40代から急増する「大腸がん」 “便潜血検査”と“大腸カメラ”の選び方を医師が解説

近年、大腸がんの罹患者は増加傾向にあり、40代・50代から発症リスクが高まることが知られています。大腸がんを早期発見するためには便潜血検査や大腸カメラといった検査が有効です。しかし、「毎年の便潜血検査だけで十分?」「一度は大腸カメラを受けるべき?」など、迷う方も多いと思います。今回は、所沢みやた内科クリニック院長の宮田大士先生に、両検査の特徴と適切な受診タイミングについて解説していただきました。

監修医師:
宮田 大士(所沢みやた内科クリニック)
便潜血検査とは? 受けるメリットと検査の限界

編集部
はじめに、便潜血検査とはどのような検査なのか教えてください。
宮田先生
便潜血検査は、便の中に目に見えない血液が混じっていないかを調べる検査です。大腸がんや大腸ポリープ、炎症性腸疾患などによる出血で陽性になることがあります。採便だけで済むため負担が少なく、特に大腸がんの早期発見に役立ちます。ただし、出血がない段階の病変は検出できないため、あくまでふるい分けのためのスクリーニング検査と考える必要があります。
編集部
便潜血検査で陽性と出た場合、大腸がん以外の原因で反応が出ることはありますか?
宮田先生
痔や大腸ポリープ、炎症性腸疾患のほか、一時的な腸の炎症や便秘による出血でも陽性になることがあります。つまり、陽性=大腸がんとは限りません。しかし、便潜血検査だけでは良性か悪性かを区別できないため、陽性の場合は必ず大腸カメラで原因を確認することが必要です。
編集部
便潜血検査のメリットとデメリットについて教えてください。
宮田先生
最大のメリットは安価で体の負担が少なく、誰でも気軽に受けられることです。デメリットとしては、出血していない病変や日によって出血量が変わる病変は見逃されることが挙げられます。陰性だからといって完全に安心はできません。そのため、40代以降は毎年の便潜血検査を習慣にしつつ、必要に応じて大腸カメラを組み合わせることが望ましいといえます。
大腸カメラの役割と受けるべきタイミング

編集部
大腸カメラの役割についても教えてください。実際にはどのような異常や病変を発見できるのでしょうか?
宮田先生
大腸カメラは、大腸の粘膜を直接観察することができる検査です。ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患などを正確に診断でき、ポリープが見つかればその場で切除することもできます。さらに組織を採取して病理検査に回すこともでき、精密な診断が可能です。便潜血では見つからない早期の病変や出血を伴わない腫瘍も発見できる点が、大腸カメラの大きな強みです。
編集部
大腸カメラと便潜血検査を比べたときの精度や診断能力の違いについて教えてください。
宮田先生
便潜血検査はスクリーニングとして有効ですが、精度は大腸カメラに比べて低くなります。大腸カメラは大腸全体を直接観察できるため、早期がんや小さなポリープも見つけられます。便潜血検査は「入口」として有用ですが、出血のない病変は見逃されがちです。大腸カメラは出血の有無に関わらず病変を確認できるため、確定診断と治療に直結する検査といえます。
編集部
40代・50代の方が大腸カメラを受けるべきタイミングはいつが望ましいのでしょうか?
宮田先生
家族に大腸がんの既往がある方、便潜血で陽性となった方、血便や便通異常が続く方は大腸カメラを積極的に受けるべきです。また、40代後半以降は大腸がんのリスクが高まるため、症状がなくても一度は受けることをおすすめします。ポリープを早期に発見し除去することで将来の大腸がんを防ぐことにつながるので、症状が出る前に大腸カメラを受けることが非常に大切です。
便潜血検査と大腸カメラの選び方と受診の目安

編集部
便潜血検査はどのくらいの頻度で受けるのが理想的でしょうか?
宮田先生
便潜血検査は毎年受けることが理想的です。大腸がんはゆっくり進行するため、年1回の定期検査で早期に異常を捉えられる可能性が高まります。特に40代・50代はリスクが高まる時期であり、継続することで安心にもつながります。市区町村のがん検診制度を利用できるケースも多く、費用面でも続けやすい検査です。
編集部
大腸カメラ検査を受ける適切な間隔や目安について教えてください。
宮田先生
大腸カメラを受ける頻度に明確な決まりはありませんが、一般的には3〜4年ごとを目安に考えるとよいでしょう。便潜血検査を毎年受けており、その結果に異常がなければ、3〜4年に一度の大腸カメラで十分といえます。もし便検査を実施していない場合や、家族に大腸がんの既往があるなどリスクが高い場合は、2〜3年に一度の間隔で受けるのがおすすめです。40代後半から50代はリスクが上がる年代のため、一度は検査を受け、その後は医師と相談しながら自分に合った頻度を決めることが大切です。
編集部
40代・50代の方が検査を受けるうえで、便潜血検査と大腸カメラをどのように使い分ければよいでしょうか?
宮田先生
便潜血検査は毎年手軽に受けられる一次検査として有用で、大腸カメラは診断と治療を同時におこなえる精度の高い検査です。40代・50代の方は、まず便潜血検査を継続し、陽性や症状が出た場合には迷わず大腸カメラを受けることが基本です。さらに、家族歴がある方や気になる症状がある方は、便潜血を待たずに直接大腸カメラを受けることが将来の安心につながります。
編集部まとめ
便潜血検査は毎年気軽に受けられる「入り口」、大腸カメラは診断と治療を兼ねる「本丸」の検査です。40代・50代からは、便潜血を継続的に受けつつ、必要に応じて大腸カメラを組み合わせることが大腸がん予防の鍵となります。今回の記事が、皆様が自分に合った検査の受け方を考えるきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報

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| 診療科目 | 一般内科・消化器内科・糖尿病内科 |




