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メタボが肝臓を壊す? 知られざる『メタボリック肝硬変』のリスクを医師が解説

 公開日:2026/05/11
メタボが肝臓を壊す? 知られざる『メタボリック肝硬変』のリスクを医師が解説

肥満やメタボ要因で進行する「メタボリック肝硬変」。飲酒習慣がなくても発症し、自覚症状がないまま不可逆的な肝硬変や肝がんへ至る恐れがあります。「メタボドミノ」を食い止めるための早期発見の重要性と、基礎代謝を上げる筋トレから始める改善アプローチについて三田医院院長の奥山秀平先生に聞きました。

奥山 秀平

監修医師
奥山 秀平(三田医院)

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1999年3月杏林大学医学部卒業。杏林大学第3内科(消化器内科、糖尿病代謝内科)入局。国立横浜病院(現国立横浜医療センター)消化器内科、焼津市立総合病院代謝内分泌内科、杏林大学第3内科(消化器内科)聖路加国際病院消化器内科を経て2025年5月三田医院を開院。

メタボリック肝硬変のメカニズム

メタボリック肝硬変のメカニズム

編集部

「メタボリック肝硬変」とは、具体的にどのような病気ですか?

奥山 秀平先生奥山先生

メタボリック肝硬変とは、肥満、糖尿病、脂質異常症などのメタボリック要因が長期間続くことで脂肪肝が進行し、肝臓が硬く変化してしまう状態です。特に代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)が悪化して肝炎を引き起こし、最終的に肝硬変へ至るケースが増えています。飲酒をほとんどしない人でも起きるため「サイレント肝障害」と呼ばれ、放置すると肝不全や肝がんのリスクが高まります。

編集部

脂肪肝とは何が違うのですか?

奥山 秀平先生奥山先生

メタボリック肝硬変は炎症と線維化が進み、肝臓の働きが著しく低下した状態です。一方の脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまっただけの段階を指します。線維化とは肝臓がダメージを受け、修復のために硬い組織(線維)が増えてしまう状態です。脂肪肝は見直せば改善しますが、肝硬変は元に戻らない場合が多く、進行すると命に関わる危険性もあります。

編集部

日本でも増えているのですか?

奥山 秀平先生奥山先生

はい。生活習慣の欧米化により、飲酒を伴わない肝硬変が増加しています。特にメタボ人口の増加と並行して患者数が増えており、医療現場でも大きな課題となっています。

どんな人がなりやすいのか? 症状は?

どんな人がなりやすいのか? 症状は?

編集部

メタボリック肝硬変になりやすい人の特徴を教えてください。

奥山 秀平先生奥山先生

肥満、特に内臓脂肪型の肥満がある人は要注意です。また、糖尿病や脂質異常症、高血圧など「メタボの三要素」を複数抱える人はリスクが高くなります。痩せていても筋肉量が少なく、内臓脂肪が多い“隠れ肥満”の人も発症する可能性があります。

編集部

肝臓の障害と肥満やメタボはどのように関係しているのですか?

奥山 秀平先生奥山先生

内臓脂肪が増えると、肝臓に炎症を起こす物質(サイトカイン)が分泌され、脂肪肝から脂肪性肝炎へと進展します。肥満レベルが高いほど、脂肪肝のリスクも高くなります。

編集部

特に肥満は要注意なのですね。

奥山 秀平先生奥山先生

医療現場には「メタボドミノ」という考え方があります。生活習慣の乱れをきっかけに、健康障害がドミノ倒しのように連鎖していく過程を示した概念です。肝臓の障害についていえば、まず出てくるのが脂肪肝です。脂肪肝は自覚症状がほとんどないため見過ごされやすいですが、ここで食い止められないと次に脂質異常症や高血圧、糖尿病といった生活習慣病へと進行します。さらに状態が悪化するとメタボリック肝硬変に至る場合もあります。そのため脂肪肝の段階で気づき、生活習慣を改善してドミノ倒しを食い止める対応が極めて重要です。

編集部

脂肪肝やメタボリック肝硬変になると、どんな症状が表れますか?

奥山 秀平先生奥山先生

初期は無症状ですが、肝硬変まで進行すると倦怠感、食欲低下、むくみ、皮膚のかゆみ、腹部のハリなどが表れます。重症になると黄疸、腹水、意識障害などを起こす場合もあり、緊急対応が必要です。さらには肝がんのリスクも高まります。

編集部

女性や高齢者でも発症しますか?

奥山 秀平先生奥山先生

はい。特に閉経前後の女性は脂肪代謝が変化し、脂肪肝から肝炎へ進みやすくなります。高齢者でも筋肉量の低下に伴い発症リスクが高くなります。

「メタボリック肝硬変かも」と思ったら

「メタボリック肝硬変かも」と思ったら

編集部

まず何をすべきでしょうか?

奥山 秀平先生奥山先生

健康診断でALTやAST(いずれも肝機能の状態を示す数値)の上昇、あるいは脂肪肝を指摘されたら、まずは日本肝臓学会 肝臓専門医などの受診をおすすめします。血液検査や腹部エコーをおこない、線維化が疑われる場合にはフィブロスキャン(fibroscan)やエラストグラフィ(Elastography)などで線維化の程度を評価します。放置せず、早期の診断が重要です。

編集部

どのように治療するのですか?

奥山 秀平先生奥山先生

体重管理、食事改善、運動療法が治療の中心です。糖尿病や脂質異常症がある場合は、専門的な薬物治療を組み合わせます。また、線維化が進んでいる場合は、肝がんの早期発見のため定期的な画像検査が必要です。

編集部

生活習慣では何に気をつけるべきですか?

奥山 秀平先生奥山先生

糖質や脂質の摂り過ぎに注意し、運動の習慣化が大切です。特に内臓脂肪を減らすには有酸素運動が有効です。また、睡眠不足やストレスも肝臓に悪影響を与えるため、生活全体の見直しが必要です。

編集部

運動が大事なのですね。

奥山 秀平先生奥山先生

ただし肥満があり、これまであまり運動習慣がなかった人の場合、いきなり有酸素運動をおこなうと膝や心肺機能に大きな負担がかかる場合があります。そのため、無理に長時間歩いたり走ったりするよりも、まずは筋力トレーニングからの開始をおすすめします。

編集部

有酸素運動より筋トレがよい場合もあるのですね。

奥山 秀平先生奥山先生

はい。筋肉量を増やせば基礎代謝が上がり、痩せやすくなります。また筋トレをすると、生活習慣病の予防によい影響をもたらす「マイオカイン」などの生理活性物質も分泌されます。筋肉量を維持・増加させながら、余分な脂肪を減らす意識が大切です。

編集部

自宅ではどのように筋トレをしたらよいでしょうか?

奥山 秀平先生奥山先生

特別な器具を使わず、腹筋やスクワットなどの自重トレーニングで十分です。自宅でできる運動を、無理のない範囲で継続していくアプローチが健康改善への近道です。

編集部

どのくらいの頻度で検査を受ければよいですか?

奥山 秀平先生奥山先生

脂肪肝やメタボを指摘された人は、半年~1年ごとのフォローが推奨されます。また、線維化が進んでいる場合は3~6カ月ごとに検査をおこない、肝がんの早期発見を目指します。

編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いいたします。

奥山 秀平先生奥山先生

脂肪肝はほとんど自覚症状がなく、放置されがちです。しかし、症状が表れた時点では、すでに病気がかなり進行しているケースも少なくありません。健康診断などで肝障害を指摘された場合は様子見で済ませず、早めに専門の医療機関を受診し、適切な管理を受けるよう意識しましょう。

編集部まとめ

脂肪肝は「様子を見ていれば治る」病気ではありません。自覚症状がないからこそ見逃されやすく、気づいたときには進行しているケースもあります。健診で異常を指摘されたら、早めに専門の医療機関を受診しましょう。

医院情報

三田医院
所在地 東京都港区芝5-3-10
診療科目 肝臓内科、消化器内科、内科
診療時間 月・火・木・金:午前 9:00~14:00
月・火・木・金:午後 16:00~18:30
水:15:00~18:30
休診日 水曜午前・土曜・日・祝

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