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「眼瞼下垂」の治療、切る? 切らない? おすすめはどっち? 医師がメリット・デメリットを比較

 更新日:2025/09/16

まぶたが重くて開けづらい……、もしかすると「眼瞼下垂」かもしれません。治療選択肢としては「切る手術」と「切らない治療」がありますが、どちらが自分に合っているのか気になりますよね。眼瞼下垂治療の種類やメリット・デメリット、回復の違いや仕上がりの差などについて、「あきこクリニック」の田中先生に解説していただきました。

田中 亜希子

監修医師
田中 亜希子(あきこクリニック)

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東京大学医学部医学科卒業。その後、東京大学医学部附属病院産婦人科、大手美容外科などで経験を積む。2009年、東京都世田谷区に「あきこクリニック」を開院。第110回日本美容外科学会会長、日本美容外科学会(JSAS)理事、日本アンチエイジング外科学会(JAAS)理事。日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容皮膚科学会、日本形成外科学会、日本抗加齢医学会の各正会員。

眼瞼下垂とは?

眼瞼下垂とは?

編集部編集部

まず、眼瞼下垂について教えてください。

田中 亜希子先生田中先生

眼瞼下垂とは、「まぶたが垂れ下がって開けづらくなる状態」のことを指します。上まぶたを持ち上げる筋肉や腱膜がゆるんだり、神経に異常が起きたりすることで発症します。見た目が変わるだけでなく、視界が狭くなったり、額の筋肉で目を開けようとして頭痛や肩こりを伴ったりすることもあります。

編集部編集部

眼瞼下垂の原因はなんでしょうか?

田中 亜希子先生田中先生

加齢が最も一般的な原因です。まぶたを持ち上げる筋肉の働きが徐々に弱くなったり、まぶたの皮膚がたるんだりすることで起こります。ただし、若い人でもハードコンタクトレンズの長期使用や、先天的な原因で発症することがあります。

編集部編集部

どのような症状が出たら眼瞼下垂を疑うべきですか?

田中 亜希子先生田中先生

まぶたが重い」「視界が狭くなった」「目を開けると額にしわが寄る」といった症状がある場合は、眼瞼下垂の可能性があります。また、「夕方になると目が開けにくくなる」「視力は落ちていないのに見づらさを感じる」「ひどい頭痛がある」「肩こりがつらい」「普段から顎が上がり気味」なども、注意したいサインです。

編集部編集部

眼瞼下垂になると、見た目にも影響が出るのでしょうか?

田中 亜希子先生田中先生

はい、あります。まぶたが下がることで、目つきが悪く見えたり、眠たそうな印象になったりすることもあります。また、左右差が出ると顔のバランスが崩れるため、美容面で悩む人も少なくありません。

眼瞼下垂の治療法

眼瞼下垂の治療法

編集部編集部

眼瞼下垂の治療には、どのような方法がありますか?

田中 亜希子先生田中先生

治療は大きく分けて「切開を伴う手術」と「切らない治療」に分かれます。切る手術は、筋肉や腱膜を直接修復してまぶたをしっかり上げる方法です。一般的に、切らない方法は「切らない眼瞼下垂手術」とも呼ばれ、目を開くための筋肉を縫い縮め、その糸で二重を作るという治療をおこないます。

編集部編集部

切らない治療のメリットとデメリットは?

田中 亜希子先生田中先生

切らない治療の一番のメリットは、ダウンタイムが少なく気軽に受けられる点です。例えば、切らない眼瞼下垂は短時間で済み、腫れも少ないという特徴があります。ただし、重度の眼瞼下垂には向かず、時間が経つと元に戻ることもあります。切らない治療は、軽度の人や一時的な改善を希望する人におすすめです。

編集部編集部

切る手術の方が効果は確実なのでしょうか?

田中 亜希子先生田中先生

そうですね。根本的にまぶたの構造を改善できるため、再発しにくく効果も長持ちします。確実性を求めるなら、切開手術が第一選択になることが多いと思います。ただし、腫れや内出血などのダウンタイムが数週間続くことや術後の左右差などには要注意です。

編集部編集部

ダウンタイムが長く続くのがデメリットなのですね。

田中 亜希子先生田中先生

ダウンタイムの期間は個人差がありますが、長引くと治るまで2~3週間程度かかることもあります。また、「開きが悪い側の眼瞼下垂の手術をおこなうと、もう片方のまぶたの開きが悪くなる」という現象が起こり得ます。これは「ヘリングの法則」と呼ばれ、手術を受ける人の約15%にみられるとされています。ただし、時間が経つとバランスが取れて落ち着くことが多いので、それほど心配はいりません。

編集部編集部

眼瞼下垂手術は保険適用ですか?

田中 亜希子先生田中先生

「視野障害がある」「まぶたの皮膚が瞳孔までかぶさっている」など、医学的に必要と判断された場合は健康保険が適用されます。その一方、美容目的の場合は自費診療となります。医療機関によって対応が異なるので、保険の適用が可能かどうかを初診の段階で確認しておきましょう。

編集部編集部

保険でも治療が受けられるのはいいですね。

田中 亜希子先生田中先生

ただし、保険の眼瞼下垂手術は開きを改善することが目的なので、多くの場合二重の幅やたるみに関する要望は聞き入れてもらえません。そのため、仕上がりの形や見た目にもこだわりたい場合には、自費診療での治療を選択することをおすすめします。

眼瞼下垂治療の選び方

眼瞼下垂治療の選び方

編集部編集部

眼瞼下垂の治療を考えているとき、はじめに何をしたらいいでしょうか?

田中 亜希子先生田中先生

まずは自分の症状が軽度なのか重度なのか、医師の診察を受けて正確に把握する必要があります。そのうえで「見た目の変化を重視したいのか」「視野改善が目的なのか」「ダウンタイムを取れるのか」など、自分の希望や生活状況を整理しながら選ぶといいでしょう。

編集部編集部

眼瞼下垂を治したいときは、美容クリニック、形成外科、眼科のどこに行けばいいのでしょうか?

田中 亜希子先生田中先生

見た目の改善をメインにしたい場合は美容クリニックでも対応できますが、視野障害や筋肉機能の異常がある場合は、形成外科や眼科を受診するのがいいと思います。特に、大きな形成外科や眼科では様々な検査機器が用意されており、「目を開ける機能がどれくらい残っているのか」などを細かくチェックしてくれます。まずは医療的に治療が必要かを知るために、保険診療の病院で診断を受けると安心です。

編集部編集部

治療を受ける際、何を基準にして医師を選べばいいのでしょうか?

田中 亜希子先生田中先生

経験豊富な医師を選ぶことが何より大切です。特に眼瞼下垂の手術は非常に繊細で、1〜2mmの調整で仕上がりが変わります。術前シミュレーションを丁寧におこなってくれるか、過去の症例写真を見せてもらえるかもポイントです。信頼できる医師と十分に相談しましょう。

編集部編集部

そのほか、医師を選ぶ際のポイントがあれば教えてください。

田中 亜希子先生田中先生

手術に対して不安を感じて、静脈麻酔で完全に眠った状態で受けたいと希望される人もいらっしゃいます。しかし、まぶたや目元の手術では、術中に目を開けてもらい、開き具合やバランスを確認しながら微調整をおこなうことがとても大切です。完全に眠ったままでの手術では、理想的な仕上がりに調整することが難しくなります。そのため、静脈麻酔での完全な睡眠状態を提案するクリニックには注意が必要です。

編集部編集部

一度治療を受ければ、効果は長持ちするのでしょうか?

田中 亜希子先生田中先生

一般的には、一度の手術で長期間効果が続くことが多いとされていますが、加齢や生活習慣で再発するケースもあります。特に、切らない治療を選んだ場合は数年ごとに再施術が必要になるケースも考えられます。また、切開を伴う治療でも目を引き上げる筋肉を固定する糸が外れてしまうと、再手術が必要になるかもしれません。再手術が必要になる確率は圧倒的に切らない治療の方が高いので、ライフステージや治療予算を考えつつ、持続性も含めて治療法を検討しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

田中 亜希子先生田中先生

眼瞼下垂は、ご自身で鏡を見ているだけでは気づきにくいことがあります。というのも、鏡を渡された瞬間、無意識に目を見開いてしまうため、本来の状態がわかりにくくなるのです。一方で、ふとしたときに撮られた写真を見ると、「あれ、自分の目ってこんなに開いていなかったかな?」と気づく人も少なくありません。そうした違和感を覚えたら、一度専門の医師に相談してみることをおすすめします。実際に40代を過ぎると、程度の差はあれ多くの人に眼瞼下垂の傾向がみられるようになります。軽度な場合でも、早めに気づくことが大切です。

編集部まとめ

眼瞼下垂は加齢とともに誰にでも起こり得る変化であり、見た目だけでなく、頭痛や肩こりなど体の不調の一因となることもあります。自分では気づきにくいため、写真や周囲の声に耳を傾けることも大切です。少しでも気になる場合は、無理せず専門の医師に相談してみましょう。

医院情報

あきこクリニック

あきこクリニック
所在地 〒158-0094 東京都世田谷区玉川3-6-1 第6明友ビル5F
アクセス 東急田園都市線・大井町線「二子玉川駅」 徒歩1分
診療科目 皮膚科、美容皮膚科、美容外科

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