“やけどの跡”が「皮膚がん」になるのをご存じですか? 初期症状を医師が解説

紫外線だけが皮膚がんの原因ではありません。やけどや古い傷跡が発症の引き金になることもあるのです。鎌倉かまりんヒフクリニックの福永先生にそのメカニズムと対策を詳しく聞きました。

監修医師:
福永 有希(鎌倉かまりんヒフクリニック)
やけどの傷跡が皮膚がんを引き起こすってホント?

編集部
やけどの跡が皮膚がんになることがあるって本当ですか?
福永先生
はい、本当です。重度のやけどや古い傷跡がまれに「瘢痕(はんこん/=傷跡)がん」というタイプの皮膚がんに変化することがあります。特に、長いあいだ放置されていた傷や、治りにくかった傷跡は注意が必要です。
編集部
やけどにもいろいろありますが、どんなレベルのやけど跡が要注意ですか?
福永先生
やけどをして軽い水ぶくれになった程度(浅いⅡ度熱傷=真皮表層までのやけど)であれば心配はほとんどありません。しかし、より深いやけどの場合、治癒に時間がかかり、傷跡が白く硬くなったり、赤く盛り上がったりすることがあります。そのような状態を瘢痕といい、長期にわたり潰瘍やびらんを繰り返すと、まれに瘢痕がんに発展する可能性があります。
編集部
瘢痕がんとは、どんながんなのですか?
福永先生
瘢痕がんは、やけどなどによってできた瘢痕から生じる皮膚がんの一つです。皮膚の表面近くにある「有棘(ゆうきょく)細胞」が異常増殖する有棘細胞がんの形で出現することが多いです。紫外線や慢性的な炎症が引き金になることもあります。
編集部
なぜやけど跡からがんができるのですか?
福永先生
詳しい原因はまだ明らかになっていませんが、一般に、やけど跡は皮膚の再生が不完全で、免疫の働きも弱まりやすい部分です。そこに慢性的な刺激や炎症が続くと、細胞分裂のメカニズムが狂ってしまい、異常な細胞が増えてがん化すると考えられます。
編集部
やけど跡ががんになるとは、怖いですね。
福永先生
軽いやけどや、きれいに治った傷跡からがんになることはまずありません。注意が必要なのは、深いやけどや治りにくかった傷、炎症を繰り返す瘢痕などです。見た目や症状に変化があれば早めに医師へ相談しましょう。
初期症状とは? どんな症状に注意すべき?

編集部
瘢痕がんの初期症状にはどんなものがありますか?
福永先生
瘢痕部分に繰り返し傷ができて治りにくくなる、しこりや出血を伴う、急に大きくなるなどの変化がみられます。周囲の状態に比べて質感や色味が明らかに異なる場合も要注意です。
編集部
そのほかにはどのような症状がありますか?
福永先生
がん化すると新しい血管がどんどん作られるため、急に赤みや出血が見られることがあります。また、湿った状態が続くようであれば、皮膚がんの初期症状の可能性があります。
編集部
瘢痕がんは危険度の高いがんなのですか?
福永先生
有棘細胞がんは、放っておくと周囲の組織に広がったり、リンパ節に転移したりすることもあります。ただし、早期に発見して切除すれば根治できる可能性が高いため、変化にいち早く気づくことが何より重要です。
編集部
症状が軽くても皮膚科に行った方がいいですか?
福永先生
しばしば、瘢痕部分がかゆくなることがあります。これは、皮膚がデリケートな状態にあるためで、少しの刺激やこすれ、かゆみによる掻きこわしなどが、さらに傷跡を悪化させる原因となることもあります。やけどの傷跡がなかなかよくならない、赤みやじゅくじゅくとした状態が続く、小さな変化が繰り返されるといった場合は、皮膚科を受診するサインと考えましょう。市販薬で様子を見るよりも、早めに専門医に相談することで、適切な治療につながりやすくなります。皮膚科では専門的な医療機器を使って皮膚の状態を詳しく確認できるため、的確な診断と治療が受けられる可能性が高まります。自己判断せず、不安な症状があれば早めに受診しましょう。
やけどの傷跡が残っているときにはどうしたらいいか?

編集部
やけどの跡がある人はどう対処すればいいですか?
福永先生
まずは普段から傷跡の状態をよく観察しましょう。赤み、腫れ、盛り上がり、出血などの変化がないか定期的にチェックすることが大切です。不安な場合は、年に1回程度でも皮膚科で診てもらうと安心です。できれば携帯電話などで写真を撮っておくと診断に役立てることができます。
編集部
日常生活で気をつけることはありますか?
福永先生
やけどの傷跡は周囲よりもデリケートな状態になっています。そのためしっかり保湿・保護・遮光対策をするようにしましょう。特に乾燥やかゆみがあるときは保湿ケアを多めにし、保護対策も工夫して、かく、たたく、こするといったことをしないようにしましょう。また、やけど跡を紫外線から守ることが大切です。日焼け止めを塗る、衣類で覆うなどのほか、日焼け対策のシールを貼るのもよいと思います。
編集部
スキンケアで気をつけるべきことは?
福永先生
低刺激の保湿剤を使って、皮膚のバリア機能を整えることが大切です。肌の状態によっては医師に相談してケア用品を選ぶと安心です。
編集部
傷跡が気になるとき、美容的なケアできれいになるのでしょうか?
福永先生
傷の大きさや部位によって、治療の選択肢は異なります。ある程度の大きさがある傷跡や、盛り上がって大きくなるケロイドなどは、手術での修復やレーザー治療が検討されます。レーザーを照射することで、赤みを和らげたり、盛り上がりを平らにしたりすることが可能です。一方で、ごく小さな傷跡はかえって修復が難しいこともあります。メスを入れることで、かえって新たな傷跡の方が目立ってしまうケースもあるためです。治療を検討する際は、傷のサイズや場所、目立ちやすさなどを総合的に考慮することが大切です。悩んでいる場合は、皮膚科や形成外科に相談して、自分に合った治療法を見つけましょう。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。
福永先生
やけどの跡をできるだけきれいに治すためには、傷を早く適切に処置して治すこと、傷が塞がってからも日々のスキンケアを続けることがとても大切です。傷跡は保湿をしっかりおこない、乾燥から守ること。そして紫外線を避けることも重要です。紫外線にあたると色素沈着が起こり、傷跡が目立ちやすくなります。また、傷跡をこすらない・刺激しないよう注意しましょう。やけどの跡は、半年から1年ほどかけて自然に落ち着いていくことが多いですが、どうしても赤みが残る、盛り上がってくる、かゆみが強いといった症状がある場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。適切なケアと早めの対応が、よりきれいな回復につながります。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
編集部まとめ
やけどの傷跡をきれいに治すには、保湿や紫外線対策が重要です。擦れなどの刺激を避け、半年〜1年は経過を見守りましょう。赤みや盛り上がりが気になる場合は、早めに皮膚科を受診することが大切です。
医院情報

| 所在地 | 〒248-0006 神奈川県鎌倉市小町2-15-11 |
| アクセス | JR湘南新宿ライン・江ノ島電鉄線 鎌倉駅 徒歩3分 |
| 診療科目 | 皮膚科 アレルギー科 小児皮膚科 形成外科 美容皮膚科 |




