大腸がん・胃がんを未然に防ぐ「無痛内視鏡」の実際 『一瞬で終わった』は本当?【医師に聞く】

必要なのはわかっているけれど、「つらい」「苦しい」といったイメージが根強い内視鏡検査。そんな中で、鎮静剤を使用した“無痛内視鏡”が注目されています。実際には「一瞬で終わった」と感じる人が多く、内視鏡検査へのハードルを大きく下げています。そこで、無痛内視鏡の特徴やメリット、注意点などについて医師の梅舟先生(ファミリークリニックひきふね)に解説してもらいました。

監修医師:
梅舟 行胤(ファミリークリニックひきふね)
まずは知っておきたい! 内視鏡検査の重要性

編集部
なぜ内視鏡検査が重要なのでしょうか?
梅舟先生
日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなると言われています。その中でも大腸がんは最も患者数の多いがんであり、女性に限れば死亡数が最も多いがんでもあります。ただし、大腸がんは早期に発見できれば、内視鏡による切除だけで根治できる可能性が非常に高いがんです。だからこそ、症状が出る前の定期的な内視鏡検査がとても重要です。
編集部
いわゆる「検便」では不十分なのでしょうか?
梅舟先生
「検便」と呼ばれる便潜血検査は、便の中に血液が含まれているかを調べる検査です。そのため、出血していない早期がんは見逃されやすく、実際に半数以上の早期大腸がんは便潜血検査で陰性だったというデータもあります。つまり、「陰性=がんがない」とは限らないのです。だからこそ大腸がんを高確率で早期発見するには、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が必要です。
編集部
何歳くらいから大腸カメラを受けるべきですか?
梅舟先生
40歳を過ぎたら、一度は大腸カメラを受けることをおすすめします。その後は、特に異常がなければ2〜3年に1回、ポリープが見つかって切除した人などは、1年後に再検査を受けるのが基本です。胃の内視鏡検査は、胃がんの発生率が上がり始める35歳を過ぎたら一度は受けることをおすすめしていますが、ピロリ菌の感染歴がある人や胃の不調が気になる人は、早めに受けておくと安心です。
編集部
「ポリープ」についても教えてください。
梅舟先生
大腸がんの多くは、小さなポリープから始まります。このポリープが数年かけて大きくなり、やがてがん化していくため、ポリープの段階で発見・切除できればがんを未然に防げますし、早期のがんでも同じように大腸カメラで切除できます。ちなみに、それは胃がんも同様で、早期であれば粘膜にとどまるため、開腹手術をせず胃カメラで治療できるケースが多いのです。
「無痛内視鏡」ってどんなもの?

編集部
無痛内視鏡とは、具体的にどういう検査なのでしょうか?
梅舟先生
無痛内視鏡は、鎮静剤や鎮痛剤を使用して、患者さんが眠っているような状態のうちに検査をおこなう方法です。通常の内視鏡検査に比べて苦痛が非常に少なく、多くの人が「気づいたら終わっていた」「痛くなかった」と驚いています。
編集部
眠っている間に終わるとのことですが、危険はないのでしょうか?
梅舟先生
適切なモニタリングと麻酔管理をおこなえば、安全性は十分に確保できます。当クリニックでも、呼吸状態や血圧・脈拍などを随時確認しながら鎮静剤を使用しており、過剰な投与にならないよう細心の注意を払っています。また、鎮静剤を使用しても、検査の精度は全く変わりません。
編集部
では、鎮静剤を使った場合の注意点はありますか?
梅舟先生
鎮静剤を使った日は、眠気や注意力の低下が続く可能性があるため、自動車や自転車の運転は禁止です。また、重要な判断や細かい作業も避けるようにしてください。通常は検査後に1〜2時間休んでもらい、状態が安定してから帰ってもらっています。
編集部
無痛内視鏡を受ける人は多いのですか?
梅舟先生
そうですね。内視鏡検査は重要とわかっていても、苦しさへの不安から受けたがらない人が多いのが現実です。無痛内視鏡の最大のメリットは「苦痛がないこと」なので、無痛内視鏡によって、内視鏡検査に対する心理的ハードルは大きく下げることができると思います。
無痛内視鏡を実際に受けるとき、気になるポイント

編集部
無痛内視鏡は誰でも受けられますか?
梅舟先生
基本的にはほとんどの人が受けられますが、鎮静剤に対してアレルギーがある人、重度の呼吸器疾患や心疾患がある人などは、医師と相談しながら慎重に判断する必要があります。高齢者や初めての人も、事前の問診で安全性をしっかり確認したうえで検査を受けることが可能です。
編集部
検査にかかる時間や費用はどのくらいですか?
梅舟先生
胃カメラなら約5分、大腸カメラは15分程度で終了します。準備や鎮静の回復時間も含めると、全体で1〜2時間程度見ておくとよいでしょう。費用は保険適用であれば3割負担で、胃カメラはおよそ5000〜6000円、大腸カメラは1万円前後が目安ですが、病院や処置内容によっても異なってきます。
編集部
検査前の準備で注意することはありますか?
梅舟先生
無痛内視鏡に限ったことではありませんが、特に大腸カメラの場合、腸内をきれいにするために前日からの食事制限と下剤の服用が必要です。腸の中に便が残っていると正確な観察ができませんので、検査前の準備はとても重要です。当日も絶食で来院してもらい、指示に従って準備を進めることでスムーズに検査がおこなえます。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いします。
梅舟先生
大腸がんは、日本で最も患者数の多いがんとされていますが、定期的に大腸カメラを受けることで、ほぼ100%予防可能だとされています。それでも「検査がつらそう」「痛そう」といった不安から、受診に踏み切れない人も少なくありません。近年では、苦痛の少ない検査を提供する体制が整った医療機関も増えており、「つらくないのは当たり前」になりつつあります。つらくなく、かつ精度の高い内視鏡検査を受けるためには、クリニック選びも重要なポイント。検査実績、内視鏡の経験が豊富な専門医が在籍しているかどうかを確認し、より安心して検査に臨んでください。利用者の声や口コミを参考にするのもよいと思います。
編集部まとめ
内視鏡検査、とくに鎮静剤を使用した“無痛内視鏡”は、がんの早期発見にとって極めて有効でありながら、苦痛がほとんどないという大きなメリットがあります。大腸がんや胃がんは、症状が出てからの発見では進行していることも多く、定期的な検査でポリープなどの段階から発見・切除しておくことが予防・根治につながります。「苦しそうだから受けたくない」と思っていた人も、無痛内視鏡という選択肢を知ることで、検査への一歩を踏み出すきっかけになるのではないでしょうか。
医院情報

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| 診療科目 | 内科、消化器内科 |




