【親必見】ウチの子「発達障害」かも… 正常・異常な行動の基準・避けるべき習慣を医師が解説

乳幼児の睡眠や食事の行動は個人差が大きく、特に初めての子どもの場合は「この行動は異常?」「それとも普通?」などの判断がつかないことも多いと思います。そこで今回は「こどもとおとなのクリニックパウルーム」の黒木先生に、正常と異常を分けるラインについて、ケーススタディに沿って教えていただきました。

監修医師:
黒木 春郎(こどもとおとなのクリニックパウルーム)
乳幼児の睡眠や食事の「正常な場合」とは?

編集部
子どもの睡眠時間が足りているか不安な親は多いと思います。一般に、乳幼児の睡眠時間はどれくらいが適正なのですか?
黒木先生
子どもの年齢によって、必要な睡眠時間は異なります。成長するにつれて必要な睡眠時間は短くなり、長時間まとめて眠れるようになります。米国国立睡眠財団の考えによると「0〜3カ月で14〜17時間、4〜11カ月で12〜15時間、1〜2歳で11〜14時間」とされています 。
編集部
睡眠時間が不足すると、子どもの成長にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
黒木先生
睡眠時間の長さはもちろんですが、質も大切です。例えば、睡眠の質は成長ホルモンの分泌と深く関わっており、眠りについてから初めて訪れるノンレム睡眠のときに、成長ホルモンの分泌はピークを迎えるとされています。ノンレム睡眠とは、脳が休止する深い睡眠のことで、通常は眠り始めてから30分後くらいに訪れるとされています。成長ホルモンには骨を伸ばしたり、筋肉を養ったり、新陳代謝を活発にしたりする働きがあるため、この時間帯にぐっすりと質の良い睡眠を確保することが重要です。
編集部
夜泣きは、子どもの成長に影響を及ぼすでしょうか?
黒木先生
夜泣きはだいたい生後6カ月以降にみられ、睡眠が不安定だと夜泣きが起きることが多いと考えられています。特に注意したいのは、夜泣きはお父さんやお母さんなど養育者の負担につながるという点です。「いずれ治るだろう」とそのままにしてしまう人も多く見受けられますが、適切に対応することが必要です。
編集部
具体的には、どのような対応をしたらいいのでしょうか?
黒木先生
まずはかかりつけの小児科医に相談しましょう。場合によっては漢方薬などで睡眠の質を高めることも必要です。
編集部
「夜泣きをすると発達障害になる」ということも言われていますが……。
黒木先生
たしかに、夜泣きと発達障害の可能性が指摘されることもありますが、「夜泣きがあるから発達障害になる」のではなく、「発達障害のある子を後から診断すると、過去に夜泣きをすることが多かった」とされています。つまり、夜泣きが発達障害の原因になることはないのです。過度に心配せず、まずはかかりつけの小児科医にアドバイスを求めてみましょう。
乳幼児の食について

編集部
乳幼児の食についてはいかがでしょうか? どのようなトラブルが考えられますか?
黒木先生
偏食や食べるのに時間がかかるケースは多い傾向にあります。まず偏食に関しては、感覚過敏などの特性が関与している可能性があります。偏食に気づいたら放置するのではなく、食べやすい食材を使ったり、料理の仕方を工夫したりして、なるべく多くの食材をまんべんなく食べさせるように意識してみましょう。
編集部
食べるのに時間がかかるという問題については?
黒木先生
嚥下が不得意な子どももいます。子どもが食事をしている間、むせないかどうかを注意して観察しましょう。そして、その症状をかかりつけの小児科医に相談してみましょう。疾患がないかどうか、判断してくれると思います。
編集部
どうしても食べてくれない場合は?
黒木先生
子どもが食事をしないと、どうしても焦ったりイライラしたりする養育者も多いと思います。しかし「食べさせなければ!」と焦るのではなく、食事の時間は親子で楽しむことが大切です。会話をしながら食事の時間を楽しむことを意識しましょう。そして、15分くらい経っても子どもが食べなければ食事を中断し、リセットしてみてください。1食くらい抜いても大した問題はありませんから、「食べろ、食べろ」と責め立てるのではなく、いったん切り上げることも大切です。
編集部
食事中にテレビを見せる親も多いと思います。これは問題ないのでしょうか?
黒木先生
食事に対する集中力を欠けさせることになるので、できる限り避けるのが好ましいです。あくまでも食事は楽しい時間であることを意識し、みんなで会話をしながら過ごすことを意識しましょう。
編集部
遊び食べがひどい子どももいると聞きます。これは異常行動でしょうか?
黒木先生
遊び食べは子どもの好奇心が優っていたり、探究心が強かったりする証拠かもしれません。必ずしも問題行動ということはできませんが、「食卓でのルールを決める」「食事に集中できる環境を整える」といったことを心がけてみてください。
子どもの正常と異常のライン分けはどこ?

編集部
乳幼児の睡眠や食事に関する行動は、どこで正常か異常かを区別すればいいのですか?
黒木先生
正常と異常の定義にもよりますが、ここでは「医療の介入が必要」な状態を異常と捉えて話を進めてみます。まず、睡眠の問題で言うと、機嫌が悪くて寝つきが良くないというケースがよくあります。そのようなときには何か疾患が隠れている可能性もあるため、小児科医に相談してみるといいでしょう。特に、夜泣きはお父さんやお母さんの疲労の原因になります。周囲の疲労を軽減するためにも、小児科医に相談することをおすすめします。
編集部
子どもにしっかり睡眠を取らせるには、どうしたらいいのでしょうか?
黒木先生
子どもをよく寝かせるには、子どもだけでなく、両親側も早寝早起きすることが大切です。家族の生活リズムを整えることで、子どもの睡眠の質も上がります。もし、生活時間が不規則だったり、ライフスタイルが夜型だったりする場合には、生活習慣を見直してみるところから始めましょう。
編集部
食事についてはいかがですか?
黒木先生
食欲が落ちているということは、なんらかの疾患により体調が悪い証拠かもしれません。また、むせる、吐きやすい、食事に時間がかかるという場合には、嚥下機能の問題があるかもしれません。加えて、偏食が強い場合には、感覚が過敏という特性が関与している可能性もあります。いずれにしても、親が適切に判断するのは非常に困難なので、ひとまずかかりつけの小児科医に相談してほしいと思います。
編集部
食事中にタブレットやスマートフォンを見せるのは、やめた方がいいのでしょうか?
黒木先生
メディアへの暴露は、子どもが小さいうちは避けるべきだと考えます。特に小さい頃は、言葉の意味が分からなくても脳への刺激が非常に強いので、睡眠の質を妨げたり、言語の発達を遅らせたりするデメリットがあります。また、メディアへの暴露が著しい子どもは、脳の発達が遅れたり、イライラしやすくなったりする傾向にあります。脳の健康を考えれば、本来は子どもだけでなく大人もメディアへの暴露を控えた方がいいと思いますが、少なくとも脳の成長において重要な時期である3歳までは、できるだけメディアに触れさせないようにしましょう。メディアの代わりに、積極的に話しかけてあげて、会話を通して子どもの脳や心、言語の発達をサポートすることが大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
黒木先生
乳幼児の時期は、親との触れ合いを密にすることが大事です。特に子どもがある程度大きくなって共働きになると、子どもと接触する時間が少なくなり、どうしても触れ合いの時間を持つことが難しくなります。そのため、夕食の時間と睡眠前は、親子のコミュニケーションにおいて重要なタイミングです。その時間に楽しく会話をしたり、本を読み聞かせたりすることで、子どもと大人のコミュニケーションが図れることに加え、睡眠の質の向上や言語機能の発達においても重要な意味を持ちます。まずは、家族が会話をしながら楽しい時間を持つことを意識して、その上で「おかしいな」と感じることがあればかかりつけの小児科医に相談してみましょう。
編集部まとめ
睡眠や食事は、子どもの成長において重要なものですが、場合によっては「これって異常?」「うちの子だけおかしいのでは?」と感じることもあるかもしれません。気になることがあればかかりつけの小児科医に相談しながら、ぜひ健康的な発育をサポートしていきたいですね。
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