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なぜ『肩関節脱臼』は繰り返す? 再発リスクを下げる治療とリハビリ法【医師解説】

 公開日:2026/05/06
なぜ『肩関節脱臼』は繰り返す? 再発リスクを下げる治療とリハビリ法【医師解説】

肩関節脱臼は、スポーツ中の外傷として多く見られる一方、一度起こすと再発を繰り返しやすいことが知られています。再発を繰り返すと競技復帰が難しくなるだけでなく、日常生活にも支障を来すケースも少なくありません。そこで、肩関節脱臼が起こりやすい理由から、再発を防ぐための治療やリハビリテーションの考え方までを、医療法人社団全心会理事長で、ぜんしん整形外科 立川スポーツリハビリクリニック 整形外科部長の守重先生に聞きました。

※2026年1月取材。

守重 昌彦

監修医師
守重 昌彦(ぜんしん整形外科 立川スポーツリハビリクリニック)

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神戸大学医学部医学科卒業。東京大学医学部整形外科学教室入局後、関連病院などで整形外科領域の診療経験を積む。2018年、東京都立川市に「ぜんしん整形外科立川スポーツリハビリクリニック」を開院。地域に根ざした診療を行っている。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本肩関節学会、日本臨床スポーツ医学会、日本人工関節学会、日本骨粗鬆症学会の各会員。

肩関節の脱臼はなぜ起こる?

肩関節の脱臼はなぜ起こる?

編集部

肩関節は、なぜ脱臼しやすい関節なのでしょうか?

守重 昌彦先生守重先生

肩関節は可動域が非常に広く、腕をさまざまな方向に動かせる反面、骨同士のはまりが浅い構造をしているからです。そのため、安定性よりも動きやすさが優先され、外から強い力が加わると脱臼を起こしやすいという特徴があります。

編集部

どのような場面で肩関節脱臼が起こることが多いですか?

守重 昌彦先生守重先生

ラグビーやアメリカンフットボールなど、激しい衝突や接触を伴うスポーツで多く見られます。特に腕が外転・外旋位、つまり“腕を開いた状態”に強制されると、前下方への脱臼を起こしやすくなります。前下方への脱臼はスポーツに限らず、転倒した際に腕が外転・外旋位になることでも同様に起こります。

編集部

強い衝突がない動作でも、脱臼が起こることはあるのでしょうか?

守重 昌彦先生守重先生

あります。例えば、野球の投球動作などでも腕が外転・外旋位になることにより、同じメカニズムで脱臼が起こることがあります。投球動作などによる脱臼の場合、完全脱臼ではなく亜脱臼となることがほとんどで、亜脱臼を繰り返す場合には、完全脱臼と同様の治療が必要です。強い衝突がなくても起こり得る点にも注意してください。

編集部

初めて肩関節脱臼を起こした場合、どのような治療を行うのでしょうか?

守重 昌彦先生守重先生

まずは、医師が関節を正常な位置に戻す整復を行います。その後、痛みや炎症を抑えるために一定期間固定し、関節が落ち着くのを待ちます。以上が治療の第一段階です。

脱臼の治療と再発予防について

脱臼の治療と再発予防について

編集部

患部を固定すれば再発は防げるのでしょうか?

守重 昌彦先生守重先生

三角巾による簡易的な固定だけでは、2回目の脱臼を防ぐ効果は十分とはいえません。「外旋位固定」という特殊な固定方法を用いることで、再発のリスクがある程度下げられます。

編集部

一度脱臼すると、なぜ繰り返しやすくなるのでしょうか?

守重 昌彦先生守重先生

脱臼によって、肩関節の安定性を保つ役割のある関節唇(かんせつしん)が損傷することが大きな原因です。関節唇が十分に修復されずに脱臼だけを戻しても、肩が外れやすい状態は改善しないため、反復性脱臼につながります。関節唇が修復されない状態になると、生活動作だけでも脱臼するようになってしまいます。

編集部

固定するだけでは治らない脱臼もあるのですね。

守重 昌彦先生守重先生

整復や固定を行っても、その後のスポーツや日常生活で脱臼を繰り返す場合は、保存療法の限界といえるでしょう。特に、若年層は再発率が高いため、根本的な治療として手術を検討する必要があります。

編集部

若年層以外の場合、どのようなケースで手術が選択されるのでしょうか?

守重 昌彦先生守重先生

脱臼を反復している場合や、競技レベルが高いスポーツに取り組み再発を避けたい場合などには、初回脱臼でも手術を選択することがあります。関節の安定性を回復させることで、再脱臼のリスクを下げることが目的です。

再発リスク低減のためのトレーニング法

再発リスク低減のためのトレーニング法

編集部

肩関節脱臼では、どのような手術が行われるのですか?

守重 昌彦先生守重先生

関節鏡を用いて、脱臼を防ぐ役割のある関節唇を修復する、「Bankart(バンカート)修復術」が一般的です。低侵襲で、再脱臼のリスクを下げる効果が期待できます。

編集部

ほかには、どのような選択肢がありますか?

守重 昌彦先生守重先生

ラグビーやアメリカンフットボールのように肩への負荷が非常に大きい競技だったり、脱臼を繰り返すことによって骨の形態が変わってしまったりといったケースでは、Bankart修復術のみだと再脱臼のリスクが高くなることがあります。骨の形態が変わってしまったケースなどでは、肩甲骨の一部である烏口突起(うこうとっき)を用いる「Bristow(ブリスト)法」や「Latarjet(ラタジェ)法」を選択することもあります。

編集部

術後についても教えてください。

守重 昌彦先生守重先生

手術を受けたからといってすぐに競技復帰できるわけではなく、その後のリハビリテーションが非常に重要です。特に、術後3カ月までは修復部位は癒合していないので、注意しながらリハビリテーションを進める必要があります。可動域や筋力を段階的に回復させ、肩に過度な負担がかからないよう調整したとしても、スポーツへの本格的な復帰には、半年以上かかるケースがほとんどです。

編集部

再発リスクを下げるために、どのようなトレーニングが必要でしょうか?

守重 昌彦先生守重先生

肩だけでなく、背骨の動きや肩甲骨の固定性を改善し、腱板などのインナーマッスルを十分に強化することですね。肩関節の知識だけでなく、各競技の特性にも詳しい理学療法士などから、術後のリスクを踏まえた運動指導や外転・外旋位を避けるための動作指導を受けることで、再発の不安なく競技に復帰できる状態を目指します。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

守重 昌彦先生守重先生

脱臼を2回以上繰り返した若い人の場合、保存療法のみで再脱臼を完全に防ぐことは非常に困難です。脱臼を繰り返すたびに骨の形が変形し、手術が複雑になり、肩のコンディションは徐々に悪化していきます。すでに2回以上脱臼している人は、状態が悪くなる前に早めの手術をおすすめします。

編集部まとめ

肩関節脱臼は構造上再発しやすい外傷ですが、初回対応や治療の選択、リハビリテーションの質によって将来の経過は大きく変わります。脱臼を繰り返している人や不安を感じている人は、早めに専門の医師へ相談し、自分に合った治療と再発予防に取り組むことが大切です。

参考文献
「反復性肩関節脱臼」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる

医院情報

ぜんしん整形外科 立川スポーツリハビリクリニック

ぜんしん整形外科 立川スポーツリハビリクリニック
所在地 東京都立川市曙町2-11-2 フロム中武7階
診療科目 リウマチ科、リハビリテーション科、整形外科
診療時間 午前: 月~金 9:30~13:00 土 9:00~13:00
午後: 月火水金 14:30~17:00 木 14:00~18:00
その他: 月火水金 17:30~19:30
休診日 日・祝

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