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【闘病】もっと早く病院へ行っていれば… 「全身性エリテマトーデス」になっての後悔

 更新日:2025/08/12
【闘病】もっと早く病院へ行っていれば… 「全身性エリテマトーデス」になっての後悔

頭の重みや肩の痛みといった、誰にでも起こりうるような症状から始まったsakiさん(仮名)の体調不良。しかし、その不調はなかなか改善せず、次第にほかにもさまざまな症状が現れるようになりました。原因がわからないまま病院を転々とし、紆余曲折を経て、ようやく「SLE(全身性エリテマトーデス)」という診断にたどり着いたsakiさん。そんな彼女が、診断を受けたときの想いや現在の生活、病気との向き合い方について語ってくれました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年2月取材。

sakiさん

体験者プロフィール
saki(仮称)

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1986年生まれ、群馬県在住。20代後半から体の異変を感じ始め、36歳のときにリウマチ科を受診し「混合性結合組織病(MCTD)」と診断され治療を受けるも効果が出ず、大学病院へ移る。大学病院で再度検査を受け「SLE(全身性エリテマトーデス)」と「関節リウマチ」の重複症候群(Overlap Syndrome)との診断を受け、現在はこちらの診断名で治療中。YouTubeチャンネル「難病と生きるsaki」で発信もおこなっている。

最初は混合性結合組織病の診断だった

最初は混合性結合組織病の診断だった

編集部編集部

最初に不調や違和感に気づいたのはいつですか?

sakiさんsakiさん

今から10年近く前です。ある朝、ベッドから起き上がろうとすると左胸が痛み、頭の重みを支えられないということが何度かありました。ただし、何もしなくても2〜3日で治るし、病院で診てもらうにしても、何科を受診すればいいのかわからなかったので、放置していました(これが病気の症状のひとつだったのかは今でも不明です)。

編集部編集部

たしかに、何科を受診したらよいのか迷いそうですね。

sakiさんsakiさん

そのあと「変だな?」と感じたのは、肩の痛みです。最初に左胸の痛みが出たときから3〜4年後のことだったと思います。肩の関節がごく限られた範囲でしか動かせなくなり、車のシートベルトを締めようとしても引けなかったり、運転中、右・左折の際もハンドルを持ったままでは十分に回せずに、何度も左右の手を持ち替えたりしていました。ただ、これも2〜3日で症状が治るのでそこまで深刻に考えておらず、「年齢によるものかな?」と勝手に考えて受診はしませんでした。

編集部編集部

受診から、診断にいたるまでの経緯を教えてください。

sakiさんsakiさん

最初のクリニックを受診するきっかけは父でした。別件で総合病院にかかったときに、私を診察してくれたことのあるリウマチ科の先生がクリニックを開業したとのことで、「一度行ってみたら?」と言われました。そこで受けた血液検査の結果、抗U1-RNP抗体が検出され「混合性結合組織病(MCTD)」と診断されました。これは膠原病の一種です。

編集部編集部

そこから治療に進んだのですね。

sakiさんsakiさん

はい。最初は症状も軽かったので痛み止め(ロキソニン)で対処していましたが、徐々に痛みが強くなって日常生活に支障をきたすようになり、「今後は自己注射をしてみましょう」と提案されました。自己注射はとても高価なので、特定医療費受給者証の申請をすることにし、同じタイミングでステロイドの服用も開始しました。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

sakiさんsakiさん

自己注射を開始することになり、自分で注射するのはもちろん、おなかに注射すること自体も初めてだったので恐怖でしかなかったです。家に帰ってからYouTubeで自己注射をしている動画をいくつも見ました。ステロイドに関しても、副作用の話もよく聞くし、実際にステロイドを長年使用して肥満になってしまった人を知っているので、最初は不安でした。

全身性エリテマトーデスと診断されるまで

全身性エリテマトーデスと診断されるまで

編集部編集部

その後の経過はいかがでしたか?

sakiさんsakiさん

一旦は痛みが引いたものの、また痛みを感じるようになってしまいました。自己注射は半年ぐらいオレンシアを続けましたが効果が見られず、その後オルミエント、アダリムマブを経てサフネローという点滴もしましたが、効果はありませんでした。

編集部編集部

そこからどうされたのですか?

sakiさんsakiさん

仕事を辞めて時間ができたこともあり、当時の主治医からの勧めで大学病院へ移ることになりました。大学病院での検査の結果、「SLE(全身性エリテマトーデス)」と「関節リウマチ」の重複症候群(Overlap Syndrome)との診断を受け、現在はこちらの診断名で治療中です。

編集部編集部

どんな病気なのでしょうか?

sakiさんsakiさん

SLEは免疫の異常によって起こる病気で、全身症状として発熱、全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、関節症状として手や指、肘、膝などの関節炎が起きます。そのほか、人によっては蝶形紅斑といわれる皮膚症状や日光過敏症なども起きますが、私は全身倦怠感、疲れやすさ、関節炎が主な症状でした。最初に診断されたMCTDも自己免疫疾患と考えられていて、SLEの症状のほかに、全身性強皮症や多発性筋炎/皮膚筋炎の症状も混ざって発症する疾患です。血液検査で抗U1-RNP抗体が高くなるのが特徴なので、最初はMCTDと診断されたようです。ちなみに、関節リウマチも同様に、免疫の異常によって関節に炎症が起こり、痛みや腫れが生じる病気です。病気が進行すると関節の変形や機能障害をきたし、日常生活に大きな影響を及ぼします。

編集部編集部

病名を告知されたときどのように感じましたか?

sakiさんsakiさん

最初にMCTDと言われたときは、初めて聞く病名で正直よくわからず、先生からの細かい説明もなかったので軽く考えていたのですが、後でインターネットなどで調べたときに「国の指定難病」と書いてあって驚きました。数年後、SLE・関節リウマチと言われたときは「MCTDじゃないの!?」と別の意味で驚きがありました。

編集部編集部

SLE・関節リウマチについて、どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

sakiさんsakiさん

「まずは飲み薬だけで始めてみて、改善されないようなら自己注射も検討しましょう」と言われ、メトトレキサートとジセレカとステロイドを服用しています。ステロイドは、血液検査のCRPの数値を見てその都度調整してもらう形で、現在は10mg/日以下で落ち着いています。今は自己注射もしていません。

編集部編集部

今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?

sakiさんsakiさん

もっと早く受診すればよかったと思います。違和感に気づいた時点で受診していれば、もっと手前の段階で症状を抑えることができたのではないかと。何科を受診すればいいのかわからなくても、今の時代ネットで症状を入力すれば、考えられる病名や受診したほうがよい診療科などが調べられるので、当時の自分がそれをしなかったことは悔やまれます。

見た目ではわからない体の中のどこかで炎症が起き、痛みを感じる

見た目ではわからない体の中のどこかで炎症が起き、痛みを感じる

編集部編集部

受診から、現在にいたるまで、なにか印象的なエピソードなどあれば教えてください。

sakiさんsakiさん

まだクリニックに通い始める前、冬のある寒い日にふと手を見たら指先が真っ白になっていました。「かじかんでいるにしては変だな?」と思いSNSに載せてみたら、「それってレイノー現象じゃない?」と友達から教えられました。それ以降、ひと冬に何度かレイノー現象は起きていましたが、ステロイドを飲み始めてからは指先の冷えはあってもレイノー現象は一度も起こっていません。レイノー現象も、MCTDやSLEの症状のひとつなので、その頃から発症していたのではないかと思っています。

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください。

sakiさんsakiさん

ストレスが症状の出現に大きく起因する病気なので、「これをしたらどのくらい反動が来るだろう?」と常に考えるようになりました。ストレスといっても、精神的なストレスだけでなく身体的なストレスもあり、楽しいことでも身体に負荷がかかると症状を引き起こしてしまうので、たとえば旅行に行った後は何日ぐらい寝込むかを予想してスケジュールの調整をしています。

編集部編集部

それは大変ですね。

sakiさんsakiさん

また、頻繁に、それも突然症状が出るので、約束をドタキャンしてしまうことも増えました。相手に申し訳なく思ってしまい、人との約束を取り付けるのも躊躇するようになりました。そのほかにも、たとえば薬で免疫力を下げているので、外出時は必ずマスクを着けていますし、日光過敏症を予防するために、紫外線にも気を使っています。夏でもなるべく肌を露出しないよう気をつけていますし、冬でも日焼け止めが欠かせません。

病気前の夏

紫外線に気をつけていなかった病気前の夏

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

sakiさんsakiさん

元気な日もあれば倦怠感で動けない日、全身の痛みがある日など、日によって体調に波があります。私は特に倦怠感が強く出るので、そういう日は丸一日寝て過ごしています。今は無職なのでeラーニングで勉強をしながら、在宅勤務が可能な仕事を探しているのですが、なかなか希望の仕事に巡り会えないのが今の悩みです。

編集部編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

sakiさんsakiさん

医療関係のみなさまには本当にお世話になっています。可能であるならば、診察の際に音声の録音をさせてほしいです。患者にもわかりやすく説明しようと努めてくださっているのはすごく感じるのですが、それでも素人には内容が難しかったり、覚えきれなかったりします。私が最初MCTDと診断されたとき、ネット上でも病気に関する情報が少なく、病気について書かれた冊子などもなかったので、先生からの説明が情報源のほとんどでした。 音声の録音ができれば、後から先生の説明を再確認したり、わからないことを自分で調べたりすることもできます。

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人にメッセージがありましたらお願いします。

sakiさんsakiさん

膠原病は外から見てもわかりにくい病気で、周りの人になかなか理解してもらえないと感じています。関節が変形してしまう場合もありますが、多くの場合、見た目ではわからない体の中のどこかで炎症が起きて痛みを感じます。そして痛みもなにもなく元気な日もあります。もし身近に膠原病で苦しんでいる方がいたら少しだけ優しくしてほしいです。重いものを持つとか、ゆっくり歩くとか、こまめに休憩をとるとか、それだけでもとても助かります。

編集部編集部

最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

sakiさんsakiさん

SLEをはじめ膠原病と闘っている人は、しんどい日は無理をせず、自分を大切にしてください。病気と向き合うのは大変ですが、自分のペースで、一歩ずつ一緒に頑張りましょう。

編集部まとめ

sakiさんは日によって変わる体調や、周囲の理解を得る難しさに悩みながらも、「無理をせず、自分を大切にすること」がなによりも大切だと話します。病気と向き合いながら自分のペースを見つけ、できることを大事にしながら過ごすsakiさんの言葉が、同じ病気に悩む方々の励みになればと思います。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

田島 実紅

記事監修医師
田島 実紅(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

この記事の監修医師