ストレスが「心臓病」の引き金に? リスクを避ける“自律神経を整える生活習慣”を医師が解説!

強いストレスや不安が続くと、動悸や胸の痛みなどの症状を引き起こすことがあります。主に自律神経の乱れが原因で、心と体の両面からケアすることが大切です。今回は自律神経を整え、心臓病の予防にもつながる生活習慣について、「KENカルディオクリニック柏」の中村先生に解説していただきました。

監修医師:
中村 賢(KENカルディオクリニック柏)
ストレスが心臓病のリスクを高める?

編集部
ストレスで心臓に悪影響が出ることは、本当にあるのでしょうか?
中村先生
はい、強いストレスは心臓に直接的な負担をかけます。精神的な緊張や不安が続くと交感神経が優位になり、血圧や心拍数が上昇しやすくなります。その結果、動脈硬化が進んだり、心筋梗塞や狭心症のリスクが高まったりすることがあるのです。
編集部
ストレスが心疾患の引き金になることもあるのですね。
中村先生
ストレスがかかると、自律神経の交感神経が過剰に働き、アドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。この状態が続くと血管が収縮し、心臓に負担がかかります。さらに、血小板が凝集しやすくなり、血栓による心筋梗塞のリスクも上がります。
編集部
どのような人がストレス性の心疾患に注意すべきですか?
中村先生
もともと高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を持っている人は、ストレスによって心疾患を発症しやすくなります。また、几帳面で責任感が強い、ストレスをためこみやすい性格の人も要注意です。家庭や職場などで多様な役割を求められる中高年世代は、特に気をつける必要があります。ただし、近年では若年化している傾向がみられ、20~30代の人でもストレスによる心疾患を発症するケースが見受けられます。
編集部
ストレスによる心臓病の例には、どのようなものがありますか?
中村先生
代表的なものに、「たこつぼ型心筋症」があります。強い精神的ショックを受けた直後に、心筋が一時的に収縮障害を起こし、心不全のような症状が表れるのが特徴的です。そのほか、心臓には異常がないのに、ストレスが引き金となって動悸などの症状が強く出る疾患に「心臓神経症」があります。
心臓神経症とは? ストレスとの関係は?

編集部
心臓神経症について、もう少し詳しく教えてください。
中村先生
心臓神経症とは、胸の痛み、動悸、息苦しさなど、心臓に関連した症状があるにもかかわらず、心電図や血液検査、心エコーなどでは特に異常が見つからない状態を指します。心臓神経症の発症には、ストレスや不安による自律神経の乱れが大きく関与しているとされています。
編集部
心臓神経症の症状は、どのように表れるのですか?
中村先生
胸の痛み、動悸、息苦しさなどの症状が繰り返し起こります。「刺すような痛み」「心臓がズキズキ、あるいはチクチクする」「締めつけられるような感じがする」と表現する患者さんもいますね。なかには「命に関わるのではないか、呼吸が止まるのではないか」と大きな不安を感じる人もいます。
編集部
症状の表現は多岐にわたるのですね。
中村先生
そうですね。加えて、狭心症や心筋梗塞のように激しい胸の痛みや圧迫感を覚える人もいます。心臓神経症が前駆症状となり、その後に狭心症や心筋梗塞を発症する人も見受けられます。
編集部
心臓神経症は、放置しても大丈夫なのでしょうか?
中村先生
心臓神経症そのものは命に関わる病気ではありませんが、放置しておくと「また症状が出たらどうしよう……」という不安に駆られたり、不眠や抑うつといった症状を引き起こしたりすることもあります。なかには実際に狭心症や心筋梗塞を発症するケースもあるので、症状が見られたら一度、専門医に相談することをおすすめします。
編集部
心臓神経症になりやすい人の特徴はありますか?
中村先生
几帳面で真面目、責任感が強いタイプの人が発症しやすい傾向にあります。また、過去に心臓に関する不安を抱えた経験があると、その記憶が症状を誘発することもあります。
編集部
心臓神経症を発症しやすい年齢はありますか?
中村先生
心臓神経症は年齢問わずに発症しますが、注意したいのは中高齢の場合です。若い人の場合はほとんど基礎疾患がないので、多くのケースは心臓の痛みや動悸などの症状だけでとどまりますが、中高齢になると高血圧や糖尿病といった疾患を抱えている人が増加します。そのため、心臓神経症が引き金となって、ほかの心疾患を引き起こすこともあります。
自律神経を整える生活習慣

編集部
自律神経を整えるには、まず何から始めたらいいですか?
中村先生
多くの人が職場や家庭でなんらかのストレスを抱えており、通勤や業務の場面で症状が出現する人も少なくありません。そうしたときに大切なのは、我慢するのではなく、自分を守る行動をとることです。胸の痛みや動悸を感じたら1人で抱え込まず、職場の産業医や専門機関に相談する、配置転換や働き方の調整を上司に伝えるといった工夫が有効です。
編集部
そのほかのストレスには、どのように対処したらいいでしょうか?
中村先生
ストレスに強い心を育てることは、心臓神経症の予防に大切です。そのとき、助けになるのは「漢方薬」です。例えば、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などの漢方薬はストレスを和らげ、自律神経の乱れからくる心身の不調に効果が期待できます。そうした漢方薬を利用しながら心を安定させ、ストレスに強くなるようなメンタルづくりが、心臓神経症の発症の予防につながります。
編集部
日常的にできることはありますか?
中村先生
上質な睡眠はストレスを和らげる効果が期待できるので、まずは睡眠の質を高めることが重要です。自律神経は昼夜のリズムに深く関わっており、睡眠が乱れると交感神経が過剰に働きやすくなります。寝る前のスマホ使用を控える、照明を暗くする、毎日決まった時間に寝起きするなど、生活リズムを整えることが第一歩になります。
編集部
そのほかにもあれば教えてください。
中村先生
食事や運動も重要です。特に、腸内環境を整える発酵食品や食物繊維を摂ることは、自律神経の調整に役立ちます。また、過剰なカフェインやアルコールは自律神経を乱すため注意が必要です。運動については激しいものを避け、ゆったりしたウォーキングやヨガ、ストレッチなど、リラックスを促す内容がおすすめです。
編集部
ストレスを溜めないコツはありますか?
中村先生
深呼吸や瞑想、軽い散歩、好きな音楽を聴くなど、気持ちが落ち着く習慣を取り入れましょう。趣味を持つのもいいと思います。
編集部
漢方薬などを使いながら、生活習慣を整えるのがいいのですね。
中村先生
当院では、心臓神経症の患者さんの約半数に漢方薬を処方しており、多くの人が効果を実感しています。特に基礎疾患のない若い人の場合は効果を感じやすいことに加え、体への負担も少ないため妊娠中の女性でも使いやすいメリットもあります。漢方薬は保険適用が可能なので、気になる人は医師に聞いてみてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中村先生
心臓神経症は心臓そのものに大きな異常が認められないため、「大したことはない」「そのうち良くなる」と軽く考えられてしまうことも少なくありません。しかし、胸の痛みやドキッとするような動悸の裏には、狭心症や心筋梗塞など重大な心疾患が隠れている可能性もあります。そのため、「気のせいだろう」と放置せず、症状が繰り返し起こる場合や強く不安を感じるときには、早めに循環器内科の専門医に相談することが大切です。
編集部まとめ
精神的な負担が増えると、心臓へ悪影響を及ぼすことがわかりました。適切な検査や診断を受けることで安心できるだけでなく、万が一の病気を早期に発見し、治療につなげることができます。気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。
医院情報

| 所在地 | 〒277-0856 千葉県柏市新富町1丁目2-34 2F |
| アクセス | JR「南柏駅」 徒歩12分 |
| 診療科目 | 内科、循環器内科、心臓外科、小児科 |




