目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 「生理中の性行為」がなぜダメなのかご存じですか? “知られざる危険性”を医師が解説

「生理中の性行為」がなぜダメなのかご存じですか? “知られざる危険性”を医師が解説

 更新日:2025/08/06

生理中の性行為はよくないと聞いたことはあっても、一体なぜよくないのか、理由がわからないという人も多いはず。じつは、生理中の性行為には意外な危険が伴うのです。性感染症内科ペアライフクリニック横浜院の百束先生に詳しく教えてもらいました。

百束 全人

監修医師
百束 全人(性感染症内科ペアライフクリニック横浜院)

プロフィールをもっと見る
日本医科大学医学部卒業。日本医科大学武蔵小杉病院泌尿器科、スクエアクリニック副院長、会津中央病院泌尿器科を経て現職。日本性感染症学会、日本感染症学会、日本エイズ学会。

生理中の性行為の危険性

生理中の性行為の危険性

編集部編集部

生理中に性行為をすることは身体に悪いのでしょうか?

百束 全人先生百束先生

生理中は妊娠の準備のために、厚みを増した子宮内膜が剥がれ落ちています。いってみれば、腟や子宮内膜に傷がついている状態なので、感染の足場として通常よりも性感染症などのリスクが高まります。クラミジアや淋病、HIVなどの性感染症にかかる可能性も高まり、パートナーとの信頼関係があっても注意が必要だと思います。

編集部編集部

生理中の性行為では感染症のリスクが高まるのですね。

百束 全人先生百束先生

はい。もっとも注意すべきは、腟内から子宮内への細菌の侵入。生理中は子宮頸管が開いて、腟から子宮へ物理的に逆流を引き起こしやすいからです。剥がれ落ちた子宮内膜の一部が卵管を通じて腹腔内に逆流することもあります。そのため、生理中に性行為をすると経血に性感染症となる細菌が入り、それが逆流することで、さまざまな臓器内外での炎症を引き起こします。

編集部編集部

生理中に性行為をすると、子宮内で菌が繁殖しやすくなるのですね。

百束 全人先生百束先生

はい。腟内はもともと酸性環境にありますが、生理中は血液でアルカリ性寄りになります。それにより菌が繁殖しやすい環境が作られ、腟内感染から波及して子宮内感染が起こりやすくなる、という側面もあります。

編集部編集部

子宮内感染とは?

百束 全人先生百束先生

子宮内に細菌が侵入することで起こります。たとえば、子宮内膜炎や卵管炎、腹膜炎などの感染症を引き起こすことがあります。子宮内膜炎や卵管炎になると将来、妊娠が難しくなってしまう危険もありますし、腹膜炎になると激しい腹痛や高熱に侵されることもあります。

そのほかにはこんなリスクも

そのほかにはこんなリスクも

編集部編集部

生理中の性行為で、生理痛などが重くなることはありますか?

百束 全人先生百束先生

生理中の性行為が、生理痛を悪化させることがあります。その一因がPG(プロスタグランジン)という物質です。これは子宮の収縮を促す働きがある物質で、生理中に分泌量が増えると痛みの原因になります。性行為によってさらに子宮が収縮し、痛みや不快感が増すことがあります。

編集部編集部

出血量が増えるという話もありますが、それは本当ですか?

百束 全人先生百束先生

性行為による子宮の収縮で、一時的に出血量が増えることはあります。とくに出血の多い日には、不快感が強くなるだけでなく、貧血気味になることもあるため注意が必要です。さらに長期的には、性感染症の定着による炎症やがんで不正出血を引き起こします。

編集部編集部

いろいろな影響があるのですね。

百束 全人先生百束先生

そのほかにも生理中はホルモンの変動により情緒も不安定になりやすいため、身体だけでなく精神的な負担も考慮する必要があります。

生理と性行為のタイミングが重なりそうならどうすべきか?

生理と性行為のタイミングが重なりそうならどうすべきか?

編集部編集部

生理と性行為のタイミングが重なりそうなときにできることはありますか?

百束 全人先生百束先生

生理と性行為のタイミングが重なりそうなことが事前にわかる場合は、中用量ピル低用量ピルを服用して生理日を移動させるのもよいかもしれません。ただし、体質や既往などによってピルを服用できないこともあるので、詳しくは婦人科の先生に相談しましょう。

編集部編集部

生理を理由に性行為を断ると、パートナーとの関係性に影響が出そうで心配もあります。

百束 全人先生百束先生

だからといって無理に応じてしまうと、嫌悪感や不信感が残ることも考えられます。身体的な準備が整っていないタイミングだからこそ、しっかりと意思表示をすることが大切です。性行為の有無に関わらず、互いに尊重し合う姿勢を大事にしましょう。

編集部編集部

互いに尊重し合うことが大切なのですね。

百束 全人先生百束先生

先述のとおり、生理中の性行為は性感染症のリスクを高める可能性があります。生理痛をひどくする危険もあり、女性にとって不利に働くことが少なくありません。パートナー同士でこのリスクを正しく理解し、無理のない選択をすることが大切です。可能であれば、生理中の性行為は避けたほうが安心。お互いの健康と信頼を大切にしましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

百束 全人先生百束先生

生理中の性行為は、性感染症の観点からみても注意が必要です。生理血を血液の混ざった体液とみなすと、HIVやB型肝炎・C型肝炎などの血液感染症のリスクを高める要因にもなりますし、粘膜も敏感な状態にあるため、性感染症のリスクも平常時より上がります。また、腟から子宮・卵管や腹腔内に、子宮内膜や生理血を含むおりものが逆流しやすい時期であり、さまざまな産婦人科疾患を後遺症として引き起こしかねません。こうした背景から、生理中の性行為には通常より高い性感染症のリスクや子宮内膜炎・子宮内膜症のリスクなどが伴うことを、お互いが正しく理解することが大切です。リスクをしっかり認識して、できるかぎり避ける、あるいはコンドームの使用など適切な対策を取ることが推奨されます。

編集部まとめ

生理中の性行為では、血液や体液が混ざりやすく感染リスクが高まるため、正しい知識を持ち、互いの健康を守る行動が大切です。リスクを理解し、予防策を講じることで安心につなげましょう。

医院情報

性感染症内科ペアライフクリニック横浜院

性感染症内科ペアライフクリニック横浜院
所在地 〒220-0005 神奈川県横浜市西区南幸2-8-9ブライト横浜4階
アクセス JR「横浜駅」 徒歩5分
相鉄本線「平沼橋駅」 徒歩8分
診療科目 性感染症内科

この記事の監修医師