【闘病】まさかの「乳がん」 検診は毎年、セルフチェックもしていたのに“無自覚・無症状”で発覚

ゆきさん(仮称)の「乳がんの早期発見」は、毎年の定期検診によるものでした。普段からセルフチェックをしていたにも関わらず、自覚症状はなかったそうです。現在はホルモン治療のみでお仕事にも復帰されています。つらい闘病生活では「推し活」が、まさに頑張るゆきさんの背中を押してくれたそうです。そんなゆきさんに、これまでの経験を振り返ってもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年2月取材。

体験者プロフィール:
ゆき(仮称)
北関東在住、1973年生まれ。一男一女の母。息子は独立し、夫、娘、猫と暮らしている。診断時の職業は医療事務のパート。2023年5月に右胸にがんの診断を受け同年7月に右胸全摘手術と同時再建をする。現在はホルモン療法のみの治療、医療事務のパートに復帰している。
セルフチェックでは気付かなかった

編集部
はじめに、ゆきさんが病院に行ったきっかけは何でしたか?
ゆきさん
祖母が乳がんだったこともあり、30歳から毎年自治体の検診を受けていました。その中で、30歳のときに左胸の線維腺腫を摘出し、39歳には左胸に石灰化が見つかるも、良性だったため経過観察となりました。このような経験からセルフチェックをしていたのですが、2022年11月の定期検診で要精密検査、翌年1月に乳腺外科を受診してマンモグラフィとエコー検査をしました。定期検診までは無自覚・無症状でした。先生から「4月にまた見せてください」と言われ、4月に再受診したところ、その翌月にがんと診断されました。
編集部
「右非浸潤性乳管がん」と「右浸潤性小葉がん」の2つのがんを診断されたそうですが、医師からはどんな説明がありましたか?
ゆきさん
2つのがんの違いや位置などの説明がありました。非浸潤性乳管がんは、乳腺組織の中にがんが留まっていて、乳管にできているもの。浸潤性小葉がんは小さいがん細胞で、広がりやすく、乳腺組織の外にがんが出てしまっているものと図解してくれました。
編集部
治療についてはどのような話がありましたか?
ゆきさん
手術の方法は全摘と温存があるが、位置が離れているため全摘となるとのことでした。また、遺伝子検査の対象条件に当てはまることから遺伝子検査の説明も受けました。再建についても同時か術後か、また自家組織か人工か、そのメリットやデメリットについても説明してくれました。
編集部
その後はどのような治療をしましたか?
ゆきさん
浸潤性小葉がんはステージ1、非浸潤性乳管がんはステージ0という見立てでしたが、全摘手術をしました。センチネルリンパ節生検(転移の有無を顕微鏡で調べる一連の検査)の結果、リンパへの転移はなかったので抗がん剤や放射線治療もなく、ホルモン療法のみとなりました。現在は乳がんの増殖を抑える薬であるタモキシフェンを服用しています。
編集部
診断されたときのお気持ちをお聞かせください。
ゆきさん
4月の再受診のエコーで「血流がある(血流シグナルが検出)」と言われた時点で「多分がんだろう」と思っていたので、「やっぱりね」という感じでした。ただし、いつもは左胸が要検査になっていたので右胸にあるのには驚きました。人生観が変わったとか目の前が暗くなる、頭が真っ白になるというのはなくて、「浸潤性と非浸潤性とでは保険の給付金の額が違うよな」などと思っていました。
編集部
保険の給付金はどう役に立ちましたか?
ゆきさん
治療にはお金がかかります。高額医療制度など公的なものもあります。治療費のほか、手術や入院に必要なものなどのいろいろな物を揃えなくてはならなかったので、がん保険の給付金はありがたかったです。おかげで貯蓄を崩すこともありませんでした。健康なうちに保険を見直したり、貯蓄からどう備えるか試算したりしておいてもいいと思います。
苦しい検査と術後の不安を支えた存在

編集部
診断後からこれまでに心の支えにしてきたものは何でしょうか?
ゆきさん
家族や身内はもちろんですが、大好きなアイドルグループである「推しの存在」は大きかったです。つらい検査や術後の痛みにも「推しに絶対に会うんだ」という想いで耐えることができました。
編集部
なかでも何がつらかったのでしょうか?
ゆきさん
特にMRI検査は苦痛でした。胸のMRI検査はうつ伏せで胸を台の穴に入れます。顔の部分にも穴があるのですが、感染症予防のためマスク着用だったのでとても息苦しかったです。とめどない爆音を浴びせられ、拷問のように感じ、技師さんを呼び出す「お知らせボタン」を何度押そうと思ったことか。頭の中で大好きな推しの歌を歌って頑張りました。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
ゆきさん
タモキシフェンを服用していて、重い副作用はありませんが関節痛や軽いホットフラッシュがあります。また広背筋を使って再建しているため、背中の傷のひきつれ(つっぱり)があります。筋肉をはがしているので、背中の右下は少しえぐれており、疲れやすく、時折痛みます。重い物は以前より持てなくなりました。退院後しばらくは包丁でさえ重く感じ、拭き掃除のときは腕の前後左右の動きがきつかったです。関節が硬くならないように、皮膚を伸ばしたり入浴後にストレッチをしたりしています。ただ、現在では手術の前と後では生活には大きな変化はありません。仕事も退院後一カ月ほどで復帰できました。
編集部
医療従事者に期待することはありますか?
ゆきさん
主治医をはじめ診断してくれた先生、形成外科の先生、看護師さん、ワーカーさんなど、皆さんとても穏やかに丁寧に接してくれました。特に入院中は、術後の痛みが強く、また先々の不安から心が折れそうになりました。そんな私の話にお忙しい中ずっと耳を傾けてくれました。過度に励ますのではなく私の思いに寄り添ってくれました。
伝えたいメッセージ

編集部
乳がんについて、あまり詳しく知らない人に伝えたいことは何ですか?
ゆきさん
乳がんにはいくつかタイプがあります。タイプやステージによって術式、術後の治療方針が違ってきます。自分で選択をしなくてはならない場面も多くあり、短い期間で決断しなくてはなりません。乳がんのタイプや術式、再建方法などをあらかじめ調べておいてもいいかもしれません。
編集部
家族や友人など周りの人とは、どのように接するのがいいでしょうか?
ゆきさん
近しい人ががんになったとしても、可哀想などとは思わないでほしいです。「なんでがんになってしまったんだ、何がいけなかったんだ」と本人が一番思っています。そして、その気持ちを自分なりに受け止めて、覚悟して治療に臨んでいます。過度に励ますことはせず、気持ちに寄り添って見守ってあげてほしいです。そして心が挫ける日も体調が芳しくない日もあるので、弱音を吐けて気軽に休める環境を作ってもらいたいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
ゆきさん
乳がんは自分で触れたり、よく観察したりすることで異変に気付けるものもあります。ただし、私のように自覚症状がないケースもあります。私の場合は、毎年、定期検診を受けていたので早い段階で見つかりました。早期発見をすることで、その後の治療がだいぶ変わってくると思います。よく「マンモは痛い」「何か見つかったら怖い」という話を聞きます。マンモグラフィの痛みはその場限り、見つかっても早くてよかったと思えばいいのです。日常に早く戻れる可能性も高くなり、私の場合は趣味である「推し活」を諦めずに済みました。あらためて検診はとても大切だと思います。私の経験から、20代までは、せめてセルフチェックをし、30歳を超えたらセルフチェックに加え、検診も受けるとよいと思います。20代前半の娘には、セルフチェックをするよう話しています。

記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
編集部まとめ
早期発見ではあったものの、乳がんを発症し右胸全摘出をしたゆきさん。それでも早い復帰ができたのは、毎年の定期検診のおかげだと語ります。保険の給付金があったことで、治療費やそのほかにかかる費用にも対応できたようです。定期検診と保険の大切さ、ゆきさんのこのメッセージが波紋となり、少しでも多くのかたに届きますように。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。




