「ヒアルロン酸注入」が向いている人･向いていない人の違いとは? 施術を受ける前の注意点も皮膚科医が解説!

今泉先生

ヒアルロン酸はもともと体内に存在し、肌や関節、目などに多く含まれる成分です。1gで2～6リットルの水分を保持できるほど高い保水力を持ち、肌に潤いや弾力を与えています。年齢とともにヒアルロン酸が減少するので、しわやたるみ、乾燥が目立つようになるのです。

今泉先生

美容医療では、ジェル状に加工したヒアルロン酸を注入し、肌を内側から持ち上げるようにしてしわやたるみを改善します。ほうれい線や口元のしわ、目の下のくぼみなどに用いられ、ハリやつやを取り戻す効果が期待できます。また、鼻やあごの形成、唇のボリュームアップなど顔の立体感を整える目的でも使用されます。

今泉先生

最近は、形を変えるヒアルロン酸とは異なり、肌内部（真皮）にあるコラーゲンやエラスチンの増生を目的とした「非架橋型ヒアルロン酸製剤」が注目されています。DNAを精製・断片化した高分子核酸成分であるポリヌクレオチドやアミノ酸などを含有している製剤もあり、細胞を活性化させて肌の水分量や免疫力を上げることが可能になっています。

今泉先生

大きな特徴は、注射のみで施術が完了することです。皮膚を切らずにおこなえるため、ダウンタイムが短く、日常生活に戻りやすい点がメリットです。また、体内に元からある成分を補う施術なので、アレルギーのリスクが比較的低いこともメリットと言えるでしょう。

今泉先生

はい。手術ではなく注射だけでおこなえるため、「周りにバレたくない」「切る施術には抵抗がある」という人に選ばれることが多いですね。また、仕事や家庭の事情でダウンタイムを長く取れない人や、初めて美容医療を体験する人にとっても、ハードルの低い選択肢の1つになるでしょう。

今泉先生

「顔のしわやたるみが気になる人」や「目の下のクマやくぼみを改善したい人」に向いています。また、頬にふくらみを持たせたい、鼻やあごのラインを整えたい、唇をふっくらさせたいなど、「顔の立体感を整えたい人」にも適しています。さらに、初めて美容医療に挑戦する人が選びやすい施術でもあります。

今泉先生

ヒアルロン酸は、一度注入すると1年近く経っても完全に吸収されることは少ないため、少しずつ残存していくことを考慮すると、肌内部で美容貯金をしていると考えるのがいいと思います。「将来に向けてエイジングに備えたい人、あるいは現状を維持していきたい人」におすすめです。

今泉先生

注入されたヒアルロン酸は、すぐに皮膚を内側から押し上げるため、施術直後から「ふっくらした」「しわが目立ちにくくなった」と感じる人が多いのが特徴です。直後〜数日間は軽い腫れや赤みが出ることもありますが、一般的に2〜4週間ほどで自然に肌になじんで仕上がりが落ち着いていきます。1カ月後には肌のハリやつやなどはもちろん、しわが目立ちにくくなるなどの自然な効果も期待できます。

今泉先生

前述したように、注入されたヒアルロン酸は時間の経過とともに体内に吸収されていくので、ハリやボリュームは少しずつ減っていきます。持続期間は人によって異なりますが、多くの場合は半年〜1年ほどです。ただし、完全にゼロ（元）の状態にはならないと報告されています。どの種類の製剤を用いるか、どの部位に注入するか、また代謝の速さなどによっても効果の続き方は変わります。より長期的な改善を望む場合には、定期的に注入をおこなうことで自然なハリを保ちやすくなります。

今泉先生

「劇的な変化を求める人」「コミュニケーションの取れない人」「医師のアドバイスを受け取れない人」「永久的な、長期持続的な効果を期待する人」などは、残念ながら向いていません。過度な期待を抱く、あるいは理想と現実のギャップを理解できないと、頻回にヒアルロン酸注入をおこない、Over-Filled Syndrome（フィラー入れ過ぎ顔；バルーンフェイス）になってしまいます。適切な量を適宜注入していく、不自然にならないためのアドバイスに耳を傾けられる人は、ヒアルロン酸注入をはじめとする美容医療に向いている人と言えるでしょう。

今泉先生

ヒアルロン酸と一口に言っても、製剤は非常に多くの種類があります。厚生労働省やアメリカ食品医薬品局（FDA）などの認可を受けた製剤は安全性が高く、持続性や効果も安定しています。また、医療機関選びも重要で、信頼できる医師か、施術後に微調整や修正が可能かどうか、何かあったときのための「ヒアルロニダーゼ（溶解剤）」をきちんと常備しているか、アクシデントに対応できるかどうかなども重要な確認ポイントです。

今泉先生

ヒアルロン酸注射は自由診療で、健康保険の対象外です。費用は医療機関が自由診療として定めており、製剤の種類や注入量、部位によって異なります。比較的シンプルな施術ですが、技術によって仕上がりは大きく変わるため、料金だけで選ぶのではなく、安全性と医師の経験を含めて総合的に判断することが大切です。

今泉先生

ヒアルロン酸注入をはじめ、美容医療において最も大切なことは、「患者さんと医療スタッフがゴールを共有すること」と言われています。また、コミュニケーションを上手に取ることも重要なポイントです。患者さんにとって不要な施術は「必要ありません」と正直に伝えてくれる真摯な対応ができる医療機関、そして医師と付き合っていくことが重要だと思います。ヒアルロン酸注入を通じて、美容医療を通じて前向きな生活を送れるような「かかりつけ医」を探してみてはいかがでしょうか。