目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 「不妊治療を受ける前に知っておきたいこと」を医師に聞く 不妊の原因ごとの対策とは

「不妊治療を受ける前に知っておきたいこと」を医師に聞く 不妊の原因ごとの対策とは

 公開日:2025/09/09
「不妊治療を受ける前に知っておきたいこと」を医師に聞く 不妊の原因ごとの対策とは

妊活を続けてもなかなか結果が出ないと、「なぜ妊娠できないのか」と不安になる方は少なくありません。不妊にはいくつかの原因があり、その内容によって治療の方法も異なります。原因と特徴を理解することは、自分の状況を整理し、今後の妊活の方針を立てる大切な第一歩です。今回は、こまえクリニックの放生先生に、不妊の種類や治療法などについて、詳しくお話を伺いました。

放生 勲

監修医師
放生 勲(こまえクリニック)

プロフィールをもっと見る
昭和62年弘前大学医学部卒業。都内の病院にて2年間の内科研修修了。ドイツ政府国費留学生としてフライブルク大学病院およびマックス=プランク免疫学研究所留学。東京医科歯科大学難治疾患研究所を経て、「こまえクリニック」を開院。自らの不妊治療の患者体験から院内に「不妊ルーム」を開設し、1万組近いカップルの不妊相談に応じている。医学博士。

不妊治療を受ける基準と種類

不妊治療を受ける基準と種類

編集部編集部

日本や世界中には不妊治療をおこなっている人はどのくらいいるのでしょうか?

放生先生放生先生

日本では年間50万回以上の体外受精関連治療(ART)がおこなわれており、タイミング法や人工授精など一般的な不妊治療はその何倍もおこなわれているとされています。妊活に悩む未治療者を含めると、さらに膨大な人数にのぼります。結婚・妊活開始年齢の高齢化によって、不妊治療をおこなう方が増えていると考えられています。

編集部編集部

不妊治療が必要と判断される基準を教えてください。

放生先生放生先生

日本産科婦人科学会の基準では、かつて「2年間の避妊なしの夫婦生活で妊娠しない場合」が不妊治療の基準でしたが、結婚年齢の高齢化により「1年間」に短縮されています。40歳未満は最大6回まで、40歳から42歳は最大3回まで体外受精が保険適用となり、これが実質的な基準と化しています。

編集部編集部

不妊にはどのような種類や分類があるのでしょうか?

放生先生放生先生

本来の医療としては、不妊の原因によって「機能性不妊」と「器質性不妊」に分けて考えるべきだとされています。機能性不妊は、男性・女性ともに検査上問題がないにもかかわらず妊娠しない、いわゆる原因不明不妊を指します。器質性不妊は、生殖器の構造や機能に何らかの問題がある場合を指します。器質性不妊の例としては、「男性側の精子の数が極端に少ない」「女性側の卵管が詰まっている」「子宮内膜症がある」「多嚢胞性卵巣や排卵障害がある」「男性のED(勃起不全)や射精不全」 などが挙げられます。

編集部編集部

不妊治療の種類についても教えてください。

放生先生放生先生

不妊治療の古典的な種類は「ステップアップ療法」と呼ばれ、①タイミング指導(超音波で排卵を予測し性交渉をアドバイス)②人工授精(精子を子宮に直接注入)③高度生殖医療(体外受精など、体外で卵子を操作)の3段階があります。年齢や原因によって、初期の段階を短縮または省略することもあります。

体外受精と人工授精の違い

体外受精と人工授精の違い

編集部編集部

不妊治療が開始されるまでの一般的な流れについて教えてください。

放生先生放生先生

以前はタイミング法を1年ほど、人工授精を5〜6回おこなってから体外受精へ進むのが一般的でした。現在は、特に年齢が高い場合や原因によっては、人工授精を2〜3回で見切り、体外受精に移行するケースが増えています。

編集部編集部

体外受精と人工授精の違いについて教えてください。

放生先生放生先生

人工授精(AIH)は、精子を洗浄・調整して直接子宮内に注入する方法です。一方、体外受精(IVF)は、卵巣から卵子を体外に取り出し、体外で受精・培養をおこなった後、受精卵を子宮に戻す治療です。卵子を体外で操作するため、高度生殖医療に分類されます。

編集部編集部

それぞれのメリットとデメリットについて教えてください。

放生先生放生先生

人工授精のメリットは、「費用が安いこと」「体への負担は少ないこと」で、デメリットとしては、「1回あたりの妊娠率は5〜10%程度と低めなこと」が挙げられます。一方、体外受精のメリットは、「タイミング法や人工授精に比べて妊娠率が高いこと」で、デメリットは、「高額な費用がかかること」「卵巣過剰刺激症候群などの身体的リスク(腹水、血栓症)を伴うこと」です。また、「過度な刺激により卵子のストックが早期に枯渇する可能性」も指摘されています。

不妊治療を受ける前に知っておくべきこと

不妊治療を受ける前に知っておくべきこと

編集部編集部

不妊治療の成功率は一般的にどの程度なのでしょうか?

放生先生放生先生

医療機関のホームページで強調される「成功率」は、多くの場合妊娠率を指しますが、これは最終的な出産率(生産率)とは異なります。全国平均では、体外受精の胚移植1回あたり妊娠率は約25%、出産率は17%前後です。40歳を超えると出産率は一桁台になることが多く、年齢が大きく影響します。

編集部編集部

一般的に不妊治療ではどのくらい費用がかかりますか?

放生先生放生先生

不妊治療の費用は、保険適用の場合、タイミング指導で数千円、人工授精で約5500円です。体外受精は1回あたり約20万円かかります。自由診療では、体外受精は1回あたり60〜70万円程度でしたが、オプションなどが加算されると1回100万円近い金額になるケースもあります。

編集部編集部

不妊治療を始めましたが、途中でやめることも可能ですか?

放生先生放生先生

もちろん可能です。ただし、費用や労力をかけた分「もう一度だけ」と続けてしまう方も少なくありません。回数や年齢の節目で主治医と立ち止まって話し合う「振り返りの機会」や、セカンドオピニオンを活用して、自分主体で治療計画をコントロールすることが大切です。

編集部まとめ

不妊のタイプを知ることは、これからの妊活計画を立てるうえで欠かせません。機能性不妊は原因が特定できないため、生活習慣の見直しやタイミング法から始めるケースが多く、器質性不妊は原因に応じた専門的治療が効果的です。まずは「自分がどちらなのか」を把握することが、迷いを減らし、適切な医療につながります。妊娠を妨げている要因を知るためにも、早めにクリニックで検査を受けましょう。

医院情報

こまえクリニック

こまえクリニック
所在地 〒201-0014 東京都狛江市東和泉1-31-27
アクセス 小田急線「狛江駅」より徒歩3分
診療科目 内科・不妊カウンセリング

この記事の監修医師