「“痛くはない”けど首にしこり…」 どんな病気が隠れているかご存じですか?【医師解説】

首元を触ったときに、しこりがあると不安に感じてしまうと思います。甲状腺のしこりは痛みがなくても、経過観察でよいものから治療が必要なものまでさまざま。今回は、甲状腺疾患に詳しい医師の榎本先生(天王寺甲状腺えのもとクリニック)に、首のしこりとして考えられる原因や受診の目安、検査・治療の流れについて聞きました。
※2025年11月取材。

監修医師:
榎本 圭佑(天王寺甲状腺えのもとクリニック)
首の「しこり」はどんな病気のサイン?

編集部
痛みがない首のしこりを見つけた場合、どんな病気の可能性がありますか?
榎本先生
首の前側に触れるしこりは、甲状腺にできる「甲状腺腫」であることが最も多いです。甲状腺内部に液体がたまったり、組織が部分的に膨らんだりすることで、コリッとしたしこりとして触れることがあります。しこりの大半は良性で、初期は痛みや違和感がないことが一般的です。
編集部
甲状腺腫には、どのようなタイプがあるのでしょうか?
榎本先生
大きく4つに分けられます。液体がたまる「のう胞」、複数の結節(しこり)ができる「腺腫様甲状腺腫」、被膜に包まれた良性腫瘍である「ろ胞腺腫」、そして頻度は少ないものの「悪性腫瘍(がん・リンパ腫)」です。タイプによって経過や治療方針が変わるため、最初の見極めが重要です。
編集部
痛みもなく生活には支障がないのですが、様子を見ていても大丈夫でしょうか?
榎本先生
多くの場合は慌てる必要はありません。ただ、まれに悪性腫瘍が含まれることや、良性でも徐々に大きくなるタイプがあるため、まずは検査を受けて「しこりがどのようなものか確かめること」が大切です。特に短期間で大きくなった場合や、違和感・声のかすれがある場合は早めの受診をおすすめします。
編集部
痛みがない場合でも、検査したほうがよいということですか?
榎本先生
はい。痛みや違和感がなくても、甲状腺のしこりは徐々に変化することがあります。特に40代以降の女性に多いので、該当する人は早めに受診することをおすすめしています。
検査と診断の流れ、医師が解説!

編集部
受診すると、どんな検査をおこなうのでしょうか?
榎本先生
まずは問診と視診・触診で、しこりの位置や硬さを確認します。そのうえで超音波(エコー)検査をおこない、内部の状態を詳しく評価します。必要に応じて血液検査で甲状腺ホルモンや腫瘍マーカーなどを調べ、悪性が疑われる場合には細胞診を追加します。
編集部
細胞診とはどのような検査ですか?
榎本先生
腫瘍に細い注射針を刺して腫瘍の一部を取り出し、それを顕微鏡で見るという検査です。医療機関によって多少の差はありますが、1週間〜10日後に結果がわかります。ただし、甲状腺腫が5mm以下など小さい場合では、安全面や検査精度などの点から細胞診はおこなわれません。
編集部
良性とわかった場合、治療は必要なのでしょうか?
榎本先生
良性腫瘍の多くは治療を必要としません。痛みもなく甲状腺機能に影響がなければ、定期的にサイズの変化をチェックする「経過観察」が基本です。ただし、大きくなって気道を圧迫したり、見た目の問題が気になったり、生活に支障が出たりする場合は、処置や手術を検討することがあります。
しこりが大きくなってきた…、どうやって対応するの?

編集部
処置とは、具体的にどんなことをするのですか?
榎本先生
いくつかの選択肢があります。液体がたまる「のう胞」であれば、針を刺して内容液を抜く穿刺排液をおこないます。再発する場合は、エタノールを注入して再燃を防ぐPEIT(ペイト)という方法を用います。いずれも外来での処置が可能で、入院する必要はありませんが、PEITの場合はアルコールを注入するので処置当日の運転はできません。また自由診療にはなりますが、細い針状の電極を甲状腺腫に刺し、ラジオ波を流して熱で縮小させる治療(RFA)もおこなわれます。
編集部
手術についても教えてください。
榎本先生
腫瘍自体が大きくなってきた場合や悪性が疑われる場合には、手術で一部または全部を切除することがあります。手術は、通常の切開手術以外に内視鏡手術でもおこなうことが可能ですが、3〜5日の入院が必要です。加えて、切除によって甲状腺が小さくなるため、手術後に甲状腺ホルモンを生涯内服する可能性が知られています。
編集部
甲状腺のしこりは再発することもありますか?
榎本先生
良性腫瘍を完全に摘出すれば再発はほとんどありません。ただし、ほかの部分に新しいしこりができることがあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
榎本先生
首元の“しこり”を見つけた場合、甲状腺腫の可能性があります。多くは心配のないしこりですが、ときに悪さをします。しこりは放置せずに、まずはお近くの専門医で相談してください。
編集部まとめ
甲状腺の良性腫瘍は多くが無症状で進行もゆるやかですが、まれに大きくなって呼吸に影響を与えたり、がん化したりする場合もあります。痛みがないからといって放置せず、超音波検査や細胞診などで状態を確認することが大切なので、早めに甲状腺専門医や内分泌外科(旧・甲状腺外科)の専門医の診察を受けましょう。
参考文献
甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2024(一般社団法人 日本内分泌外科学会)
甲状腺腫瘍(良性・悪性)(一般社団法人 日本内分泌学会)
医院情報

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| 診療科目 | 内科、外科、耳鼻咽喉科 |
| 診療時間 | 午前:月〜金 9:30〜12:30 土 9:30〜15:30 午後:月〜金 15:00〜18:00(水木は手術のみ) 夜診:火 18:00〜20:00 |
| 休診日 | 日祝 |




