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職場・人間関係が“しんどい”のは「大人の発達障害」!? どんな症状が特徴?【医師解説】

 公開日:2025/09/08
職場・人間関係がしんどいのは「大人の発達障害」? どんな症状が特徴?【医師解説】

職場や人間関係での困難が続くと、「自分には何か問題があるのだろうか?」と感じることもあると思います。じつは、その原因が発達障害であることも少なくありません。そこで、発達障害が職場での困難や人間関係にどう影響を与えるのか、またその対策について、医師の原雄二郎先生(こどもメンタルクリニック芝)に話を聞きました。

原 雄二郎

監修医師
原 雄二郎(こどもメンタルクリニック芝)

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金沢大学卒業、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学(SPH)修了。 東京女子医科大学病院にて卒後臨床研修をしたのち、都立松沢病院、都立梅ヶ丘病院、都立広尾病院、さくらクリニック、上尾の森診療所桶川分院などで経験を積む。そのほか、企業などの産業医、顧問医などの経歴を持ち、現在はこどもメンタルクリニック芝理事長として主に土曜日の診療を担当している。精神保健指定医、子どものこころ専門医、日本精神神経学会専門医。

発達障害ってどんな症状が出るの?

発達障害ってどんな症状が出るの?

編集部編集部

職場や人間関係がしんどいのは、発達障害が原因であることもあるのでしょうか?

原 雄二郎先生原先生

すべてのケースがそうとは言えませんが、発達障害が原因で、職場での適応が難しくなってしまうことは少なくありません。発達障害は、注意力や計画性、理解力、コミュニケーション能力などに影響を与えるため、それが職場や人間関係での困難に繋がることが多いのです。

編集部編集部

そもそも、発達障害とはなんですか?

原 雄二郎先生原先生

発達障害とは、脳の発達に関わる障害で、社会的な適応や学習に影響を与える状態の総称です。代表的なものには、注意欠陥・多動性障害(ADHD)自閉症スペクトラム障害(ASD)学習障害(LD)などがあり、これらが組み合わさったケースも多くみられます。これらの障害は生まれつきのもので、幼少期に症状が現れ、成長と共に社会生活に影響を与えることが増えてきます。「障害」と付いているので、どうしてもネガティブなイメージだけが先行してしまうかもしれませんが、「脳機能のタイプが違う」と考えていただけたらと思います。

編集部編集部

発達障害が原因で職場で困難を感じることがある場合、どのような症状が目立つのでしょうか?

原 雄二郎先生原先生

典型的な症状としては、注意力の欠如、計画性の不足、時間管理や仕事の優先順位付けが困難といったことなどがあります。また、社交的なコミュニケーションスキルが不足し、同僚との誤解や衝突が多くなることもあります。これらは発達障害特有の問題です。

編集部編集部

発達障害は子どもだけの問題かと思っていました。

原 雄二郎先生原先生

たしかに、幼少期の集団生活の中で問題となることが多いのですが、大人になってから、自分で判断したり時間やお金を管理したりする中で、問題が顕在化することもあります。特にグレーゾーンにいる人などは、発達障害と診断されずに大人になり、日々の生活で困難を抱えているケースが潜在的にとても多いと言われています。

職場におけるその問題、発達障害が原因かも?

職場におけるその問題、発達障害が原因かも?

編集部編集部

大人になってから発達障害に気づくのは、どのようなタイミングが多いですか?

原 雄二郎先生原先生

多くの場合、大人になってから、社会で求められる要求が増す中で問題が顕在化します。例えば、仕事が増えたり、上司との関係が複雑になったりすることで、以前は気づかなかった困難が明らかになる場合などです。職場でのミスや人間関係のトラブルがきっかけとなり、発達障害に気づく場合は非常に多いのです。

編集部編集部

業務だけでなく、人間関係でも問題が起きやすいのですね。

原 雄二郎先生原先生

そうですね。発達障害を持つ人は、社会的な状況に適応することが難しい場合があります。特に感情を察したり、言葉を選んだりすることが苦手なことが多く、誤解や確認ミスが生じやすくなり、職場での人間関係が難しくなることがあります。自身に要因があるという自覚が乏しい場合も多く、「自分はいつも厳しくされる」「なぜか厳しくされる運命にある」と感じていることも多々あります。

編集部編集部

発達障害の疑いがある社員と働く場合に、周囲の人へ何かアドバイスはありますか?

原 雄二郎先生原先生

それぞれの発達障害の特性にもよりますが、多くの場合、タスクを明確にし、繰り返しの指示をおこなうことが効果的だと思います。視覚的(例:口頭指示よりもメール)、具体的(例:「〇〇の様子を見てきてください」ではなく「〇〇の、AとBが終わっているか確認してきてください」。文章よりも箇条書きがベター)、肯定的(例:「Aはダメ」ではなく「Bがよいですよ」)に、それぞれに合ったコミュニケーションの方法を工夫してみることも重要です。理解を深めるために、周囲の同僚や上司との協力も欠かせません。

編集部編集部

では、自分自身が職場や人間関係で困難を感じ、発達障害かもと思ったら、どうしたらよいのでしょうか?

原 雄二郎先生原先生

まずは、専門機関に相談することが大切です。職場や日常生活で困難を感じている場合、早期に診断を受けることで、適切な支援を受けやすくなります。医療機関にかかることに抵抗がある場合は、自治体の保健センターなどで相談窓口が設けられていることもありますので、それを利用するのも一つの方法です。

発達障害に対するサポートにはどんな方法がある?

発達障害に対するサポートにはどんな方法がある?

編集部編集部

医療機関ではどのような治療やサポートが受けられるのですか?

原 雄二郎先生原先生

主な治療は、大きく分けると「薬物療法」と「心理・社会的療法」の2つです。薬物療法は、発達障害の症状をコントロールしたり、二次的に出てくることの多いうつ症状などを抑えたりします。「心理・社会的療法」は、それぞれの特性に合った社会的トレーニングや認知・行動療法などをおこないます。ほかには、職場での合理的配慮のための診断書作成や、社会的環境整備などを図ります。

編集部編集部

職場に対してサポートをおこなうこともあるのですか?

原 雄二郎先生原先生

そうですね。社内での理解を深めることが非常に大切なので、発達障害についての教育をおこない、周囲の人々がどうサポートできるかを考え、社員が自分の強みを活かせるような環境を整えることは大切です。

編集部編集部

「強みを活かす」という視点が大事なのですね。

原 雄二郎先生原先生

その通りです。発達障害は戦って克服するものではなく、それぞれの特性を理解し、上手に向き合いながら生活していくものです。発達障害と診断されていても、強みを活かし、うまく付き合っていくことで幸せな社会生活を送ることは十分に可能です。そういった意味でも、1人でどうにかしようとせず、適切な医療機関に相談していただければと思います。

編集部編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いします。

原 雄二郎先生原先生

発達障害と聞くと、奇妙な人というイメージや「周りが大変」という印象があるかもしれませんが、先述のとおり「脳の機能のタイプが異なる」と考えていただけたらと思います。苦手な部分は、できる人に補ってもらいながら、自身の強みをきちんと発揮できるような環境づくりが大切です。そうは言っても、現実的には簡単にできることではなく、当人もそして周りも「しんどさ」を感じてしまうケースは少なくありません。お互いの負担を軽減するためにも、専門機関に相談してもらうことが大切だと思います。

編集部まとめ

発達障害を抱える社員には、職場環境の調整や適切な支援が重要です。早期の診断と治療を受けることで、職場での適応を支援し、仕事の効率を高めることができます。もし発達障害が疑われる場合は、早めに専門医に相談し、職場でのサポート体制を整えることをおすすめします。

医院情報

こどもメンタルクリニック芝

こどもメンタルクリニック芝
所在地 〒105-0014 東京都港区芝3-15-13 YODAビル3F
アクセス 都営大江戸線「赤羽橋」駅 赤羽橋口より徒歩3分
都営三田線「芝公園」駅 A-2出入口より徒歩8分
JR「田町」駅 三田口(西口)より徒歩10分
診療科目 心療内科、精神科

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