女性の「薄毛治療」を医師が解説 男性のAGAと違うの? 植毛も男性だけのものではない

薄毛は決して男性だけの悩みではありません。女性も年齢やホルモン変化などによって、徐々に髪が細くなったり、ボリュームが減ったりすることがあります。そこで、医師の中島陽太先生(紀尾井町クリニック東京本院)に、女性型脱毛症(FPHL/FAGA)の特徴・治療法・植毛の可能性について聞きました。

監修医師:
中島 陽太(紀尾井町クリニック東京本院)
女性型脱毛症(FPHL/FAGA)って?男性の薄毛とは違うの?

編集部
女性型脱毛症(FPHL/FAGA)はどういう状態を指すのでしょうか?
中島先生
女性型脱毛症(FPHL/FAGA)は、女性における進行性の脱毛で、男性のように生え際が後退するよりも、髪全体が細くなり、分け目や頭頂部の透けが目立つようになるパターンが多いです。男性型脱毛症(AGA)とは原因や進行の仕方に違いがあります。
編集部
原因にはどのようなものがありますか?
中島先生
女性型脱毛症(FPHL/FAGA)の薄毛や脱毛の原因は、まだはっきりとは分かっていませんが、遺伝・ホルモンバランスの変化(特にエストロゲン低下とアンドロゲン優位化)、加齢、生活習慣、ストレス、栄養不足(鉄・亜鉛など)などが組み合わさって発症していると言われています。また、自己免疫疾患や甲状腺疾患などが関与することもあります。
編集部
どのような生活習慣が影響するのですか?
中島先生
睡眠不足、ストレス、偏食、過度なダイエット、喫煙などは頭皮環境を悪化させたりホルモンバランスを崩したりして、脱毛を促進させる要因になり得ます。
編集部
男性のAGAとはどう違うのですか?
中島先生
男性のAGAはテストステロンという男性ホルモンが最も大きな影響を及ぼします。一方、女性では、ホルモンバランスの変化(女性ホルモンの低下に伴う、相対的な男性ホルモンの増加)も薄毛の原因ではありますが、それ以外にも栄養状態やストレス、多様な要因が関与していると考えられています。治療に使える薬も同じではありませんし、使える同じ薬でも濃度が異なっているなどの違いがあります。
治療法の選択肢とそれぞれの特徴

編集部
FPHLに対する治療法にはどんなものがありますか?
中島先生
最も多くおこなわれているのは薬物療法です。ただし男性と比べると、女性の場合は使用できる薬物が少ないというのが現状です。現時点で女性型脱毛症に最も広く使用されているのはミノキシジル外用薬です。男性のAGAの治療に最もよく使われるフィナステリドやデュタステリドは、女性に対しては基本的には使用されません。
編集部
それ以外に使われる薬はありますか?
中島先生
ミノキシジルで効果がみられないケースには、抗アンドロゲン薬(スピロノラクトン、フルタミドなど)を併用するケースもありますが、高用量では低血圧や高カリウム血症など副作用のリスクもあるため、慎重に使われます。また薬剤以外では、LEDおよび低出力レーザー照射をおこなうケースもあります。
編集部
では、植毛は可能ですか?
中島先生
可能です。特に医薬品で効果が不十分な部位に対しては、自毛植毛が選択されることが多くあります。代表的なのは「FUT法」と「FUE法」です。女性の場合は薄毛の範囲が広くなるケースが多いため、移植デザインや株数の配分などが非常に大事です。
編集部
植毛について、もう少し詳しく教えてください。
中島先生
FUT法は後頭部の皮膚を帯状に切り取って毛根単位に切り分けてから移植するため、沢山の移植株を広い範囲に移植することが可能です。一方FUE法は専用の器具で毛根を1つずつくり抜くようにして採取して移植するため、毛根を採取したときにできる後頭部の傷が目立ちにくいというメリットがあります。基本的な方法は男性と同じですが、頭皮の薄さ・剃毛範囲・デザイン性への配慮など、女性特有の要素を考慮した技術が求められます。
治療開始のタイミングと長期管理

編集部
いつから治療を始めるのがよいですか?
中島先生
髪の細さや抜け方、分け目の透け感など違和感を覚えたなら、早めの受診をおすすめします。妊娠や出産をきっかけとする一時的な薄毛は、ホルモンバランスが戻ると改善することもありますが、更年期以降の女性型脱毛症は基本的には「様子を見ているうちに進行する」ケースがほとんどです。毛根が完全に消失してしまうと、薬剤での改善が難しくなってしまうこともあるため、できるだけ早めに専門医に相談しましょう。
編集部
治療の効果はどのくらいで感じられますか?
中島先生
ミノキシジル外用では、数カ月で発毛や太さの改善を感じることがあり、6〜12カ月で明確な変化を得られるケースが多いですが、中断すると、再び薄毛が進行する可能性があります。FPHLは慢性的な状態なので、長期的な視点に立って治療を続けることが大切です。
編集部
副作用や注意点はありますか?
中島先生
ミノキシジル外用はかゆみや頭皮の刺激感などの局所症状が見られることがあります。内服抗アンドロゲン薬を使う場合は電解質をチェックするために、定期的に血液検査をした方がよいと思います。また、薄毛治療には医療保険が使えませんので、費用については確認してから治療開始することをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中島先生
女性の薄毛というのは、男性のものと比べてあまり社会的に認知されておらず、それゆえ周りに相談しにくかったり、どこに相談すればよいのか分からず悩みを抱えてしまったりする人もいると思います。薄毛の原因や進行の仕方は人によって異なりますので、不安や疑問を感じた場合は、一人で抱え込まず、まずは信頼できる医療機関や専門医に相談してみましょう。
編集部まとめ
女性型脱毛症(FPHL/FAGA)は進行性であり、早期発見・早期介入が重要です。治療法は現時点では外用ミノキシジルが主力ですが、植毛も選択肢になるのだそうです。「年齢だから仕方ない」「薄毛治療なんて恥ずかしい」と諦めず、気になる変化があれば専門医に相談してみましょう。
参考文献:
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