『ストレス』と「胃腸炎」の結びつきをご存じですか? どんな人が注意すべき?【医師解説】

強いストレスが続くと、自律神経の乱れによって胃酸分泌が過剰になったり、腸の動きが不安定になったりして、胃腸炎を引き起こすことがあります。胃腸の不調は、風邪やウイルスだけが原因ではありません。そこで、なぜストレスで胃腸が弱ってしまうのか、その仕組みと適切な対処法について、成田クリニックの成田礼先生に聞きました。
※2025年10月取材。

監修医師:
成田 礼(成田クリニック)
ストレスが原因で胃腸炎になることはある?

編集部
ストレスが原因で胃腸炎になることは、本当にあるのでしょうか?
成田先生
はい、あります。ストレスが引き金となって起こるのは、機能性消化管障害やストレス関連の胃腸炎と呼ばれる状態です。強い精神的ストレスや長期間の緊張が続くことで、胃や腸の働きが乱れ、不快な症状が表れることがあります。
編集部
ウイルスなどが原因となって起きる感染性胃腸炎とはどう違うのですか?
成田先生
ウイルスや細菌が原因の場合には発熱、嘔吐、下痢などが急激に起こります。一方、ストレスが関係する胃腸炎では発熱はほとんどなく、胃痛、胃もたれ、下痢や便秘、吐き気などがじわじわと続くのが特徴です。
編集部
症状が異なるのですね。
成田先生
はい。それから、症状の持続期間も異なります。ウイルスや細菌が原因のものは症状が1週間程度でおさまることが多いのですが、ストレスが原因の場合には数週間程度、長ければ年単位で持続することもあります。
編集部
具体的にどのような症状が出やすいのでしょうか?
成田先生
みぞおちの痛み、胃の不快感、食欲不振、下痢や軟便、腹部膨満感などが代表的です。また、「緊張するとおなかが痛くなる」「朝になると下痢になる」といったように、特定の場面で症状が出やすいのも特徴です。ストレスと症状のタイミングが一致することが、判断のヒントになります。
編集部
どのような人に多い傾向がありますか?
成田先生
真面目で責任感が強い人、緊張しやすい人、環境の変化に敏感な人に多い傾向があります。また、仕事や家庭でストレスを抱えやすい働き盛りの世代や、更年期前後の女性にもよく見られます。体質と生活背景が影響し合って起こると考えられています。
機能性消化管障害の主な種類とメカニズム

編集部
機能性消化管障害にはどのような種類があるのですか?
成田先生
機能性消化管障害の中でも特に近年、患者さんが多いのが「機能性ディスペプシア(FD)」や「過敏性腸症候群(IBS)」です。
編集部
病名を耳にしたことがあります。
成田先生
機能性ディスペプシアはストレスなどを原因として胃の機能が障害されることによって起こり、食後に胃もたれが起きたり、少し食べただけで満腹になったりします。一方の過敏性腸症候群は大腸に機能異常が起こり、腹痛や腹部不快感と共に、便秘や下痢が続きます。
編集部
なぜストレスが胃や腸に影響するのでしょうか?
成田先生
胃腸は自律神経によってコントロールされているためです。ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、胃酸の分泌が増えたり、胃や腸の動きが過剰になったり低下したりします。また、内臓の知覚が過敏になることもあります。その結果、胃痛や下痢、便秘といった症状が起こりやすくなるのです。
編集部
自律神経ということは、脳も関係しているのですか?
成田先生
はい。「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼ばれ、脳と腸は双方向に影響し合っています。強い不安や緊張は脳から腸へ伝わり、腸の動きを乱します。逆に、腸の不調が続くことで不安感が強まることもあり、悪循環に陥るケースもあります。
編集部
ストレス以外にも原因はありますか?
成田先生
不規則な生活や睡眠不足、過食、早食い、脂っこい食事などの生活習慣が原因となって症状が出ることもあります。
予防法と対処法は?

編集部
症状が出たときの対処法はありますか?
成田先生
症状が気になる場合には我慢せず、早めに受診するようにしましょう。自宅でできる対処法としては、まずは胃腸を休ませることです。脂っこい食事や刺激物を避け、消化のよい食事を心がけましょう。症状が強い場合は胃薬や整腸剤が有効なこともあります。また、ストレスをできるだけ排除することも大事です。
編集部
病院ではどのような治療がおこなわれますか?
成田先生
症状に応じて、胃酸を抑える薬、胃腸の動きを整える薬、整腸剤、漢方薬、抗うつ薬、抗不安薬などが使われます。また、生活習慣やストレスの背景を一緒に整理し、再発を防ぐ指導がおこなわれることもあります。検査でほかの病気が隠れていないかを確認することも重要です。
編集部
ストレスによる胃腸炎は予防できますか?
成田先生
完全に防ぐことは難しいですが、予防は可能です。まずは生活リズムを整え、睡眠をしっかり取ることが基本です。また、ストレスを感じやすい状況を自覚し、無理をしすぎないことも重要です。自分なりのリラックス方法を持つことが、胃腸を守ることにつながります。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いします。
成田先生
これまでこうした症状は「気のせい」「気が弱いから」と誤解され、メンタルの問題として片付けられることが少なくありませんでした。しかし近年では、「病気」として医学的に認識され、治療薬も整ってきています。胃腸の不調が続く場合は一度医療機関を受診し、重大な病気が隠れていないかを確認することが大切です。また、必要に応じてカウンセリングを併用することで、悪化や重症化を防ぐことが期待できます。困ったことがあれば早めに医師に相談してください。
編集部まとめ
胃腸の不調を「性格の問題」と思い込んで我慢してしまう人は少なくありませんが、実は身体のメカニズムが深く関わっています。正しく診断し治療につなげることで、症状は軽くなる可能性があります。つらさを一人で抱え込まず、早めに医療の力を借りることが大切です。
医院情報

| 所在地 | 熊本県熊本市東区江津1丁目1-1 |
| 診療科目 | 内科、胃腸科、消化器内科、外科 |
| 診療時間 | [月・火・水・金]9:00~12:30/14:00~18:00 [木]9:00~12:30 [土]9:00~13:00 |
| 休診日 | 日・祝 |



