQOL低下が著しいのが、心房細動によって引き起こされる脳梗塞です。心房細動とは心臓がけいれんを起こす不整脈の一種で、心房が細かく震えることで 血液が心房内に滞留して血栓ができやすくなります。さらに、この血栓が脳に飛ぶと脳梗塞を引き起こします。

オムロンヘルスケアゼロイベント事業開発部部長、 野崎大輔氏の説明によると 、65歳以上の高齢者が心房細動を発症すると、その後5年間で7人に1人が心不全、15人に1人が脳卒中 (脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の総称) を発症するという研究データが出ています。 野崎氏は、高血圧の人は血圧が基準値内の人に比べて心房細動の検出率が3倍だったというデータを紹介し、高齢の高血圧患者への心房細動スクリーニングの重要性を訴えました。

4割が無症候性という発見の難しさ

心房細動患者は日本国内で100万人を超えていますが、最大の課題は約4割が自覚症状のないまま心房細動を発症している点です。小林氏は、自覚症状なく脳梗塞になってしまう患者を見つけ出すことが現在取り組んでいる課題だと説明しました。

通常の健康診断で、心電図は30秒程度しか測定しません。しかし、そのような短時間で発作性の心房細動を検出することは困難です。60万人のデータ分析でも、健診時の心電図測定では有病者を十分に把握できていないことが示唆されています。

ハートノート事業の特徴

7日間装着可能なフレキシブルデバイス

従来のホルター心電計 (長時間連続で心電図を記録できる小型・携帯型の心電計)は24~48時間の装着が一般的で、コードが長く入浴もできないという制約がありました。ハートノートは 電極一体型・ 薄型軽量でフレキシブルな設計により、7日間の連続 測定 を可能にしました。小林氏によると、シャワーを浴びることもできるため、患者負担が大幅に軽減されるといいます。

7日間測定の意義について、小林氏は具体的な検出事例を紹介しました。ある患者の場合、 測定開始後 3日目の午前1時から2時の間だけ心房細動が検出されました。このケースでは健診でも検出されず、24時間ホルターでも検出できなかったため、1週間測定する意味がまさにここにあると同氏は説明しました。

検出率3倍を実現する長時間測定

7日間測定によって検出率は大きく向上 します 。小林氏によると、24時間測定での心房細動検出率が約30%であるのに対し、7日間測定では3倍の約90%まで上昇します。

小林氏は、長ければ長いほど良いが患者の負担を考えると1週間程度が適切であり、その観点から1週間のホルター心電計を開発したと開発の背景を説明しました。2020年8月のサービス開始以来、 検査実績は 累計15万件 となっています。

医師や技師の負担も軽減されます。医療機関側で解析作業を行う必要はなく、ハートノート側がレポートを提供します。患者も 測定終了後に医療機関を訪れる必要はなく、自分で取り外してポストに投函するだけで済みます。

協業の意義

家庭から医療機関への連携モデル

オムロンヘルスケアは2019年から心電計付き血圧計を販売し、 これまで 47カ国に展開しています。2024年には血圧測定だけで心房細動リスクを検出できる血圧計も欧州で発売しました。野崎氏によると、顧客からは気づかずにいた心房細動が見つかり治療につながったという声が届き始めているといいます。

ハートノート事業の承継により、家庭でのリスク発見から医療機関での精密検査へとスムーズにつなげる体制が整います。野崎氏は、自社の 家庭用血圧計 ユーザーで心房細動が見つかった場合は、ハートノートが導入されている医療機関で検査を受けられる環境を整えていくという具体的な連携策を示しました。

発見から予後管理までのエコシステム構築

オムロンヘルスケアが目指すのは、リスクの発見から検査、診断、治療、そして経過観察までをトータルでサポートするエコシステムの構築です。岡田社長は、家庭で早期発見した際に、そこから先の正しい診断、その後の治療、そして予後管理までしっかりつながっていくことが重要だと述べ、医療機関との接点を作るハートノート事業の意義を強調しました。 小林氏も、間口が広がりさまざま なデバイスでスクリーニングして本当の診断につなげていくという意味で 相乗効果があると評価しました。

岡田社長は、家庭でどれだけユーザーに活用してもらい早期発見につなげるかが非常に重要であり、2030 年に向けて家庭用心電計の50万台販売を目標として事業を進めていくといいます。

今後の展望

全国展開と主要大学との共同研究

ハートノート事業は現在、北海道から沖縄まで全都道府県 の 小さなクリニックから大きな病院まで で採用されている といいます。

研究面では、国立循環器病研究センターを皮切りに、筑波大学、慶應義塾大学、京都大学、大阪大学、九州大学、大分大学など主要大学との共同研究を展開しています。1日約10万拍、7日間で約70万拍の心拍データに加え、デバイスに搭載された加速度計により、立位・座位・臥位 (がい:横たわった状態) などの姿勢データも取得可能です。

蓄積されたデータを活用し、診断から予防領域への展開も進んでいます。小林氏によると、睡眠状態や睡眠時無呼吸症候群を見るアルゴリズムを開発したり、心拍変動から自律神経やストレスを見てうつ病患者向けの指標にしたりするなど、各大学との取り組みを展開しているといいます。

心電図データの活用範囲を広げることで、循環器疾患にとどまらない健康管理への貢献が期待されています。

まとめ

オムロンヘルスケアによるハートノート事業の承継は、家庭での健康モニタリングと医療機関での精密検査をシームレスにつなぐ新たなモデルの構築を意味します。7日間装着可能なフレキシブルデバイスにより、従来は見逃されていた無症候性の心房細動患者の発見が期待されます。

心房細動は早期発見と適切な介入により、脳梗塞や心不全といった重篤な疾患への進行を防ぐことができます。高血圧の方や65歳以上の方は、日常的な血圧測定に加えて心房細動のスクリーニングについても医師に相談してみてはいかがでしょうか。

関連情報
主催 オムロンヘルスケア株式会社
イベント名 循環器事業 次なるステージへ 心電事業のグローバル戦略を発表 記者発表会
開催日 2025年11月14日

この記事の監修医師