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『アトピー』が重症の場合用いられる治療薬「生物学的製剤」はどんな薬?【医師に聞く】

 公開日:2026/04/27
『アトピー』が重症の場合用いられる治療薬「生物学的製剤」はどんな薬?【医師に聞く】

強いかゆみや発疹が続くアトピー性皮膚炎。特に重症例では、従来の治療だけではコントロールが難しいケースもあります。そこで近年注目されているのが「生物学的製剤」です。駒沢自由通り皮膚科の白石先生に、アトピー治療における生物学的製剤の役割について聞きました。

※2025年10月取材。

白石 英馨

監修医師
白石 英馨(駒沢自由通り皮膚科)

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帝京大学医学部卒業。その後、同大学医学部附属病院をはじめ複数の病院で皮膚科医として経験を積むほか、美容医療も経験。川崎市の皮膚科クリニック勤務を経て、2025年3月に『駒沢自由通り皮膚科』を開設、院長となる。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。

子どものかゆみ…もしかしてアトピー性皮膚炎!?

子どものかゆみ…もしかしてアトピー性皮膚炎!?

編集部

アトピー性皮膚炎とはどのような病気ですか?

白石 英馨先生白石先生

日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎ガイドラインによると、「増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者さんの多くはアトピー素因をもつ」と定義されています。平たくいうと、よくなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみを伴う湿疹が現れる病気です。アレルギーに関係する「IgE抗体」を作りやすい体質の人や、家族にアトピー性皮膚炎やぜんそくの患者さんがいる人に多くみられます。

編集部

なぜ、そのようなかゆみが出るのですか?

白石 英馨先生白石先生

皮膚のバリア機能低下や、免疫学的要因が絡み合って症状が表れるためです。バリア機能の低下を伴い、炎症とかゆみが慢性的に表れます。特筆すべきは、皮膚バリアの破綻によりアレルゲンなどが容易に入り込み、結果として炎症・かゆみを引き起こすということです。患部をかくことで、さらに皮膚バリアの破綻を招き、慢性的な湿疹を引き起こします。

編集部

アトピーの症状にはどのような特徴がありますか?

白石 英馨先生白石先生

アトピー性皮膚炎は湿疹を主症状とした炎症性疾患なので、皮膚の赤み、かゆみ、乾燥が主な症状です。湿疹は左右対称性に出ることが多く、頭頸部をはじめとして全身に表れます。頭部では落屑(フケのようなもの)を伴う紅斑、耳切れ、口角炎などがみられることが多く、首には肌のキメが粗くなってさざ波のような独特のしわができ、さらに全体的に茶色くくすんだ跡(炎症後色素沈着)が残っていることが多いです。四肢関節部では長引く湿疹により、苔癬化(たいせんか/皮膚が厚く硬くなる状態)を伴い、非常に強いかゆみを生じます。年齢により症状に違いがあり、乳幼児期、小児期、成人期と湿疹ができやすい場所などが異なりますが、乳児であれば2カ月以上、それ以外は6カ月以上の期間で特徴的な湿疹が続くことで診断されます。そのほか、アトピー性皮膚炎の病勢を反映するマーカーとして、IgE抗体、TARC(重症度を示す血液中のタンパク質)、SCCA2(皮膚の炎症状態を示す血液検査の数値)などの上昇が見られます。これらは、病勢の評価や重症度の評価に使われます。

編集部

子どもに多い病気なのですか?

白石 英馨先生白石先生

子どもに多い傾向にあります。厚生労働省の全国調査によれば、4カ月児の12.8%、1歳6カ月児の9.8%、3歳児の13.2%、小学1年生の11.8%、小学6年生の10.6%、大学1年生の8.2%がアトピー性皮膚炎とされています。成長とともに症状が軽快する場合もありますが、大人になっても続く人も少なくありません。全体の傾向として、幼少期にしっかりと治療して症状を抑えられていた人は、大人になって軽快しやすい傾向にあります。そういった意味でも今ある湿疹を今抑えておくことは重要です。また、乾燥した皮膚や、アトピーによる皮膚バリアの破綻が続くことで、アレルゲンの経皮感作(皮膚からアレルギー物質が侵入すること)を起こすことも分かってきているので、今ある湿疹を見逃さずに治療しましょう。

アトピー性皮膚炎の治療と継続するための心構え

アトピー性皮膚炎の治療と継続するための心構え

編集部

アトピー性皮膚炎の治療について教えてください。

白石 英馨先生白石先生

根本的に治す治療はまだ確立されていません。治療の3本柱として、皮膚のバリア機能を改善させる「スキンケア」、内服や外用などの「薬物療法」、「環境の整備(悪化因子の排除)」が提唱されています。具体的には、スキンケアとして保湿などによる皮膚の保護、薬物療法として抗アレルギー剤の内服やステロイド剤を使用してかゆみ症状の改善、こまめな洗濯や掃除によるダニやハウスダストなどのアレルゲンの除去などが挙げられます。

編集部

治療を受けるうえで、患者さんや家族が心がけることは何でしょうか?

白石 英馨先生白石先生

重要な点は、治療の継続です。ステロイドをしっかり外用するとかゆみや赤みが落ち着き、かなりよい状態まで軽快することが多いのですが、実はその状態でも皮膚の下でくすぶっている炎症があると言われています。そこで治療をやめてしまうと下火になっていた炎症がまた再燃しますので、すぐに治療をやめるのではなく、しばらく継続することが大事です。ステロイド以外にも炎症を抑える外用剤はありますので、それらでよい状態をキープしていきましょう。

編集部

「心が折れてしまう」という声も聞いたことがあります。

白石 英馨先生白石先生

そうですね。「どうせ治療しても変わらない」と半ば諦めてしまっている人もいます。しかし、1週間でもかかないで、しっかり外用するとかなり奇麗になります。そうすると、その成功体験が次の治療意欲にもつながります。「次の外来受診まではかかずにしっかり塗るぞ」くらいの短期間でもよいので、まずはしっかり治療してみることが大事です。

編集部

それでも改善しない場合はどうなりますか?

白石 英馨先生白石先生

より強力な治療を検討します。JAK阻害薬という内服薬や、生物学的製剤と呼ばれる注射薬がその代表です。どちらも従来の治療で十分な効果が得られなかった人に、新しい選択肢として提供されるものです。症状が局所にとどまっているようであれば、局所に紫外線を当てていく治療を追加することもあります。

編集部

JAK阻害薬とはどのような薬ですか?

白石 英馨先生白石先生

JAK阻害薬は、少し前から使われるようになった比較的新しい内服薬で、従来の治療で効果が不十分な人に使われています。炎症の原因をピンポイントで抑える新しい薬として期待されています。すでに生じているかゆみを和らげる対症療法ではなく、炎症やかゆみの伝達経路をブロックすることで強力に炎症・かゆみを抑制します。現在、バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブの3剤が使用可能で、個々に応じて薬剤や用量を選択します。非常に強力な抗炎症作用が期待できます。

編集部

では、生物学的製剤とはどんな薬ですか?

白石 英馨先生白石先生

アトピー性皮膚炎の炎症に関与する特定の分子を標的にして働く注射薬です。従来のステロイド薬が「広く炎症を抑える」のに対し、生物学的製剤は「必要な部分だけを抑える」イメージで、より副作用が少なく効果的な治療が期待できます。表皮の炎症やかゆみを誘導する炎症性サイトカインの働きを抑制することで、強力に炎症を抑え、かゆみを抑えていく注射剤になります。こちらは炎症の基をピンポイントに抑えるイメージですね。現在は以下の4種類の薬剤が年齢に応じて使用可能であり、高い効果が期待できます。
・デュピクセント生後6カ月〜
・ミチーガ6歳〜
・アドトラーザ15歳〜
・イブグリース12歳〜

もっと知りたい生物学的製剤

もっと知りたい生物学的製剤

編集部

生物学的製剤やJAK阻害薬は具体的にはどのように使うのですか?

白石 英馨先生白石先生

生物学的製剤注射の投与スケジュールは薬剤により、2週間おき、もしくは4週間おきとなります。初めはクリニックで注射をするのですが、慣れてきたらご自宅に持ち帰りご自身で注射をするようになります。そのため、通院の負担も軽減されます。JAK阻害薬は内服なので、これは自宅で内服するようになります。JAK内服を開始する前に、事前検査として胸部レントゲンと採血が必要です。さらに内服して、1カ月、3カ月、以後6カ月おきに定期的な採血が必要になります。

編集部

では、生物学的製剤の注意点なども教えてください。

白石 英馨先生白石先生

注射部位の赤みや腫れ、結膜炎、軽い頭痛などが報告されています。重篤な副作用の頻度は高くないとされていますが、治療中は医師の管理下で定期的に経過をみていくことが必要です。また、免疫が抑制されるので、ヘルペスや寄生虫感染が起きやすいとされています。製剤によっては結膜炎がでやすいことも報告されています。異常が現れたらすぐに医師に相談しましょう。

編集部

「生物学的製剤」について、ほかに知っておいたほうがよいことはありますか?

白石 英馨先生白石先生

一般的な治療をして、効果が得られない場合に導入することができますので、突然生物学的製剤を処方することはできません。また、疾患活動性を測る指標(IGAスコア、EASIスコア、体表面積に占めるアトピー性皮膚炎の割合)で一定要件をクリアすることも必要です。もう一つ、自己負担がやや高額になる場合もあるため、高額医療費制度や学生医療費助成制度、ひとり親家庭等医療費助成制度・子ども医療費助成制度など、国や自治体などの助成制度や自身が加入している医療保険の適用内容についても確認してください。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

白石 英馨先生白石先生

近年のアトピー性皮膚炎治療は目覚ましく変化しています。「どうせ治らない」と諦めていた人でも、アトピーがあることで人目を気にすることなく過ごせたり、かゆみのない生活を送ったりすることができるようになってきました。少しでも多くの人に幅広い治療選択肢を知ってもらい、治療のお手伝いができたらと考えています。

編集部まとめ

アトピー性皮膚炎は、かゆみと炎症を繰り返す慢性疾患です。現在のところ根本的な治療は確立されていないものの、治療の進歩により新しい選択肢が増えています。最近では生物学的製剤やJAK阻害薬が用いられることもあり、患者さん一人ひとりに合った治療を選ぶことができます。症状に悩んでいる人は、近くの皮膚科に相談してみてはいかがでしょうか?

医院情報

駒沢自由通り皮膚科
所在地 東京都世田谷区駒沢1丁目2番25号 KOMAZAWA1・2ビル2階
診療科目 皮膚科
診療時間 月火木金:9:30~13:00/15:00~18:30
土:9:00~13:00
休診日 水・日・祝

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