「膵臓がんが見つかりにくい理由」をご存じですか? 専門医が語る早期発見の医学的ポイントとは

膵臓がんは「発見が遅れやすいがん」として医学界でも知られています。症状がほとんど出ないまま進行してしまうことも多く、画像検査でも初期の小さながんは見つけにくいという厄介な特性を持っています。しかし、なぜ医学の専門家ですら見つけるのが難しいのでしょうか。この記事では、膵臓がんが早期に発見されにくい医学的な理由から、予防の方法まで、AIC八重洲クリニックの澤野先生にわかりやすく解説していただきました。「自分や家族のために知っておきたい知識」として、膵臓がんの正体に迫ります。

監修医師:
澤野 誠志(AIC八重洲クリニック)
なぜ膵臓がんは見つけにくいのか

編集部
はじめに、膵臓とはどんな臓器なのか教えてください。
澤野先生
膵臓は胃の後ろの腹部奥深くにある臓器で、長さは15cm程度ですが厚みは10〜30mm程度の比較的扁平な形態で外部からは見つけにくい場所にあります。食べ物を分解する強力な消化液(膵液)をつくるほか、血糖値を調整するインスリンなどのホルモンも分泌しており、消化と代謝の両面を支える生命維持に欠かせない臓器です。
編集部
膵臓がんが見つけにくい最大の理由は「症状がない」ことだと聞きましたが本当ですか?
澤野先生
その通りです。これが最も厄介な点です。膵臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、腫瘍ができても初期段階ではほぼ症状が出ません。患者さんは何も感じないまま、体の中でがんが静かに進行しているのです。症状が出始めるのは、がんが膵管や周囲の臓器を圧迫するほど大きくなったとき。その時点では、すでに進行していることがほとんどです。背中の痛みや黄疸、消化不良などが出たときには、見つかるまでに相当な時間が経過している可能性が高いのです。
編集部
ほかには、どのような理由によって膵臓がんの早期発見が難しくなっているのでしょうか?
澤野先生
膵臓は位置が深く屈曲して扁平で、周囲に胃や腸などで囲まれているため画像に写りにくいのです。CT・MRI・超音波検査でも、5mm以下の小さながんを確実に見つけることは困難です。さらに、膵臓には良性の腫瘍も多く存在するため、医師でも「これはがんか良性か」を区別するのに時間がかかってしまいます。その間にがんが進行してしまうこともあります。つまり、検査に見えない段階でがんが進行する可能性があるのです。
見逃されると何が起こるのか

編集部
膵臓がんの「ステージ」によって、治療成績は大きく変わるのですか?
澤野先生
データを見ると、その差は歴然としています。膵臓がんの5年生存率はステージによって大きく異なります。ステージ0や1では手術で完全に取り除けば比較的良好ですが、膵臓がんのうち約70~80%は発見時にすでにステージ2以降に進行しています。ステージ3では周囲の血管に及んでおり、手術でも完全に取り除けない場合があります。ステージ4では生存率は極めて低くなります。つまり「発見されるタイミング」が患者さんの予後を決めてしまうのです。
編集部
なぜ膵臓がんはほかのがんに比べて、「予後が悪い」と言われるのですか?
澤野先生
前述の通り、膵臓がんは進行して発見されることが多く悪性度も高い場合が多いと言われています。さらに大きな血管に接しているため手術で完全に取り除くことが難しく、抗がん剤が効きにくいケースも多いのです。また、患者さんは短期間で体重が減少し、体力が低下することが多いため、治療に耐える時間的余裕が限られています。これらの理由が重なることで、膵臓がんは医学界で「最も予後が悪いがんの一つ」とされているのです。
編集部
専門医でも見落とすことがあるというのは本当でしょうか?
澤野先生
残念ながら、本当です。膵臓がんの診断は複数の検査結果を「総合的に判断する」必要があるため、医師の経験と知識に大きく左右されます。例えば、膵臓に小さな影が見えたとき、医師は「これはがんか良性か」を判断する必要があります。その判断基準が曖昧な場合、医師によって判断が異なることもあります。また、患者さんが「症状がないから大丈夫」と考えて定期フォローアップを受けないというケースもあります。つまり、見落としは「医師の能力不足」というより「膵臓がんという病気そのものが持つ難しさ」と「検査の限界」という医学的現実なのです。
今からできる予防・早期発見のアクション

編集部
膵臓がんになりやすい人の特徴について教えてください。
澤野先生
膵臓がんは「突然起こる病気」ではなく、いくつかの明確なリスク要因が知られています。代表的なものとして、喫煙は非喫煙者に比べて3〜4倍リスクが高く、長期間の多量飲酒も膵炎を経由して発症リスクを上げます。肥満も危険因子の一つで、体格指数(BMI)が高いほど膵臓がんの可能性が高まるといわれています。また、糖尿病、特に最近診断された場合は注意が必要です。さらに、親や兄弟に膵臓がんの既往がある方、慢性膵炎を抱えている方はリスクが著しく上昇します。こうした要因を一つでも持っている方は医師に相談し、定期的に検査を受けるようにしましょう。
編集部
一般的な健康診断では、膵臓がんは見つからないのですか?
澤野先生
通常の健診項目に膵臓の詳細な検査が含まれていないため、早期に見つけるには膵臓に特化した検査を受けることが大切です。超音波検査は体への負担が少なく手軽におこなえる方法ですが、膵臓の一部が見にくいこともあります。CT検査はより詳細な画像を確認できますが、造影しない検査では診断に限界があります。MRI検査は造影なしでも小病変の指摘が比較的容易です。超音波内視鏡検査は検査の適応が限られますが、最も精密に膵臓の状態を評価できます。血液でおこなう腫瘍マーカー検査もありますが、これだけで診断を確定することはできません。こうした検査を組み合わせて評価することで、より正確な診断につながります。
編集部
膵臓がんが疑われるような症状が出たら、どの診療科に相談すればいいですか?
澤野先生
膵臓がんが疑われる場合は、内科または消化器内科を受診してください。注意すべき症状は、左側の背中の痛み、黄疸、短期間での体重減少、脂っぽい便や消化不良、血糖値の急上昇などです。これらはいずれも膵臓の異常を示す可能性があります。症状がないから大丈夫と考えず、リスクのある方や50歳以上の方は年1回の定期検査を心がけましょう。受診時には「膵臓を詳しく調べてほしい」と伝えることが早期発見につながります。
編集部まとめ
膵臓がんは、体の奥にあり症状が出にくく、進行も早い難しいがんと言えます。そのため多くの方が進行した状態で診断されていますが、決して「見つけられない病気」ではありません。リスクを知り、定期的に検査を受けることで早期発見の可能性は確実に高まります。本稿が読者の皆様にとって、膵臓がんへの理解と行動のきっかけとなりましたら幸いです。
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