「骨粗しょう症」の点滴治療・皮下注射のリスクはご存じですか? 副作用や注意点を医師が解説!

年齢とともに骨が脆くなり、骨折しやすくなる「骨粗しょう症」。その治療の1つとして注目されているのが「点滴治療」です。そこで今回は、骨粗しょう症の治療法や注意点などについて、「下河辺整形外科クリニック」の下河辺先生に解説していただきました。

監修医師:
下河辺 仁(下河辺整形外科クリニック)
骨粗しょう症とは?

編集部
まず、骨粗しょう症について教えてください。
下河辺先生
骨粗しょう症は、骨の密度や質が低下することで骨が脆くなり、骨折しやすくなる病気です。特に閉経後の女性や高齢者に多くみられ、些細なきっかけで脊椎(背骨)の圧迫骨折や大腿骨の骨折となってしまうこともあります。自覚症状が少ないため、骨折して初めて気がつくケースも少なくありません。
編集部
骨粗しょう症の治療には、どのような方法がありますか?
下河辺先生
治療は大きく分けて3つあります。1つ目は栄養面からの治療、2つ目は運動療法、そして3つ目が薬物療法です。患者さんの骨密度や生活スタイルに応じて、これらを組み合わせて治療をおこなっていきます。
編集部
1つ目の、栄養面からの治療について教えてください。
下河辺先生
骨の健康を保つためには、カルシウム・ビタミンD・ビタミンKといった栄養素の摂取が欠かせません。特にカルシウムは1日700~800mgを目安に、乳製品や小魚、青菜などから摂るのが理想です。ビタミンDは、日光を浴びることで体内でも合成されますが、魚類やきのこ類からの摂取が重要です。骨粗しょう症の人には、こうした食事指導をおこないます。
編集部
次に、運動療法について教えてください。
下河辺先生
運動療法は、骨への適度な刺激によって骨密度を維持・向上させる効果が期待できます。ウォーキングや軽いジョギング、スクワットといった運動が特に有効です。また、筋力トレーニングを取り入れることで転倒防止にもつながります。運動が難しい人は、椅子に座ったままできる体操などでも十分効果があります。
編集部
筋力をつけるのが有効なのですね。
下河辺先生
そうですね。さらに、骨に適度な刺激を与えることで、骨密度自体も向上させると言われています。その場で背伸びをして、踵をやや強く落とす「かかと落とし」や縄跳びなどを生活に取り入れることもおすすめしています。
骨粗しょう症の点滴治療

編集部
薬物療法には、どのような方法があるのでしょうか?
下河辺先生
点滴治療や皮下注射などがあります。骨密度の改善効果も高く、骨折予防の効果が明確に認められています。
編集部
点滴治療には、どのような種類がありますか?
下河辺先生
代表的なものに「ビスホスホネート製剤」という製剤があります。ビスホスホネート製剤は、骨を壊す細胞の働きを抑える薬で、頻度は月1回と年1回があります。
編集部
皮下注射には、どのような治療がありますか?
下河辺先生
例えば、骨粗しょう症の治療には、6カ月ごとに打つ「デノスマブ」というRANKL抗体製剤の注射があります。骨が壊されるのを抑える働きがあり、骨密度を高めて骨折を防ぐ効果があります。また、「ロモソズマブ」という毎月の注射もあります。こちらは骨を新しく作る力を助けてくれる薬で、骨折の危険が高い人に使われます。ただし、使えるのは通常12カ月に限られており、その後は別の薬に切り替えて治療を続ける必要があります。どちらの場合も、定期的に検査や診察を受けながら安全に治療を続けることが大切です。ほかにも、様々な注射薬があるので、詳しくは医師にご相談ください
編集部
点滴治療のメリットはなんでしょうか?
下河辺先生
最大のメリットは、服薬の手間が少なく、継続しやすい点です。毎日の内服が難しい人でも、点滴や注射であれば忘れずに治療を継続できるのではないでしょうか。また、骨密度の改善効果が高く、骨折予防にも有効であるため、特に高リスクの人に推奨される治療法です。
編集部
点滴治療は誰でも受けられるのですか?
下河辺先生
過去に骨折の経験がある人や骨密度が著しく低い人、内服薬での治療が難しい人などが対象です。一方で、持病などによっては使えない薬剤もあるので、それぞれの生活習慣や基礎疾患、通院の頻度なども考慮して選択します。
骨粗しょう症の点滴治療のリスク・副作用

編集部
治療を開始するには、どのような検査が必要ですか?
下河辺先生
まずは血液検査や骨密度測定をおこない、現在の骨の状態を正確に把握することが重要です。そのうえで、持病や生活習慣、服用している薬などを総合的に判断し、どの治療法が最適かを検討します。不安な点があれば、遠慮なく医師に相談してください。
編集部
点滴治療には、副作用やリスクもあるのでしょうか?
下河辺先生
稀ではありますが、発熱や筋肉痛、倦怠感などの副作用が一時的に出ることがあります。また、長期使用している人の顎骨の壊死などが報告されています。とはいえ、定期的にチェックをおこないながら治療を継続することで、これらのリスクを下げることが可能です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
下河辺先生
いわゆる背骨は、椎骨と呼ばれる骨がいくつも連なって構成されています。そのうちの1つが圧迫骨折を起こすと、周囲の椎骨にも次々と骨折が広がってしまう「ドミノ骨折」が注目されています。骨粗しょう症は痛みなどの自覚症状が少ないため、治療の効果を実感しにくいかもしれませんが、骨折してからでは遅いため、治療を継続することが何よりも重要です。
編集部まとめ
骨粗しょう症は、骨が脆くなるだけでなく、骨折などから要介護となる可能性も高いと言われています。いくつかの治療法があり、そのなかの点滴治療は継続しやすく治療効果も高い一方、副作用や体調との相性もあるため、医師とよく相談することが大切です。生活習慣の見直しと合わせて、骨の健康を守っていきましょう。
医院情報

| 所在地 | 〒184-0003 東京都小金井市緑町2丁目1-30 |
| アクセス | JR「東小金井駅」 徒歩7分 |
| 診療科目 | 整形外科、リウマチ科、内科 |




