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近視を放置すると将来失明のリスクも―進行を抑える治療、国内でも承認に

 公開日:2026/02/16
近視を放置すると将来失明のリスクも―進行を抑える治療、国内でも承認に

子どもの近視は、発症年齢が低いほど重症化(強度近視化)するリスクが高まります。また、近視は将来、失明にもつながる合併症のリスクを高め、近視の度数が強いほどそのリスクも上昇します。近視を元に戻す治療は今のところありませんが、進行を抑える二つの治療がこの1年ほどの間に相次いで承認されました。2026年1月27日にクーパービジョン・ジャパンが主催した「世界と日本の近視進行抑制を考えるプレスセミナー」での講演をもとに、子どもの近視を放置してはいけない理由や、進行抑制治療などについてまとめました。

中学3年生の6割が近視―発症が早いほど進行がより大きく

子どもの近視が増加しています。文部科学省が2022年度に実施した近視実態調査では、小学1年生時点で17.3%がすでに近視であることがわかりました。その割合は学年が上がるごとに増え、小学校6年生は52.8%、中学3年生では62.6%となります。増加の要因としては、読書や勉強に加えてデジタルデバイス使用による「近見作業」時間の増加と、屋外活動時間の減少による自然光の暴露不足があるとされています。

近視は発症年齢が低いほど、重症化(強度近視化)するリスクが高まります。海外の研究では、3~6歳で発症すると11歳時点では強度近視に近い-5.48D(ディオプトリ:レンズの屈曲度数を表す単位、数値が大きいほど強くなる)、7歳で発症だと-4.46D、10歳で発症ならば-1.53Dにそれぞれ近視が進んだと報告されています。また、近視の進行は一定の速度で進むのではなく、変化量は8歳ごろに最大になりその後は減少していきます。

近視は一定年齢に達するまで進行するため、「子どもに対してはいかに近視が進まないようにするかが重要になります」と、東京科学大学医学部眼科学教室の ⼤野京子教授は指摘します 。

近視は失明の原因ともなりうる合併症の将来におけるリスクを高めることも報告されています。強度近視(-6D以上)の場合、近視がない人と比べて将来の発症リスクは白内障で2.87倍、緑内障で2.92倍、網膜剥離で12.62倍と、それぞれ高まるとの研究結果があります。これらの合併症は、近視の度数が強いほどリスクも高くなるとされています。

「近視を治療するということは、今見えにくいという問題への対処だけでなく将来の合併症リスクも低減させるという二重の意味があると考えます」と大野教授は話します。

近視はなぜ起こる?

近視とは、目の中に入った光線のピントが合う位置が、網膜よりも前になっている状態です。眼球は直径約24mmの球体ですが、近視では成長に伴い前後方向に伸びたラグビーボールのような形に変形することでピントが合わなくなります。一度伸びてしまった眼球の眼軸長を縮める治療方法は、今のところありません。

「身長が伸びている時期に眼球も伸びます。その時期に介入してできるだけ近視の進行を抑制することが、将来的な度数や合併症抑止のために重要です」と大野教授は訴えます。

二つの進行抑制治療が承認に

これまで、日本では近視進行抑制の治療はなかったのですが、この1年ほどの間に二つの治療が相次いで承認されました。

一つは低濃度アトロピン点眼液です。薬の作用によって近視の進行を抑制するもので、2024年12月に厚生労働省の製造販売承認を得ました。

もう一つは使い捨ての多焦点(近視進行抑制治療用)コンタクトレンズ「マイサイト ワンデー」で2025年8月に承認されました。このコンタクトレンズは、網膜上で焦点が合うようにする「屈折矯正ゾーン」と、網膜よりも手前で焦点を結ぶ(近視性デフォーカス)「トリートメントゾーン」を同心円状に配置したものです。

「近視の進行には目で見ている中心だけでなく、視界の周辺に映る像のピントの状態が大きく関係している」という理論が近年、広く支持されるようになっています。この理論に基づき、トリートメントゾーンを置くことによって眼軸長の伸長抑制効果が期待できるのです。

グローバルで行われた3年間の臨床試験*では、単焦点1日使い捨てコンタクトレンズを装用した子どもたちと比較して、近視の進行を1年間の平均で69%、3年間の平均で59%抑制することが示されたとされ、2019年にFDA(米食品医薬品局)の承認を取得しています。また、日本では2年間の臨床試験(MIST-J)で、近視進行の抑制と安全性が確認されています。

シンガポール国⽴眼科センター 近視プログラム臨床ディレクター、リリアン・フー氏は、近視進行抑制を目的としたソフトコンタクトレンズ(SMC:Soft Myopia Control)の普及率は2011年の時点で0だったものが、2024年には30.4%に急増している(日本を含む10カ国の調査)と説明。世界的な流れとして、近視進行抑制のためにコンタクトレンズの採用が進んでいるといいます。

一方で、日本でSMCを装用している割合は3%にとどまり、9割以上は進行抑制効果のない通常の視力矯正レンズを使用しています。

*A 3-year Randomized Clinical Trial of MiSight Lenses for Myopia Control : Chamberlain P et al. Optom Vis Sci. 2019; 96(8): 556-567.

近視は管理する時代に

国内での臨床試験MIST-Jに責任医師として参加した医療法人かがやき くぼた眼科(大阪府茨木市)の久保⽥泰隆院長は、同じ近視でもいつ始まったかで子どもの将来が変わる、と話します。前述のように、近視は将来の合併症リスクを高めます。「今見えているから大丈夫、と考える方が多いのですが、今見えていることとその子どもの将来が安全かは別の問題」として、「近視は様子を見る病気ではなく管理する時代に入っています」と早期介入の重要性を訴えました。治療では近視の進行を-3D以内にとどめ、眼鏡がなくてもある程度の視力を確保し、人生後半に遠視になったときに手元が見えやすいという状態になることを目指します。

近視進行抑制治療用コンタクトレンズ「マイサイト ワンデー」は、使用にあたって「十分な知識と経験を有する医師の指導のもと、対象となる患者のみに適切に使用されること」が承認条件となっており、処方できるのは決められたトレーニングを受けた眼科医のみになります。

現時点で、レンズ自体は保険適用外のため自費購入ですが、単独で使用する場合の処方・検査費用は従来のコンタクトレンズと同様に保険適用となります(日本眼科学会、日本眼科医会など4団体連名の見解)。

*本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。