新型出生前診断(NIPT)の陽性率は年齢で変わる? 結果を正しく理解するための3つの判断基準を医師が解説

新型出生前診断(NIPT)は、出生前に染色体異常の可能性を調べる検査として広くおこなわれています。一方で、「年齢が高いと陽性が出やすいと聞いた」「結果の数字をどう理解すればよいのかわからない」と戸惑う方も少なくありません。今回は、ミネルバクリニックの仲田先生に、NIPTの結果の考え方や、妊娠年齢と陽性率の関係について、基本から詳しく伺いました。
※2026年1月取材。

監修医師:
仲田 洋美(ミネルバクリニック)
出生前診断の基礎知識

編集部
はじめに、「出生前診断」について教えてください。
仲田先生
出生前診断とは、妊娠中に胎児の状態を確認するための検査の総称です。検査は大きく、病気の可能性を調べる「非確定的検査」と、病気の有無を確定する「確定的検査」に分けられます。非確定的検査には、超音波(エコー)検査、母体血清マーカー検査(トリプルマーカー、クアトロテスト)、新型出生前診断(母体血胎児染色体検査:NIPT)があります。一方、確定的検査は羊水検査、絨毛(じゅうもう)検査が主な検査として挙げられます。
編集部
NIPTについて、もう少し詳しく教えてください。
仲田先生
NIPTでは、母体から血液を採取して、胎児の染色体異常、主にトリソミーの可能性について調べる検査で、妊娠9、10週から受けることができます。確定診断ではないため、結果は「陽性・陰性」という断定ではなく、あくまで「高リスク・低リスク」という確率的な評価として理解する必要があります。
編集部
検査の正確さは、どのように示されるのですか?
仲田先生
検査の正確さを示す指標には、感度、特異度、陽性的中率(PPV)、偽陽性、偽陰性などがあります。これらを理解することで、検査結果を過不足なく受け止められるようになります。
編集部
偽陽性と偽陰性とは何ですか?
仲田先生
偽陽性は、実際には異常がないのに陽性と判定されることです。偽陰性は、逆に異常があるのに陰性と判定されることを指します。どの検査にも一定の割合で起こり得ます。例えば、NIPTで調べている「セルフリー胎児DNA」は、実は赤ちゃんそのもののDNAではなく、赤ちゃんを育てる胎盤から出てくるDNAです。そのため、妊娠のごく初期に偶然起こった変化によって、胎盤と赤ちゃんの染色体の状態が少し違ってしまうことがあります。このような場合、検査は胎盤の情報をもとに結果を出すため、実際の赤ちゃんの状態とは異なる結果が出てしまい、偽陽性や偽陰性が起こることがあります。
出生前診断の陽性率について医師が解説!

編集部
NIPTは「99%以上の精度」と説明されることがありますが、どう理解すればよいですか?
仲田先生
「99%以上の精度」という言葉は、一見するととても安心感がありますが、実は誤解されやすい表現でもあります。この数値が示しているのは、「検査を受けた人全体の中で、結果が正しく判定されている割合」です。NIPTを受ける方の多くは、もともと染色体異常のない妊娠であるため、結果の大半は「陰性」となります。そのため、全体で見ると検査の正確性は非常に高く見えます。しかし、重要なのは陽性と判定された場合に、その結果がどの程度実際の異常を反映しているかという点です。これは、「99%以上の精度」という数値とは別に考える必要があります。
編集部
高リスクと判定された場合、その結果が正しい確率も99%なのでしょうか?
仲田先生
いいえ、そうではありません。高リスク結果が実際に染色体異常を示している割合は、陽性的中率(PPV)で考える必要があります。
編集部
陽性的中率(PPV)とは何ですか?
仲田先生
PPVとは、陽性と判定された結果のうち、実際に異常がある割合を指します。感度や特異度に加えて、その状態がどの程度起こりやすいかという事前リスク(もともとのリスク)に大きく左右され、もともとのリスクが高いほど陽性の結果が実際の異常を示している可能性も高くなります。知っておいていただきたいのは、「NIPTは確定診断ではないということ」です。陽性はあくまで可能性を示す結果であり、実際に染色体異常があるかどうかは確定検査で確認する必要があります。結果の意味を正しく理解していただくことが重要です。
高齢妊娠だと陽性率が上がるのか

編集部
妊娠年齢が高くなると、NIPTの結果にはどのような影響がありますか?
仲田先生
妊娠年齢が高くなると、染色体異常の事前リスク(もともとその異常が起こりやすい状況)が上昇します。そのため、同じ検査精度でも、陽性的中率は年齢が高い方ほど高くなる傾向があります。
編集部
それが「高齢だと陽性率が上がる」と言われる理由でしょうか?
仲田先生
そうですね。検査そのものが変わるのではなく、もともとのリスク(事前リスク)が変わることで、結果の出方や意味合いが変わってくるためです。数字だけを切り取らず、検査の位置づけや次の選択肢まで含めて考えることが重要です。結果は判断材料の一つとして整理する必要があります。
編集部
ほかに、出生前診断について、知っておいた方が良いことはありますか?
仲田先生
「検査を受けること」を目的とするのではなく、結果の捉え方などについても理解を深めておくことが大事です。また、検査は保険適用ではなく自費診療となるため、費用の面でも事前に説明を聞き、納得した上で検査を受けることが大事です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
仲田先生
妊娠年齢が高くなるとリスクの数字が変化することは事実ですが、それは「不安を煽るための情報」ではありません。数字はあくまで判断材料の一つです。私は医師として30年以上、多くのご家族の意思決定に関わってきましたが、大切なのは数字に振り回されることではなく、ご自身の状況や価値観に照らして納得できる選択をすることだと感じています。不安や疑問があれば、一人で抱え込まず専門家に相談していただきたいと思います。
編集部まとめ
新型出生前診断(NIPT)の陽性率は、検査の精度そのものだけで決まるものではなく、妊娠年齢による事前リスクの影響を大きく受けます。「精度99%」といった数字だけを見るのではなく、陽性的中率(PPV)や検査の位置づけを正しく理解し、結果の意味を整理したうえで判断する姿勢が求められます。
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